音楽室

唯「うぁ~…」

律「なーに唸ってんだよ」

唯「さっきのテストでさぁ、書けなかったところがあったんだけど、今になって答えがわかったんだよ…」

梓「あぁ、私もたまにそういうのあります。悔しいですよねアレ」

唯「私なんて毎回だよ…」

澪「そうならないように、勉強をするんだよ」

唯「むぅ…。あーあ、タイムマシンでびゅーっと過去に戻ってテスト中の私に答えを教えたいよ」

律「ムチャクチャ言ってら」

唯「ねームギちゃん!タイムマシン持ってないの~?」

紬「あるわよ?」

唯律澪梓「あるんかい」


翌日 音楽室

紬「はい!これが昨日行ってたタイムマシンよ。琴吹家が極秘に開発してるものの試作品なの」

律「へぇ~…タイムマシンって言うから、こう…乗り物みたいなのを想像してたけど…」

梓「腕時計型なんですね」

唯「ねえねえ!早速使って試験中の私に答えを教えに行こうよ!!」モグモグ

澪「こらこら、そういうのを悪用って言うんだぞ。あと食べながら喋るのも行儀悪いよ」

唯「ゴクン…。えへへ~。ダメかなぁムギちゃん?」

紬「うん…。そういう使い方は良くないわ…」

梓「そうですよ!ズルしていい点とるなんて最低です!!」

唯「う…ごめんなさ~い」

律「でも面白そうだな!使ってみようぜ!」

澪「いや…でもこれ試作品なんだろ?危ないんじゃないか?」

紬「大丈夫。一応今のところ、ちゃんと時間旅行できるし、現代に戻ってくる事もできるみたい」

唯「じゃあ使ってみようよ!ね、どうやって使うの~?」

紬「使い方を教える前に注意事項があるの」

梓「注意事項?」

紬「うん。試作品って言ったけど、実際は機能面ではほぼ完成しているの。でも、これを使えばタイムパラドックスで簡単に悪事を働くことができちゃうのよ」

紬「さっきの唯ちゃんみたいに試験の結果を改竄したり、ズルしてお金儲けしたり、人を消したり…」

律「あっぶないなぁ」

紬「そういったものを防ぐ方法がまだ確立されていないから、このマシンを世に出すのは危険すぎる…。だから『試作品』なの」

梓「なるほど…」

紬「多分、このマシンは永久に日の目を見ることはないわ」

律「なんで?」

澪「もしこれがこの先世に出ているなら、今の時代に未来の人が来ているはず。でもその様子はないから…」

紬「そういう事。だから開発チームはこれを封印する事にしたし、これから先出回ることもないわ」

梓「いいんですか?そんな物を持ち出してきて…」

紬「うん。みんななら悪用はしないだろうし…それに面白そうだから♪」

澪「結局それか…」

唯「うーん…私には難しくてよくわかんなかったけど、とにかく悪いことをしなければいいんだね?」

紬「そう!」

律「わかった。悪さはしないよ。…じゃ、使っていいかっ!?」

紬「うん!…時計の表示を行きたい年月日時にあわせて、ここの横のスイッチを3回押すだけでオッケーよ。現代の時間は時計が自動的に覚えててくれてるから、スイッチを2回押すだけで元の時間に戻れるわ」

律「了解!で、いつの時代に行く?戦国?縄文?それとも1000年後?」

唯「あ、小学校の時にさぁ、憂がお祭りで迷子になった事があってね!その時はお巡りさんに見つけてもらったんだけど、本当はお姉ちゃんの私が見つけてあげたかったんだ~。だから…」

