桑田「・・・」
律「が・・学校に三日間も来なくて・・連絡も取れなくて・・・それで何してるのかと思ったらスタジオに篭ってたって・・そんな・・心配・・心配するじゃんかよぉ・・心配したんだぞぉ・・何か一言連絡くれれば良かったじゃんかぁ・・ぐすっ・・・くわっちょぉ・・」
唯「りっちゃん・・・」
桑田「・・・そうだな、律。ごめんな。」
律「うるさい、バカ、バカァ・・・」
梓「律先輩が一番心配してたんですよ?」
桑田「律・・・」
律「・・・」グスグス
桑田(ここは律を慰めないと・・教師らしく・・・えっと、教師らしい慰め方は・・)
桑田「律・・ごめんな。」ギュ
桑田「お前の言う通り、連絡くらい・・・でも、悲しくなったらいつでもこの胸に飛び込んでおいで。」
律「な、な、な・・・」プルプル
桑田「ん?」(決まった・・照れてるな?)
律「な に し や が ん だ ぁ ぁ - ! !」パァァン!
桑田「どびゅう!!」
唯(このりッちゃんの‘パアアン!’っていう音。)
澪(これはビンタの音ではありません。」
紬(桑田先生のセクハラに激昂したりっちゃんの拳・・・)
梓(それが音速を超えた音なんです・・・)
桑田「ほ、本当に学校来れなくなっちゃうよ?大怪我する所だったよ?ボク・・・」
律「自業自得だ・・・!」
(ティータイム中)
さわ子「びっくりしましたよ。戻って来たら桑田先生がKOされてるんだもの。」
桑田「ええ、これが軽音楽部でKO・・なんちゃって!」
唯「あはははははははは!なにそれくわっちょおもしろーい!!」
桑田(・・・ウケた!)
唯以外(・・・・・・)
桑田(唯にだけ!極端に!)
紬「紅茶が冷めちゃったわ。」
澪「・・それで、律。」
律「ん。」
澪「桑田先生に言わなきゃいけない事、あるだろ?」
律「う、うん・・・」
桑田「告白なら澪ちゃんの方が・・・好みなんだけど・・」
律「・・・」ポグ!
桑田「いふん!」
澪「こここここ告白告白告白・・・」
唯「あはは澪ちゃん顔真っ赤だよー?」
梓「最近桑田先生のセクハラが激しくなってきた気がします・・・」
律「・・・はぁ、それで、くわっちょ、話ってのは、アレだよ、アレ!」
桑田「アレ?」
律「下ネタじゃないぞ!」
桑田「何も言ってないだろぉ。」
律「・・その、コンテストの事・・・くわっちょは私達の事本気で考えてああやって言ってくれたのに、それなのにあんな言い方して・・悪かったよ・・ごめんなさい・・。」
澪「でも、私達、やっぱりコンテストに出たいんです。
唯「うん!ここにいる、軽音部のメンバーと一緒に・・!」
澪「それで・・桑田先生。」
桑田「・・・」
律「その・・協力はしてくれなくて良いから、時々練習見に来てくれたりとか・・
後、本番も見に来て欲しいんだ。」
澪「まだ、出会ってから間もないけど・・」
唯「くわっちょは、もう放課後ティータイムのメンバーなんだよ!仲間なんだよ!」
律「・・・だから、せめて一緒に・・見るだけでも、・・・そう、見ていてもらえないかな。」
桑田「・・・」
紬「桑田先生・・・」
桑田「・・・なんだ、見てるだけでいいのか?」(視姦か?)
