[弁護士
田井中律刺殺]
私は車の中で何度も新聞紙の記事を読み返す。
もう、百回以上読み返しているが未だに信じられない。
車の中から外を見ると少女が五人歩いている。
笑顔で何かを話しながら。
高校時代だが私も長い距離をみんなと歩いた。
私の高校時代の思い出で1番印象深い出来事だ。
りっちゃんの葬式に行く前に私は思い出そう。
あの日の事を…。
あれは高校最後の合宿から帰るつもりだったが、前日の日にみんなが寝坊して帰る家に帰る唯一のバスに遅れてしまった。
澪「ど、どーしよう…」
律「ま、まだ夕方だしバスもう一本ぐらい来るって!」
梓「でも…バスの予定表には何も書かれてませんよ…」
唯「もう!昨日子供みたいにはしゃぐからだよ!」
澪「おまえが言うな!」
紬「ふふっ…まぁまぁまぁまぁ」
私はみんなの何時ものやり取りを見て少し笑った。
律「でも…バスが一本だけだなんて…流石田舎だな」
唯「どーやって…帰ろうか」
梓「電車とかタクシーはどうですか?」
律「この辺に駅も無いしタクシーで家に帰ったら……」
澪「お金がなぁ……」
紬「どーするの?」
律「歩くしか無いよなぁ…」
唯「ふわぁ~歩くの?此処からじゃ凄い距離だよ」
澪「一晩かけて歩いてもたどり着くかどうかだよなぁ…」
律「……あれこれ考えても仕方ないぞ!よーし歩くか!」
梓「遠足みたいに言わないで下さい…」
みんなはどうか知らないけど私は歩く事に大賛成だった。
紬「みんな歩こう…ね?」
律「……だな!よーし出発するぞ」
梓「仕方ないですね…皆さん頑張りましょう!」
唯「はぁ~い」
澪「はぁ…もうすぐ夜になるのに…」
律「大丈夫!」
私達は歩き出した。
一人一人雑談をしながら歩いた。
家までの距離は長くて不安だったけど。
私はそれ以上にこの状況が嬉しくてたまらなかった。
唯「あずにゃんアメちゃん食べなよ!」
梓「ありがとうございます」
唯「美味しい?」
梓「甘い……」
唯「ムギちゃんもアメちゃん食べる?」
紬「えぇ…いただくわ」
唯「ムギちゃん合宿楽しかったね!」
紬「うん!でも唯ちゃん家に帰るまでが合宿よ」
唯「ムギちゃん学校の先生みたいだね!」
律「確かに…ムギって子供好きそうだよな」
紬「えぇ…とっても好きよ」
梓「なんだかムギ先輩が子供と遊んでるの想像出来ますね」
澪「おぉ…本当だ簡単に想像出来る」
律「保母さんとか似合いそうだもんなムギは」
紬「わ、私が保母さん!」
唯「泣いてるあずにゃんを慰めるムギちゃん!」
梓「私は子供じゃありません!」
澪「いいんじゃないか?保母さん」
紬「でも…人の子供を預かるなんて怪我でもさせたら…」
唯「えへへ~ムギちゃんの優しさだったら大丈夫だよ」
律「……だな~優しいもんなムギは」
紬「み、みんな…」
唯「りっちゃんは……………」
律「ちょっと待て!何で黙るんだよ!」
澪「保母さんなんて似合わないよな…」
律「私も弟いるし!子供好きなんだぞ」
梓「あまり想像出来ませんね…」
澪「律は無いのか?将来の夢」
律「私は………無いな」
唯「りっちゃん頑張ってね!ニートになっちゃダメだよ」
律「おまえが1番心配なんだけどな…」
紬「でも…りっちゃんがスーツなんて着てたら何だか新鮮な感じしない?」
梓「スーツを着てる律先輩……」
律「私もスーツを着てる自分が想像出来無いかな……アハハ」
唯「落ち込むなりっちゃん隊員まだ道はあるさ!」
紬「どんな仕事がしたいの?」
律「んー…例えばパソコンをカタカターって打つより悪人をこうバサーッってそんな仕事がしたいな~」
澪「どんな仕事だよ!」
紬「だったら弁護士とかどうかしら?」
梓「異義あり!って言ってる律先輩……」
律「弁護士か…いいな!弁護士よーし弁護士になるぞ!」
唯「頑張ってね!」
澪「でも難しいんだぞ弁護士になるの」
律「ですよねー…」
紬「りっちゃんなら大丈夫よ絶対なれる!」
律「そう!私に不可能は無いのだ!」
澪「切り替え早いな…」
唯「お金持ちになって私を養ってね!」
律「おーう全員養ってやるから待ってろ!」
紬「うふふ…頑張ってね」
唯「それより…随分歩いたよね…」
澪「まだ1時間間も歩いてないぞ」
梓「本当ですか?…結構歩いたような気がしたんですけどね」
紬「たまには…いいと思うわ」
律「な…何が?」
紬「こうして…歩いて話すのも」
