長谷川「もちろんっ!ねぇ、沙耶」
木頭「う、うん!もちろん!」
立花「あーそう、ならよかった。」
長谷川「え…?」
青い閃光が長谷川の顔に飛び込んできた。
ばちばちと激しい音とともに長谷川はひいやああと声をあげながら尻もちをついた。
木頭「聡子っ!!」
スタンガン。
長谷川「え??なに???今…びっくりして…」
立花「チッ!!」
木頭「いやああああっ!!」
そう言うと木頭は手元にあったデイパックを立花に思いっきり投げつけた。
デイパックは立花の右半身に当たり、右手に持っていたスタンガンを弾き飛ばした。
木頭「聡子っ!取って!!」
長谷川は落ちたスタンガンを手に取り、立花に向けて攻撃した。
長谷川「うわああああああああああ」
ビチビチビチッ!!
さっきのスタンガンとは違う音がする。こもったような音。
長谷川「痛っ!くううぅ」
スタンガンはまた地面に転がった。
木頭「え?聡子!!」
そう、スタンガンは使い方を間違えると自分が感電してしまうのだ。
うずくまっていた長谷川に容赦なく立花は追加攻撃する。
右手に携帯電話を持ち、それでおもいっきり長谷川の顔面を殴りつける。
長谷川「うっ!」
倒れこんだ長谷川にさらに―。
ぱんっ―
という乾いた音。
木頭「え…?聡子…?」
立花「武器は1つじゃない…ってね。」
木頭「え…あ……」
立花は少し笑みを浮かべ、木頭に向けてブローニングM1910を構えていた。
その銃口は木頭の頭にロックオンされていた。
木頭「え…あえ…立花さん!!」
立花「さっき武藤さんと須藤さんが死んでたって言ったよね。」
木頭「…」
立花「私が殺しちゃったの。須藤さんの武器、コレ。」
木頭「そんな…まって…」
立花「今更人殺すのなんて躊躇しない。最初は躊躇したけどね…」
木頭「い…いやあああああああああああああああ」
大声で叫ぶと木頭は右にあったサブマシンガンを手に取る。
しかし、時すでに遅し。
パンッ!
銃弾は木頭の額にヒットした。
木頭の手がサブマシンガンのトリガーに指が触れる前に、木頭の意識はなくなっていた。
立花「ごめんなさい。私は生き残らなくちゃいけないの…。」
立花はそっと地面に転がったスタンガンと2人のデイパックを拾い上げ、
水1本とパン6個、最後にH&K MP7を手に持ち、静かにその場を立ち去った。
【8番 木頭 沙耶、18番 須藤 優花、30番 檜山 聡子、37番 武藤まいこ 死亡 残り26人】
律「ふぅ、大丈夫か?澪」
澪「大丈夫…律こそ、大丈夫か?」
律「あたしは大丈夫。ドラムのおかげで腕だけは鍛えられてるからな!」
澪は右腕を怪我しているため、律は自分の荷物とデイパック、それと澪の分のデイパックを持って山を登っていた。
澪「(律…ありがとう…)」
律「しかし、もう結構歩いたよなぁ、2時間くらい歩いたろ…」
澪「でも、ここまで誰とも会わないのも不思議だよな…」
律「あえて山道通ってきたからな。」
澪「唯とむぎと和…どうしてるかな…」
律「一番心配なのは和だ…あいつ、校舎裏で待ってるって言ったのに来なかった…
なんか変なことに巻き込まれてなきゃいいけど…」
この状況で、変なこと=死 である。
律「ごーめん、だめだ(笑)ちょっと休憩!」
澪「うん、ありがとな、律」
ザッ―。プッ―。
律&澪「!!」
坂持「ハーイ、皆さん聞こえてるかなぁ~」
律「っっ!!あいつだ!!」
澪「そそそ、そういえば確か放送があるって…」
律「そうだ!0時と6時に禁止エリアとやらの!…ということは今、夜の12時か!」
