教室

憂「梓ちゃん、今日からは澪さんと恋人同士になるんだねー」

梓「うん。っていうか私未だに不思議なんだけど…」

憂「ん?なにが?」

梓「その、澪先輩が私を好きってことが」

憂「ふしぎ?」

梓「不思議だよー、すっごく謎。澪先輩てもっと年上で大人ぽい人が好きだろうなって思ってたから」

憂「そっか…そうだねぇ…」

梓「私なんてそんな取り柄とかもないしなぁ…」

憂(…!)

憂「そんな事ないよ、梓ちゃんは凄く可愛いもん」

梓「えっ」

憂「とっても素敵な女の子だよ」

梓「そ…そっかな」

憂「うん。だから自信持って?」

梓「…う、うんっ」

憂「ふふ」

梓「へへ」



……

澪(もう何日か経っちゃったけど…なんかあんまり進展してないような気が)

澪(一緒に帰ったりしても恋人っぽい雰囲気にできてないもんな、私…)

澪(恋人……恋人といえば)ハッ

澪「そうだっ、デートだ!!」ガターン

シーーーーーン

澪「はっ」

教師「秋山さん授業中よ」

澪「すみません」ストン

ザワザワ クスクス

クラス中の視線が突き刺さる

澪「うう…」

澪(……し、死にたいよぅ///)





梓「ふぅ、寝る前に宿題やっちゃわないと」

チカチカ

梓「あれ?携帯光ってる」

梓(澪先輩からのメールだ)

『今度の休み、一緒に映画でも見にいかないか?』

梓「映画…そういえば最近見てなかったなぁ」

梓(返事しないと…えと、良いですね行きましょう…っと)ムニ

送信

梓「よし」パタン

梓(じゃあ宿題を…)

ピロリン

梓「早!」ガンッ

梓(んーと、『ありがとう。時間は~~』と…まだ続きがある)

『楽しみにしてる』

梓「………」

梓(あ、そっかこれってデート…)

梓(…デートかぁ///)




デート当日の朝澪の家

澪「トゥートゥートゥマシェリー、フンフンフン♪」

澪(今日のために新しい服買っちゃった…ん、まぁまぁだな)クルックルッ

梓(梓はどんな格好してくるのかな。きっと可愛いぞー)

澪「おーきーにーいりーのうさーちゃー」フンフン

律「えらくご機嫌だなぁーみおー」

澪「!!!」ビクゥ

律「やほー」

澪「いややほーじゃないだろ!どっから入ってきた!」

律「そりゃー普通に玄関からだよ」

澪「ノックくらいしろっ」

律「いやぁ一応したんだけどねぇ?可愛い澪ちゃんは鏡の中の自分に夢中だったようで」

澪「みっ見てたのか!?///」アワワ

律「なぁんにも見てございませんわよー」ニヤニヤ

澪「くう」

律「あっははは!ところでどうしたんだよ、そんなおめかししちゃってさぁ」

律「もしかしてデートでも行くのか?ははっ、なーんt」

澪「そ…そうだよ」

律「へ?」

澪「これから梓と一緒に映画館に行くんだ」

律「ほ…」

澪「だから今日は悪いけど帰ってくれ。折角来てくれたのにごめんな?」

律「はぁ…」

澪「あ、そろそろ行かないと遅刻しちゃう。じゃ律、行って行って」グイグイ

澪「じゃあな、行ってくる!」タタッ

律「う、うん…」

律「分かった…」

律「いってらっさーい…」ヒラヒラ

律「……」

律(太陽が、目に染みるぜ…)


チャララ~チャララララ~ラ~

律「ん?電話だ」





映画館前

梓(そういえば初デートだ…ドキドキ)

梓(……いい天気だなぁ)ボー

タッタッタッ

梓「あ、澪先輩こんにちは」

澪「おっす。ごめん梓…待たせちゃったか?」

梓「全然です!澪先輩時間ぴったり」

澪「そ、そうかなら良かった」ホッ

梓「あ…澪先輩、その服可愛いですねっ」

澪「ん?ああこれか…はは、有難う」

澪(これ着てきてよかった)

梓「澪先輩センス良いですよね。私なんていつも似たようなのばっかで」

澪「そんな事無い。梓はいつも可愛いよ」

梓「……あ、有難うございます」

梓(褒められた///)

澪「じゃあ中はいろっか」

梓「はい!」

澪(さて…今日は何か良い映画やってるかな?)

