憂「えっ?」
唯「たーべーたーいー」 ごろごろ
憂「おねえちゃん、ミント系のアイスあまり好きじゃなかったよね?」
唯「たまに食べたくなるのー」
ガパァ
憂「うーん……バニラとチョコとストロベリーと抹茶のアイスは買い置きがあるけど」
唯「抹茶きらいー」 ごろごろ
憂「おいしいのに……」
憂「普通のチョコじゃだめかな?」
唯「うー。おなかの具合はもうすでにチョコミントだよう」
憂「もう、しょうがないなあ。じゃあ、スーパー行くからついでに買ってくるね」
唯「わーい!憂だいすきー!」 ぎゅっ
憂「わはぁ!もう、おねえちゃんったらっ!」 ムハー
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ガラガラ
憂「えーと、チョコミントチョコミント……あれ?ないや」
憂「売り切れなのかな。他のスーパーに行ってみよっと」
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ガパァ ヒンヤ~リ
憂「ミントミント…やっぱりない……」
憂「いつもは買い物
リストにないから気にしてなかったけど、」
憂「これは売り切れとかじゃない……このスーパーもあのスーパーも、チョコミントアイス自体を扱ってないんだっ!」 くわっ
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フタナシ ヒヤヒヤ
憂「やっぱりない!もう4件目なのにっ!」
憂「ちょっと、そこの店員さんっ」
店員「はい、なんでしょう」
憂「責任者を呼んでくださいっ!!」
店員「は、はいっ!」
店長「チョコミントアイスですか…うちは夏にならないと仕入れないですね」
憂「そんな!どうして!?」
店長「ああいうスースーするものは、夏でないと売り上げが上がらないので…採算が合わないのですよ」
憂「そんな!もう夏はもうすぐじゃないですか!5月も終わりですよ!?」
店長「今年は特に気温が低いので、どこのスーパーも真夏になるまでは仕入れないんじゃないですかね」
憂「そんな…そんな!じゃあ、チョコミントアイスがほしい人は……
どこで買えばいいんですかああああああああああああああああああああああっ!!!!」
それは、熱い、熱い涙であった。
とぼとぼ
憂「ただいま……」 ガチャ
唯「おかえり!アイスは!?」
憂「ごめんね、おねえちゃん…。チョコミントは夏じゃないと売ってないんだって」
唯「えーっ!なんでなんでぇ!?」
憂「ごめんね、ごめんね……」
唯「ちぇー、あの口に入れた瞬間においしいんだかおいしくないんだかわからなくて頭が混乱する感じが味わいたかったのになー」 ぶすー
憂(おねえちゃん……っ)
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プルルルル ピッ
梓「はーい、憂?」
梓「珍しいね、こんな時間に。え、なに?チョコミントアイス?」
梓「チョコミントなんて、そのへんのコンビニにでも売ってるんじゃない?」
憂『売ってないのおおおおおおおおおおおおおっ!!』 ドカーン
梓「っっっっ」 キーーーン
梓「うん、うんわかった。こっちでも探してみるから…」
憂『梓ちゃん、お願い!おねえちゃん、チョコミントがなくて落ち込んでるの…』
梓「はは…憂も大変だよね。でも唯先輩もそんなことで…」
憂『……』
梓「……そんなに、ひどいの?」
憂『おねえちゃんは私を心配して気丈に振舞ってくれてるけど…食べたいものが食べられないって、すごくショックなことだから……』
梓「そっか……そうかもしれないね」
憂『だから梓ちゃん……「わーい、ストロベリーもおいしいね!」……お願いね』
プツ ツー ツー ツー
梓「……なんかアイス片手に満面の笑みを浮かべた唯先輩の姿が頭に浮かんだんだけど」
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テーテーテレレレッ テーテーテッテテ ピッ
律「はいよ。おお、梓。どしたん?」
律「は?チョコミントアイスぅ?なんだ、梓もまだまだ子供」
梓『唯先輩の話ですっ!!!』 ドカーン
律「っっっっっ」 キーン
律「なるほど、そういうわけか。確かに季節的にはまだちょっと早いけどな」
梓『律先輩のほうでも探してみてください。唯先輩、落ち込んでるみたいですから』
律「落ち込むって……ああ、まあ唯ならなぁ」
梓『まあ、すぐに見つかると思いますけどね』
律「おう、コンビニのついでにでも探してみるわ。じゃな」 ピッ
律「いちおう澪にも伝えとくか」 ピッピッ
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澪「チョコミントアイス?」
律『ああ。唯が落ち込んでるみたいでさぁ』
澪「落ち込むって…そんなにひどいのか?」
律『ほら、唯ってアイスに命かけてる所あるじゃん?にしし』
澪「そうか…そうだよな。私の方でも探してみるよ」
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ピリリリリリリ ピッ
紬「あら、澪ちゃん。……チョコミントアイス?がどうしたの?」
澪『ああ。律のいう話じゃあ、唯はそのアイスに……命をかけているらしい』
紬「命を……って、まさか!」
