――3年教室――

律「澪ー! 宿題見してー」

澪「またやってこなかったのか」

和「いい加減自分の力でやりなさいよ……」

紬「まあまあまあまあ」

唯(4回……)

ドア「ニコ」

さわ子「ホームルーム始めるわよー」

姫子「平沢さん、先生来たよ」

唯「そうだね! 今日の連絡事項はなにかな!」

姫子(テンション高いなー)

さわ子「今日の連絡事項は一つよ。軽音部の子たちは野球の
準備をしなさい。以上」

澪律紬唯「……はい?」


律「ちょっと待った! どうして野球なんだ!」

さわ子「試合をするからに決まってるじゃない」

澪「どこと!?」

さわ子「神奈川の明訓高校よ」

澪「甲子園常連校じゃないですか!」

さわ子「あら。よく知ってるわね。だったら話は早いわ」

紬唯「?」

さわ子「1ヵ月後よ」

唯「なにが?」

さわ子「試合」

律「やらないって言ったら?」

さわ子「その話はする必要はないわよ。だって――あなたたちは断れない
のだから」

澪「なにかあるんですね……。こうなったらやるしかないのか……」

紬「楽しそうー」

さわ子「オーケーね。それじゃあ、放課後にグラウンドよ!」



――放課後のグラウンド――

さわ子「遅い!」

律「いやなものはいやだからしょうがない!」

澪「先生が早すぎるんですよ」

さわ子「あらそう。……それはそうと、練習するわよ!」

紬「わーい!」

唯「ムギちゃん。野球初めて?」

紬「うん! 一回だけ見たことあるけど、やってみたかったの!」

さわ子「さすがムギちゃんね! 澪ちゃんもりっちゃんもノリなさい!」

律「えー」

さわ子「……あれ?」

澪「どうしたんですか?」

さわ子「野球って、何人でやるんだっけ?」

唯「あ」


さわ子「番号!」

唯「1!」

紬「2!」

律「……3」

澪「……4」

さわ子「梓ちゃんは!?」

律「逃げました」

さわ子「捕まえてきなさい!」

律「よっしゃ!」

さわ子「逃げたら、わかってるわよね」

律「畜生!」

地面「ぴゅー」

澪(帰りたい)

さわ子「りっちゃんが梓ちゃんを捕まえに行ってる間に、メンバーが足りない
という問題について話しましょう」


澪「諦めればいいんじゃ……」

さわ子「却下」

唯「人数の多い部活に託す!」

さわ子「あなたも実はノッてなかったのね。却下」

紬「憂ちゃんたちを助っ人に呼ぶ!」

さわ子「それよ!」

唯「憂……野球するのかなー」

澪「憂ちゃんだけじゃあまだ足りないよな」

さわ子「あなたたち! 用意しなさい! 三日以内に!」

唯「ええー」

紬「ワクワクしてきますわー」



――そのころ律は――

律「こらあああああああああ!!!! 待てえええええええええ!!!」

梓「いやあああああああああああああああああ!!!!」

律「野球するぞおおおおおおおおおお!!!!」

梓「ノオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

律「そもそもどうしてお前だけ逃げたんだああああああああああ!!!」

梓「知りませんンンンンンン!!!」

律「先輩が大変な目にあってるんだぞおおおおおおおおおお!!!!」

梓「行ったら私も大変な目にいいいいいいいいいいいい!!!!!!」

律「待てええええええええええええ!!!」

梓「きゃあああああああああああああああああああああ!!!!」

通行人「うそだろ……。あれ、女の子? 速すぎだろ」

律「梓あああああああああああああああ!!!!」

梓「うわあああああああああああああああ!!!!」

通行人「あ、髪長いのが捕まった」



――平沢宅――

唯「ういー」

憂「どうしたの?」

唯「野球、することになったの」

憂「あー。梓ちゃんがものすごい嫌がってたね」

唯「あずにゃんったら、一人だけ逃げちゃってさー」

憂「律さん、足速いんだね」

唯「そうだよ。体力測定でもぶっちぎりで、いつも運動部に勧誘されてるもん」

憂「お姉ちゃんだって負けてないよ! 可愛いもん!」

唯(?)

唯「それはいいけど……メンバー。足りないんだぁ」

憂「そうなんだ。軽音部じゃあ5人だもんね」

唯「それで……憂もやる? 野球」

憂「やるよ。お姉ちゃん見れるし」

唯「即答!?」



――田井中宅――

律「困ったなー。ホントに野球やるのか?」

律「あ、唯からメール」

律「へえ。憂ちゃん、やるんだ。これで6人だな」

律「あと3人か……」

律「集まらなきゃいいのに」

律「ドラム、叩きたいなー」

雑誌「タカタカタカカ」

聡「姉ちゃんうるさい」

律「うっせ」

律「……ハァ」



――次の日の朝。グラウンド――

さわ子「さて! 梓ちゃんと憂ちゃんが加わって、6人になったわね!」

紬「あと3人ですね!」

律「それ、私が昨日呟いたんだが」

澪「なんだそれ」

さわ子「残りのメンバーにアテはないの?」

梓「一応、心当たりがあります」

憂「あ、私も」

さわ子「じゃあ、その子を入れて7人ね。あとは――」

唯「あ! 私、あと2人ならアテがあるよ!」

さわ子「そうね! じゃあ今日中に9人集めるわよ!」

紬「おー!」

澪「……」



――2年教室――

梓憂「ねえ、純(ちゃん)」

純「お断りします」

憂「まだ何も言ってないよ!」

純「またあの怪しげな部活の怪しげな活動に巻き込む気でしょ!」

梓「純の中で軽音部ってどんな部活なの!?」

純「そりゃあ……ねえ?」

憂「と、とにかく私たちと野球しようよ!」

純(野球というと……ドラマチックチック止められそうにない。止めたいと思わ
ない)

