澪「やめろよー!!律ー!!」

律「傑作だったよなwwww」


唯「ねえねえ、何の話、何の話?」

律「あぁ、唯、あのさぁ…」

澪「いちいち説明しなくていい!!」

梓「私も気になります」

澪「って梓、お前までのってくるなよ!」

紬「みんなー、お茶が入ったわよー」

紬「お茶菓子もあるわよ」

唯「あ、ムギちゃん、ありがとー」

律「おっ!!いっただきーっ!!」

梓「ありがとうございます、ムギ先輩」

澪「あ…ああ、いつもすまないな」


ゴクゴク

律「ぷはーっ、で、話の続きなんだけどさぁ!」

澪「ブッ!!続くのかよ!!」

紬「まあ何の話?私も気になるわ」

律「ほらほら、オーディエンスの意見は満場一致みたいだぜ?」

律「これに答えなきゃあ、真のエンターテイナーとは言えないっしょ!!」

澪「……もういい、好きにしろ……」

唯「ごめんねー、澪ちゃん。でもここまできたら誰だって気になるよ」

律「いや、つってもたいした話じゃないんだけどさー。昔の話だよ、昔のはなし」

唯「昔?去年とか一昨年のコト?」

律「ん?いや、そーじゃなくて、小学校のころの話だよ」

梓「そういえば…先輩二人は小学校から一緒なんでしたっけ」

律「そそ。えっと、あーれは何年生のころだったけなぁ…?あんまり細かい年まではおぼえて無いんだけど」

律「ほら、そろそろ運動会の季節じゃん?それで思い出したんだよ、その年の運動会のコトを」

律「私と澪はそんとき同じクラスでさ、んで同じ競技に出たわけよ」

紬「同じ競技?リレーとか?」

律「うんや。借り物競争」

梓「…借り物競争…なんでだか分からないけど律先輩にはすごく似合ってる気がします…」

律「なんでだよ梓!いや、まぁ確かに私はソツなくこなしたんだけどな」

唯「『私は』ってことは…」

澪「……」

律「まぁ、お察しのとおりっつーか、私の後が澪の番でさ」

律「借り物をとりに行くトコまでは問題なかったんだよな。よくあるもんだったし」

唯「澪ちゃん足速いしねー」

紬「借り物はなんだったの?澪ちゃん」

澪「……メガネ」

梓「普通ですね」

律「まあ、そのへんは見物客の中から適当に見つけたワケだ。問題はその後」

律「コイツ変に真面目なのか、わざわざ借りたメガネをしっかりその場で掛けちゃってさー、視力いいのに」

律「んでしかもそれがオッサンの掛けてたかなり度が強いヤツだったんだよ」

梓「なんだか読めますね…」

律「ま、そういうこと。急に澪、千鳥足になってさぁ!ゴールとは反対側のウチらにむかって突っ込んできたんだよ!」

澪「…」プルプル

律「しかも借りたメガネがどうやら老眼鏡だったみたいで、すっげーでかい涙目の澪がパニックになってて!」

澪「も、もういいだろ!!だれにだって失敗のひとつやふたつくらいあるだろうが!!」

律「いやぁもうそんときの澪の顔が目に焼きついて忘れらんなくてさー!!」ゲラゲラ

澪「あー、もーせっかく私は忘れていたのに!律ーーーー!!」

梓「トラウマになってたんでしょうね」

紬「うふふ、たしかに場面を想像したらちょっとおかしいかも」

唯「…でもちょっとりっちゃん笑いすぎじゃないー?ほら澪ちゃん今も涙目だし」

律「はははははは…、あぁ、…わりぃわりぃ澪」クスクス

澪「……いいよ、もう」グズッ

律「……いや、ただ、たしかそんとき澪泣きながら『りつー』ってわたしのこと呼んでてさ」

澪「ん…!」

律「あー私けっこー信頼されてんだなぁって思ってすぐ駆け寄ったの、そういうコトも含めてよく憶えてんだけどね」

澪「…そうだったか?私はそんなこと言ったおぼえはないけどなっ…」

紬「あらあらあらあら」ポワワワ

梓(!?ムギ先輩かがやいてる!?)

唯「なーんだ、やっぱり二人は昔からなかよしさんなんだねえ」ニヤニヤ

澪「…別にそんなんじゃないよ、ま、まったく」

梓「でも確かに、そんな昔から思い出を共有してるのは、ちょっとうらやましいかもです」

唯「…あれあれ、あずにゃん、さびしがってる?」

梓「へっ?いえ、そういうつもりじゃ…」

唯「あずにゃん!なにもうらやましがることはないんだよ!」

唯「私たちもこれから負けないくらいの思い出を作っていけばいいじゃないかー!」ギュッ

梓「にゃっ!!?ちょ、ちょっと、急にひっつかないでくださいっ!!」

唯「なになに、てれるな、てれるなー」ピトピト

梓「ちがいます照れてるんじゃありませんっ!」ゴロゴロ

紬「あらあらうふふ」ポワワンヌ

澪(なんかムギの様子が…)