坂持「みんな頑張ってやってるかぁ~?まだ殺し合いが始まってそんなに時間たってないけど、1回目の放送でーすっ」
坂持「え~じゃぁまずは今までに死んだ人の発表だな~出席番号順な~」
律「死んだ人…って…」
坂持「5番 岡田 春菜、6番 菊池 多恵、8番 木頭 沙耶、14番 桜井 美帆、15番 篠田 明日香、18番 須藤 優花、25番 豊永 優、30番 檜山 聡子、31番 福山 葵、34番 松井 沙織、37番 武藤まいこ、以上11名っ」
律「なにっ!?もうこんなに…っ!!」
澪「嘘…」
律「嘘だろ…11人も…まだ始まって3,4時間しかたってないぞっ!」
坂持「なかなかのハイペースだぞぉ~っ!センセイ、皆が頑張ってくれて嬉しいなぁ~」
律「このっ!!」
坂持「続いては禁止エリアの発表で~すっ、1回しか言わないからな~みんな地図にメモしろよ~」
律はあわててデイパックの中からペンと地図を取り出す。それを見て澪もデイパックから地図を取り出す。
坂持「禁止エリアは以上っ、みんな友達が死んで辛いかもしれないけどっ、頑張らなきゃだめだぞっ
あ、そーだそーだ、地図の横に出席番号順に皆の名前が書いてあるだろ~?死んだ友達をチェックしとくと便利だぞ~」
律「この野郎っ!」
坂持「じゃ、次の放送は朝の6時でーすっ!それまでみんな頑張れよ~っ」
プッ―。
律「くそっ…もう11人も…なんでだよ…」
澪「うううう…」
禁止エリアのチェックをしていたあたりから澪は泣いていた。
律も涙が出そうになったが歯を食いしばってこらえた。
律「澪…。唯とむぎと和の名前が呼ばれなかった。3人とも無事だ。」
澪「みんな…みんなと会えないかな…怖いよ…これだけ死んでるってことは誰かが殺してるんだろ?
この島のどこかに人殺しがいるんだよ…律、どうしよう…もうだめだよやだっ帰りたいよお…
私たちもう明後日には死んじゃうんだよ…みんな死んじゃうんだよ…」
律「…くそっ」
律は黙ってひたすら考えた。皆で生き残って家に帰れる方法を・・・しかし、無理だった。
この首輪がある以上生徒全員の命は奴らに握られている。なんとかこの首輪を外すことができたら話は別だが、まず無理だ。
律「澪、とりあえず場所を移動しよう。ここにいてもしょうがない」
澪は涙をぬぐいながら重い腰を持ち上げた。
紬「よかった…澪ちゃん、助かったのね…本当によかった…
紬は放送を聞き終えると一安心した。
軽音部のメンバーは誰ひとり呼ばれなかったからだ。
しかし安心している場合ではない。
この状況下で安心できる場合などない。あるとすれば最後の一人になった時だ。
紬「ここも、禁止エリア区域にならないわ。誰か…誰か…」
紬は民家に入った後、その民家の二階の子供部屋で身をひそめていた。
何もすることがなく、気を紛らわせるために部屋にあった本を読んでいた。
紬は何かに気づいたようにデイパックの中身を確認する。
紬「これ…何に使うものなのかしら…」
バッグの中から取り出されたものはヌンチャクだった。
ハズレと言えばハズレである。通水カップやロープよりはマシだが。
ガラガラガラ・・・
紬「!!」
玄関の戸が開く音がした。
紬「(誰か入ってきた…っ!)」
ここで紬はとんだ失態に気付く!
靴を玄関に置きっぱなしにしていた!
紬「(お願い…っ!!軽音部の子であって!!)」
?「誰か…いるわよね…」
紬「!!」
?「私、殺し合いなんてする気はないの!あなたもそうでしょう?お願い!出てきて!!」
紬「和ちゃん!!」
和「むぎ!!」
奇跡的にそこにいたのは和だった!!
