憂「お朝ちゃんおはよう朝だよ」

唯「う……もう朝ぁ?」

憂「ほら、早く起きなきゃ遅れるよ」

唯「うん…わかったぁ」

憂「私、ご飯の用意してるから出来たら呼ぶね」

唯「えへへ…ありがとう憂」

唯「ふわぁ~」

唯「ギー太おはよう」

唯「よしっ、制服に着替えなきゃ」

唯「今日も一日頑張るぞ!」

憂「お姉ちゃんご飯出来たよ!!」

唯「うん!今行くから待ってて!」

憂「はぁ~い!!」

唯「ギー太行こっか」

唯「今日の朝ご飯何だろう?」

唯「お腹減った~」

憂「おはようお姉ちゃん」

唯「おはよう憂」

憂「さ、早く椅子に座ってご飯食べよ!」

唯「うん!今日は…サンドイッチかお美味しそうだね!」

憂「お姉ちゃんの為に頑張ったんだよ」

唯「えらいえらい」ナデナデ

憂「えへへへ…」


唯「いただきまーす」

憂「いただきます」

唯「わぁ!美味しいねコレ」モグモグ

憂「本当に?よかった!私も食べよ!」

唯「ちょっと待って!私が食べさせてあげる!」

憂「本当に?」

唯「うん!あーんして」

憂「あーん」

唯「美味しい?」

憂「うん!お姉ちゃんから食べさせて貰ったから二倍美味しいよ!」モグモグ

唯「えへへありがとう」

憂「うん!…あ、そろそろ学校に行かなきゃ」

唯「そうだねぇ~それじゃあごちそうさまでした」

憂「ごちそうさまでした」

唯「それじゃあ憂、一緒に行こうか」

憂「うん、そうだね!」

唯「あ、そうだ憂」

憂「なーに?」

唯「今日の夜ご飯カレーにしようよ」

憂「うん、いいよ」

唯「私も手伝うから一緒に作ろう!」

憂「わかった!」

唯「それじゃあ行こっか」

憂「うん!」

唯&憂「行ってきまーーす!」


憂「あ、お姉ちゃん見て桜だよ」

唯「わぁ~綺麗」

憂「本当だね~ほら、下も見てみて桜の絨毯みたいだよ~」

唯「わぁ~凄い凄い!」

憂「なんだか、春って感じがするね!」

唯「私、春が1番好き!」

憂「私も好き!」


唯「でも春になって暖かくなって来たよね~」

憂「ね~」

唯「憂と一緒にマフラー巻いて一緒に歩け無いのが寂しいな…」

憂「お姉ちゃん…」ジーン

唯「憂、ほら急ご」フラッ

憂「う、うん…?」


憂「お姉ちゃん…」

唯「なぁに?」フラフラ

憂「お姉ちゃん!」

唯「な…に……?」バタッ

憂「お姉ちゃん!!」

憂「どうしたの!?お姉ちゃん!!!!」


―――急にお姉ちゃんが倒れて、私はどうすればいいのか分からなかった。
時間が止まったように思えた。
私は…私は…ただただ倒れたお姉ちゃんの体を抱きながら…私の腕の中で小さく震えるお姉ちゃんを見ながら泣いていた。
何も出来ない無力な自分を恨んだ―――


