梓「猫を飼いたい」

純「なに、藪から棒に」

梓「だから、猫が飼いたい」

純「ふうん」

梓「そっけないね」

純「そう?ていうか梓、前にうちの猫預けたら嫌がったじゃん」

梓「あれは猫の面倒を見るのが初めてで不安だったから……」

純「ふうん」


純「じゃあ飼えば?」

梓「そんなこと言ってもお金がない」

純「はあ」

梓「だから今日純の家に行っていい?」

純「まあいいけど」

梓「やったー」

純(こんなに素直に梓が喜ぶのって結構珍しいかも)




純の家!

梓「おじゃまします」

純「おじゃまされまーす」

梓「猫は猫は?」

純「落ち着きなよ。猫は逃げないって」

純「ていうか、そんなにそわそわしてると返って逃げられるよ」

梓「知ってるよ。猫はおとなしい人が好きなんでしょ?」

純「うーん、まあそういうことにしとこっか」


純「そういえば、梓ってうちの猫に変なあだ名つけてたよね?」

梓「猫は猫は?」

純「人の話を聞きなさいっ」

梓「いや、だって今日はあくまで猫さんに会いに来たわけだし」

純「飼い主は私だよ」

梓「知ってるよ」

純「はい、それじゃお待ちかねの我が家の猫さんだよ」

梓「わあ、あずにゃん二号だ」

純「……なにその名前?」

梓「この子の名前」

純「ちょっと待った。この子には立派な

猫「にゃあお」

純「って名前があるんだからそんな変な名前で呼ばないでよ」

梓「今日だけはあずにゃん二号ってことで」

純「今日だけね」

純「ていうかさ、猫飼うならやっぱお父さんやお母さんの許可がいるでしょ?」

梓「うん、まあ」

純「お金の問題もそうだけど、猫ってけっこうヤンチャなんだよ」

梓「でも、犬に比べたらマシじゃない?」

純「ふ、ふ、ふ、意外とそうでもないんだな、これが」

梓「たとえば、なにが大変なの?」

純「そうだなあ。とりあえずうちn

梓「あずにゃん二号」

純「……あずにゃん二号を放置してみて」

梓「……なでなでしたい」

純「まあ待ちなって」

猫「にゃあ」バリバリ

梓「あ、ソファを引っ掻きだした」

純「そうなんだよ。猫ってソファーとか壁とかで爪とぎするからさ」

梓「だからソファーがそんなにボロボロなんだね」

純「そういうこと」

梓「てっきり、純の家のソファーってどこかのごみ置き場から取ってきたのかと思った」

純「おい」

梓「でも、こういうのって予防策とかあるんでしょ?」

純「うん。家はやってないけど、マタタビとかいうのを使ったりとか、壁に板張り付けたりとかね」

梓「へえ」

純「他にも爪切ってあげたりとかもね」

梓「あずにゃん二号は爪切らないの?」

純「意外と難しいんだよ」

梓「爪切りやってみたい」

純「ほんとに?」

梓「うん!」

純「やめておいたほうがいいと思うけど」

梓「いいからやらして」

純「ええと、じゃあやってみよっか」


純「って言っても私もやったことないんだよね」

梓「飼い主失格だね」

純「うるさい」

梓「でも、じゃあどうやってやるの?」

純「私がこn

梓「あずにゃん二号」

純「あずにゃん二号を押さえておくから梓が爪を切ってあげて」

梓「わかった」

梓「さあ早く早く」

純「はいはい、よっと」

梓「さすがに手慣れてるね」

純「まあ、あずにゃん二号は基本大人しいからね」

梓「よし、じゃあさっそく……って爪出てないよ?」

純「手を押さえてみなよ」

梓「あ、すごい。爪が出た」

純「面白いでしょ?」

梓「うん」

純「はい、じゃあ切ってみて」

梓「待ってあずにゃん二号の肉球が気持ちよすぎて……もう少し堪能させて」

梓「ふにふに」

純「……」

梓「ふにふに」

純「おーいまだ?」

梓「あとちょっと」

純「……」

梓「ふにふに……ってイタっ引っかかれたー!」

純「そりゃあ人間だってずっと手触られたらいやなのに、まして猫の肉球を触り続けるなんて」

梓「でも肉球気持ちよかったな」

純「よかったね」

梓「そういえばあずにゃん二号は散歩とかしないの?」

純「うん。猫は基本散歩しなくても大丈夫だよ」

梓「犬みたいにストレス溜まらないの?」

純「猫は家を駆け回るだけでもいいんだよ」

梓「ふうん」

純「どうでもいいけど私が猫を飼おうと思った理由が
散歩に連れてかなくてもよかったからなんだ」

梓「純らしい理由だね」

梓「そういえばあずにゃん二号は首輪してないんだね」

純「猫は首輪を嫌がるんだって。だから私はさせてないけど」

梓「迷子になったら困るんじゃ」

純「散歩しないから大丈夫だってば」

梓「首輪したらさぞかしかわいいだろうに」

純「猫の嫌がることはしたくないんだよ」

梓「ただたんに首輪買うのが面倒なんでしょ」

純「まあそれもある」

