鏡と言えば今では一般的な道具です
毎日朝顔を洗う時やお出かけ前の身嗜みを整える際
男性なら髭を剃る時、女性ならお化粧なんかにも使うでしょう
そんな日常的に何気なく見ている鏡ですが
古くから不思議な力を持っているとされ
古今東西係らず、呪いや魔術等オカルトな使い方もされていたようです
お祭りなんかにもよく用いられていたようで
神様、あるいは悪魔を呼ぶ際にはその通り道として機能していました
鏡は異世界に繋がる扉なのです
あなたのすぐそばにある鏡は一体何処に繋がっているのでしょう
きょうしつ!
律「…そうして入り口にした鏡を合わせ鏡で防がれたことで、
不思議な力を手にした少女は二度と現実の世界に帰れなくなりました
もう彼女は鏡の世界から出ることはできないのです
そう、永遠に……」
律「おしまいっ!」
澪「ひぃいいいいいいいいいいい!!!」ガクガクブルブル
唯「…りっちゃん、それは澪ちゃんじゃなくても怖いよ…」
紬「…私も…寒気が…」
律「ああ、私も初めて聞いた時は鳥肌がたったよ…」
澪「キコエナイキコエナイキコエナイ……」ガクガク
紬「鏡には色んなお話があるのね」
律「そうだぜ!他にも夜中2時に鏡を見ると自分の死後の顔が映るとか
死後の自分じゃなくて将来の恋人が映るとか、夜中に合わせ鏡をすれば悪魔がやってくるとか、
放課後の誰もいない部屋で1人で鏡を覗くと鏡の写った自分が出てきて鏡の中に引きずりこまれるとか!
ふと背後に視線を感じると鏡に映った自分がこっち見て笑ってる!とか 『紫の鏡』って言葉を20歳まで覚えてると不幸になるとか!」
澪「ひぃいい!!なんでそう言う事言うんだよ!!!!!!!!!」ギュッ
律「ちょっ……澪ぢゃん……苦しっ…」
唯「澪ちゃん、落ち着いて!」
澪「うぅ……ヒック」
律「泣くなよー、悪かったって」
澪「…グスッ」
紬「澪ちゃん、大丈夫よ」
唯「全部作り話だよー」
澪「…うん」
律「苦手な話して悪かった!ごめん!この通り!」
澪「……ううん、私も…ごめん…」
唯「仲直り~♪」
紬「うふふ」ニコニコ
唯「でもなんでこんな話になったんだっけ…」
律「さっき廊下で聞いて、つい話したくなってさー
なんか最近増えてるじゃん、こういう話」
紬「たぶんこの前の改装で校内に新しい鏡がたくさん設置されたから」
唯「え、そうなの?」
律「部室にも1つ来てただろ…」
唯「あ、アレかぁ!」
律(鏡が増えたから鏡の怪談が流行…なるほど…ん?)
澪「うぅ……」
律(学校中こんな話ばかりじゃ澪も参っちゃうか…あちゃー、やっちまったなぁ…)
律(…よし!)
澪「…」
律「澪、澪ー」
澪「ん?」
律「ヒゲ!」
律「…」
澪「…」
唯「…」
紬「…」
律「あ、アレ?外した?」
澪「プッ」
澪「フフッ…なんだよ、それ…フフ」
律「なっ…!もっと早く反応しろよー!
滑ったみたいだろー!」
澪「いや滑ってただろ」
唯「りっちゃん、また1人だけ…ずるいよ!」
律「へっへーん、唯ちゃんはまだまだですわねー!」
唯「むっ…私も負けないよ! ヒゲ!!」
紬「それじゃあ私も…ヒゲ!」
唯「え!?ムギちゃんも!」
澪「フフ」
律(うん、よし)
唯「次は澪ちゃんの番!」
澪「えっ…私は…」
紬「いいからいいから」
唯「澪ちゃんもやろうよー」
澪「えぇ……」
唯紬 キラキラ
澪「う…」
澪「…し、仕方ないな… 一回だけだぞ…」
澪「ヒゲ!」
ほうかご!
