梓「う、うい?」

憂「お姉ちゃんはもう平沢唯じゃないの! 真鍋唯なの! 私を――平沢憂
を選んでよ!」

梓「――」

憂「ずっと、ずっとずっと好きだった。大学卒業して、アメリカに行っちゃって、
寂しくって悲しくって。どうすればいいのかわからなかった!」

憂「お姉ちゃんや和さん……和ちゃんと一緒にいても、梓ちゃんと一緒にい
たほうが楽しかったの。それがどういう意味だか、わかる?」

梓「……あ」

憂「どうしても梓ちゃんが、欲しかったからだよ」

梓「でも……私は……」

憂「それでも、梓ちゃんが唯を選ぶんなら――」

ベッド「ぼすっ」

梓「――憂?」

憂「……」ハラリ

梓「あ」

憂「似てるでしょ? 唯に。お姉ちゃんに」

梓「――うん」

憂「必要だったら、私なんていらない。私がお姉ちゃんの代わりに唯に
なって、梓ちゃんの側にいる」

憂「だから、そんなに悲しい顔をしないでよ」

梓「……」

憂「脱がすよ。あずにゃん」

梓「……」

憂「――」


省                  略


憂「――あずにゃ~ん」

梓「……私ね」

憂「?」

梓「明日、アメリカに帰るんだ」

憂「……うん」

梓「それでなんだけど……」

憂「――」

梓「一緒に、来てほしいんだ」

憂「え?」

梓「旅費もなにもいらない。パスポートと着替えだけでいい。あとは、私が
なんとかするから」

憂「……あず、にゃん?」

梓「その呼び方もいらない。私は、平沢憂が欲しいの」

憂「……駆け落ち、だね。……うん。連れていって。私を、梓ちゃんと一緒
に、遠いところまで」

梓「それじゃあ、明日の朝6時に私の家の前に……ね」ちゅっ



――憂、帰り道――

憂(梓ちゃんと、駆け落ち……)

憂(嬉しいのかな。私)

憂(お姉ちゃんと和ちゃんを、おいて……)

憂(それでいいの? それで、私は幸せなの?)

憂「わかんないよ……」

憂「でも、あんな梓ちゃんの顔見たら……考えることもできない」

憂(そうだよね。お姉ちゃんも和ちゃんも許してくれるよ)

憂「そうだよね」

憂「うん」

ドア「ニコ」

憂「ただいまー」

唯「ういいいいいいいいいいい!!!」がばっ

憂「うわっ!」

唯「和ちゃんがいじめるー!」

憂「!?」

和「なに言ってるのよ。あ、気にしないでいいわよ。憂」

憂「なにかあったの?」

和「あー。ちょっと、ね」

唯「うわーん」

憂(なんてわかりやすい嘘泣き……)

唯「和ちゃんがピーマン食べなさいって言うのー」

唯「憂は私の味方だよね!」

憂「……ごめんね。私、ちょっと疲れてるの」

唯「え? う、憂?」



――憂の部屋――

ベッド「ぼすん」

憂「……お姉ちゃんたちは、今が一番幸せなんだ」

憂「私は、どうなんだろ」

憂「ご飯作ってる時よりも、お姉ちゃんとお風呂入るよりも、和ちゃんに抱き
つくよりも――」

憂「梓ちゃんを抱きしめてる時が、一番気持ちよかった」

憂「なら、今の私はなんなの?」

憂「自分を犠牲にしてきたつもりなんて、ない。お姉ちゃんのためになにか
することが、実際に幸せだったから」

憂「――それ以上の幸せを、見つけてしまった」

憂「新しいことは新鮮。先生は言ってくれた」

憂「……苦しいよ」

憂「明日までに、結論を出さなきゃいけないなんて」

憂「……そんなの、無理だよ」




――居間――

唯「あうー」

和「憂ったら、どうしたのかしら」

唯「ぴーまんー」

和「食べなさい。……まあ、あの子だって女の子なんだから、そういう日も
あるわよね」

唯「ピーマン嫌いー」

和「私は?」

唯「好きー」

ケータイ「ふわふわターイム! ふわふわターイム!」

唯「あれ? 電話だ」

唯「もしもーし! ……え?」

唯「和ちゃん。ちょっとごめんね。ピーマンは必ず食べるからね」

ドア「ニコ」



――憂の部屋――

憂「……」

憂「駄目だ。わかんないよ」

憂「幸せってなんだろ」

憂「お姉ちゃんの新婚生活を間近で見ていれば、それがわかると思った」

憂「ううん。わかったつもりでいた」

憂「でも、こうして今。私は悩んでいる」

憂「それは、結局幸せというものを理解できなかった結果だよね」

憂「……」

憂「梓ちゃん」

憂「……ごめんね」



――夫婦の寝室――


和「唯?」

唯「……ねえ、和」

和「なに?」

唯「えっち、したい」

和「……いいわよ」

唯「うん。愛してるよ」

和「私もよ。唯」

唯「……」

和「……」

唯「和ぁ……」

和「今日は、私がしてあげるわね」

唯「うん……」

和「ほら、服くらい自分で脱ぎなさい」

唯「えぇ~。脱がせてよぉ~」

和「赤ちゃんじゃないんだから」

唯「ん~」

和「……まったく、可愛いんだから」

唯「可愛くないもん」

和「可愛いわよ。もう濡れてるし」

唯「濡れて、ないもぉん!」

和「じゃあ、これはなぁに?」

唯「やぁ……!」

和「自分のなんだから、自分で綺麗にしなさい」

唯「う、うん……」ぺロ

和「しょっぱいでしょ?」

唯「変な味……」


省             略


唯「くーくー」

和「可愛い寝顔ね」

和「……」

和「アンタは、いいえ。アンタと憂は絶対に守るわ」

和「約束したものね」

和「だったら、することなんて決まってるわよね」

和「……バレてないと思ったら、大間違いなんだから」

唯「むにゃむにゃ」

和「私が男だったら、なんて思うこともあるわよ」

和「それなら世間からも正常な目で見られる」

和「律と澪は、その目に耐えられずに駆け落ちした」

和「私たちは、これから大変よ」

和「でも、絶対に守ってみせるから」

和「……」

ドア「ニコ」



――次の日――

憂「……朝、か」

憂「もう、6時か」

憂「ごめんね。梓ちゃん」

憂「私には、あなたを背負えない」

憂「……着替えよう」

タンス「がさごそ」

憂「あれ?」

憂「着替え、なくなってる?」

ドア「ニコ!」

唯「憂!」

憂「今日は早いね。おはよう」

唯「違うの! 来なさい!」


憂「え!?」

クルマ「ボボボボボボボ」

憂「え?え?」

唯「乗って!」

律「そうだぞ! 憂ちゃん!」

憂「え?」

ドア「ニコン」

憂「あれ?」

唯「出発! いってくるぜ! 和!」

和「はいはい。……憂、後悔しない行動をしなさい」

憂「……はい?」

澪「唯、急げ! このままだと――」

唯「ぶっとばして行くぜー!!」

紬「行きなさい! フェラーリエンジンを積んだ最強のワゴン!」

クルマ「ギュアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


憂「どういうことなの!? お姉ちゃん!」

唯「あずにゃんから電話があったの! 駆け落ちのこと。来ないでってこと
を伝えてほしいって」

憂「え?」


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最終更新:2010年06月02日 22:30