憂「……純ちゃん?」

純(私が活躍→憂が私に惚れる→憂とイチャつける→結婚)

梓「純ー」

純「しょうがないなー。今回だけだよ!」

憂「やった! 純ちゃん、ありがとう!」

純「グヘヘ……」



――3年教室――

唯「和ちゃん! 野球しよう!」

和「なんでよ」

唯「えとえと……。そうだ! 野球しようよ!」

和「え?」

唯「……和ちゃん好きー」

和「……」

澪「あ、あれが作戦か?」

律「完ッ全に喋りながら考えてるな」

澪「作戦があるから任せてって言ってたの、唯なのに」

唯「和ちゃーん。野球ー」

和(考えてみれば、高校生活で私は特にこれといって何かをしたわけで
はなかったわ。生徒会だって、いってしまえば、先生の言うことをただ実行
しているに過ぎなかった。それになにより――)

和「唯の胸が当たってるという、この事実が私を野球へと駆り立てるわ」

澪「はい?」


律「2年の純って子が入ってくれるみたいだな」

紬「あと1人ね!」

澪「誰か心当たりないか?」

唯「澪ちゃんは?」

澪「……」

律(やべ、唯のやつ地雷踏んだぞ)

澪「……心当たりなんか……」

唯「うわ! ごめんね澪ちゃん!」

律(天然な唯と繊細で神経質な澪。こいつらって人間的な性質は合わない
んだろうなぁ……)

姫子(軽音部って、どうしていつもコントしてるんだろ……)



先生「で、あるからして――」

唯(あと一人かー)

姫子「……」

唯(そういえば、特に意識したことないけど、隣の人……立花さんってどん
な人なんだろ……)

姫子「……」

唯(すごい可愛いなぁ。そうだ、立花さんが野球やってくれるかも!)

唯(でもでも! 私、ちょっと人見知りするし……変な子って思われたくないも
ん)

姫子(視線を感じる……)

唯「た、たた、たたた」

先生「安土桃山時代の武将で、のちに筑後柳河藩の初代藩主となったの
は――」

唯「立花さん!!!!」

姫子「うわ!」

先生「平沢、正解だ」




――休み時間――

唯「立花さんー。ごめんね……」

姫子「いいって。ちょっとびっくりしたけどね」


姫子「?」

唯(まじまじ見たことなかったけど、ホントに可愛いなぁ。よぉし)

唯「立花さん! 私たちと野球してください!」

姫子「昨日言ってたアレのこと? いいけど、私でいいの?」

唯「立花さんがいいんです!」

姫子「そっか。じゃあ、私も参加させてもらおうかな。……あと、平沢さんの
こと、唯って呼んでいい?」

唯「うん! じゃあ、私も姫ちゃんって呼ぶね!」

姫子「よろしくね」

和(新たなライバル?)



――放課後グラウンド――

さわ子「全員集合!」

さわ子「なんだかんだで一日で集めたわね!」

律(三日かけると、試合までかなりかかるもんな)

さわ子「ほらりっちゃん。余計なこと考えない!」

さわ子「まずはポジションよ! 適性だとかを考える時間なんてないの!」

梓「一か月しかありませんしね」

さわ子「とはいえ、ある程度はみんなの力が見たいから、今日の練習終わり
にポジションを発表するわ!」

憂「じゃあ、今日はポジションを決めるための練習ですね」

さわ子「さすがは憂ちゃん。ああ、それと、澪ちゃんはピッチャー。りっちゃ
んはキャッチャーで決ってるから」

律「なんでなんだよ!」

さわ子「バッテリーは夫婦だからよ。リズム隊も夫婦でしょ」

澪(ピッチャー……一番目立つ……ピッチャー?)

唯「あ。澪ちゃんが倒れた」


さわ子「それじゃあまずはノックするわよ!」

姫子「おねがいしまーす」

さわ子(へえ、立花さんだっけ? そういえばあの子、体力測定でも結構
いい感じだったわね)

カン、バシ、カン、バシ。

姫子「ありがとうございましたー」

さわ子「次は憂ちゃんよ!」

憂「はーい!」

バット「キン!」

憂「よいしょっと」

バット「カキン!」

憂「ていや!」

さわ子(ホント、この子はなにやってもすごいわね)

律「そうして、一通りノックが終わったのであった」

澪「野球の描写は難しいな。って、私たちは誰に話してるんだ?」



――練習終了――

さわ子「解説役が欲しい!」

純「だから誰に話してるんですか?」

梓「バキの説明係りの重要性を身に染みてるんだよ」

憂「私たちじゃあねえ……」

さわ子「……と。つまらないことを口走ったわ。みんな! ポジションを
決めたわよ!」

唯「ごくり」

紬「わくわくするわね」

和「ピッチャーとキャッチャーは決まってるのよね」

姫子「秋山さんと田井中さんでしょ?」

律「私たちのことも名前で呼んでくれると嬉しいな。友達だもん」

澪「そ、そうです。いや、そうだね。そうだな!」

さわ子「それじゃ、発表するわよ!」


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最終更新:2010年05月15日 02:57