律「・・・え?」
桑田「全く、俺が先に謝ろうと思ってたのに・・・ブツブツ」
澪「え?」
桑田「俺も、なんか否定し過ぎたよ。みんなの事、もう他人に思えなくてな。
つい、熱くなっちゃったよ。」
澪「・・・」
桑田「でも・・・あの時言った事は、俺のエゴの押し付けなんだよな・・・
自分が、駄目とわかっていながらそれに対して何も改善させようとしてなかっただけなのに、
偉そうに現実論語ってみんなの夢を奪おうとしていた。」
律「くわっちょ・・そんな事ないよ。」
桑田「実は今日は、やっぱり協力させてもらえないかと思って来たんだよ。」
梓「・・・!先生・・・!」
桑田「今更そんな事言っても駄目かもしれないけど、やっぱり・・・」
唯「駄目な訳・・・駄目な訳ないよ!くわっちょ!」
澪「そうだよ!桑田先生が協力してくれれば・・!」
紬「桑田先生に、これからの私達を見守ってもらいたいです!」
桑田「みんな・・・」
律「・・・よし!そうと決まれば、放課後ティータイム、再活動だぜ!」
全員「おー!!」
唯「・・・あ、そういえばくわっちょ。」
桑田「ん?」
唯「スタジオに篭ってたって、くわっちょ何やってたの?」
紬「そういえばそうね。」
律「なにやってたんだよー?」
桑田「あぁ・・それも言わなきゃならないな。」
澪「?なんですか?」
桑田「これ。」
梓「・・・?これ、CDですか?一体何の・・」
桑田「コンテストでやる曲って、もう決めちゃった?」
澪「いえ、まだ決定はしてないですけど・・・」
唯「文化祭とかと同じのやる感じかなぁ?」
紬「まぁ、そんな感じよね?」
桑田「実はさ、この三日間、これを作ってたんだよ。」
梓「・・・これ、ですか?」
澪「・・・先生、まさか・・」
桑田「あぁ、俺の曲、みんなにやってもらいたいと思ってスタジオに篭ってたんだよ。
俺楽譜はちゃんと書けないから耳コピしてもらう事になっちゃうけど・・」
梓「先生・・・!」
紬「凄い、桑田先生の曲を?」
桑田「ああ、もし良かったらだけど・・・」
律「そんなの・・そんなの良いに決まってるだろ!?なぁ!?みんな!」
唯「うん!」
梓「私達の為に・・先生・・」ウルウル
澪「うん、やろう!みんな!」
紬「やりましょう!」
律「よっしゃ!じゃあ聞いてみようぜー!」カチャカチャ
全員「・・・」
律「スタート!」ピッ
‘女呼んで揉んで抱いていい気持ちー♪’
梓「・・・」
澪「・・・」
律「・・・」
紬「・・・」
唯「あははー♪なんか面白い曲―♪」
さわ子(歌謡調・・ポップ・・?・・・いえ・・この歌詞は・・ロックだわ・・)
桑田「・・あ、しまった、この曲は息抜きで録っちゃったヤツで・・・」
律「そんなもん一曲目に入れておくなよ!」
桑田「いや、息抜きは大事だぞ。ヌくのは大事。ヌくのは。」
澪「女・・呼んで・・抱いて・・揉んで・・・あははははははは」
梓「み、澪先輩!大丈夫ですか!?」
唯「あははは!私も息抜き好きだよー!」
桑田「お、唯ちゃん一緒にヌく?」
唯「うん!抜こう抜こうー!」
桑田「じゃあまずおじさんのから・・・」
律「ドルァ!」ドギュ!
桑田「でふん!」
律「・・・それで?二曲目はまともな曲なんだろうな?」
桑田「いだだだだ・・・あぁ、二曲目が本番。」
さわ子(一曲目は前戯だったのね)
梓「はぁ・・・じゃあ、聞きましょうか。」
律「次はまともな曲なんだろうなぁ、全く・・・」ポチッ
澪「・・・!」
紬「・・・まぁ・・」
梓(こ、これ、本当にさっきの曲と同じ人が作った曲なの!?)
唯「綺麗な曲―・・・」
澪(桑田先生の歌声・・そういえば初めて聞いたけど・・・)
律(しゃがれ声で何言ってるかよくわからないのに・・何だろう、この感じ・・)
さわ子(絶対にこの綺麗な曲調と合わないような声なのに・・この組み合わせしかないってくらいに調和してる・・)
澪「・・・あ。」
唯「いつの間にか最後まで聞いちゃってた・・あれ?みんなも?」
律「・・・あ、あぁ、なんか聞き入ってたみたいだ・・」
梓「・・・はっ、本当だ、終わってる。」
紬「素敵な曲・・」
さわ子(本当、何者なのかしらこの人・・・)
桑田「新しく書き下ろした曲ではないんだけどさ、前に作った曲をHTT仕様に編曲してみたんだけど・・」
唯「・・・良い!凄く良いよ!くわっちょ!」
梓「はい!なんか、上手く言葉が見つからないですけど・・!」
紬「うん・・」
律「とにかく!最高だよ!くわっちょ!」
桑田「そうか、良かった。」
澪「で・・でも、私達に上手く演奏出来るかな・・こんな凄い曲・・」
梓「・・それは・・・」
桑田「出来るさ。」唯「出来るよ!」
桑田「あ。」唯「あ。」
桑田「・・・はっは、大丈夫。みんななら出来る。・・ちゃんと練習すればな。」
唯「うん!そうだよ!みんな!練習しよう!」
紬「うん・・・!」
