――――

唯「おいしかったー、憂の料理は世界一だね」

憂「……ありがとう、お姉ちゃん」

唯「……」

憂「そうだ、お姉ちゃん、アイス食べるよね」

唯「うん」
唯「おいしいー」

憂「ふふ、よかった……」

お姉ちゃんに褒められたのに嬉しくなかった

こんなの初めてだよ……私、どうしちゃったんだろ


――――

――唯の部屋

―ジャカジャカ

唯「愛をこめてすらすらとね~~」

唯「~~つながるように~~」

唯「~~かなり本気よー」

―ジャーン

唯「やっぱり澪ちゃんの歌詞はいいなぁ」

唯「よーし、頑張るぞー」


――――

――憂の部屋

憂「おいしい?」

猫「にゃあ!」モグモグ

憂「ふふ、よかった」

憂「ゆいにゃんと一緒にいると、自然と笑顔になれるよ」

猫「にゃぁ……?」

憂「………」ダキッ

憂「ゆいにゃん、ずっと私のそばにいてね」

猫「にゃあ!」

――――

その夜、私は夢を見た

私はお姉ちゃんと笑い合っていた

それは凄く楽しい時間で私はあったかい気持ちだった

お姉ちゃんといると自然に笑顔になれたな……今の私にはできないことだ

だからわかる、これは夢だって……でももう少しこのままで……
目を覚ますとゆいにゃんが私の顔を舐めていた……

憂「……おはよう、ゆいにゃん」

猫「にゃあ!」

――――

唯「ういー、おはよう」

憂「お姉ちゃん!?」

憂「お姉ちゃんが1人で起きるなんて珍しいね」

唯「失礼な、私だってやるときはやるんだよ」

憂「そうだよね……」

憂「でもどうして早く起きたの?」

唯「今日、朝練があるんだよぉ」

憂「……そうなんだ、はい、朝ごはん」

唯「わーい、いただきまーす」

―――

唯「いってきまーす」

憂「いってらっしゃい」

憂「さてとゆいにゃんのご飯を準備してと」
憂「あれ、ゆいにゃん寝ちゃってる」

猫「……」スースー

憂「どうしよう、ミルクとかそのまま置いてても大丈夫なのかな」

憂「うーん……大丈夫だよね」

憂「ゆいにゃん、ここに置いとくね」

憂「ゆいにゃん、いってくるね」ナデナデ

――――

憂「1人で学校に行くなんて久しぶり」

けど久しぶりなんかではない気がする

最近はお姉ちゃんとの通学を楽しめていないし、だいたい途中で軽音部の誰かに会う

そこからはずっと私は1人だ

お姉ちゃん……お姉ちゃんにとって私は……

ふと顔を上げるとまたあの2匹の猫がいた

仲良くしている2匹の猫……やっぱりお姉ちゃんと私じゃない誰かの姿を重ねてしまう

――――

梓「憂、おはよう」

憂「………」

梓「憂!」

憂「……えっ、何!?」

梓「おはよう」

憂「うん、おはよう……」

梓「どうしたの憂、ぼーっとして」

憂「私ぼーっとしてた?」

梓「うん、最初に挨拶したとき何も反応しなかったじゃん」

憂「そうだっけ……ごめんね」

梓「やっぱり憂らしくないよ、なんか悩み事があるんじゃないの?」

憂「それは……」

梓「ひょっとして唯先輩のこと?」

憂「えっ……」

梓「やっぱりそうなんだ、それで唯先輩がどうしたの?」

憂「いや、その……」

梓「なになに?」

憂「今日自分1人で起きたから変だなぁって思って……」

梓「そんなこと?」

憂「……うん」

憂「だからお姉ちゃん、何かあったのかなぁ……って思って」

梓「うーん……朝もいつも通りの唯先輩だったけどね」

憂「いつも通り?」

梓「うん、元気いっぱいの」

憂「そっか……なら安心……」

梓「………」

そうだよね、お姉ちゃんにとっては私と学校行くことなんて特別なことじゃないよね

私のことを心配してくれる梓ちゃん、ごめんね、本当のことが言えなくて

でも、寂しい……なんて梓ちゃんには言えないよ

――――

――放課後

律「例のお泊まりだけど明後日は祝日だから明日しようぜ」

澪「急だな」

紬「梓ちゃん、大丈夫なの?」

梓「はい、明日は親もいませんし」

律「決まりだな、明日は梓の家でお泊まり会だ」

唯「わーい、楽しみだねぇ、あずにゃん」

梓「はい」

―――

澪「それで唯、ちゃんと毎日やってるのか?」

唯「もちろん」

律「本当かぁ?」

唯「本当だよ」

梓「まぁ、これからも続けてくださいね、軽音部のためなんですから」

唯「うん、私頑張るよ」

紬「じゃあ、頑張る唯ちゃんにはケーキのおかわり」

唯「わーい、おいしいー」モグモグ

律澪梓(本当に大丈夫かな……)