梓(んーっと)キョロキョロ

澪「あ、『どきゅせん』やってるんだ…あれにするか?」

梓「いいですね。私見たかったんですそれ」

澪「じゃ決まりだな。チケット売り場は向こうか…」

梓「行きましょう」

テクテクテク…


『………』ジー

澪と梓の後方に怪しく潜む影が二つあった

紬「りっちゃん隊長、二人を発見しましたどうぞ」

律「オーケー、追跡を開始するどうぞ」

紬「うふふ。こうしてると秘密組織のスパイみたいね」
律「むぎ、あんまり身を乗り出すとバレちゃうぞ」

紬「あら」

律「まぁただのデバガメだけどな…」

紬「うふふふ…でも驚いちゃったぁ。ちょっとお喋りしたくて電話しただけだったけど」

律「あーごめん。いきなりこんなのに呼び出しちゃってさ」

紬「ううんいいのよ、私は楽しんじゃってるもの」

律「サンキュなむぎぃ」

紬(りっちゃん、やっぱり澪ちゃん取られたみたいで寂しいのね…)

律「よし、後ついてくぞ!」



上映中

梓(この映画面白い)ジーー

澪「……」

澪(そういえばこの間見た少女漫画ではこういう映画館の中で…)

澪(手が触れ合ったりしてキュン、みたいなのがあったな)

澪(ちょっと試してみようか)チラッ

澪(あ……)

梓「……」チュルル

澪(両手でジュース持ってる…)

梓「面白かったですね!映画」

澪「うん、そうだな」

澪(あんまりちゃんと見れなかったけど…)

梓「…あの、この後どうします?私はまだ時間ありますけど」

澪「それならちょっとカフェでも寄らないか?」

梓「あっ、行きたいです」

澪「良かった。今日はもうちょっと梓と一緒にいたかったから…」

梓「え」

澪「え?あ…いや何でもないよ///行こっ」

梓「は、はい///」

澪「確か向こうにケーキセットが凄く美味しいとこがあったはず」

梓「ケーキ…それは楽しみですっ」パァ

澪「あそこのは生クリームが美味しいんだ」

澪「紅茶もオススメだぞ。特に…」

梓を楽しませようとお喋りに夢中になるあまりに澪は前方不注意になっていた

梓「あ!澪先輩あぶな――」

澪「え」


ドンッ

突然何かにぶつかってしまい、澪は後ろによろめいた

澪「い、いたひ……何?」

DQN風の男「ちょちょちょちょちょちょ、痛いんですけど何ぶつかってくれちゃってんの」ピキピキ

澪「えっえっ、すすすすみません!」オロオロ

DQN男「っつかよく見たら可愛くね?運命的な出会い果たしちゃった事だしお茶でも行っちゃう?」

澪(うわあああぁぁぁぁ何この人ぉぉ!?)

梓「せ、先輩…」

澪(どどどどうしようどうしよう)

DQN男「ほらほらー早く行こうぜぇー」

澪「い…いや……そういうのはちょっと…」

澪(はっ早く逃げないと)

DQN「いや?あ、お茶で満足できないってんならホテルでも全然オッケーよ俺!」

澪「!?」

澪(何なのこの人…怖いよぉぉ…お家に帰りたいよぉ…!)

澪(だ、だれか助けは)

青ざめた澪が縋る思いで周りを見ても、そこは元々人通りが少ない場所
ちらほらいる通行人達は関わりたくないのか知らん顔で過ぎていく

DQN「あれ!?後ろにも可愛い子発見!!」

澪(!!)

今度は梓に目をつけたのかDQN男はヘラヘラと梓に近付いていく

DQN「いいねぇこっちも超可愛いじゃん、ハイ合格!俺と一緒に遊ぶ権利をあげちゃいま~す」ヘラヘラ

梓「え…ちょっと…」

澪(こ、こいつ梓にまで……!)

DQN「ほら、早く行こうぜ!!」ガシッ

梓「いたっ…や、やめて下さい」

梓(こ、こわい……っ)

澪「…!ちょっと待て!!!」バッ

ドン!!

