りっちゃんも同じ様に話しを信じてくれなかったけど澪ちゃんが信じてくれた…今日はりっちゃんを監視すると言っていた。

唯「あずにゃんを…助けなきゃ…」

憂「梓がどうかしたの!?」

唯「あずにゃんが危ないの!!だから…助けなきゃあずにゃんの家に向かわなきゃ…」

憂「何で危ないの?」

唯「夢を見たの!予知夢ずっと見続けているんだよ!きっと今日も予知夢だよ!だからあずにゃんが…」

憂「お、お姉ちゃん…………外に出るの?」

唯「うん…早くあずにゃんの家に行かないと…死んじゃう…」

憂「わかった…私も行くよ…」

唯「信じてくれるの?」

憂「うん、それに危ないからね…私も行くよ…」

唯「ありがとう!!早く向かおうよ!」

憂「うん!」

私達は家を出て、走ってあずにゃんの家に向かった。
あずにゃんが外に出る前に家に着かないと。

憂「着いたよ!!」

唯「う、うん……」

心臓がバクバクと動いている。
どうか…あずにゃんがいますように。
私は祈りながらインターホンを押した。

唯「……………」

憂「………出ないね」

唯「電話…電話かけてみるよ!」


唯「出ない…出ないよぉ……」

憂「………………」

唯「あずにゃん…ひぐっ…うぅぅ…嫌だよぉ」

泣きじゃくる私を憂はそっと頭を撫でてくれた。

憂「お姉ちゃん…梓はどうやって死ぬか分かる?もしかしたら居場所が分かるかも…」

唯「うぅぅ……バラバラになるんだよぉ…体がバラバラに…そんなの嫌だよぉ…」

憂「お願いもっと…思い出して………」


私は今日見た夢を思いだす…。
何故かバラバラになって宙を舞うあずにゃん。
車に弾かれたのかも何故バラバラになったのかも分からない。
………………そうだ。

唯「確か…駅員さんの声が聞こえた…白線までお下がり下さいって…」

憂「電車…この近くに駅があったはずだよ!!早く行こうよ!」

唯「うん!!」


……

梓「ふわぁ~こう天気がいいと眠いわね~」

純「本当だね~」

梓「電車来るまで後5分だね~」

梓が後ろを振り向いて言った。
後ろには純と男が並んでいる。
梓は男と目が合い慌てて目を逸らす。
男は死んだ魚の目をしている。


梓(怖い人だなぁ……)

純もそう思ったらしく耳元で気持ち悪いと梓に言った。

「まもなく電車がまいります白線までお下がり下さい」

梓(よかった…もうすぐ来る…)

