澪「やだよ…どうしよう…お母さん…お父さん…」

一番最初に外に出て、どうすればいいかわからず、出てすぐの草むらに身をひそめた。

澪「う~律ぅ~」

すぐすると、二人目の飯田慶子が出てきた。あまり仲良くはないが声をかけて見ることにした。
1人は怖い、1人はやだ。澪は勇気を振り絞って声をかけた。

澪「飯田さんっ…」

しかし、飯田はあたりを見回し全速力でその場を立ち去った。

澪「あ……あ……やだ…1人にしないでっっ!!怖い、怖いよ」

澪は仲のいい子が来るまで、身をひそめてここで待つことにした。
出てくる生徒皆、校舎を出ると走ってどこかに行ってしまう。ひょっとしたら、律たちも走ってどこかに行ってしまうかも
出てきたらすぐに声をかけよう。澪は心に誓った。

10分くらい経った頃だろうか、紬の前の久遠円が教室を出てきた。今までの生徒と同じく走ってその場を去った。

澪「(もうすぐ…むぎが来るっ!むぎ!!早く来て!!)」

ようやく、紬が出てきた。長い10分だった。澪には1時間以上に感じられた。

澪「むぎっ!!!」

紬「!!…澪ちゃん……嫌っ…嫌ああああっ!!!」

澪「えっ…?」



澪「えっ?むぎ!?」

紬「いやあああああああああああああああ」

澪「ちょっとまt、むぎー!!」

澪「なんで…?なんで…むぎ…」

ザザッ!

澪「!?」

澪「きゃああああっっ!!」

後ろを振り返るとそこには紬より先に出た菊池多恵が立っていた。手にはボウガンを構えていた。

澪「えっ!?」

次の瞬間ボウガンから放たれた矢は澪の右腕に突き刺さった。

澪「んんんっ!!!痛いっ!!痛いっ!!!菊池さんっ!何?なんでっ!?」

菊池「生き残って家に帰るんだ…っ!私だけっ!!私は絶対生き残る…っ!!」

澪「ちょっとまって!!待ってよおおお!!」

澪はとっさに、手元にあったスクールバッグを手に取り盾にした。
もう一度放たれたボウガンの矢はスクールバッグに突き刺さった。
やばい。澪は死を覚悟したっ!心臓は破裂寸前!
体を最小限まで縮めてスクールバッグに身を隠した。


律は廊下を歩きながら考えていた。

律「あたし達…もう死ぬしかないのかな…クラスメートと殺し合い…
そんなの出来るわけがないっ!ざけんな!
生き残るには澪や唯たちを殺さなきゃいけないってことじゃないかっ!
仮に誰か違う人が殺したとしても、最終的にはそいつを殺さなきゃいけない…
生き残るには、最低1人殺さなくちゃいけない…」