唯「放課後だよ!りっちゃん!部室行こう!」
律「今日はずいぶん元気だなぁ」
唯「だって今日のお菓子は…むふふ」
律「おいおい…」
唯「早く行こう!」
律「あー、この後先生に呼ばれてるんだよ 悪いけど先行っててくれるか」
唯「え、そうなの? じゃあ、澪ちゃん!」
澪「私も…今日日直だから黒板消していかないと」
唯「あれ? ム、ムギちゃん!」
紬「ごめんなさい!私も掃除当番があってその後じゃないと…」
唯「えぇえ」
唯「…じゃあ私1人?そんなぁ~…」ヘナヘナ
律「そんな大げさな…」
唯「だって~寂しいよー」グスン
澪「終わったらすぐ行くから…」
唯「それに今日は怖い話も聞いたし…」
澪「あー…」ジロッ
律「う…その…悪かったって」
紬「唯ちゃんもああ言う話は怖いのね」
唯「私だって人並みに怖がるよ!」フンスッ
澪「…そうは見えないけどな」
唯「皆寝静まる真夜中…ふと目が覚める私…
思い出すのは…昼間聞いた鏡の怪談…
ちょっとした好奇心で、合わせ鏡をすると…
そこには居並ぶたくさんの私!」
律「それは普通だ」
紬「大丈夫よ、唯ちゃん」
唯「ムギちゃん…」
紬「お菓子は逃げないから!」
律「あれ?そういう問題?」
唯「ムギちゃん、私頑張るよ!」
律澪「おい」
唯「えへへー」ニコニコ
澪「なんと言うか…」
律「単純だな…」
紬「それに梓ちゃんが先に待ってるかも」
唯「そうだね!あずにゃんいるかなぁ…」
唯「じゃ皆!先行って待ってるからねー!」
タッタッタ…
ろうか!
…タッタッタ
唯「おっ、あの後姿は…」
唯(あずにゃん!)
唯(ムフフ…ゆっくり近づいて驚かせるよ!)ソロリソロリ
…
唯(よし!このくらいの距離なら…)
唯「あっず…」
梓 クルリ
唯「にゃ…」 ピタリ
梓「…」
唯「…」
梓「こんにちは、唯先輩」
唯「はっ!……ど、どうしてわかったの?」
梓「わかりますよ…」
梓「だって…」
梓「他ならぬ唯先輩の事ですから…!」 ウルウル
唯「あ、あずにゃん…!」 キラキラ
梓「唯先輩…!」キラキラ
唯「あずにゃん…!」キラキラ
梓「と言うのは冗談で、いきなり背後の足音が消えたら誰だってわかると思います。」
唯「なっ…私を騙したのね!あずにゃん…!」 イケナイコ…
梓「あとそこの鏡にも映ってましたし、背後から忍び寄る唯先輩が」
鏡 キラリッ
唯「あっ…デヘヘ」
梓「増えましたよね、鏡」 トコトコ
鏡 キラッキラッ
唯「本当だねー、私全然気付かなかったよー」 スタスタ
梓「気付きましょうよ…」 ガクッ
鏡 キラーン
梓「なんでも『学問を勉める淑女たる桜高生徒諸君には
健やかなる学校生活を送るためにも、日々の身嗜みに気をつけて貰いたく
そのためには自分自身の目で自分を見つめて…うんぬん』
って言った意味でこれだけの鏡を設置したそうですよ」
唯「へ、へー」 プスプス…
鏡 キリッ
梓「後、いっぱい鏡を設置したのは反射を利用して先生が生徒を監視しやすくするためだ!