――――

憂「ゆいにゃん、ただいま」

猫「にゃあ、にゃあ!」スリスリ

憂「ふふ、いい子にしてた」ダキッ

猫「にゃあ!」ペロペロ

憂「くすぐったいよぉ」

猫「みゃあ!」ペロペロ

憂「だからくすぐったいってばぁ」

ゆいにゃん、ありがとう

ゆいにゃんのおかげでまだ自然に笑えるよ

――――

唯「おいしいー」モグモグ

憂「………」モグモグ

唯「……ういー」

憂「何?お姉ちゃん」

唯「明日あずにゃんの家に軽音部でお泊まりするんだけど、行っていい?」

憂「お泊まり……?」

唯「うん」ニコニコ

憂「………」

唯「憂?」

憂「そんなの私に許可とる必要ないでしょ……」

唯「えっ!?」

憂「………」

唯「……憂?」

憂「……だってお姉ちゃんがお姉ちゃんなんだから」

憂「梓ちゃんの家にお泊まりするねだけでいいんじゃないの」


唯「そうだよね……」

憂「うん」ニコッ

唯「………」

――――

――唯の部屋

唯「……終わったー」

唯「よーし、明日の準備しなくちゃ」
唯「これとこれと……あっ、あれを持っていかないと」
唯「よーし、終わり、これとギー太を持っていけばばっちりだね」

――――

――憂の部屋

猫「……」モグモグ

憂「おいしい?」

猫「にゃあ!」

憂「そっか……よかった……」

憂「明日お姉ちゃんは梓ちゃんの家にお泊まりなんだって……」

猫「みゃぁ……」

憂「あんなに嬉しそうな顔で……よっぽど楽しみなんだなぁ」

猫「にゃぁ」ペロペロ

憂「ゆいにゃん……」

猫「にゃ、にゃぁ」ペロペロ

憂「大丈夫だよ、泣いたりしないから」ダキッ

憂「ただ本当に1人になっちゃうなって……」

猫「にゃあ、にゃあ!」

憂「ごめん、ゆいにゃんがいるもんね、1人じゃないよね」

猫「にゃあ!」

憂「ふふ、明日は思いっきり遊ぼうね」

猫「にゃあ!」


――――

また私は夢を見ている

梓ちゃんや軽音部のみなさんと楽しく話しているお姉ちゃんを私は上から眺めている

お姉ちゃんの笑顔が私以外の人に向けられている

そんなの当たり前だってわかってる、私の思いが自分勝手だってこともわかってる

わかってるんだけど……それでも私は……

―ペロペロ

憂「……はっ!」

猫「……」ペロペロ

憂「ゆいにゃん……私、泣いてたの?」

猫「にゃぁ……」

憂「……ごめんね、心配かけて、でも大丈夫だから」

猫「みゃぁ……」


憂「お姉ちゃん、まだー」

唯「待って、ういー」

憂「どうしたの?その荷物」

唯「えへへ、学校から直接あずにゃんの家に行こうと思って」

憂「そうなんだ……」

唯「うん」ニコッ

憂「……じゃあ、行こっか」

唯「おぉー」

―――

唯「楽しみだなぁ、お泊まり」

憂「………」

唯「あずにゃんがお料理作ってくれるんだって」

憂「……そうなんだ」

唯「どんな料理か楽しみだよぉ」

憂「……梓ちゃんが作るんだからきっとおいしいよ」

唯「そうだね、楽しみー」

憂「………」