律「馬鹿っ!何考えてんだ…あたしってば!こんなゲーム…クソっ!!!」

律は歯を食いしばり早歩きで出口に向かう。

律「澪…大丈夫かな…」

そう考えながら昇降口へ向かうと、悲鳴が聞こえた。

律「え…澪っ!?澪ー!!!!」

走って外に出ると、澪と菊池が取っ組み合いをする形で格闘していた。

律「澪ッッ!!!」

律は足元にあった花瓶を取って思いっきり投げた。
花瓶は見事に菊池にヒットし、菊池は倒れこんだ。

澪「う~~~~う~~~~嫌あああああ痛いよおおおお」

律「澪!!大丈夫か澪!!」

澪「律!!!」

律「行くぞ澪っ!走れ!!」

律は澪の手を取り澪を引っ張った。

澪「いつっ!!」

律「え?…あ!!なにっ!ちょ…大丈夫か澪!!ごめん……」

澪「大丈夫っ!走れるっ!行こう!」

二人は走って校舎の裏に回りこんだ。

律「大丈夫か?菊池さんにやられたのか?あいつ…っ!なんのつもりだ…でも…無事でよかった。」

澪「ありがとう律…律こなかったら、私…」

律「言うな。手当だけしとこう。抜くぞ、これ。」

律はハンカチを澪の腕に巻き、勢いよく矢を抜いた。

澪「んぐうっ!!」

血があふれ出る。律は急いでもう1つのハンカチで傷口をふさぐ。

律「とりあえず、これで大丈夫かな?ごめん、応急手当とかわかんないからさ…」

澪「ううん。ありがとう。」

律「そういえば、むぎはどうした?会わなかったのか?」


澪「むぎは…逃げちゃった…」

律「え?逃げた?どういうことだ?」

澪「私が声をかけたら…怯えてどっかに走って行ってしまった…
たぶん…私の後ろにいた菊池さんに怯えて逃げたんだと思う…」

律「そうか…とりあえずここに和を呼んだ。みんなでいったん集まろうぜ
むぎは…しょうがないけど…」

澪「和を!?…そうか律、和と席近かったもんな…」

律「うん。問題は唯だな…もう外に出ちゃったかな…」

律はふと思いついた表情を見せ、鞄の中身を確認した。

律「……拳銃だ。」

鞄の中にはワルサーPPKが入っていた。9mm口軽の女性でも手軽に扱える銃だ。

律「これ…本物か?どうやって使うんだ?これ?」

澪「やめろ律!下手にいじって暴発したらどうするんだ!なれない武器は使わない方がいい。」

律「そうだな…澪は…」

律は澪の鞄を見ると、澪は見てくれという表情をした。澪は片腕が使えないからな。
律はデイパックを手に取り、中をあさってみた。すると中から通水カップが出てきた。通称ラバーカップ。


律「トイレのスッポン?こんなもので戦えって言うのかよ…ちくしょう!」

澪「…仕方がない。ハズレもあるって言ってたし…」

律「そういう問題じゃねぇ!くっそぉ、あ!!そうだ携帯!携帯電話!」

澪「ああっ!!」

律はあわててスクールバッグの中身をあさる!―しかし!

律「ない…。確かに持ってきたのにっ。バスの中で写真を撮って、そのあと確かにバッグにしまったはず…」

澪「私のも…ない…。」

そう、没収されたのだ!あの坂持銀発に…っ!

律「くっそ…当然っちゃあ当然か…」

澪「むぎ…唯…無事かな…」

律「多恵の他にこのふざけたゲームに参加してる奴がいなきゃいいけど…」

澪「でも…どっち道、私たち、死んじゃうんだよね…」

律「まだだ!まだあきらめるな!なにか方法を考えよう!」

澪「方法って言っても…この首輪があるかぎり…」

律「くそっ!!」

澪「和…遅いな…。」

律「おかしいぞ!もうあたしが出てから30分以上は経ってるのに!和…まさかもう…」

澪「嫌…いやあああああああああああ」

律「あああわわわ、でかい声出すな澪っ!ごめん…悪かったよ…」

律「でもこのままここにいてもしょうがないからな…どうするか―。」

このとき律に電流走る…っ!

律「ああっ!!」

澪「え!?なに!?」

律「走れ澪!ここが禁止エリアになる!!完全に忘れてた!!」

そう、坂持から説明があった通り、校舎の周り半径100m以内は全員が出てから30分後に禁止エリアになる。
律が教室を出て40分、出席番号、律はちょうど真ん中の20番!そこから1分置きの間隔で18人!
一人、参加不能の中島信代は律の後、26番!そうなると律以降17人!


ギリギリ、まさにギリギリ!!今気づかなかったらあともう約10分後には二人とも死んでいたのである!



二人は救われた。



菊池「いっ……つ…」

菊池は頭に激痛を伴い目覚めた。
何か聞きなれない電子音がする。ピッピッピッピ

菊池「うう、ああああ、なに!なんなの!!」

そう、その電子音は菊池が付けている首輪から鳴っているものだった。

菊池「やめてやめてやめて外してコレぇ!!」

電子音は次第に早くなり、

バシューン!!