梓「ねえねえあずにゃん二号ってメスなんだよね?」

純「うんそうだよ」

梓「じゃあ将来はお嫁さんに行くの?」

純「今のところはそんな予定はないけど、もしかしたら……」

梓「あずにゃん二号を私に下さい!」

純「キサマにはやらん!」

梓「ケチ」

純「親に買ってもらいなよ」



梓「お手洗い借りていい?」

純「いいよ。場所はわかるでしょ」

梓「うん」

純「いってらー」

梓「……」

純「どうしたの、トイレ行かないの?」

梓「ううん、あずにゃん二号はトイレどうしてるのかなって」

純「猫専用トイレがあるよ。ていうか前預けたとき、あずにゃん二号と一緒に渡したでしょ」

梓「そういえば」

純「忘れてたんかい」

梓「でも、猫ってお散歩しないからトイレがあるんだろうけど
しつけはどうやってするの?」

純「全然難しくないよ」

純「トイレする前にここだよって初めに場所を教えればあとは勝手にそこ使うから

純「ああ、ちなみに猫のトイレには砂がいるんだけど、これがよく飛び出るから……って」

純「いつの間にかトイレに行ったんかい」

梓「ねえ純」

純「なあに梓」

梓「あずにゃん二号ってお風呂入らないの?」

純「……」

梓「なんで黙るの?」

純「問題、あずにゃん二号は何年間風呂に入ってないでしょう?」

梓「年単位なの!?」

純「はい、答は?」

梓「二年?」

純「ぶっぶー、答は十年でしたー」

梓「十年!?」

純「そんなに驚かなくてもいいじゃん」

梓「だって十年だよ?汚いにもほどがあるよ」

純「いいことを教えてあげよう」

純「猫っていうのは自分で自分の身体をなめ回すんだ。これが毛繕いの効果があるんだ」

梓「じー」

純「嘘ついてないからそんな目で見ないでゆ」

梓「いや、純も朝、毛繕いしてるよねって思って」

純「髪をセットすることを毛繕いとは言わない!」


梓「あ、わかった」

純「なにが?」

梓「それで身体のおけけを飲み込んじゃって、戻しちゃうんでしょ?」

純「おお。鋭い」

梓「猫って不便だね」

純「しかし、猫が戻しちゃうのを防ぐとっておきのアイテムがあるんだ」

梓「なにこれ、草?」

純「そうだよ」

梓「……かわいそうに」

純「なんで私を同情するみたいに見るの?」


梓「いや、お腹がすいてるなら草じゃなくてお菓子を食べればいいのに」

純「……」


梓「かわいそうに」

純「二度も言わなくていい。
ついでに賢い梓ならわかってると思うけど猫のえさだからね、この草は」

梓「……かわいそうに」

純「……」

梓「これ、購買で買ったコッペパン。食べて」

純「まだなにか勘違いしてない」

梓「してないよ。純が自分の食べるものがなくて
猫のえさにまで手を出してしまったっていう現実を私はきちんと受け止めてるよ」

純「じゃあ草、食べる?」

梓「私は食べるものがあるからいいよ」

純「私にもあるよ!」

梓「私のあげたコッペパンだけが?」

純「他にもあるわ!」

梓「で、その草はなに?」

純「急に話題を戻すんだ……」

梓「早く答えて」

純「これは、猫が毛玉を飲み込んで吐くのを防ぐんだよ」

梓「猫がこれを食べるの?」

純「そうだよ」

梓「安心した」

純「なんで?」

梓「本当に純が草食べてると思うと罪悪感に押し潰されそうだったから」

純「もういいよ」グスッ

梓「あずにゃん二号は普段はなにを食べてるの?」

純「ごく普通のキャットフードだよ」

梓「それだけ?」

純「ううん、他にも猫缶だったりササミだったり、ジャーキーだったり」

梓「普通だね」

純「普通でいいじゃん」

梓「そうだね」


純「ああ、でも猫缶は食べられるよ」

梓「え?」

純「いや、猫缶って味が薄いけど、醤油とかで味つけすると意外と美味しいよ」

梓「え?え?」

純「私、毎回買う度に缶の種類変えるけど、その都度味見するよ」

梓「純……」

純「予想してたけど、そんなウルウルした目で見ないで」


純「まあまあ、ものは試し、この猫缶食べてみなよ」

梓「嫌だよ」

純「あれれ~そんなこと言っていいのかな?」

梓「どういうこと?」

純「猫の飼い主なら誰もが猫缶を食べるというのに……」

梓「そ、そんなことが!?」

純「むしろ食べない人はいないくらいだよ」

梓「ううぅ~」

純「ほれほれ、食べてみなって」

梓「……」ゴクリ

純「はい、あーんして」

梓「ぁ、ぁーん」

梓「パクッ」

梓「モグモグ」

梓「あっ……意外と上手い、かも」

純「でしょでしょ?」

梓「うん」

梓「ねえねえササミはどうなの?食べられるの?」

純「へ?……たぶん」


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最終更新:2010年06月02日 20:46