って純が言ってました」
唯「それは怖いね!!」
梓「でも…これだけ多いと純じゃなくてもちょっと異様に思いますよね」
梓「なんとなく誰かから見られてるような気がしますし…」
梓「あ、純と言えば…私、この後ジャズ研の手伝いを頼まれてるんです
だから部活はちょっと遅れます。それじゃあ」
唯「えぇ!!!困るよ!あずにゃん!」 ガシッ
梓「うわっ!」 ヨロッ
唯「あずにゃんまで行っちゃうと、私部室で1人なんだよ!」 ググッ
梓「手伝いって言ってもそんなに時間かかりませんし、後からちゃんと行きますから!」 ギリギリ
唯「知らないの!?あずにゃん!
放課後の誰もいないはずの部屋…
ふと背後に視線を感じると…
そこには鏡に映ったこちらを見る自分の姿が!」
梓「唯先輩、落ち着いてください それは普通です」
梓「怪談ですか」
唯「そう!」
梓「そう言えば純が同じような話してましたっけ」
梓「水に映した将来の相手の顔にカミソリを落としたら、実際に顔に傷が付いてしまうとか
『紫の鏡』の呪いは『水色の鏡』と言う言葉で相殺できるとか」
梓「後、放課後の誰もいない部屋で1人で鏡を覗くと鏡の写った自分が出てきて鏡の中に引きずりこまれるとか」
唯「そう、それだよ!あずにゃん!」
梓「ああ、部室にも鏡がありますから条件満たしちゃいますね」
唯「私怖いよあずにゃーん…お願いだから一緒に来てー」ギュー
梓「えっと…」
唯「うぅ…」ウルウル
梓「う…」
梓「唯先輩!!」
唯「は はい!!」
梓「いいですか、唯先輩」
梓「『幽霊の正体見たり枯れ尾花』」
梓「なんでも怖い怖いと思うから怖く見えちゃうんです」
梓「そんな気持ちでいるからただの枯れたススキを幽霊なんかと見間違えちゃうんですよ」
梓「さっき言った怪談も似たようなものです」
梓「『紫の鏡』を覚えてたら不幸になるとか意味がわかりませんし、
『水色の鏡』で相殺できるなんてわけがわかりません」
梓「『鏡の向こうの自分が笑い出す』なんて言うのも普通の事です
ギャルゲーしててふと画面が暗くなった瞬間に化物が写った!と思ったら
ニヤニヤしてる自分の顔だった!って言うのと同じ現象ですよ」
梓「そんな意味の無い言葉やなんでも無い事を
面白可笑しく脚色して好き勝手に怖がるから怪談なんて生まれるんです!」
梓「ですから!本当は大したことじゃないんですから、怖がる事なんてないんです!」
梓「わかりましたね!」
唯「ふぇ…は、はい!」
梓「良かった、じゃあ私はこれで」スタスタスタスタ
唯「…」ポカーン
唯「…」
唯「…」
唯「はっ!」
唯「勢いに圧倒されてあずにゃんに逃げられちゃった…」グスン
ぶしつ!
ガチャ
唯「まさかあずにゃんが私を裏切るなんて…」 ブツブツ…
唯「酷いよ!あずにゃん」 プンプン
シーン
唯「うぅ、1人だと空しい…」
鏡 キラリン
唯「あ、これかー!りっちゃんが言ってた鏡!」
鏡 キラキラ
唯「うぅ、やっぱりあんな話を聞いた後だとなんだか怪しげだよ…」
唯「はっ!いけないいけない…『幽霊も招待しておやり、カレーのちライス』だよね!」
唯「幽霊だからって怖がって仲間はずれにするのは良くないんだよ!」
鏡 …
鏡 ガタッ
唯「ひっ」 サッ
唯「な、なんか動いたっ!?」
鏡 …
唯「ききき、気のせいだよね!」『気のせいに決まってる!』
唯『「え、え?」』
唯「今の声…」
鏡『私だけじゃ…』
唯「!!」
鏡『!!』
鏡 ピカッ
唯『「わっ!!!」』
唯『「まぶしい!!?」』
最終更新:2010年05月25日 23:15