軽い音とともに菊池の首から血が噴き出す。まるで噴水のように。
生徒全員が出て、30分経ったのだ。校舎から50mも離れていないこの場所は当然1番最初の禁止エリア。

【6番 菊池 多恵 死亡   残り36人】

校舎から西に1キロ、海が見えるところに仁科楓がいた。
そこには2年のころから同じクラスで同じグループで仲が良かった、桜井美帆、松井沙織、兵頭葵、豊永優の系4人。
断崖は下をのぞくと高さ約20mはある。ここから落ちたら岩にぶつかって海に投げ出される。
そう考えていたのは仁科だった。

桜井「私たち、いずれ死んじゃうんだよね…」

松井「うん…ねぇ、もうみんなで一緒にここから飛び降りて死のうよ…」

仁科「ちょ、ちょっと待ってよ!そんなの」

兵頭「だってもう、みんな殺すしか生き残る方法ないんだよ?そんなこと私出来ないっ!」

豊永「うちも無理…だったら自分から死んだ方がまし!」

仁科「(おかしい…こいつら…自分で死ぬんだったら少しでも可能性をかけて殺し合いに参加した方がましじゃない
どっちみち死ぬんだから。せめて期限の明後日まで生き延びようという気力はないの?駄目だ…)」

桜井「ねぇ、みんなでここ、飛び降りよう」

仁科「わかったよ…」

松井「手繋いで…一緒に飛び降りよう…」

一同「うん…」

そう言うと一直線になり手をつなぎ、崖のふちに立った。

桜井「みんな…今までありがとう」

一同「ありがとう!!」

松井「せーのっ!」

次の瞬間、一番右端にいた仁科は勢い良く左手をふりほどいた。
多少バランスを崩し、冷や汗をかいたものの、なんとかその場にとどまった。

仁科「っふん、死にたい奴は勝手に死ねばいいのよ。私を巻きこまないで!私は生き残って家に帰るっ!」

【13番 桜井 美帆、25番 豊永 優、31番 福山 葵、34番 松井 沙織 死亡    残り32人】



唯はギターを背負い支給されたデイパックを胸に抱え、肘にはバッグぶら下げて校舎から出てきた。

唯「ギー太…どうしよう…」

ギターに話しかけてみるが当然返事はない。

唯「殺し合いってなに???これからどうすればいいんだろう…。憂…憂今頃なにしてるんだろ…」

南の方へ5分くらい歩くと、小さな小屋を見つけた。
その小屋に入ると、そこにあったパイプ椅子に座り、一息ついた。

唯「はぁ、和ちゃんに会いたいなあ…」

ギターを立てかけ、支給されたデイパックの中身を確認してみる。

唯「あ~そっかぁ~ペットボトル2本も入ってたんだ~どうりで重いはずだあ!」
ん…?なんだろうこれ…なんかまだ重たいのが…っ」

出てきたのはmini UZIだった。サブマシンガンである。大当たり。

唯「ええ??なにこれ?ピストル???こんなの使えないよ~。どうしようギー太…」

ギー太「・・・」

唯「あ!むぎちゃんが電話くれるって言ってた!待とう…むぎちゃんから電話かかってくるまで
えああっと携帯は…あれ?あれれ?忘れた!!?
あれー?でも確かバスの中で目覚ましかけて椅子に付いてるテーブルの上に置いたからあ……そっか…。」

唯はここまで考えてようやく気付いた。


紬は我を忘れてひたすら西に走っていた。
怖かった。怖かったのだ。

紬「ごめん!ごめんなさい!澪ちゃんっ!!」

泣きながら紬は走った。どのくらい走ったか、気付くとそこは古い民家だった。

紬「澪ちゃん…うっ」

紬は自分のとった行動に深く後悔していた。
あの時、自分はこの通り逃げたから助かったが、澪はあのあとどうなったかわからない。
最悪の事態も考えた。もしそうなってしまっていたら―。
しかし―。

紬「そうだ!携帯!唯ちゃんに電話っ!澪ちゃんにも!りっちゃんにもっ!和ちゃんにもっっ!!
確認っ!みんな無事か確認しなきゃ!!まずは唯ちゃんに…

そしてみんなで集まって、考えましょう。どうするか。」

紬はポケットから携帯を取り出した。
そう、紬だけではないが、ポケットに携帯電話を入れていた者に限っては携帯電話は没収されていなかった!
不幸中の幸いっ!!天は紬を味方した…っ!!

紬「発信…っ。お願い…出て!!唯ちゃん!!」

が、しかしっっ!!

プルルルルルルルルルル・・・・プルルルルルルルル・・・

紬「お願いっ!!!」


プルルルル―。

「プッ」

出た!!繋がったのだ!!この危機的状況で携帯電話が使えるっ!
これで1人じゃなくなる!みんなと一緒にいられる!!