軽音部のメンバーではなかったものの紬にとっては最高の登場人物!
紬「和ちゃん!!!よかった…本当によかった…!!
怖くて…ずっと怖くて…」
和「本当に…むぎでよかったわ…」
紬「どうしたらいいかわからなくて…」
和「うん、こんな状況じゃ仕方ないわ…」
二人はとりあえず民家の中の一番奥の部屋へと隠れた。
なにもすることはないが、紬はようやく不安から解放された。といってもまだまだこの先不安だらけである。
和「ところで、軽音部のみんなは?」
紬「うん…それが…」
紬はいままであったことを全て和に話した。
和「大丈夫…会って話せば澪ならわかってくれるわ」
紬「だといいんだけど…」
紬「和ちゃんは今までどこにいたの?」
和「実は…私、教室を出る前に律に声をかけられて…」
紬「りっちゃんに??それで…どうしたの?」
和「うん…校舎の裏で待ってるって言われたの。
でも、校舎から出たら、菊池さんが倒れているの見て、そこで怖くなったわ。」
澪と格闘していた生徒である。
和「怖くて倒れている菊池さんに声をかけることもできなくって、とりあえずそのまま校舎裏に向かうことにしたの。
そうしたら、校舎裏から誰かの悲鳴が聞こえてきて、もう怖くて逃げてしまったわ。」
紬「そう…でも!りっちゃんは無事よ!さっき放送で―」
和「うん…そうなんだけど…私も律に悪いことしたなぁって…
そのあと校舎裏の様子を見に行こうとも思ったんだけど…
私出席番号遅いし、全員が出てから30分後に禁止エリアになる校舎付近にはその後怖くて近づけなかったの。」
紬「仕方がないわ。りっちゃんも話せばきっとわかってくれるわ!」
和「だといいわ。」
紬「ここにずっといれるかしら…みんなとの連絡手段もないし…」
和「絶対安全とまでは言いきれないけど、予防程度ならできるわ。」
紬「??」
和「私の鞄にこれが入っていたの。GPS機能が付いたレーダーみたい…」
紬「え!?」
和「まだ使い方には慣れていないけど、ある程度わかるわ。この首輪に反応してるのかしら…」
和に支給された武器は探知機。簡易レーダーである。支給される武器はこういう補助的なものもあったのだ。
この武器は誰がどこにいるのかはわからないが、首輪を付けている者がどこにいるか容易に把握できるものであった。
紬「すごい!!これでみんなと再会できるかもしれないわ!」
和「うん、すぐには無理かもしれないけど。
―だから私がここに来た時も、この民家に人がいるっていうのはわかっていたの。
でも長時間動きがなかったから声をかけてみた。そうしたら運良くむぎだったってわけ。」
紬「なるほどー」
和「今ならこの民家の周りに誰もいないわ。ここを出ましょう!これがあるからいきなり人と鉢合わせすることもないわ」
紬「わかったわ!」
和と紬は立ち上がり、静かに民家を後にした。
……
唯「じゃかじゃかじゃんじゃん、じゃかじゃん、じゃかじゃん、じゃーん!」
唯「ふう、アンプないから綺麗な音出ないや…」
唯は小さな小屋でギターを弾いていた。
お気に入りのギター、ギー太ことレスポール
唯「次はふでぺん…っと。…ここの出だしがむずかしいんだよねぇ」
~♪
唯「はぁ、指痛くなってきた。ちょっと休憩しよ」
まったく緊張感がない子である。
唯「(…アンプどっかにないかな?)」
~♪
唯「みんな今頃なにしてるんだろう?」
唯「私ここにいて平気かなぁ…」
なんとあろうことか唯は禁止エリアをメモしていなかった。
しかし、幸いにもさっきの放送で発表された禁止エリアに唯の場所は含まれていなかった。
唯「ふぁあ、眠くなってきた。もう今日は寝よう…おやすみギー太」
小屋にあったソファーに横になって、唯はギターを抱えながら眠りについた。
……
飯田「…これ…手榴弾?」
太田「映画とかで見るやつだ…」
山の上にある神社の境内、飯田慶子と太田潮がいた。
2人は普段から仲が良かった。中島信代も含め、3人でよく遊んでいた仲だった。
飯田「信代…死んじゃったよ…うっ、うちが話しかけなければ…」
太田「慶子のせいじゃないよ…自分を責めちゃだめ。」
飯田「これから…どうする?私たち死んじゃうんだよ?もうさっきの放送で11人も死んでるよ…」
太田「それだけこのゲームに参加した人がいるってことよね…」
飯田「うちら、どうにかして脱出できないかな?」
太田「無理だよ…」
飯田「やだ…家に帰りたいよ…ぐっ、お母さん…」
そこで飯田がひらめく・・・っ!
