今日は一人でお留守番です
お姉ちゃんは軽音部のみなさんとお出掛けです
最近お姉ちゃんは休日に軽音部のみなさんと遊ぶことが多くなりました、時期的に言うと軽音部に梓ちゃんが入ってからですね
寂しい私は買い物に行くことにしました
―――
憂「今日の晩御飯何にしようかな」
憂「お姉ちゃんの好きなハンバーグにしよう」
そう考えたとき私以外の人と笑って遊んでるお姉ちゃんの姿が頭に浮かんだ
憂「……」
何とも言い難い感情がわいてきた、しかしそれでも私はハンバーグの具材をカゴに入れた
お姉ちゃんの笑顔を見たいから……
憂「……そうだ、アイスも買っておかないと」
―――
こうして私はお店を出た
――――
買った物を持って家へ帰っていると、前方から何やら悲しそうな猫の鳴き声が聞こえてきた
ふと見てみるとそこには3匹の猫がいた
どうやらさっきの鳴き声は2匹の猫の後ろをついて歩く猫のもののようだった
必死に二匹の猫に対して『にゃあ』と言う猫に見向きもせずに二匹の猫は歩いていく
後ろを歩く猫の鳴き声はどんどん小さくなっていき、歩く速さも遅くなっていった
そして諦めたかのように立ち止まり、鳴くのをやめた
悲哀な雰囲気を出してたたずむその猫を見て私は自分も胸が痛くなった
同情心からくるものではないみたい
二匹の猫に置いていかれて寂しそうにしている姿と今の自分が重なって見えた
私はその猫に近づいていった
そして気がついたらその猫に話しかけていた
憂「君も寂しいんだよね」
その猫の頭を撫でながらそう言った
その猫は悲しそうな目でこちらを向いた
憂「あの2匹の猫に置いていかれて寂しいんだよね」
―ナデナデ
猫「にゃぁ……」
憂「よしよし」ナデナデ
猫「にゃあ!」
憂「ふふ、可愛い」ナデナデ
憂「私も1人で寂しいの……最近お姉ちゃんは軽音部のみなさんのことばっかりだし……」
猫「……にゃあ?」
憂「でもお姉ちゃんがそれで笑っていられるなら私はそれでいいかなって……」グスッ
猫「にゃぁ……」
憂「……」グスン
涙が頬を伝って落ちていった、その先には……
憂「いけない、涙が猫さんにかかっちゃった」
憂「……ごめんね」ダキッ
猫「……にゃあ」
―ペロッ、ペロペロ
憂「えっ!?」
猫「……」ペロッ
憂「涙……拭いてくれてるんだ……」
猫「にゃあ!」
憂「ありがとね」
憂「何だか元気出てきた」
憂「そうだ、お礼に温かいミルクあげるから家にこない?」
猫「にゃあ!」
憂「喜んでくれてるのかな……」
憂「それじゃあ、行こっか」ニコッ
猫「にゃあ!」
――――
憂「どう、おいしい?」
猫「……」ペロペロ
憂「ふふ、舐めるのに夢中みたい」
憂「………」
―ペロッ
憂「ほぇっ!?」
猫「みゃぁ……」
憂「もうなくなっちゃったんだ……おかわりいる?」
猫「にゃあ!」
憂「可愛いなぁ」ナデナデ
その猫はまるで人の言葉がわかるようだった、動物ってみんなこうなのかな
――――
――憂の部屋
憂「ここが私の部屋だよ」
猫「……にゃあ」
憂「いつもここで1人で寂しくしてるんだ……」
猫「にゃぁ……」ペロペロ
憂「そうだね、今は君がいるもんね」
憂「………」
憂「ねぇ、ずっとここにいない?」
猫「……にゃ?」
憂「1人で寂しいもの同士で仲良くしよ」ニコッ
猫「にゃあ、にゃあ!」
今の私にはそばにいてくれる人が必要……そう思った
憂「ありがと」ニコッ
猫「にゃあ!」
憂「そうだ、じゃあ名前つけないと」
憂「うーん、どんなのがいいかな……」
憂「……ゆいにゃんってのはどうかな」
猫「みゃあ!」
