――中野宅――
梓「両親はコンサートでいないんで、遠慮しないでいいですよ」
唯「あずにゃんは一人暮らししないの?」
梓「私は基本的にアメリカにいるので、日本で一人暮らしすることは……」
唯「あ。そうか」
梓「オレンジジュースでいいですか?」
唯「お気遣いなく~」
梓「クッキーもありますよ。ムギ先輩のお菓子と比べられるものじゃ
ないですけど」
唯「ムギちゃんのお菓子、美味しかったもんね~」
梓「そういえば、ムギ先輩は大学卒業してどうしたんですか?」
唯「ムギちゃんはお父さんのお仕事を手伝ってるんだってさ。すごいよね。
20代で何個も会社持ってるんだもん」
梓「ムギ先輩の人柄なら、敵も多くないでしょうしね」
唯「頭もいいもん。私とは違って」
梓「そうですね」
唯「ぶー」
梓「……」
梓(は、話が続かない!)
唯「……」
梓(……よく見ると、唯先輩。ちょっと大人っぽくなったかな?)
唯「どうしたの? あずにゃん」
梓(どこかが変わったわけではないけど、雰囲気に余裕が出たというか、
飼い犬と野良犬の違いというか)
唯「ねえ?」
梓「あ! す、すいません!」
唯「あずにゃんは、向こうで彼氏とかできた?」
梓「!?」
梓「えと、あの、あの……!」
唯「アメリカって進んでるんだよね。聞いた話だと、中学生でも普通にえっち
するらしいよね」
梓「そういう人もいるらしいですけど、私だって大人なんですから、落ち着
いて――」
唯「そうだよね。あずにゃんは大人だもんね」
梓「身長とか見て言いました?」ぶー
唯「えへへ。可愛い可愛い」なでなで
梓「うー」
梓(学生時代はちょっと煩わしかったけど、久しぶりに抱きつかれたり撫で
られたりすると、気持ちいいなあ)
梓(でも、やっぱり私なんてただの後輩でしかないのかな)
唯「うりうりー」なでなで
梓「そんなの……やだ……」
唯「?」
梓「唯先輩――私、唯先輩をとられたくない――!」
ベッド「ぼすん」
唯「あず、にゃん?」
梓「いやなんです……」
唯「え?」
梓「私が知らない間に、遠くに行かないで……」
唯「……」
梓「一人でアメリカにいて、さびしかった……。いつだって会いたかった」
梓「それなのに! 唯先輩は知らないうちに、私の知らないところに行って
しまった! いやなんです! 唯先輩を、誰にもとられたくないんです!」
唯「あずにゃん……」さわ
梓「!?」
唯「あずにゃん、ごめんね? 私、あずにゃんの気持ちを知らなかった」
梓「告白しても、無駄だと思ったから……」
唯「そっか。あずにゃんはそういう子だもんね」
唯「いつも強気で、ちょっと生意気だけど憎めない。そんな、可愛い可愛い
後輩だもん」
梓「後輩……。ただの、後輩なんですか?」
唯「――ごめんね」
梓「――そう、ですか」
梓「でも、唯先輩に刻み込みたい。私が、唯先輩のことを好きだってことを」
唯「――」
梓「この体勢、どういう意味かわかりますよね?」
唯「――」
梓「抵抗、しないんですか?」
唯「――いいよ。それで、あずにゃんの気が済むんなら」
梓「――!」
梓「いいんですね?」
唯「うん。きっと、私もしたいんだと思う」
梓「……脱がしますよ?」
唯「いちいち訊かないでいいよ。あずにゃんの好きなようにしていいよ」
梓「唯先輩……」
唯「あずにゃん」
梓(すごい綺麗……。胸も柔らかそう)
梓「唯先輩、大好きです」
唯「うん。ありがと」
梓(好き、とは言ってくれないんですね)
唯「……ん」
梓(唯先輩、感じてるのかな? 嬉しい)
――和の会社――
上司「あれよこれと」
和「それもこれよと」
OL「お茶ですー」
和「ありがと」
平社員「いそがしー」
社長「やっとるかねー」
和「こんにちは。いい調子ですよ」
上司「本当です。真鍋さんは本当に素晴らしい社員ですよ!」
社長「ほっほっほ。それはいいことだ。がんばってくれたまえよ」
和「はい!」
和(唯のためだもの!)