線路を見ると向こうから徐々に電車が迫って来る。


純「ちょっ…何するんですか!!」

男は純を押しのけ梓に迫る。

梓「……………え?」

男は気持ち悪い笑みを浮かべ梓のツインテールの髪を引っ張る。

梓「きゃっ!!や…やめ辞めて…誰か助けて!」

電車が近くなって来た。


男は無言で梓の髪を引っ張りズルズルとホームへ向かう。

梓「誰かぁぁぁ!!助けて!!!嫌ああああ!」

他の人達はただア然と梓と男を見ている。
抵抗しようにも梓の力じゃ歯がたたない。

梓「いやあああああ」

電車が迫る…もう梓との距離も近い。
梓の体に強い衝撃が走った。


憂が男に体当たりをして男と梓は横に倒れた。

唯「はぁはぁはぁ……」

よかった…間に合った。

唯「だ、誰かこの人を捕まえて下さい!早く!!」

駅員が慌てて男を取り押さえる。
男は未だに暴れている。

梓「憂…唯先輩…うぇぇぇ怖かったよぉぉ」

あずにゃんが泣いて私に抱き着いて来た。

唯「もう…大丈夫だからね大丈夫」

私はあずにゃんの頭を撫でた。

憂「純も安心して…」

純「う、うん……」

よかった…本当に安心した…。
私はあずにゃんと一緒にその場に座り込んだ…。

唯「つ、疲れたよぉ…」



夕方、私達はあずにゃんの家にいた。
予知夢の事もあずにゃんに一通り話し信じてくれた。

梓「予知夢何て信じられないよね…憂」

憂「う、うん…信じられない」

唯「でも…無事でよかったよ…これからは私の言う通りにしてね」

梓「は、はい…」

コーヒーを飲んで一息付くと電話がかかって来た。
さわちゃんからだ。

唯「はい…さわちゃん?」

さわ子『今、澪ちゃんとりっちゃんの親子さんから電話かかって来てね』

唯「は、はい…?」

さわ子『二人が車に弾かれたらしいの……』

唯「え…………?」

さわ子『………どうして立て続けに軽音部のメンバーだけ事故に合うのよ……』

唯「いや…先生………えーと…嘘だよね?」

さわ子『いくら私でもこんな趣味の悪い冗談言わないわよ…』


唯「………嘘だよ…だってりっちゃんと澪ちゃんは私がちゃんと伝えて」

さわ子『二人の親子さんに詳しく聞くとレフェティーフェアをやっている楽器店に行く途中で事故に合ったらしいの…』

唯「…だ………大丈夫なの?」

さわ子『大丈夫じゃないわ…でも凄い事故だったらしいわよ…でも奇跡よ』

唯「………なんで奇跡なの?」

さわ子『大きな巻き込み事故に二人は巻き込まれてね……不幸中の幸、澪ちゃんは腕を骨折…そしてりっちゃんは右腕を失うだけで済んだの』

唯「………………」

梓「唯先輩どーしたんですか?」

唯「さわちゃん切るね……」

さわ子『えぇ…さようなら…ツライと思うけど頑張ってね』

唯「うん…………」

澪ちゃんを信じていたのに………いや、わかっていたのに二人の所に行かなかった私のせいだ。


梓「どーしたんですか…?」

……夢と違う。
いや…一概にそうは言えないのかもしれない。
私は二人が車に弾かれる所だけしか夢に見ていない。

梓「ゆ、唯先輩!!!!」

唯「うわっ……どーしたの?」


梓「何があったんですか?」

唯「えーと………澪ちゃんとりっちゃんが車に弾かれたらしいの……」

梓「そ、そんな……澪先輩と律先輩が………」

憂「………………」

泣いているあずにゃんを私はそっと抱きしめた。
二人を守れなかった…私も罪悪感を感じて泣いた。


あずにゃんと別れ…帰り道。
私と憂は会話をせずにただひたすらに家へと向かって歩いていた。

憂「…………待って」

憂が口き言った。
私は立ち止まり憂を見る。

憂「今日のご飯の材料買わないと…」

唯「そうなんだ……私先に帰ってるからね」

憂「お姉ちゃんも付いて来て……一人は嫌だよぉ」

唯「わかった……」


この日から一ヶ月経った。
私は毎日のようにみんなのお見送りに行く。
澪ちゃんやムギちゃんは元気そうだったけど。
りっちゃんは……ドラムが叩けないと言っていた。
その言葉を聞いて私の胸は張り裂けそうだった。
私が………悪い。
澪ちゃんに頼った私が全て悪いんだ。



そして…私は毎日のように夢を見る。
毎日、毎日毎日毎日あずにゃんが死ぬ夢だ。
私は毎日毎日毎日毎日毎日毎日あずにゃんを助ける。
毎日毎日毎日毎日…もう夢なんか見たく無い。
頭も最近おかしくなって来ている。



今日が学校だと思ったら休み明日の天気は晴れだと思ったら明後日の天気は雨休みだと思ったら部活。
医者にも相談したが原因が分から無いらしい。
ただ私の精神状態が異常だと言う事だけしか聞かされなかった。
私は…私は…どうすればいいの?
今日もあずにゃんが死ぬ夢をノートに書く。
それ以外の夢もノートに書く。