憂「お姉ちゃん…」

唯「あ…憂だぁ」

病室のベットで横になっていたお姉ちゃんは、私に健気な笑顔を見せてくれた。

憂「ご飯を持って来たよ!食べさせてあげる」

唯「うん…ありがとう…」

お姉ちゃんが倒れてから一ヶ月。
ご飯も一人では食べれ無くなるほど体の痙攣が酷くなってきている。


唯「憂、私大丈夫なのかな?」

憂「大丈夫だよ…ほら、あーん」

お姉ちゃんは嗜眠性脳炎と言う病気らしい。

唯「えへへ、美味しい」モグモグ

憂「よかったぁ~」

私はこの病気を知っている…レナードの朝と言う映画で出て来たからだ。

憂「ほらあーん……」

唯「ありがとう」モグモグ

憂「…………お姉ちゃん!!!!!」ギュッ

唯「ど、どうしたの?」


憂「お姉ちゃん!嫌だよぉ!」ポロポロ

唯「…………憂」

憂「お姉ちゃん!私まだお姉ちゃんと話したい事がいっぱいあるし…お姉ちゃんと一緒に遊びたい事だってやりたい事だってまだ沢山あるのに!」ポロポロ

唯「泣かないで」ギュッ

憂「お姉ちゃん…私嫌だよぉ…」

泣いている私をお姉ちゃんはそっと…抱きしめてくれた。

憂「私が変わってあげたられたら…いいのに」

背中に伝わるお姉ちゃんの手の震え、かすかな温もり…私は本当に変わってあげたかった。


唯「泣かないで私まで悲しくなるよ…」

憂「…ひっぐひっぐ」

唯「憂…泣いちゃダメだよぉ」ポロポロ

憂「嫌だよぉ…お姉ちゃんがいない毎日なんて嫌だよ…」

唯「大丈夫だよ…私は少し遠い所に行くだけだから安心して…大丈夫」ナデナデ

震える手で私の頭を撫でてお姉ちゃんはそう言った。

憂「…………うん、ありがとうお姉ちゃんありがとう」

それから数日たったある日。

お姉ちゃんの体は動か無くなった。


憂「お姉ちゃんおはよう…」

唯(おはよう!憂)

憂「……………今日はいい天気だよ」

唯(お日様の光り浴びたいなぁ…)

憂「お姉ちゃんは今寝てるのかな?そうだよね…まだお姉ちゃんは寝てる時間だもんね」

唯(失礼な!起きてるよ!)

憂「ゆっくり眠っててねお姉ちゃん」

唯(……憂とお話したいなぁ)

唯(体も動か無いし喋る事も笑う事も出来ない…これじゃただのお人形だよ…)


憂「あ…あのね梓が言ってたんだけど今日みんながお見舞いに来るって」

唯(本当に?やったぁ!)

憂「……それじゃあ私、学校に行くからね」

唯(…………うん)

憂「バイバイ」

唯(バイバイ憂)

ガチャバタン


唯(みんな来るのか楽しみだなぁ)

唯(……その間に何しようかな)

唯(何も出来ないよね…テレビ付けてくれないのかな?)

唯(外の景色でもいいから見たいなぁ…)

唯(はぁ…退屈だなぁ早くみんな来ないかな)


唯(……………はぁ)

唯(何もして無いのに何か疲れた…)

唯(今頃みんな勉強してるんだよね…)

唯(勉強がこんなに恋しくなるなんて…)

唯(みんなと勉強したいなぁ…)


男看護士「失礼しゃーす血圧計りに決ましたぁ~」

唯(あれ?いつものおばさんじゃない…)

男看「ちょっと失礼するねお嬢ちゃん」

唯(新しく入った人なのかな?見た事無い…)

男看「コレ動か無いん患者だっけ?チョー可愛い」ツンツン

唯(こ…怖いよ…触らないでよ…)

男看「頭も動いてんのかな?つーか死んでるみてーじゃんウケる」

唯(…………酷い)

男看「よし終わった失礼しました~」

唯(死んでるなんて…酷いよ…)


唯(はぁ…憂やみんなはまだかなぁ)

ガチャ

唯(う、憂?)

唯ママ「唯来たわよ」

唯(お母さんだぁ!)

唯パパ「元気か?」

唯(うわぁ~い!お父さんも来た!)


            • 3時間後

唯ママ「それじゃあ…また来るわね」

唯パパ「あぁ…元気でな」

唯(えーまだ行かないで!)

唯ママ「それじゃあバイバイ」

唯パパ「…またな」

ガチャバタン


それから一時間、私は憂達を待ち続けた。

外から聞こえる鳥のさえずりを数えながら、ずっと待ち続けた。

唯(まだかなぁ……)

ガチャ

憂「お姉ちゃんおまたせ!」

唯(憂!やっと来てくれた!)


唯(それにみんなも!)

澪「元気か?唯」

唯(うん!)

律「久しぶりだな!」

唯(りっちゃん久しぶり!)

紬「私ずっと会いたかったわぁ~」

唯(私もずっとムギちゃんに会いたかった!)

梓「……先輩」ウルッ

唯(あぁ…泣かないでねあずにゃん)

和「騒がしくなると思うけど我慢してね唯」

唯(騒がしいのが好きだから別にいいよ!)

唯(はぁ………テレパシーが使えたらなぁ)


律「あ!…そういえば唯!聞いてよ」

唯(なになに?)