和(昨日、ベッドで素っ気なくしちゃったなあ)
和(そうだ。帰りにケーキでも買って帰ろう。唯はショートケーキで、憂には
モンブランね)
和(そうと決まれば、残業なんてしてられないわね!)きびきび!
……
唯「……あっ」
梓「気持ちいいですか?」
唯「うん。あずにゃん、上手だよ」
梓「……私のも、してくれませんか?」
唯「そ。じゃあ、横になって」
梓「――」
唯「あずにゃんの身体、初めて会ったときから変わらないね。子供っぽい」
梓「ごめんなさい……」
唯「いいよ。可愛いから」
梓「!」
唯「あれ? あずにゃんったら、私の触ってただけで自分のもこんなにしちゃ
ってるんだ。変態さんだね」
梓「う……」
唯「じゃあ、するね」
省 略
唯「……」
梓「唯先輩。大好きですよ」
唯「うん」
梓「すごく、気持ちよかったです」
唯「そっか」
梓「……これで、おしまいなんですよね」
唯「……」
梓「どうして……」
唯「……」
梓「どうして、私のこと、好きになってくれないんですか」
唯「わかんない。でも、私はあずにゃんよりも和ちゃんが好き」
梓「……う……うう……!」
唯(不倫、しちゃったなあ)
梓「ゆい、せんぱ、いぃ!」
――スーパーの前――
唯「もうこんな時間か~」
唯「晩御飯の材料買わなきゃ。憂に怒られる!」
唯(あずにゃん、大丈夫かな?)
澪「あれ? よく見る顔で、ここじゃあ見たことない顔」
唯「澪ちゃん」
澪「どうしたんだ? お菓子でも買いに来たのか?」
唯「違うよー。私だってお嫁さんなんだから、ご飯くらい作るよ」
澪「本当か! ついに唯にも主婦の自覚が芽生えたのか!」
唯「えへへー」
澪「私は大変だよ。仕事終わって買い物して、うちのが帰ってくる前に
ご飯、お風呂、
その他の家事しないといけないんだからさ」
唯「でも、それが幸せって言ってたよね?」
澪「う、うるさい! 恥ずかしいこと言うな!」
唯「うふふー」にやにや
澪「もう!」
唯「澪ちゃんちの晩御飯は?」
澪「シチュー。あいつ、シチュー大好きなんだ」
唯「私の、が抜けてるよー」
澪「ば、馬鹿っ!」
唯「和ちゃん、どんな料理が好きなんだろ」
澪「親友として20年。恋人として5年。夫婦として1ヵ月とは思えないな」
唯「憂が作ってくれる料理は、いつも美味しいって言ってるから……」
澪「とりあえず、カレーとか簡単なものにすれば? 当たりはずれもないし」
唯「うーん。マシュマロカレーとかはどうかな?」
澪「ないな。可愛いけど」
唯「じゃあ、普通のカレーにする」
澪「賢明だな。それじゃあ、そろそろ行かなきゃ。また今度お茶しような」
唯「うん。りっちゃんにもよろしく言っといて! 田井中さん!」
澪「そっちもな。真鍋さん」
唯「……ふぅ」
……
唯「とりあえずカレーの材料は手に入れた」
唯「しかーし!」
唯「これでは和ちゃんへの愛が表現しきれない!」
唯「人参? ジャガイモ? 豚肉? 否!!」
唯「オリジナル要素あってこその手料理でしょ!」
唯「と、いうことで!」
唯「お菓子コーナー行ってこよーっと」
唯(和ちゃんへの愛、か)
唯「不倫したくせに、なに言ってんだか」
――和、帰り道――
和「ケーキも買って、あとは帰るだけね」
和「このケーキを見たら、あの子、どんな顔するんだろう」
和「笑って、抱きしめて、キスしてくれるかしら」
和「……そうしたら、私も少しは唯に付き合ってあげよう」
和「そうよね。思えば、私のペースに、唯を付き合わせてばかりだもの」
和「休みの日もろくに出かけずに」
和「憂だって、私たち夫婦のために個人の幸せを二の次に考えてる」