唯「普段はティータイムしながら話してるからね~私も何だか楽しいもん」
澪「さっき遠足って梓が言ってたけど本当にそんな感じがするよな」
紬「えぇ!」
唯「懐かし~い感じ」
律「歩いて正解だったな!」
梓「そう……なんですか?」
唯「正解だよ!」
律「でも…確実に明日は筋肉痛になるよなー」
唯「だよね、筋肉痛になるの久しぶりな感じがするから少し楽しみだな」
澪「痛いし…いい事無いぞ」
律「あ……」
唯「どーしたの?」
律「いい事思い付いたんだ!」
律「なぁなぁ澪」
澪「………ん?」
律「昨日ドラムの練習してたら手の豆が…ほら!」
澪「きゃああああ!」
律「よーしみんな!澪が怯えてるうちに走れー!」
唯「おーーー!!!!」
梓「ちょ…ちょっと待って下さい!」
澪「見えない聞こえない見えない聞こえない…」
唯「はぁはぁはぁ…」
律「余計な体力使ったな……」
梓「澪先輩置いて走ってどーするんですか!」
紬「澪ちゃーーん!」
澪「あれ?……みんな」
澪「いた……律!!」
律「追い掛けて来るぞ!みんな逃げろー!!」
唯「おーーー!!!!」
紬「おーーー!!」
梓「あ…ちょ…律先輩」
澪「律待てー!!」
律「逃げろ逃げろー」
澪「はぁはぁはぁはぁ」
律「つ…疲れた……」
梓「喉渇きました…」
紬「はい、梓ちゃんお茶よ」
梓「ありがとうございます…」
唯「次は私にも……」
紬「えぇいいわよ」
紬「さぁ!早く歩きましょう」
律「もうちょっと休ませて…」
唯「ムギちゃん…体力あるよね…」
梓「律先輩…はしゃぎ過ぎです」
律「ごめんごめん…あ、ムギお茶くれ」
紬「はい、どーぞ」
律「ありがと…」
律「よーし喉も潤ったし行くか」
梓「澪先輩、今何時ですか?」
澪「えーと…6時だな」
唯「もう6時!急ごうよ!」
紬「その前にパンがあるから食べましょう」
律「わかった!歩きながら食べようぜー」
唯「私クリームパン!」
紬「全部クリームパンよ唯ちゃん」
唯「そ、そーなんだ…」
澪「でも何でパンなんか持ってたんだ?」
紬「帰る時にお腹が空くと思って持って来たの」
唯「私もそう思ってアメちゃん持って来たんだよ!はいあずにゃんアメちゃんあげる」
梓「口の中にクリームパン入ってるから後で貰います」
律「美味いなぁ…これだけしか無いのか?」
紬「ごめんなさーい、もう無いわ」
唯「ムギちゃんは食べ無いの?」
紬「私は…あ、後から食べるの」
唯「そーなんだ~」
紬「唯ちゃんアメ貰っていい?」
唯「うん!いいよ!」
唯「ギー太重い…」
紬「少し持つわよ?」
唯「ううん…大丈夫だよ!」
紬「本当に?」
唯「うん!……あ」
紬「どーしたの?」
唯「私ムギちゃんにお金返して無いよ…」
紬「お金なんて借してた?」
唯「ギー太のだよ!」
紬「あ…あの時の?」
唯「うん!ごめんね…必ず返すから待っててね!」
紬「だ、大丈夫よ!唯ちゃん」
唯「ううん…ムギちゃんのおかげでギー太買えたんだから返さなきゃ!」
紬「わかったわ…ゆっくりでいいからね?」
唯「うん!絶対ぜっーたい返すからね!」
唯「澪ちゃん達も三人で話してるね」
紬「こうしてみると何だか夫婦みたいね~」
唯「わぁぁ!本当だぁあずにゃん子供みたい!」
紬「りっちゃんはお父さんで澪ちゃんはお母さんね!」
唯「私達も混じろうよ~」
紬「えぇ…そうね」
梓「唯先輩…」
紬「何話してるの?」
澪「次の新曲の歌詞を考えてたんだよ」
紬「タイトルは?」
澪「ほら、ムギがこの前新しく曲を作って来ただろ?」
律「ハニースイートティータイム」
唯「歌詞出来たの?」
澪「それがまだなんだ…」
澪「だからせっかくの機会だからみんなにアドバイスを聞こうと思ってな」
律「うん!うん!」
澪「後でムギや唯にも聞こうと思ってたんだ」
紬「そうだったんだ…大変だろうけど頑張ってね」
唯「何時でも力になるからね!」
澪「あぁ…ありがとう」
紬「でも…もうみんなと放課後でティータイム出来なくなるのね」
澪「卒業だからな…」
律「なーに言ってるんだよ!卒業したって大学が別々になっても出来る!」
紬「りっちゃん…」
唯「ほら!放課後ティータイムの証のキーホルダー!これさえあればみんなずっと一緒だよ!」
梓「そうですよね……そうですよね…うぅ…ひぐっ…」
唯「ど、どーしたの!!あずにゃん」
最終更新:2010年05月29日 23:41