飯田「そうだ!!この手榴弾!!!」
太田「え?それを…どうするの?」
飯田「これをあの校舎に投げ入れるっ!あの坂持とかいう奴らをぶっ殺すっ!」
太田「そんな…無理だよ…」
飯田「あいつらをぶっ殺せばこの島からも脱出できる…っ」
太田「でもあそこの校舎は禁止エリアだよ…?」
飯田「だから、考えよう……どうやってあの校舎に手榴弾を投げ込めるか」
太田「でも…」
飯田「どっちみちうちら死んじゃうんだよ!?やるしかないよっ!!」
太田「この首輪……取れるのかな…?」
飯田「やってみるしかない!それともうちらで殺し合いできる…?」
太田「…」
飯田「死んだ信代のためにも…頑張ってみようよっ!」
太田「わかった…やってみよう」
無謀な策に、二人は出た。
……
菅原「うう…怖いよぅ…」
昭和時代を匂わせる古い民家に菅原有紀はいた。
彼女は背も低く、クラスでは大人しい部類だった。
唯一菅原と仲のいい久遠円と、槇千鶴とはこのゲームが始まって以来会っていない。
菅原「私…どうすればいいの…?」
彼女は人一倍臆病で、その気の小ささは澪をはるかに超えていた。
菅原「一人は怖いけど…もうあんなに死んだ人がいる…もう殺し合いは始まってるんだっ…!」
支給された武器の斧を抱えて震えていた。
ガラガラガラ―
菅原「ひぃっ!!!」
思わず大きな声で悲鳴をあげてしまった。
?「誰?」
菅原「やだやだ…来ないでっ!!誰も来ないで!!!!一人にさせて!!!!」
仁科「みーつけた」
ぬうっと菅原の前に見覚えのある顔が突如現れた。
菅原「ひぎゃああああああ!!」
そこに現れたのは仁科楓だった。彼女は友達との心中を裏切り、このゲームに乗ることを決意した。
そのことは菅原は知らないが、いきなりだったので大きな悲鳴をあげてしまった。
菅原「やだっやだっ!!!殺さないでぇ!!!」
仁科「うるさいよ。」
菅原「やめでやめでえええええあああああああああ」
仁科「うるさいって言ってるでしょ!!」
菅原「あわわわわわわわわあばばばばばばばばばば」
パンッパンッパンッ―
乾いた音が響き渡る。
仁科「死ね!死ねっ!!うるさいんだよっ!」
仁科の放った9m口径の弾は菅原の胸に3発ヒットした。1発が心臓に突き刺さり、即死だった。
仁科「斧とか……使えなさすぎ…」
失笑しながら斧をその場に放り投げると、彼女は菅原のデイパックの中身の必要なものだけ自分の鞄にしまった。
仁科「せっかく誰かと会わなかったか聞こうと思ったのに…ま、どっちみち聞いた後は殺すつもりだったけど」
そう言い残すとその民家をそっと後にした。
【17番 菅原 有紀 死亡 残り25人】
最終更新:2010年06月06日 02:17