和「それより澪あの事を言わないとダメなんじゃないの?」

澪「…………あぁ」

紬「…………」

律「部長の私が言うよ」

唯(あの事?)

律「唯あのな放課後ティータイムは解散したんだ」

唯(…………え?)

律「………ごめんな」

唯(う…嘘だよ!)


唯(う……嘘だよ)

梓「……………」

澪「私と律以外はなみんな別々の大学に行って…練習出来る時間が無かったんだ会う時間も無かったんだ…」

唯(せめて…一言私に言ってよ!)

律「ごめんな…唯に黙って勝手に…解散して」

唯(……………)ツー

憂「お姉ちゃん…」

和「…………泣かないで唯」


唯(……私の病気が直ったら…みんなと1番最初に練習したいと思ったのに…)

律「ごめん唯」

紬「ごめんなさい」

唯(…………みんなが私の病室に揃って来たのはこれを話す為だったんだね)

梓「唯先輩すみません」

澪「ごめんね…唯」

唯(…謝ら無くていいよ…きっと私が病気じゃなくても…解散してたと思うから…きっとそうだよ)


ずっと私は考えていた。
この病気が直ったらまずは何をするか。
憂と一緒にカレーを作るあずにゃんに抱き着くギー太を弾く和ちゃんと一緒にアイスを食べる…みんなとバンドの練習をする。
その事を想像するだけで楽しかった。
もしかしたらもう二度とみんなとバンドの練習が出来無いのかもしれない。
きっとそうだよ…ムギちゃんが言ってたように。
私達はいずれ会わなくなるんだよ…。


澪「もし治ったら…制服のポケット見てくれ…」

唯(……これから10年…いや5年経っても)

律「治るように毎日祈ってるからな」

唯(私達は会え無くなるんだ…)

和「ずっと…待ってるから」

唯(……放課後ティータイムだって解散したんだよ)

梓「楽しみにしてます」

唯(きっと…来なくなるんだよ…)

紬「希望を捨てちゃダメよ唯ちゃん」

唯(…………そうだよ……嫌だよぉ嫌だよぉ)


―――スノードロップは枯れた…私の希望も枯れてしまった。
みんなが病室に来なくなってから5年が経った。
最後に来たのは確か5年前だったよね?あんまり覚えて無いや。
放課後ティータイムが解散した事を知らされてから10経った。
今は憂とお父さんやお母さんしか来ていない。
もう病気が治るとも思っていない―――


憂「お姉ちゃん31歳の誕生日おめでとう」

クラッカーの音が病室に鳴り響く。

唯(ありがとう憂)

憂も30歳まだまだ高校生の時より綺麗になっている。

唯(工事…やってるのかなうるさいね)

憂「今日は仕事も休んだしずっと入れるよ!」

唯(お父さんとお母さんは来ないんだね…私を見捨てたんだよね多分)


唯(憂も会社の人とかと遊びに行けばいいのに私みたいな人形と誕生日会するよりよっぽど楽しいよ)

憂「お姉ちゃんいいな~全然老けてないんだもん私なんか目尻に小皺ができて大変なんだ」

唯(ずっと動いて無いんだから老け無いんじゃないかな?…多分そうだと思う)


憂「お姉ちゃん…いつ病気治るんだろうね」

唯(もう…いいよ…治らないんだよ)

憂「………もしかして明日治ったりするかもしれないし希望を捨てたらダメだよね」

唯(………………)

憂「きっと治るよ!」

唯(はぁ…………)


奇跡何て起こらないし私は希望も捨てた。
ただ…一つ気になる事がある。
憂が何かを隠してるそんな気がする。
私の病室にいる時たまに少し泣きそうな表情を見せる。
私の事じゃ無い多分、他の事で泣きそうになってるんだと思う。



唯(…………本当に何を隠しているのか気になるよ憂)

憂「あ………電話だごめんねお姉ちゃん席を外すから少し待っててね」

唯(…………うん)