紬「!!もしもし?唯ちゃん!?」

そう思ったのもつかの間・・・っ!!

坂持「こらぁ~琴吹~、学校に携帯電話持ってきちゃダメだろぉっこのバカチンが~」

紬「ひっ!!」

電話に出たのは坂持だった。

紬「嫌っっ!何!?どうして??繋がったと思ったのに…」

玄関を入ってすぐの所、紬は崩れ落ちた。
電話がつながらない。みんなと連絡を取れない。怖い。
もう、生きて行く気力が、紬にはなかった・・・。

紬「どうして…私が…こんな目に…」

今の紬にはどうすることもできない。
ただ泣くことしか―。



……

岡田春菜と篠田明日香は2人で草むらに身をひそめていた。

篠田「うちら、明後日には死んじゃうんだよね…」

岡田「うん…」

篠田「どうしよう…最後にパパとママに会いたいよ…」

岡田「無理だよ…もう―。」

岡田は篠田に背を向けてうずくまっている。
全身が震えている。

岡田「生き残るしかっ…方法がないのっ!!」

そう言うと岡田は振り向きざまに支給された武器であろうサバイバルナイフを篠田の胸に突き刺していた。

篠田「えっ…?」

ここで篠田はようやく何が起こっているか実感したようで歯を食いしばって左手にあったベレッタM1934を右手に持ち替え、
ゼロ距離で岡田の腹に弾丸を撃ち込んだ。
パンッと乾いた音がしたと同時に岡田は倒れこんだ。

篠田「なんで…?春菜…なんでっ…」

最後にこう言うと、うううううううううとうめき声をあげながら倒れた。
篠田の意識がなくなるまで数分かかった。

【5番 岡田 春菜、16番 篠田 明日香 死亡    残り30人】



木頭沙耶と長谷川聡子は二人仲が良く、いつも一緒にいた。
出席番号からして互いに離れてはいるものの、偶然再会することができた。
二人は駐車場の車の陰に隠れてなにやら話していた。

木頭「聡子、聡子の武器は?なんだった?」

長谷川「…これ…」

そう言うと、デイパックからロープを取り出した。
ハズレ武器だ。ロープでは戦いようがない。使えるとすると首つり自殺用・・・

長谷川「もう…駄目だ。沙耶、どうだったの?」

木頭「なに…これ。変なピストル…」

長谷川とは真逆っ!大当たり!H&K MP7、サブマシンガンである。
暗くてよくは見えないが、映画などでよく見かける形の銃だということは2人にもわかった。
その時だった。木頭は人差し指を口にあてた。

木頭「人が来たっ!」

長谷川「大丈夫っ!これがある!!怖くないよ!!」

木頭「だってこんなの使い方わからないしっ!怖くて撃てないよっ!」

長谷川「せっかくの当たりクジを引いたのに!早くっ!」

木頭「早くって!無理よ!しかもこれ聡子のじゃないでしょっ!使う権利は私にあるのっ!」

そうやってもめているうちに懐中電灯の明かりが、二人に近づいてくる。


立花「誰か…いるの?ねぇ、誰かいるの?返事してよぉ…」

長谷川「この声…立花さんだ!」

木頭「えっ!」

長谷川「立花さんっ!ここだよ!」

木頭「馬鹿っ!」

立花「あっ…長谷川さん、それに木頭さん!」

木頭はあわてて支給された当たりのサブマシンガンを自分の背に隠した。

立花「木頭さん?それ…何??」

木頭「あ…アハッいやあ、私の武器これみたい。立花さんいきなりこんなもの見たらびっくりするだろうと思って…」

立花「大丈夫…色々なもの…見てきたから…」

長谷川「どうしたの?」

立花「ここに来る途中にね…武藤さんと、須藤さんが殺されてた…」

長谷川「え…!本当に!?」

立花「酷い…酷いよみんな…なんでこんなに簡単に殺し合うの?昨日までクラスメートだったのにっ!
長谷川さんたちは違うよね…?こんなゲームに乗ったりしてないよね…?」

泣きながら立花は言った。


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最終更新:2010年06月06日 02:16