澪「その時に戻って子供の唯に憂ちゃんの居場所を教えてあげるってわけか」

梓「なんだかスケールが小さいですね…」

律「まぁでもそのほうが私達らしいかもな~」

唯「えーっと…確かあれは8年前の…○月×日だったよ!」

律「記憶力いいなおい!」

梓「唯先輩はすごいんだかすごくないんだかよくわかりません…」

紬「じゃあその日に戻ってみましょう♪」

澪「ム、ムギ!これ本当に安全なんだろうな!?」

紬「大丈夫!琴吹製品は安全・確実がモットーよ!」

唯「じゃあ早速いってみよ~!」

律「えーと…日付を合わせてっと」

唯「スイッチを3回だよね」

律「よし、じゃあみんな一斉にやろうぜ!」

澪「大丈夫…。怖くない怖くない…」ブツブツ

唯律澪梓紬「せ~のっ!!」

ポチポチポチ


唯「…」

律「…」

澪「うぅ…」ブルブル

梓「…」


唯「あれ?何も起こらないよ?」

律「壊れてるのか?」

紬「あ、あれ?そんなはずは…」

澪「ムギ…もしかして…」

紬「うん…。私も実際に使うのはこれが初めてよ」

梓「…やっぱりタイムマシンなんてそう簡単には作れないんですね…」

律「ちぇ~!めちゃくちゃ期待したのに~」

唯「結局憂は迷子のままかぁ」

紬「ご、ごめんなさい…」

澪「まぁ失敗ならしょうがない!さ、練習しよう練習!」

律「急に強気になりやがって…」

唯「じゃあ練習始める前に食べかけのケーキ食べなきゃ!…って…あれ?」

澪「ん?どうしたの?」

唯「私のケーキがない…。りっちゃん!もしかして食べた!?」

律「なっ!いくら私でもそんなことしねーよ!大体私もまだ食べてる途中……あ、あれ?」

律「私のも無くなってる!!ていうか皿ごと消えてるぞ!?」

梓「全員分のお茶とお菓子がきれいさっぱり無くなってますね…」

紬「ケーキならまだあるし、お茶なら私が入れ……あれ?…ポットも食器棚もないわ…」

ガラッ

さわ子「…あら?」

律「お~、さわちゃん!…プッ!何だよその格好~!」

さわ子「さ、さわちゃん…?」

唯「ねえねえさわちゃん!何で制服なんて着てるの?」

さわ子「え…?」

梓「とうとう自分でコスプレするようになっちゃったんですね…」

澪「私が拒み続けたから…。ちょっと申し訳ないな…」

紬「先生、ごめんなさい…。ポットが無くなったから今日のティータイムは…」

さわ子「先生…?あの…ど、どちら様ですか…?」

律「は…?」

さわ子「えっと…ここ、軽音部の部室なんですけど…」

律「いや、そりゃそうだろ」

さわ子「あ…もしかして入部希望ですか…?」

唯「…さわちゃん…?」

さわ子「リボンが青いから…3年生ですね?そっちの小さい方は私と同学年ですよね」

梓「へっ?…あ…こ、これって…!」

律「な…なぁ…」

澪「も、もしかして…」

紬「ここ…8年前の…」

唯律澪紬梓「8年前の音楽室!?」

さわ子「…?」

さわ子「あの…ど、どうしたんですか…?」

律「そしてこれは8年前のさわちゃんか…」

唯「このマシン、ちゃんと動くんだね~。さすが琴吹印!」

澪「あ、ああ…あああ…」ガクガク

さわ子「あの…もうすぐ他の部員も来ると思いますから、ちょっと待ってて下さいね」

梓「え、えーと…」

さわ子「あ、私、山中さわ子っていいます。2年生だけど一応副部長やらせていただいてます」

律「えーと…私らが2年で、今は8年前だから…ひぃふぅみぃ…あ!青リボンは3年か!」ポン

さわ子「…?」

澪(ど、どーするんだよ!?私達入部希望者だと思われてるぞ!?)ヒソヒソ

律(う、うーん…)ヒソヒソ