律「今日またさぁ澪がみんな見ていない時に猫ミミをつけ……いだっ!」スパン

澪「そ…それを言うなよ律!」

紬「あら…でもとても可愛いかったのよ唯ちゃん」

唯(そうなんだ!見てみたいなぁ…)

和「アハハハ本当見ていて面白いわね」

梓「唯先輩もきっと…笑っていますよ」

唯(うん、とても面白いよあずにゃん…面白いんだけど声を出して笑いたいよ…頬をグイッって上げて口を開いてアハハハって笑いたい…)

唯(笑えないってツライなぁ…)


和「そういえば唯、今日はみんなでお金を出しあってお花を買って来たの」

唯(お花?)

澪「あぁ…とっても可愛い花なんだぞ」

唯(ほぇ~見てみたいな!)

憂「今、見せてあげるよほら!」

唯(わぁぁぁ!本当に可愛いよみんな!)

憂「ここに飾っておくねお姉ちゃん」

紬「ちなみにスノードロップって花なのよ」

梓「名前まで可愛いですよね」

唯(みんな…みんな本当にありがとう!!)


唯(本当に可愛いなぁ…スーちゃんと名付けよう!)

律「あ…あと唯コレもここに置いとくな!」

唯(ギ…ギー太ぁ!)

澪「どうだ?久しぶりに見る自分のギターは」

唯(可愛いよ!みんな本当にありがとう!)

憂「お姉ちゃん凄く喜んでますよ!表情は変わって無いけど私にはわかります!」

和「そうね…私も長い付き合いだから分かるわ」

唯(憂と和ちゃん流石!)


それから私は今日、学校であった楽しい事をみんなから聞いた。

とても、楽しそうだった。

こんなに、私も会話に入りたいと心から思った事は無い。

りっちゃんがボケて澪ちゃんがツッコンで…ムギちゃんが二人を見てニッコリ微笑んでる姿を見てりっちゃんがツッコンで。

それを見ている和ちゃんやあずにゃん、憂が大笑いして。

私もボケたい突っ込まれたい笑いたい。

唯(私も笑いたいよぉ…)


澪「それじゃあ唯、残念だけど私達帰るから…」

律「またな!」

和「えぇ…また明日も必ず来るわ」

梓「唯先輩さようなら」

紬「今日はとても楽しかったわ~唯ちゃんの元気な姿が見れたし…また明日も来るからね」

一人一人私の手を握り一言ずつ言ってから帰って行った。

憂「みんな帰っちゃったねでも明日も来るってよかったねお姉ちゃん!」

唯(うん…そうだね憂)


憂「ねぇ…お姉ちゃん」

唯(なぁに?)

憂「あのね…私とカレー作る約束覚えてる?」

唯(……………うん)

憂「私は忘れ無いよ…お姉ちゃんの病気治ったらカレー作ろうね」

唯(………うん)

憂「お姉ちゃん!」ギュッ

唯(う………憂…)

憂「大好きだから…お姉ちゃんの事大好きだから!」ポロポロ

唯(………私もだよ)


ガラッ

さわ子「失礼しまーす」

唯(さ、さわちゃん!)

憂「……先生」グスッ

さわ子「…邪魔だったかしら?」

憂「い…いえ、これは目薬で…あの、二人で話してて下さい!お姉ちゃんも嬉しいだろうし…」フキフキ

さわ子「いや…いいのよ?私が出て行っても」

憂「いえ、せっかく来ていただいたのに…それじゃあ私少し散歩してきますね」タッタッタッタッ

さわ子「泣いてたわよねぇ…」


さわ子「そういえば唯ちゃんごめんなさいねみんなと来れなくて」

唯(ううん…いいよ、あ!さわちゃん髪にゴミが付いてる)

さわ子「でも本当にいい妹を持ったわね」

唯(教えてあげたいなぁ~)

さわ子「……私あまり口が上手い方じゃないけど」

唯(……………)

さわ子「唯ちゃんのギター私もう一回聞きたいの……だから頑張ってね」

唯(さわちゃん……)

さわ子「照れくさいな…それじゃあまたね唯ちゃん」

唯(えー…もう帰るの?)

さわ子「また来るからね」

ガラッバタン


憂「さわ子先生帰ったみたいだね」

唯(あ…憂!)

憂「あの…お姉ちゃん私、そろそろ…帰るよ」

唯(うん……仕方ないよね…)

憂「明日の朝またくるからね…」

唯(うん、さようなら)

憂「さようならお姉ちゃん」

ガチャバタン


唯(はぁ…また一人かぁ…)

唯(でも私は一人じゃない憂やみんながいる…)

唯(側にいてくれないと寂しいけど私は一人じゃないんだ)

唯(………みんながくれたスーちゃん大事にしなきゃ!)


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最終更新:2010年05月11日 23:17