DQN「うおっ!?」

梓の怯える表情を目にした澪は咄嗟に体が動いていた
梓の手からDQNの手を引き離し、力任せに突き飛ばしたのだ

澪「いい加減にしろ!!梓にまで手を出すなら許さないから!」

梓「澪先輩!」

澪(梓は…梓は私が守らないと…!)

梓を庇うように両手を広げてDQNの前に立ちはだかる澪は普段では考えられないほどの強気な顔だ

梓(み、澪先輩キレちゃった!?)オロオロ

梓「……あっ…」

澪「…………っ」

梓(ちがう…澪先輩、震えてる…やっぱり怖いんだ…なのに…)

DQN「おいおいおいおいおい、今のすげ痛かったんですけど?」ピキピキ

澪(う…)

澪「梓、早く逃げろ!」

梓「そんな…嫌ですっ、先輩も一緒に行きましょう」

DQN「いやいやいやいやいや逃がさないからね?俺今すごく痛かったからね?もうお仕置きしちゃうからね?」

突き飛ばされて簡単に逆上したDQNは興奮した様子で澪に詰め寄っていく

澪「や…やめろ!早くどっかへ…」


ガシッ

澪「いたっ!?」

今度は澪の腕を掴んだDQNはそのまま引きずるようにして澪を連れていこうとする
力では敵うはずも無く、必死で抵抗はするものの無理やり引っ張られてしまう

澪「やっ、やだ、やめ……痛いってば…!」

梓「澪先輩!」

澪「だめっ梓は来るなっ!」

梓「!!」ビクッ

追いかけようとする梓に対して澪は大声で怒鳴る
思わず身を竦めた梓は思わず涙目になったがそれでも止まらずに追いかけた

梓「澪先輩!!」グイッ

DQN「何だァ~君も俺と一緒に来たかったの?いいよいいよ大歓迎しちゃうよぉ」

DQNは梓のほうへも汚い手を伸ばしてきた

梓「!!」

澪「!!あず…っ」

ガシッ

梓「………!!」

梓(…あれ……何ともない…?)

身構えて一瞬目をぎゅっと閉じた梓だったが、何も起こらないのを怪訝に思い顔をあげた
すると、そこには突然現れた第三者によって腕を掴まれているDQNの姿があった

梓「え……!?」
澪「あっ!?」

突然現れた人物は、よく見るとふわふわブロンドの少女…紬だった
紬はDQNの腕を掴んだまま無言で立ち尽くしている
俯いているせいで表情がよく見えないが、何故か彼女のまわりの空気がひんやり凍っているような気がした

梓(む、むぎ先輩……?)
澪(何でむぎがここに……)

明らかにいつもと違う雰囲気を纏った紬に澪達はわけも分からず息を飲んだ

DQN「え、ちょ何?また可愛い子なんですけど!俺ハーレムなんですけど!!」

空気の読めないDQNは一人でテンションを上げている

DQN「いいぜ、皆まとめて来ちゃいなよ!たっぷりねっちり可愛がってやっからさぁ」

そんな事を言いつつDQNはそのまま先程のように今度は二人を引きずって行こうとする
―――が、その場からそれ以上進むことは出来なかった
紬に掴まれてるほうの手がピクリとも動かせないのだった

DQN(なん…だと…!?)

紬「許さない……」ポツ

DQN「えっ」

紬「女の子に対する数々の狼藉…たとえ地獄の閻魔が許そうともこの琴吹紬が許さない」

DQN「えっえっ」

紬「絶対に許さない…!絶対によ……!!」


カッ


ギリリリリリッ


DQN「ふんずるばぬらqあwせdrftgyふじこlp;@:」

澪「ひ、ひいいぃぃぃぃ!!?」
梓「むむむむ、むぎ先輩がむぎ先輩が…!!」

キレたせいでいつもの面影なく怒りの形相になった紬は雑巾をしぼるようにDQNの腕を捻り上げていく

律「でりゃああとどめの律キーーーーック!!!!アンドチョップ」

ゴシャアアアア  ゴスン

紬に続いて流星のごとく現れた律の攻撃によってDQNは完全に地に沈んだ




8
最終更新:2010年07月03日 04:49