梓「そうですね、どっち道、この曲ができないようでは優勝なんて出来ません!」
澪「みんな・・・・うん・・そうだな・・!」
律「よし!じゃあ早速練習始めようぜ!」
全員「おー!」
律「目指すはコンテスト優勝!」
全員「おぉー!!」
コンテストへ向けた練習が始まる前に迎えた、大きな問題。
それを乗り越えた放課後ティータイムにはより強い結束が結ばれた。
そして。
桑田は正真正銘、名実共に放課後ティータイムのメンバーになったのだった。
(一ヵ月後、練習中)
桑田「律!またドラム走ってるぞ!周りをもっとよく見ろ!バンマスなんだから!」
律「おう!」
桑田「あずにゃんはプレイが堅実過ぎる!その歳で小さくまとまるな!」
梓「はい!」
コンテストを一ヵ月後に控え、練習には一層熱が入っている。
みんなみるみる腕を上げて行く。若さゆえの伸び白。
桑田はそれを目の当たりにし、
そんな彼女達と活動できる事を誇らしくさえ思うようになっていた。
紬「みんなー!お茶が入ったわよ。」
桑田の方針は単純だった。練習をする時は一気に。
その前後は必ずこうして雑談の時間を取る。
‘結束力’という面でこのメンバーにもはや心配は要らないのだが、
それでもやはりこういう時間は必要だと桑田は考える。
紬「今日はういろうでーす♪」
桑田「おお!名古屋名物!」
決してお菓子とお茶が目当てな訳ではない・・・
そう自分に言い聞かせながら、桑田は主に唯と律と三人でういろうを奪い合うのだった。
(桑田自宅)
充実。
思えば、元の世界での活動も、充実はしていたのかもしれない。
日々仕事に追われ、人の目に寝る時間すら奪われる。
桑田はそう考えた。
今、自分にとっての音楽は仕事ではない。だが、趣味とも違う。・・もっと不確かで、しかし絶対的な物。
カテゴライズが変わっただけで、
音楽とはここまで印象が変わってしまう物なのかと桑田は驚いていた。
放課後ティータイム。
この一ヶ月で、彼女達は一気に上手くなった。
元々非凡な物を持っていた事に加えて、
今は桑田の指導により知識が技量も伴い始めている。
(・・・優勝、してしまうかもしれない。)
この世界のガールズバンドがどの程度のレベルなのか、
それは詳しくわからないが、
少なくとも自分の世界であったなら彼女達を放っておくプロデューサーはなかなかいないだろう。
稚拙な部分も多いが、それを補って余りある長所。
そして各魅力の絶対値の高さは桑田の目から見てもバカに出来ない。
しかし。
やはり桑田はどうしてもメジャーに行った後の彼女達を憂いてしまう。
実際、桑田はメジャーに上がった後、
現実を突きつけられた夢の死骸をいくつも目にしてきているのだ。
(それが、ここに来た理由のもう一つ。)
桑田「!」
まただ。
また、何かの声が聞こえた。
今度ははっきり、鮮明に・・。
桑田(・・・理由?)
この世界に来させられた事に、何かしらの意図があるのだろうか。
そんな月9ドラマのような考えが脳裏を過ぎる。
桑田(そう言えば、ここに来る前は音楽の楽しみ方なんて忘れてたけど・・
ここに来てからはそれも忘れるくらい毎日が楽しいよな・・・。)
桑田(・・・!)
桑田(ここに来た理由・・・・・?)
桑田(・・・なんか・・モヤっとした物が・・・喉に何か痞えているような・・
なんだ、この感覚は・・)
(理由・・・新しい、若い力を守る事・・・それに気付く事・・・机の上ではなく、互いに楽器を持ちながら、共に新しい世界を作り出せる存在・・)
桑田(・・・)
(それが誰なのか・・・)
桑田(・・・)
漠然と、霞ながらではあるが、桑田は自分が何故この状況に置かれる事になったのか、
何の為にここにいるのか・・・理解する寸前の所まで来ていた。
桑田(・・・しかし・・・・。)
それを理解したら、取り返しのつかない事になってしまうのではないか。
何となく、しかし強烈に、桑田はそう思った。
桑田「・・今はみんなの事だけを・・・」
そう呟くと、桑田は頭まで布団を被り眠りに落ちるのだった。
(一週間後、練習中)
ジャジャ、ジャーン!
唯「ふうー!」
梓「今、凄くいい感じでした!」
澪「あぁ!まさかこんなに早くこの曲が出来るようになるなんて・・!」
律「くわっちょ!どうだった!?」
桑田「・・・・ん!?あ、あぁ・・」
桑田は正直驚いていた。
もちろん、演奏出来るようになるとは思っていた。
曲も原曲より簡単なアレンジにしてはいるのだが・・
桑田(それにしたって、元はプロの、それも有能なサポメン仕様に作った曲だぞ・・)
単純なコピーをしているだけだったなら、そうは驚かない。
しかし、彼女達が演奏するとどうだろう。まるで彼女達の曲なのではないかという錯覚まで起きてくる。
桑田(・・こりゃ、優勝しちまうだろうな・・よっぽどの事がない限り・・・)
最終更新:2010年05月17日 23:14