憂「すぐ戻ってくるからね」

ガチャバタン


憂「うん…まだ言ってない…」

憂「言えるわけ無いよ!お姉ちゃん…ショック受けるよ…」

憂「………うん、でも言えない」

憂「お姉ちゃんの涙なんか見たく無いもん!」

憂「……私はまだ大丈夫だから…うん来月に会社辞めるつもりだから」

憂「バイバイ…」


憂「えへへ…ごめんね」

唯(大丈夫だよ)

憂「……えと、少しタバコ吸ってくるね」

唯(…辞めなきゃダメだよ早死にするよ)

憂「ごめんね…」

ガチャバタン


憂「…おまたせお姉ちゃん」

唯(うん)

憂「今日は私ここに泊まるね」

唯(ありがとう憂)

憂「今日は誕生日だしね…楽しもうよ」

唯(うん…そうだね)



憂「くぅ…くぅ…」

唯(いつの間にか寝てる…)

唯(……今日は楽しむんじゃ無かったの?)

憂「くぅ…くぅ…」

唯(可愛いな憂は…)

憂「お姉ちゃんだぁい好き」

唯(アハハハ………私も大好きだよ憂)

おばさん看護士「あら憂ちゃん寝てるわね」

唯(うん、起こさないであげて…)

おば看「……おこさない方がいいわね唯ちゃんも寝ましょうね」

唯(………うん)

おば看「おやすみなさい」



―――それから一ヶ月経った。
憂が仕事を辞めた事を聞かされた。
それとしばらく私の所にこれない事も聞かされた。
でも、みんなの様に別れを告げない別れ方じゃない。
必ず来ると言っていた。
私は憂が言ったこの言葉を信じる―――


唯(はぁ……憂は何で仕事辞めちゃったのかな?)

唯(私に隠し事をしているよ絶対にそうだよ…)

唯(あれから一ヶ月来て無いな憂…)

唯(一人は馴れてたつもりだけど…やっぱり毎日来てた憂がいないと寂しいな)


唯(憂が来れ無くなってから今日で三ヶ月目か…)

唯(お父さんやお母さんも憂の事に関しては何も言わないし)

唯(憂の事にもあまり関心が無いのかな…?)

唯(元々、私達をほったらかして旅行へ行ってるような親だし…)

唯(あの頃は親に対して何も思わ無かったけど)


唯(今日で四ヶ月目か…もう夕方だし今日は来ないのかな…)

唯(まさか…このまま…いや憂は来るよきっと来るよ)

唯(でも…まさか事故で弾かれて死んだとか…アハハまさかね)


唯(今日も憂は来ないね…夜だし)

唯(はぁ…一日一日が何時も以上に長く感じるよ)

ガチャ

唯(看護士が来た…もう寝よう)

憂「お姉ちゃん……」

唯(………憂!!!!)


憂「お姉ちゃん来れなくてごめんね!」ギュッ

唯(うん…大丈夫だよ大丈夫だよ憂!)

憂「四ヶ月も待たせてごめんね……会いたかったよお姉ちゃん」

唯(私も…私もだよ憂)

憂「お姉ちゃん…暖かい」

唯(憂も暖かいよ…私も憂をギュッって抱きしめたい)



―――それから五年。
私は夢を見ていた。
怖い夢みんながいなくなる夢を見ていた。
みんなとは長い時間会っていないけど忘れた事なんか無い。
そして今日を私は忘れ無い―――


澪「じゃあな唯」

唯(待ってよ澪ちゃん)

律「じゃあな唯もう会え無いと思うから」

唯(りっちゃん!!)

体が動か無い…とてもリアルな夢だ。

梓「唯先輩さようなら……」

唯(嫌だよぉ…行かないで)

紬「…ごめんね唯ちゃん」

唯(………嫌だよぉ)

和「さようなら唯」

唯(和ちゃんも…行かないでよ!)

