唯「憂のケータイは電源切れてるから、私に教えてくれたの。憂の人生を
狂わせることはできないって」

憂「それじゃあ、みなさんは?」

澪「夜中に和から電話があったんだ。唯がなにかやらかしそうだから、朝
一番に来てくれって」

律「憂ちゃんが抵抗するなら、私が腕づくでクルマに乗せるつもりだったん
だよ」

紬「それで、唯ちゃんの家のクルマじゃあ成田まで最速で行けない。だから、
私がクルマを手配したの」

唯「そういうことだよ! 舌噛まないように気をつけて!」

憂「ひゃああああああ!!!」

唯「憂! 絶対に憂の幸せを逃がさないからね!」


ケータイ「うーいー! あーいーすー」

憂「……もしもし?」

和「ざまあみなさい。お姉さんたちが、アンタを全力で幸せにするわよ。それ
が、たとえ押し付けでもね」

憂「どうして……」

和「簡単な話よ。もう、アンタは自分を犠牲にする必要なんて、ないのよ」

憂「……」

和「じゃあね。お幸せに」ブツッ

唯「ムギちゃん! ETC突っ切っていい!?」

紬「駄目なわけないでしょう!」

唯「わかった!」

ETCバー「バーン!」

律「ヒュー!」

澪「派手にやるなぁー」

唯「もう高速道路だよ! 逃げられないよー」

憂「……」

澪「ほら、憂ちゃん。おにぎり、食べておきな」

律「澪のおにぎり、美味しいんだぜー」

紬「私、友達と暴走行為するの、夢だったの!」

唯「みんな! これで色々やっばいね!」

澪「これで私は危険教師のレッテル貼られるぞー!」

律「私だって! 出版社クビ間違いないぜ!」

紬「さーて、契約何個吹き飛ぶかなー」

憂「……皆さん。それなのに、どうして……」

律「なんでって……なあ」

紬「決まってるじゃない」

澪「憂ちゃんを幸せにしたいから、だよ」


パトカー「そこのワゴン、止まりなさい!」

唯「ありゃりゃー。どうするー?」

澪「訊く必要あるのか?」

唯「なーい」

律「だったら、一つしかないだろ」

紬「そうよそうよ! ぶっちぎっちゃいなさい!」

唯「だよねー」

パトカー「……―――! ――!」

憂「もう、パトカーの音も聞こえないや」

澪「君を見てると、いつもハートどきどき」

律「揺れる想いはマシュマロみたいにふわふわってか!」

紬「ここ何年かで、一番楽しー!」



――桜高・職員室――

キャスター「ごらんください! 押しも押されぬ法治国家の我が国に於いて、
カーチェイスが行われています!」

キャスター「乗っているのは5人の女性ということです!」

さわ子「……あら」

さわ子「あの子たち、いくらなんでもやりすぎよー」

さわ子「でーもっ」

さわ子「もしもしりっちゃん? ええ。どうせ運転してるのは唯ちゃんでしょ?
……やっぱり、じゃあ伝えておきなさい!」

さわ子「つまんない大人たちを、ひっくりかえしちゃいなさい!!」

さわ子「……うん。それじゃあ、頑張りなさい」

さわ子「……あはは。これで私も犯罪者になっちゃうのかなー」

さわ子「ま。いっか」

キャスター「パトカーはまったく追いつけずに――」ブツッ

さわ子「さーて、つまらない大人は仕事仕事ーっと」

ドア「ニコ」

律「おーい! 唯ー!!」

唯「なにー!?」

律「さわちゃんが、ぶっとばせー! だってさ」

唯「言われなくても! ぶっとばすよ!」

澪「あははー!!」

紬「もう、止まれないわよー」

憂「……あはは」

澪「?」

憂「あははー!! お姉ちゃん、私を連れて行って!」

唯「それも言われなくても!」

律「ぶっとばせー!!」


唯「あとどれくらい!?」

紬「あと40キロよ! もう少し!」

ケータイ「りつー! でんわだぞー! りーつー!」

律「なんだよー。澪ー」

澪「何度も言うが、お前が吹き込ませたんだろ」

律「もしもしー」

律「!?」

律「……聡か」

律「うん。わかってるよ」

律「父さんと母さんに伝えておいてな」

律「もうちっと、迷惑掛けちまうって」

律「これ終わったら、絶対澪連れて帰るから」

律「ごめんな。聡。……でも、私はこれで後悔しないから」

律「ああ。じゃあな」ピッ

律「――さあ! あと40キロいっくぜー!」


唯「到着! 憂、ゴー!」

憂「お姉ちゃんは!?」

唯「気にしないの!」

律「ほら、荷物だ!」

澪「おにぎり。持っていきな」

紬「梓ちゃんに伝えて、私は、大丈夫だって!」

憂「澪さん、律さん、紬さん……」

警官「見つけたぞ! 暴走車だ!」

唯「!?」

唯「憂!」

憂「……」ダッ

律「行っちまったな」

澪「新しい就職場所探さなきゃなー」

紬「いっそみんな一緒のところに勤めて、HTT再結成?」

唯「いいね! それ!」




――空港内――

梓(憂……来てくれなかったな)

梓「でも、まあ仕方ないか」

梓「来るなって言ったのは私だもんね」

「――!」

梓「ん?」

「――ん!」

梓「……?」

「あず――ん」

梓「唯、先輩?」

「梓ちゃああああああああん!!」

梓「いや、違う……。憂!」

憂「梓ちゃあああああああああん!!!!!」ガバァ!

梓「うい……?」

憂「ういっ! だよー!」

梓「……どうして、来たの?」

憂「梓ちゃんが、来てほしいって言ったから」

梓「来ないでって伝えられなかった?」

憂「さっき、お姉ちゃんに聞いた」

梓「じゃ、じゃあ!」

唯「ういー!」

警官「こら! 静かにしろ!」

梓「……うい」

憂「行こう。梓ちゃん」

澪「幸せになー!」

梓「――はいっ!」



――それから、3年――

唯「和ー」

和「どうしたの?」

唯「憂は、元気かなー」

和「あの子は大丈夫よ。アンタとは違うんだから」

澪「そうだぞー。憂ちゃんと梓なら、きっと平気だよ」

律「今日は聡の日本代表おめでとう会だろー」

紬「ふふっ。そうね。聡くん、おめでとう」

聡「は、はい! 恐縮です!」

純「数年ぶりに日本に帰って来たと思ったら、すごいことがあったんですね」

さわ子「本当よ。どうして混ぜてくれなかったのー?」ぶすー

純「いや、そうじゃなくって……」

唯「和ー」ぎゅー

和「はいはい」


律「和ー! おかわりー!!」

唯「チッチッチ! 今日もご飯は私が作ったんだよ!」

澪「もう、きちんとした主婦じゃないか」

唯「うん! もう、憂がいなくても――」

ドア「ニコ」

「憂がどうかしたんですか?」

唯「?」

「もう、梓ったら。いきなり喧嘩腰じゃあ駄目だよー」

梓「ご、ごめんね。大事な報告のために帰ってきたのに」

律「!?」

澪「大事な報告って?」

梓「ごほん。私たち! 結婚することになりました!」

紬「え?」

さわ子「横にいる人と?」

純「もしかして、その人って……」

和「まさ、う――」

唯「憂?」



憂「ういだよー。私たちの新婚生活、応援してね!」





                                     おしまい



最終更新:2010年06月02日 22:31