憂「そっかぁ、気に入ってくれたんだ……」
憂「……そうだ、そうと決まれば色々と買わないと」
そう私はこんな時にも真っ先にお姉ちゃんを思い浮かべてしまった
――――
猫「にゃあ、にゃ、にゃぁ」
憂「よしよし」ナデナデ
憂「ふふ、こんな休日久しぶり」
憂「でもそろそろ晩御飯の準備しないと」
憂「ゆいにゃんは危ないから連れていけないかな」
憂「それに……お姉ちゃんにはゆいにゃんのことを知られたくないし」
お姉ちゃんがゆいにゃんのことを知ったら自分のもののように可愛がって一人占めするだろう
それだけは嫌だ
お姉ちゃんにはゆいにゃんや私の気持ちなんかわからない
そんな人にゆいにゃんを可愛がらせたくない
憂「ゆいにゃん、私は晩御飯の準備してくるね」
猫「にゃあ?」
憂「だからこの部屋で1人で待っててね」
猫「にゃ、にゃあー」ダキッ
憂「ごめんね、ほらご飯だよ」
猫「にゃあ!」モグモグ
憂「ふふ、お願いなんだけど、この部屋にいるときは静かにしといてくれる」
猫「にゃぁ……?」
憂「お姉ちゃんにゆいにゃんがバレると困るの」
猫「みゃあ……?」
憂「だからね、ご飯が終わったらあそこで寝てて」
猫「にゃぁ……」
憂「猫サイズのベッドを用意したの、きっと気持ちいいと思うよ」
猫「……」テクテク
―モフッ
猫「にゃぁ、にゃ、にゃあ!」
憂「気に入ってくれた?」
猫「にゃあ!」
憂「よかった、じゃあ静かにしててね」
猫「みゃあ!」
――――
憂「ふー、やっと終わったよ」
憂「あとはお姉ちゃんが帰ってきてからかな」
憂「ゆいにゃん、寂しがってるかな」
―パタン
猫「……」スースー
憂「寝てる……可愛いなぁ」ツンツン
猫「ふにゃ……」ゴロッ
憂「ふふ」
―バタン
唯「ういー、お腹すいたよー」
憂「あっ、お姉ちゃんだ……」
――――
唯「おいしいー」モグモグ
憂「そっかぁ、よかった」
唯「今日ね、あずにゃんがね~~」
憂「へぇ、そうなんだ……」
唯「それでね~~」
憂「そっかぁ……」
唯「うん、凄く楽しかったんだー」
憂「……よかったね、お姉ちゃん」
唯「うん」ニコニコ
憂「……」
最近はお姉ちゃんとの食事が楽しくない……お姉ちゃんは梓ちゃんや軽音部のみなさんの話ばかりだ
昔は心の底からそんな話を笑って聞いてあげられたのに……今はそれができない……
――――
――唯の部屋
唯「あっ、メールがきてる、あずにゃんからだ」
唯「『今日は楽しかったです、今度はお泊まりなんかしたいです』かぁ……」
唯「『いいね、やろうやろう』っと送信」
―ガタン
唯「おぉ、ギー太が倒れちゃった」
唯「よいしょっと、そうだ、毎日の日課をしないと……澪ちゃんに怒られちゃうよ」
――――
――憂の部屋
憂「ゆいにゃん、大丈夫?」
猫「にゃぁ!」
憂「お利口に静かにしてたんだねぇ、よしゃし」ナデナデ
猫「にゃぁ、にゃあ」スリスリ
憂「可愛いなぁ、今日は一緒に寝よっか」
猫「にゃあ!」
憂「ふふ、ありがとう」
ゆいにゃんに救われた気がする
そばにいてくれること、こんな風に私を必要としてくれることがなんだか懐かしい……
――――
――次の日
唯「憂、まだー」
憂「ごめん、お姉ちゃん、ちょっと先に行ってて」
唯「ほーい」
―――
憂「ゆいにゃん、ここにご飯とミルク置いとくね」
猫「……」ムニャ
憂「私が帰ってくるまではこの部屋にいてね」
猫「……にゃ」スースー
憂「いってくるね」ナデナデ
――――
唯「それでねー……」
憂「そうなんだ」
今日もいつも通りのお姉ちゃん