唯「うん…あずにゃん気をつけてね……うん、学校休むからバイバイ」

ため息を付く……今は何時だろう。
わからない…確かなのは朝だと言う事だ。
最近目の隈も酷い…ろくに寝て無いからだと思う。

憂「お姉ちゃん今日も学校休むんだね…」

憂が扉越しに話しかけて来た。

唯「う、うん……」

憂「じゃあ私も今日休むから……何かあったら言ってね」

私が学校を休むと憂も一緒に休んでくれる。
心配しないで行けばいいのに……。



次の日。
また…あずにゃんが死ぬ夢だ。
電話であずにゃんに何に気をつけるか伝え私は制服に着替える。
今日は学校に行こう…単位が取れないから。

唯「憂…今日私学校に行くから……」

憂「う、うん…それじゃあ一緒に行こう」

唯「う、うん…行ってきます」

憂「行ってきます…」


学校に付いて教室に行き窓の外を見た。

姫子「平沢さん元気無いね…大丈夫?」

隣の席の立花さんが話しかけてくる。

唯「う、うん…大丈夫だよ」

無理矢理、笑顔を作り彼女に言うと机に俯せる。
少し寝よう……今日はあずにゃんが死ぬ夢も見たしたいした夢は見ないだろう。


梓『………今日、唯先輩が行ってた事は確か…火に気をつけろだったよね…』

梓『今日は理科の授業で火を扱う実験するし…それから家のガスの元栓も閉めてあるし大丈夫だよね…』

これは……夢だ私は夢を見ている。

梓『外に…出ていいのかなぁ?大丈夫だよね…近くの自販機に行くだけだから…』

しかも…こんなに詳しく見た事なんか無い…。

梓『………大丈夫だよね…自販機に行くぐらい…いってきます…』


梓『はぁ…いい天気だなぁ…』

あずにゃんは歩き出す。
回りには誰もいないが…少し遠くからトラックが迫っている。

梓『もう…9時か…学校に行きたいなぁ…』

あずにゃん気付いて…。

梓『………あった…たまに飲みたくなるんだよねコーラ』

急に今まで見てた視点が切り替わりトラック側から見た視点になる。
…………寝てる。
運転手が寝ている!!!

梓『………え?』

あずにゃんが気付いた時には遅かった。
トラックがあずにゃんに迫り…………。
轟音がした…そして私は目が覚めた。


唯「はぁはぁはぁ………………」

私は跳び起き辺りを見る。

さわ子「どーしたの?唯ちゃん」

唯「……さわちゃん今何時!?」

さわ子「今は………8時56分だけど……」

一気に血の気が引くのがわかった。
早く電話を………。

唯「すいません…あずにゃんに電話かけます!」


唯「出ない…出ない出ない出ない…」

ケータイの時間を見る。
8時59分………ダメだ……もう間に合わ無い。

唯「……うぅぅ…ひっぐ…嫌だよぉ…嫌だよぉ………」


学校の9時を知らせるチャイムが鳴った………。
私はただ泣く事しか出来なかった。
翌日………あずにゃんが死んだ事を軽音部のみんなに言った。
結局…みんなを救えなかった。




あずにゃんが死んで一ヶ月経った。
私は学校で一人ただぼーっとしていた。
あれから…予知夢は見なくなった。
ムギちゃんは学校に来るようになったが…二人はまだ入院中。

紬「…唯ちゃん大丈夫?」

唯「いいや……元気じゃないよ…」

紬「早退したらどう?先生には私から言っておくから…ね?」

唯「うん……」

未だに…未だに…夢を見る。
予知夢じゃない…あずにゃんが死ぬ夢だ。
繰り返し繰り返し繰り返し……。
私は荷物をまとめ学校を出る。


唯「もう…死にたい…」

澪ちゃんやムギちゃんを骨折させたのは私だ…。
りっちゃんをドラムが叩けない体にしたのは私だ…。
あずにゃんを殺したのは私だ…。
何もかも…私のせいだ。
私は猫が弾かれた横断歩道を渡る。


道端には弔いのつもりが猫缶が置いてある。

唯「……………ん?」

声が聞こえた……憂の声だ…。

憂「お姉ちゃん!!!!危ない!!」

唯「え……………」

気付いた時には遅かった。
まだ死にたく無い…お母さん…お父さん…澪ちゃん…ムギちゃん…りっちゃん…憂。
走馬灯のように家族や友達の顔が脳裏に浮かび。
強い衝撃と共に消えた。


憂「お姉ちゃん……嫌ああああああ!!!!」

遅かった…遅かった…。

憂「嫌だ…お姉ちゃん…嫌だよぉ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」

遅かった…………。

憂「………お姉ちゃん」

車に弾かれたお姉ちゃんは……もう生きていない。
一目見れば……分かるぐらいに酷かった…。

せっかく…予知夢を見ていなかったのに…梓が死んだ日から見なくなっていたのに……。





最終更新:2010年05月18日 00:32