和「本当だったら、あの子だって恋人作って結婚したいでしょうに」
和「――ああ。なんだ」
和「あの姉妹に救われているのは、私のほうじゃない」
和「これは、ほんの少しばかりの感謝」
和「唯、憂。待っててね」
――平沢宅――
憂「おかえりなさい。大丈夫だった?」
唯「んー。まあ、平気だったよ。澪ちゃんに会ったしね」
憂「そうなんだ。澪さん、元気してた?」
唯「元気そうだったよ! りっちゃんともうまくいってるみたいだし」
憂「そうなんだ! それで、今日のご飯はなににするの?」
唯「カレー! 澪ちゃんに教えてもらったんだ!」
憂「カレーかぁ。わからないところがあったら、私に聞いてね」
唯「了解!」
唯(あずにゃんと会ったことは言わないでおこう)
唯(ごめんね。憂。親友のあずにゃんが帰国してること教えてあげられな
いで)
唯「……あれ?」
唯「ういー!」
憂「はーい」
結局
唯「憂、ここにいて」
憂「わかったよ。お姉ちゃん」
唯「ごめんね。カレーも自分で作れないお姉ちゃんで」
憂「大丈夫だよ。これから覚えていけばいいんだよ」
唯「和ちゃんが帰ってきちゃうよ~」あたふたブシュッ
唯「ふぇええええええ!!」
憂「はい。絆創膏」
唯「憂。慣れてるね」
憂「そりゃあ、何年妹やってると思ってるの?」
唯「それもそうだね」
憂「和ちゃんも、お姉ちゃんがお料理してるの見たら、待ってくれるよ」
唯「……うん!」
……
和「ただいまー」
憂「おかえりなさい。ほらほら、お姉ちゃんっ」
唯「うん! だ、旦那さま。上着を頂戴いたしまする」
和「フフっ。なによそれ。そんなことより、ほら、おみやげ」
憂「わあ! このケーキってもしかして!」
和「そう。隣町の甘味処仏陀のショートケーキとモンブラン、それとフルーツ
タルトよ」
唯「私、ショートケーキ!」
憂「私、モンブラン!」
和「あらあら、まさに予想どおりってやつかしら?」
唯「ありがと~」スリスリ
憂「和ちゃ~ん」だきっ
和「ちょ! 憂まで!」
唯(……あれ?)
唯(なんだろ。違和感)
和「ほらほら。二人とも大好きだから離れなさい」
憂「えへへー」
和「ホントに、よくできた子っていっても、可愛いところあるんだから」
憂「和ちゃ~ん」
唯「は! そうだ! 和ちゃん和ちゃん! 今日のご飯はなんでしょう!?」
和「……この匂いはカレーね。ちょうど食べたかったのよ。憂のカレー」
唯「チッチッチ。今日は違うんだなコレが」
和「?」
唯「今日は真鍋唯作のカレーライスです!」
和「すごいじゃない! 憂、ありがとう!」
憂「え? あ、うん!」
唯「ヽ(・ω・)/ズコー」
唯「ひどいよ和ちゃんー」
和「冗談よ。でも、憂が殆ど作ったんでしょ?」
憂「いえいえ。今日はお姉ちゃんが殆どやったんだよ」
唯「でへへー」
和「……」
和「あ」
和(唯の手。絆創膏だらけじゃない。きっと、一生懸命馴れない包丁使っ
たのね)
和「唯。ありがとう」
唯「お嫁さんのお仕事だもん! 平気平気!」
和「それでも嬉しいわよ。……ねえ、憂。5秒だけ後ろ向いててくれる?」
憂「はいっ」くるっ
和「ただいま」ちゅっ
唯「んっ」
唯「――」ぼー
和「憂。いいわよ」
憂「はーい」くるっ
唯(和ちゃんのキス。やっぱり気持ちいい……)
憂「あ、お姉ちゃんお姉ちゃん」ひそひそ
憂「あのセリフ。言ってみれば?」
唯「……う、うん!」
和「?」
唯「和ちゃん!」
和「だからなによ?」
唯「お風呂にする!? ご飯にする!? それとも――わ・た・し?」
和「……」ちらっ
憂「……」ニコニコ
和「お風呂」
唯「ぶー」
最終更新:2010年06月02日 22:21