さわ子「ご存知の通り、ウチの部はフォークをメインでやってて…あ、けっこう激しいバンドも在籍してますけど…みなさんはどういった音楽をやりたいんですか?」

唯「かわいいのがいいなぁ!」

梓(ちょっ…!唯先輩!まずいですって!不用意に会話するのは…)ヒソヒソ

唯「あぅ…」

律「あの…さわちゃ…じゃなくて山中さんは、その激しめのバンドをやってるんだよね?」

さわ子「いえ…私にあんな風なのは…。アコギでフォークをやってます」

澪(こ、これ…ヘビメタに目覚める前のさわ子先生だぞ…!)ヒソヒソ

紬(言われてみれば、物腰が柔らかくて大人しそうな感じね…)ヒソヒソ

律(ど、どーしよっか…)ヒソヒソ

澪(他の部員と顔を合わせるとややこしい事になりそうだ…)ヒソヒソ

梓(ここは一旦退室しましょう!)ヒソヒソ

紬(うん…そうしよう…)ヒソヒソ

さわ子「あ、あの~…」

律「ああ!ゴメンゴメン!私ら入部希望っていうかさ、ちょっと見学したかっただけなんだ!」

紬「日を改めてまたお邪魔させていただきますから…きょ、今日はこのへんで…」

さわ子「そうですか…。3年生は今年で部活引退ですし…今からだとライブに間に合うかわかりませんが、いつでも歓迎します」

梓「は、はい!ありがとうございます!じゃ、し…しつれいします!」スタコラサッサ

唯「さわちゃんまたね~」スタスタ

音楽室外

律「うおおおおおおおおお!この時計すげえ!マジで過去に来ちゃったよ私達!!」

唯「ねえねえ!色んなところに行ってみようよ!」

澪「こらっ!あんまり派手に動くのはよくないぞ!!」

紬「そうね。何がキッカケで未来が歪むかわからないし…」

梓「そもそも、ここに来たのは迷子の憂の居場所を唯先輩に教えるためですよ?」

律「あ、そうかそうか!じゃあ早速お祭りに行ってみようぜ!」

唯「らじゃー!」


お祭り

ガヤガヤ

澪「お祭りが始まるまでけっこう待ったな…」

梓「混んでますね…」

唯「でしょ?こりゃあ迷子になるのも無理ないよね~」

律「で、憂ちゃんはどこにいるんだ?」

唯「わかんない」

紬「え…」

唯「だってあの時の私は憂を見つけられなかったんだもん」

澪「はぁ…。てことは、これから私達が憂ちゃんを見つけて、子供の唯に教えてやらなきゃいけないのか」

梓「ややこしいですね…」

アナウンス『間もなく、花火の打ち上げが始まります』

唯「あ、そうそう!たしか花火のちょっと前に憂と離れ離れになっちゃったんだよ」

律「じゃあ今頃はもう憂ちゃんは迷子になってるのか」

紬「早速探しましょう」

澪「よし!じゃあみんなで手分けして探そう。30分後にここに集合ね」

唯「おっけー!」

梓「やってやるです!」

律「で、肝心の子供唯はどこなの?」

唯「え?うーん…今頃は憂を探してるんじゃないかなぁ。あちこち歩いて。ちなみにこの頃の私はちょんまげみたいな髪型してるよ~」

梓「じゃあそのちょんまげ先輩の事も探さなきゃいけないじゃないですか!」

紬「思ってたより大変ね…」

唯「大丈夫!なんとかなるよ!みんなもう大きいんだから!」

律「ああ!唯と憂ちゃんが再会できるように頑張ろうぜ!」

梓「わかりました!」

澪「くれぐれも騒ぎは起こすなよ。未来を変に歪めないように」

紬「じゃあ行きましょう!」

唯「待ってろー!私と憂!!」

梓パート

梓「うーん…人が多すぎて見つからないなぁ…」

唯『うい~!どこにいるの~!!私~!どこ~!?』

梓「唯先輩、あんな大声出して…。憂の事が心配なんだろうな…」

梓「…どこにいるんだろう…」

黒髪の女の子「ま、待ってよ~」