さわ子「バイバイ唯ちゃん」

唯(さわちゃん……みんな何処行くの…行かないでよ)


私はみんなの後ろ姿をただじっと見る事しか出来なかった。

憂「お姉ちゃん…」

唯(…憂みんな行っちゃったよぉ)

憂「ごめんね…私も行かないと」

唯(…………え?)

憂「お姉ちゃんの病室に来るのって大変なんだよ…」

唯(……ごめん憂ごめんね)

憂「……バイバイ」

唯(嫌だ…憂行かないで行かないで)

そこで私は目を覚ました。




唯「はぁはぁはぁはぁ」

唯(……嫌な夢を見たもうあんな夢見たく無い)

唯(………憂はまだ来て無いのか……)

唯(みんな…元気にしてるかなぁ…)

唯「…………はぁ」

私は自分の体の異変に気が付いた。

唯「……あ……あぁぁ」

声が…出る。


唯「あ…あぁ」

手が動く。

唯「……どっちが夢なのかな?」

足も頭も目も体が…動く。

唯「…………夢だよね」

ガチャ

憂「お姉ちゃんおはよう!」

唯「う、憂……」

憂「…………え?」


憂「そ、空耳だよね」

唯「憂!!」

憂「お姉ちゃん…そんなまさか……お姉ちゃん!」ギュッ

唯「憂…憂!!!」ギュッ

大丈夫だ今度は憂を抱きしめられる。

憂「夢じゃないよね?」

唯「そうだったら神様を恨むよ」

憂「………お姉ちゃん」

唯「なに?」

憂「私…ずっとこうしたかった」


それから二ヶ月のリハビリを経て私は長い間お世話になった病院を退院する事になった。
医者も何故私が目覚めたのかわからないらしい、奇跡と呼んでいた。
とにかく…私は家に帰って憂とカレーを作る事で頭がいっぱいだった。



唯「ふわぁ~帰って来たぁ~」

憂「全然変わって無いでしょう?」

唯「うん!………会話してるよね」

憂「ちゃんと会話してるよ」

唯「私、自分の部屋見て来るね!」

憂「うん!私は台所で待ってるからね」

唯「うん!」


唯「……ギー太!」

唯「全然変わって無いなぁ…制服もちゃんとある」

唯「……えへへ」

唯「私…笑える…笑えるよ!」

憂「お姉ちゃんまだー?」

唯「待っててー」

唯「このやりとりも……新鮮だなぁ」



唯「お待たせ憂!」

憂「けほっ…けほっ…お姉ちゃんたらはしゃいじゃって」

唯「憂、咳してたけど大丈夫?」

憂「大丈夫だよ!ほらカレー作ろうよ」

唯「うん!」


憂「お姉ちゃん玉ネギ切り終わった」

唯「うぅ…目がヒリヒリするよ」

憂「もう!私が切るから人参お願いね」

唯「うん!」


唯「出来た!!」

憂「うん!美味しそうだね」

唯「さぁ~ていただきますか」

憂「うん!いただきます」

唯「いただきます!」


唯「わぁ!美味しいねコレ」モグモグ

憂「本当に?よかった!私も食べよ!」

唯「ちょっと待って!私が食べさせてあげる!」

憂「本当に?」

唯「うん!あーんして」

憂「あーん」


唯「美味しい?」

憂「うん!お姉ちゃんから食べさせて貰ったから二倍美味しいよ!」モグモグ

唯「えへへありがとう」

憂「私もお姉ちゃんに食べさせてあげるよ」

唯「うん!あーん」

憂「美味しい?」

唯「憂に食べさせてもらったから二倍美味しいよ!」

憂「私と同じ事言ってるね!」

唯「だって本当なんだもん」

憂「ありがとうお姉ちゃん」


唯「ふわぁ~」

憂「お姉ちゃん眠いの?」

唯「う、うんいつもこの時間に寝てたから…」

憂「じゃあ寝ようか一緒に」

唯「一緒に

憂「うん!」

唯「わかった!」


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最終更新:2010年05月11日 23:21