唯「あっ、猫さんだー」

またあの2匹の猫だ

でも今日はちょっと様子が違う

猫1「にゃぁ……」

猫2「しゃぁっ!」

喧嘩……してるのかな

唯「喧嘩はだめだよぉ」

猫1「にゃ!」タタッ

唯「あっ……」

猫2「………」

唯「喧嘩なんかしちゃだめだよ」ナデナデ

猫2「にゃぁ……」

昨日はあんなに仲が良さそうだったのに……そういえばお姉ちゃんが撫でてる猫、ゆいにゃんに似てるような

唯「可愛いー」グリグリ

猫2「にゃぁ……」

憂「お姉ちゃん、そろそろ行かないと遅刻するよ」

唯「あっ、本当だ、じゃあね猫さん」

猫2「みゃぁ……」

―――

憂「ほら、お姉ちゃん、急いで」

唯「待ってよぉ、荷物が重くてぇ」

憂「もう、しかたないなぁ……」

梓「唯先輩、おはようございます」

唯「おはよう、あずにゃーん」

梓「唯先輩、急がないと……ってどうしたんですかこの荷物?」

唯「うーんとねぇ、帰りに直接あずにゃんの家に行こうと思って」

梓「そうなんですか」

唯「うん、はやく行きたいから、あぁ、はやく放課後にならないかなぁ」

梓「もう、唯先輩///」

梓「あっ、荷物重たいですよね、一緒に持ちますよ」

唯「ありがとー、あずにゃん」

梓「はい///」

それは私の役目……そう思ったけど声は出なかった

でもお姉ちゃんが喜んでるならそれでいいよね


――――

この日の授業中も終始上の空だったけど当てられることはなかった

お姉ちゃんと同じように、お泊まりを楽しみにしてるんだな……とわかるくらい梓ちゃんはこの日終始にこにこしていた

私の気持ちはそれと反比例するように沈んでいった

今、お姉ちゃんの頭の中には私のことなんでこれっぽちもないんだろうな

そう考えずにはいられなかった

お姉ちゃんの隣に私は必要ないのかな……

はやくゆいにゃんに会いたいな


――――

憂「今日は1人分でいいんだ」

憂「………」

憂「そうだ、ゆいにゃんに何かおいしいものを作ってあげよう」

憂「ゆいにゃん、喜んでくれるかな」

憂「そうと決まれば、はやく買い物終わらせて家に帰らないと」

私はゆいにゃんを求めていた

いつも私のそばにいてくれる存在として

かつてお姉ちゃんがそうであったように


――――

唯「おぉー、これがあずにゃんの家かぁ」

梓「はい」

梓「先輩、私は料理するんでここらへんで待っててもらえますか」

唯「ほーい」

唯「お料理、期待してるよあずにゃん」

梓「あんまり期待されると困ります、特に憂の料理をいつも食べてる唯先輩には……」

唯「大丈夫だよ、お料理にはその人にしか出せない味っていうのが出るんだよ」

梓「唯先輩……」

唯「それに憂もあずにゃんのお料理ならきっとおいしいって言ってたよ」

梓「憂が……?」

唯「うん、だから楽しみにしてるよ」ニコッ

梓「はい」


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最終更新:2010年11月21日 21:01