澪『私だって、アイスくらいでそんなこと!って思うよ!でも、でも、唯なら……万が一、ってこともあるし……』
紬「…唯ちゃん……」
紬「……わかったわ。私に任せて。澪ちゃん」
澪『ムギ!…悪いな、こんなこと頼んで』
紬「いいえ、逆にお礼を言いたいくらいよ!手配するのには少し時間がかかるかもしれないけど、
すぐにみんなにおいしいチョコミントアイスをご馳走してあげるから!」
澪『ふふっ、放課後を楽しみにしてるよ。』
紬「ええ♪」
チン
紬「斉藤」
斉藤「ここに」
紬「手の開いてる者を集めなさい。おいしいチョコミントアイスを売っているお店を探すのよッ!!」
斉藤「はっ!」
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紬「なん……ですって」
斉藤「申し訳ありません。我ら一同、力及ばず……」
紬「どういうことよ!たかがチョコミントアイスよ!?なんだったら箱ごと発注しても……」
斉藤「チョコミントアイスの生産自体が!行われていないのです…!」
紬「なっ……」 ヨロヨロ… ドッ
紬「そんな…そんな」
紬「……」
斉藤「お嬢様……」
紬「…確か…琴吹グループ傘下に、アイス製造工場があったわね」
斉藤「はっ…し、しかし、あの工場は夏場しか稼動しておらず」
紬「稼動させなさい」
斉藤「しかし!」
紬「稼動させるのよっ!!」
斉藤「……っ」
『ならぬ』
斉藤「はっ、この声は!」
紬「お父様っ!?」
ピー ガガ ザザザ
『ならぬ』
斉藤「ははーっ」
紬「なぜです、お父様っ!!」
『紬。工場を稼動するということはお前が言うほど簡単なものではない』
紬「でも!」
『人員も、物資も、電力も、様々なものが必要なのだ。アイスひとつを作るために工場を稼動させることはできない』
紬「でも、私は友達のために……!」
『大量に生産したところで、今はまだ季節ではない。製品が売れ残れば、様々な人に迷惑がかかるのだ。わかるな?』
紬「……はい」
『わかってくれてうれしいよ。愛してるよ紬。ん~ちゅっ♪』 ブツッ ザー
斉藤「お嬢様…私を旦那様の愛の投げキッスの盾に使うのはお止めください」
紬「お黙りなさい。なにか他の手を考えないと……」 ブツブツ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
澪「それで、自作することになったのか」
紬『ええ。アイスクリームは作ったことないけど、道具はあるから、あとは作り方を調べれば……』
澪「そのことなんだけど……ムギ」
紬『?』
澪「私もいま、スーパーにアイスを探しにきてるんだけど」
紬『ええ』
澪「いま……ハーブとスパイスのコーナーにいるんだ」
紬『……えっ…ま、まさか!』
澪「売ってないんだよ……ミントがっ!!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
紬「どういうことなのっ!!」 バン
斉藤「残念ながら、ミントのようなスースーするものは、夏以外は輸入してないのです……」
紬「そんな……そんなバカなっ!」
紬「……で、でも斉藤!あなた内ポケットにいつも入れてるわよね!?」 ゴソゴソ
斉藤「お、お嬢様!?」
紬「これよ!ミンティアってことはミントが材料なんでしょ!?あるじゃない!」
斉藤「お嬢様…パッケージ裏の成分表をお読みください」
紬「ええ。ミントと書いているのでしょう?ミントミント……ミ…」
紬「“ミントのようなもの”……」
斉藤「合成香料でございます」
紬「そ……そんなっ」 クラッ
紬「そ、そこのあなた!あなたも持っていたわよね?ミンティアじゃないあれ!」
黒服「は、はい。フリスクでございます」
紬「……やっぱり…ミントのようなもの……」
斉藤「ミンティアやフリスクの旬は夏。それ以外の季節はスースー感がいまひとつでございます」
紬「そんな、そんな……」
斉藤「お嬢様。ミントのようなものでよろしければ調達できますが」
紬「だめよ…だめよ!唯ちゃんは天才なのよ?そんなものでごまかせるわけがない!!」
斉藤「しかし、他に方法は……」
紬「……」
紬「ミントの……産地はどこ?」
斉藤「ベトナムでございますが…お嬢様!?」
紬「チケットと通訳を手配なさい…行くわ、ベトナムへ!!」
けいおんぶ!
律「わりーな、やっぱ見つからなかったわ、チョコミント」
唯「え、りっちゃんも探してくれてたの?」
梓「私も憂から頼まれたんですよ。それで律先輩にも」 カチカチ
唯「いやー、わるいねぇみんな。てへへ」
澪(紬…大丈夫かな……)
唯「でも、昨日はストロベリーがおいしかったからそれで満足しちゃったよ」
梓「なんですかそりゃ……」 カチカチ
律「あたしらの苦労をかえせーっ!」
唯「ごめんごめん!まさか憂がそこまで心配してくれてるなんて思わなかったんだもん!」
律「まったく……ん?さっきからずっと何してんの?梓。メール?」
梓「ああ、はい。ニュース速報見てるんです」 カチカチ
唯「ふえー。あずにゃんおっとなー!」
梓「ベトナムで軍事クーデターが起きたらしくて…情報が錯綜してニュー速大混乱です」
澪「な……なんだって!?」 ガタン
唯「わっ!どうしたの、澪ちゃん?」
澪「あそこには……あそこには、ムギがいるんだぞおっ!!!」
律「えっ」
唯律梓「ええええええええええええええええええええっっっ!!!!!!!?!?!」
最終更新:2010年06月01日 21:40