律「…まあ、実際なんだかんだでこの5人になってからはまだ1,2年しかたってないもんな」

唯「みんなでもっともっと思い出をつくっていけたらいいね!」

澪「…なんかクサいぞ、唯」

唯「ええ!!わたしクサい!?ちゃんとお風呂入ったんだけどなー」クンクン

澪「いやそうじゃなくて…」

律「でもそうだなー、うちらすでに結構いろんなことやってきたよなー」

紬「そうね、いろんなところにも行ったものね」

梓「私はやっぱり最初に見たみなさんのライブが忘れられないです」

律「あー、えと、なんの曲やったんだっけ、ふわふわ時間か?」

梓「ちがいます、ホッチキスです」

律「あー、そかそか、たしか唯が歌の入り飛ばしちゃったんだよな」

唯「あったねえ、そんなことも」

紬「あの時は澪ちゃんがフォローしてくれたのよね」

澪「唯のやつ、完全に 歌詞忘れた! って顔してたからな」

唯「リフに集中しすぎてねえー、でへへ、そのせつはお世話になりやした」

律「あったなー、そんなアクシデントも」

律「でも、アクシデントつったらやっぱあれだろ、澪の」

澪「おい…」






律「なー、澪はおぼえてるかー?」ニヤニヤ

澪「…さぁな、なにがだ?」

律「パンツ」

澪「なっ…!」

梓「急にどうしたんですか、律さん」

唯「そうだよ律ちゃん、はしたないよー」

紬「一応食事中よー?」

梓「っていうかどういう意味なんですか、いきなり口をついたらパンツって」

梓「…ん、澪さん?」

澪「…///」シューーーー

梓(煙吹いてる…)

律「あれ?梓は知らないんだっけ」

紬「たしか、一番最初の学園祭のライブの時だったんじゃないかしら」

唯「てことは、あずにゃんはまだ入部してないころかー」

唯「あ!思い出した。私が声出せなくなっちゃって、それで澪ちゃんがボーカルやってくれたんだよね」

律「そうそう!そんときそんとき」

梓「ん…なんだか録画された映像は見たことがあるような気もしますけど…」

梓「あっ…、なんだかわかったような…前も律さん話してた…」

梓「…思い出しました。…てことは、また澪さんが恥ずかしがる話じゃないですか…」ジトッ

澪「そうだぞ…さっきの運動会の話をまたするし…律なんてだいきらいだっ!!」キッ

律「いやいや!そんな目でみんなよ!ほほえましい思い出話じゃん!」

律「ほらほらこれこれ、最近部屋掃除してたら出てきたんだよ」ゴソゴソ

唯「あ!生徒会の活動記録!」

紬「そっか律ちゃんの家にあったんだ」

澪「いまさら出してくんなよそんなもの!!」

律「おいおい、そんなコト言うなよー、私たちの青春の大事な記録じゃん?」

律「あとで誰かんちで見て、盛大に懐かしもうぜぇー!ひさびさに全員そろってるんるんだし!」

唯「澪ちゃんにはわるいかもだけど、たしかにすっごく見たい」

紬「私もー」

澪「……まあな、懐かしいのは確かだ…他の映像なら私も見たいし…」

澪「ただし、あのシーン絶対とばすぞ!!」

律「はーいはい、わかってますーって」

澪(ホントかなぁ…)

梓「律さんはほんと澪さんをからかうの好きですよね…」

律「ん?なんか言ったか」

梓「いえなにも」

唯「あ、ポテト来た」

律「お、ほんとだほんとだー、食おうぜ」

澪「何人分だ、コレ?」

紬「一応追加で五人分頼んでおいたわ」

澪「ちょっと多くないか」

律「いーじゃん細かいことは、みんなで食おうぜ」ザバッ

唯「あ、その食べ方なつかしー!」

紬「ほんとだぁ」

澪「学生時代を思い出すな」

律「まぁ、いまとなっちゃ遠い思い出だなー」

律「誰かとファーストフードなんて最近はめったに来ないし」

紬「でも私は初めて律ちゃんと澪ちゃんと一緒に食べたときのこと、よく憶えてるわ」

澪「けいおん部結成のころか」

律「おーあったなーそんなころもー」バクバク

澪「…お前はちっとも変わってないけどな」

梓「でも、よくこうやって部のメンバーでご飯たべましたよね」

唯「部活帰りなんかにねぇ」バクバク

紬「毎日部室でお茶もしてたのにね」バクバク

梓「今にして思うと、私たち食べてばっかりだったかもしれませんね」バクバク

澪(過去形…?)