無邪気な笑顔で私に話しかけてくる、気持ちがほんわかする
梓ちゃんや軽音部のみなさんの話じゃないからかな……こんな時間がいつもだったらいいのに……
そんなことを考えていると聞き慣れた声が耳に入ってきた
梓「唯せんぱーい」
唯「あっ、あずにゃんだ、おはよう」
梓「おはようございます、唯先輩」
梓「憂、おはよう」
憂「う、うん、おはよう……」
ぎこちない挨拶になってしまった……そんなことを考えてちょっと俯いていると、お姉ちゃんと梓ちゃんが楽しそうに話し始めていた
唯「それでね……」アハハ
梓「そうなんですか……」アハハ
会話に入れないなぁ……そうして視線を先に移すと、昨日の2匹の猫がいた
唯「あっ、猫さんだー」
梓「本当ですね」
どうやらお姉ちゃん達も気づいたようだった
2匹の猫は昨日と同じように仲良くしていた
まるで……
唯「あの猫さん達仲が凄くいいんだねー、まるで私とあずにゃんみたい」
梓「もう、唯先輩///」
唯「えへへ」
お姉ちゃんの言葉が胸に突き刺さる……
私はそのまま会話に入ることなく無言で歩き続けた
――――
可愛いし、とってもいい子だ
私にとっても凄く大切な子……だから憎めない
どんなに梓ちゃんがお姉ちゃんと仲良くしても、私とお姉ちゃんの時間を奪ったとしても……やっぱり憎めない
だからこそ私の中の寂しさは募るばかりだ
教師「おい、平沢!」
憂「は、はい!?」
教師「さっきから呼んでるだろうが、何ぼーっとしてるんだ、黒板の問題はやく解きなさい」
憂「すみません……」
梓「憂……」
―――
憂「………」ショボーン
梓「憂、そんなに落ち込むことないよ」
憂「梓ちゃん……ありがとう」
梓「えへへ、それにしてもどうしたの?」
憂「えっ!?」
梓「憂が授業中にぼーっとしてるなんて珍しいから」
憂「そうかな……」
梓「そうだよ、なんか悩み事でもあるの?」
憂「べ、別にそういうのじゃないよ」
梓「そっか、なら安心、でも悩み事があったらいつでめ相談してね」
憂「梓ちゃん……ありがと」
梓「いいよ、私達友達でしょ」
憂「……うん」
梓「えへへ」
梓ちゃんの優しさが心にしみる
いい意味でも悪い意味でも……
そうして私の気持ちの逃げ場がなくなっていく
――――
憂「ただいま」
猫「にゃあー!」
憂「ゆいにゃん、寂しかった?」ナデナデ
猫「にゃ、にゃぁ」
憂「えへへ」
憂「まだお姉ちゃんが帰ってくるまで大分時間があるね……」
憂「よーし、ゆいにゃん、お姉ちゃんが帰ってくるまでは家の中うろうろしていいよ」
猫「みゃあー」タタッ
憂「元気いっぱいだなぁ……」
ゆいにゃんを見て私の気持ちは和らいだ
寂しかったのはゆいにゃんじゃなくて、私の方だったのかな……
――――
猫「にゃー」ゴロゴロ
憂「ふふ、お姉ちゃんみたい」
猫「みゃあー」ガシッ
憂「あっ、私とお姉ちゃんの写真……」
憂「ゆいにゃん、これが私のお姉ちゃんなんだよ」
猫「にゃぁ」
憂「可愛いでしょ……私の自慢のお姉ちゃん……」
猫「にゃあ……」
憂「………」
猫「………」ペロッ
憂「ゆいにゃん……!?」
猫「にゃぁー」ペロペロ
憂「……ありがとう、ゆいにゃん、大丈夫だよ」ニコッ
猫「みゃぁー」スリスリ
憂「そろそろお姉ちゃんが帰ってくるから部屋に戻ろうね」ダキッ
猫「にゃあ!」
ゆいにゃんが私を舐めてきた、あの時と、ゆいにゃんの前で泣いたときと同じだ
私が悲しんでるように見えたのかな
私がお姉ちゃんの写真を見て悲しむなんて……そんなことあるわけないのに……
最終更新:2010年01月06日 01:47