カチューシャの女の子「澪ちゃんこっちこっち!金魚すくいやろうよ!」

梓「ん…?あ、あれってもしかして…」



律パート

唯『うい~!どこにいるの~!!私~!どこ~!?』

律「唯のやつはりきってんなー。私も負けてられないな!」

律「…とは言ったものの、この人込みだもんなぁ。どうしたもんかね…」

さわ子「うふふ…そうなんですか。面白いですね」

男「そうだろ?あはは」

律「あっ!さわちゃんだ!…横にいる男は彼氏かな?」

律「いや…手を繋いでるわけじゃないし…あぁ、フラれたってのはあの人の事か」

さわ子(…今日こそは…手を繋げるといいな…)ドキドキ

男「それでさ、そいつがこう言うんだよ。「俺はカルアミルクじゃない!」って。笑っちゃうよね」

さわ子「うふふ」

律(さわちゃん…頑張れよー。フラれるけど)



澪パート

澪「うーん…いないなぁ…」

唯『うい~!どこにいるの~!!私~!どこ~!?』

澪「唯の声だ…。…よし!あの二人を絶対に再会させてあげよう!」

DQN「お!ねえねえキミ!一人~?」

澪「ひっ!?」ビクッ

DQN「その制服、桜高だよね~?」

澪「あ、あの…えっと…」ビクビク

DQN「いやー、めっちゃ可愛いじゃん!ちょっと一緒に遊ぼうぜ~?」

澪「ひいいいいいいいいい!!(こわいこわいこわいこわい!)」

DQN「そんな怖がらなくていいって~。さ、行こう行こう!」グイ

澪「きゃっ!ちょ…ちょっと…!」

カチューシャの女の子「ていっ!!」ビシッ

DQN「いてっ」

澪「え…?」

DQN「ん~?何だこのちびっ子は…」

カチューシャの女の子「その人嫌がってるじゃん!やめなよ!!」

黒髪の女の子「り、律ちゃん…やめようよ…。怖いよ…」

カチューシャの女の子「こーゆーのはオンナノテキって言うんだよ!あっちいけー!」

澪(こ、これ…子供の頃の私と律!?そういえば、このお祭り、律と一緒に来てたかも…)

DQN「あのさぁ君、俺はこのお姉ちゃんと遊ぶんだから、向こうに行っててくんないかな~?」

幼律「ていっ!」ビシッ

DQN「あいでっ」

幼澪「うぅ…」ビクビク

幼律「ていていっ!」ビシシッ

DQN「わかった、わかったから!あーもー!!」スタコラサッサ

幼律「お姉ちゃん、大丈夫?」

澪「…」

幼律「お姉ちゃん?」

澪「…うん。大丈夫だよ。ありがとう、守ってくれて」

幼律「へへへ」

澪「…ふふっ」

澪「あ…そうだ。ポニーテールの女の子か、ちょんまげ?の女の子を見かけなかった?」

幼律「え?うーん…ちょんまげの子なら見たような…」

澪「本当!?」

幼澪「さっき、「ういを見なかった!?」って聞かれて…怖かった…」

澪「どこ?どこで会ったの?」

幼律「えーっと…」

ちょんまげの女の子「うい~、うい~」

幼澪「あっ!あの子だ!」

澪「唯っ!」

幼唯「ふおっ!?」

澪「唯、良かった。見つかった…」

幼唯「え?」

澪「えと…キミ、妹を探してるんだろ?」

幼唯「うん!ういが迷子になっちゃって!私、お姉ちゃんだからみつけてあげないと!」

澪「私も一緒に探すよ」

幼唯「ほんとっ!?」

澪「うん。私の友達も一緒に探してくれてるからさ、きっと見つかるよ」

幼唯「わーい!」

澪「あ、キミたちもありが…」

澪「…って、あれ?いなくなってる…」

澪(……ありがとう、律)

幼唯「ね、早く行こう!」

澪「あ、うん!」


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最終更新:2010年01月25日 03:44