梓「……ただ、あのころはそれが当たり前で…なんだかずっと続くような気がしてました」

律「……なんだよー梓ー、ちょっぴりおセンチか?」

梓「い、いえっ、ちがいます」

唯「…あずにゃん」

唯「あっ、そういえばムギちゃん、トンちゃんは元気?」

唯「最近会ってなかったからさ、今度会ったときに聞こうって思ってたんだ」

紬「ああ…それが…」

紬「…最近ちょっと元気がないみたいなの」

梓「えっ!大丈夫なんですか?」

紬「うん…、別に病気とかってわけじゃないんだけど…お医者さまが言うには寿命だろうって…」

唯「寿命!?」

澪「…そっか」

律「うーむ…悲しいが…そうだな、よく考えたらもうだいぶトシだもんなぁ…トンちゃんも」

唯「そんな!!亀は一万年生きるんじゃ!?」

唯「…ハッ!、ってことは私たちが出会ったあの時点でトンちゃん既に9990歳ってこと!?」

梓「センパイ…」

唯「あずにゃんよりも先輩だったんだ…トンさん…」

唯「ううー…でもトンさん死んじゃうのやだよー…」ボロボロ

律「…こいつもこいつで全然かわんねーな…」

梓「同感です…」

紬「…あのね、みんな、これから家に来れない?」

唯「えっ!」

澪「いいのか?ムギ」

紬「うん、トンちゃんにみんなの顔見せてあげたいし…」

律「そうだな、梓にとっては唯一の後輩だもんなー」

梓「そ、それは……でもそうですね、私もトンちゃんの顔見たいです」

澪「確かにトンちゃんとこのままサヨナラするのは嫌だしな…」

律「まぁ、最初から誰かんちで晩飯の予定だったからムギさえ良けりゃさ」

律「…行くんなら、しめっぽくなってもしょうがねーし、ちゃんと明るい顔みせてやろーぜっ!」

唯「わっ、なんだか部長っぽい」

律「んで晩御飯はおいしいものをご馳走になる、と」

紬「それはまかせて、りっちゃん!」ニコ

梓「…さすが律先輩」ジト

律「なんだよ文句あんのかよー」

唯「まっててねっ、トンちゃんっ、あずにゃんも、ほら笑顔っ」キリッ

澪「もう、みんな騒がしいな…」

澪(…でも、なんだか学生時代に戻ったみたいだな…)

律「ま、たまにしか会えないんだし、しっかりと楽しもうぜ!」






律「しっかし、食べた食べた」

唯「満腹…もう、はいらない」

澪「私もだ…また呼んでくれた上にこんなご馳走まで、あらためてありがとう、紬」

紬「ううん、私もまたみんなと楽しい時が過ごせて嬉しいわ」

紬「トンちゃんもみんなの顔が見れるって喜んでくれてると思うし」

梓「そうだと嬉しいですね」

律「だな」

澪「…でもそういえばどうしてトンちゃんをこっちに連れてきたんだ?」

紬「ああ、それは…スッポンモドキってウミガメみたいな姿をしているでしょう?」

紬「だから生きているうちに本物の海を見せてあげたいなって思って、あの年の夏に連れてきたの」

唯「そっか…トンちゃん最後は幸せだったのかな」

梓「紬さんみたいな人にこんないい所で面倒見てもらえたんだから、幸せに決まってますよ」

唯「うん、確かにそうだね」

律「腹がこなれたら、みんなで一緒に墓参り行ってやろうな」

澪「ああ」

唯「うん…あれ?」

紬「どうしたの?」

唯「ムギちゃん、そういえばあのガレージって確か」

紬「ん?…ああ、そうよ。最後みんなで合宿で来たのときの練習場」

紬「といっても私一人ではほとんど使わないから、もう20年近くそのままになってるけど」

唯「今でも使えるの?」

紬「ええ、私は使わなくても係りの人が最低限の整備はしてるし、楽器や機材も一通りそろっているはずよ」

澪「ひょっとして、いつでも使えるようにしてくれていたのか?」

紬「うーん…特に意識していたわけではないけど…でもそうね、今日みたいな日をなんとなく期待していたのかもね」

紬「使いたいときに使えなくちゃ、って」

律「結局みんな卒業してからは、今回みたいに一緒に旅行する暇なんて無かったからな」

唯「じゃ、ちょっとお邪魔するだけしてもいいかな。ほら、あずにゃんも一緒に」

梓「あ、はいっ」

律「じゃー、私たちも」

澪「見学させてもらうか」

紬「じゃあ、開けてもらってくるわね」

ガラガラ

律「思っていた以上に物が多いな、倉庫みたい」

澪「でも、確かに楽器の位置なんかはあの日のままだ」

梓「なんとなく憶えてます、私も」

紬「スペアの楽器は棚のケースの中よ」

唯「わっ、こんなにたくさん…しかも結構なお値段の…」

澪「見てるだけでも楽しいな」

律「さすがにドラムは一セットだけかぁ…」

ゴソゴソ
カツッ

梓「ん?…これって」


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最終更新:2010年05月28日 23:16