プッ―。

坂持「みんなおっはよー!今日はいい天気だな~でも夜から雨降るって言ってたから気をつけろよ~」

坂持「えーっと、まずは死んだ人だな~!17番、菅原有紀さんただ一人っ!」

坂持「センセイ残念だなぁ~、最初がいいペースすぎただけにな~」

坂持「まぁ、あと2日以上あるしなあ~ゆっくり殺し合ってくれなー」

坂持「じゃー最後に禁止エリアなー、8時にE=8、9時にC=3、10時にF=9なー」

坂持「じゃあまたお昼になー!!」

プツッ―


唯「あえ…?うるさいなぁ…」

ふと壁にあった時計を見ると6時10分を過ぎたあたりだった。

唯「早いよぅ…あれ?」

自分の置かれている状況にようやく気付いた唯はソファーから飛び起きた。
小屋の小窓からは朝の陽ざしが入ってきていた。

唯「そうか…」

唯「まずいよ…放送聞き逃しちゃったよ…死んじゃった人何人いたんだろう…うぅ」


本来気にする所は禁止エリアだが、唯はこの「禁止エリア」についていまいちどういうものか把握できていなかった。

唯「この地図に書いてある数字と英語がそうなんだよね…」

地図を取り出し考えてみるが意味がわからなかった。

唯「ここから動くと、その禁止エリアに入っちゃうかもだから動かない方がいいよね…?」

またもや奇跡的にも唯のいる小屋は先ほど発表された禁止エリアには含まれていなかった。
これで少なくとも昼までは滞在できる。

唯「今日もちょっと練習しようか。ギー太」

唯は壁に掛けてあるギターにそう話かけると、ギターを手に取った。

唯「タブ譜持ってくればよかったなあ…」



……

ぱらららららららっ!ぱららららっ!!

律「なんだっ!?」

澪「!?」

律「なんだよ…この音…!?」

ぱららららららららっ!!

澪「結構近いぞ…」

山を登っていた2人にタイプライターのような音が聞こえてきた。

律「………」

澪「聞こえなくなった…」

律「なんだったんだ…?銃声じゃ…ないよな…」


立花姫子はサブマシンガンのマガジンを取り代えながら、こう言った。

立花「いいテストになったわ…。この銃、意外と私にも扱えるのね…」

立花「それより…なんで誰も平沢さんと会ってないの…?誰かと一緒に行動してるのかしら…軽音楽部の人と…」

【3番 遠藤 未知子、33番 保坂 安曇   死亡 残り23人】


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

昼休み―

キュッキュ

立花「相変わらず、大切にしてるのね!そのギター」

唯「あ!姫子ちゃん♪」

立花「(えっ……姫子ちゃん…??」ドキドキ

唯「私、まだまだ全然ギターへたっぴだから、ギー太には申し訳ないなって思ってるんだ~
だからこうやって練習できない時はギー太を綺麗にしてるの」

立花「そうなんだ~、きっとギー太君も嬉しいはずだよっ」

唯「へへへ~そうかな~」

立花「うん、それに平沢さんはギター下手じゃないと思う。学園祭での平沢さんの演奏、すごくカッコよかったし」

唯「え!?覚えててくれたの!?」

立花「もちろん!平沢さん遅れて来たから余計に印象に残ってる」クスッ

唯「でへへ~」

立花「(可愛い…///)」

唯「そうだ、姫子ちゃん!お昼まだなら一緒に食べようよ~」

立花「えっ?」

唯「だめー?」

立花「ああっいや、平沢さんいつも軽音楽部のみんなと食べてるから…いいのかなって」

唯「今日はね、みんな委員会やらなんやらで私1人なんだぁ」

立花「本当にっ!?じゃあ一緒に食べよっ!清香と一緒に3人でっ」

唯「さやかって…関口清香ちゃん?」

立花「うん、いつも一緒にご飯食べてるの!」

唯「うん!やったー!!」

立花「清香ーご飯食べよー」

唯「やっほー!おじゃましまーす!こうやって一緒にお昼食べるの初めてだね!」

関口「うん。いらっしゃい」

唯「清香ちゃんは、姫子ちゃんと昔から仲いいの~?」

関口「3年間同じクラスなの…」

唯「そうなんだぁ~いいなぁ~」

立花「清香、シャイで可愛いんだよ~」

唯「あはは、うちの澪ちゃんと一緒だね~」

関口「でも秋山さん、すごくカッコイイからうらやましいなぁ」

唯「清香ちゃんも軽音部に入らない~?」ニヤニヤ

関口「わっ私は…楽器とか…全然駄目だから…」

唯「そっか~、でもね!私も高校入ってからギター始めたんだあ~」

立花「えっ?そうなんだ!」

唯「うん、だからまだまだへたっぴなんだけどね~」

立花「え~見えない!すごく上手だったから!!」

唯「え~お世辞はいいよ~」ニヤニヤ

立花「平沢さんきっと音楽の才能あるんだよ!」

唯「そうかな~」ニヤニヤ

立花「///」

唯「そういえば、姫子ちゃんって可愛い名前だよね~」

立花「えっ…?」

立花「そ…そんなっ///全然っ…」

唯「え~?可愛いよ!!絶対!!ねえ!?」

関口「うん!」

唯「いいな~いいな~姫子ちゃん♪」

立花「ちょっ…そんな…ひひ、ひ平沢さんもっ可愛い名前じゃんっ!」

唯「私は普通だよぉ~」

律「おーい唯!ってあれ?まだご飯食べてなかったのか?」

唯「あ!りっちゃん」

律「さわちゃんが部室来いだってさー」

唯「ええっ!?なんで私??」

律「しらね、なんかやらかしたんじゃないか~?」

唯「してないもん!ぶーぶー」

律「っはは、早く行かないとコブラツイストかまされちまうぞ~」

唯「それはやだっ!!あっ!姫子ちゃん、清香ちゃんごめんねっ私行かなきゃっ」

立花「あっ…うん!」

唯「ごめんねっ!また一緒にご飯食べようね~」

立花「(また…一緒に…っ)///」

関口「よかったね!姫子!」

立花「ちょ…ばか!…そんなんじゃ…っ」

~数分後~

律「さっきはごめんね、食事中にっ」

立花「ううん。全然いいの!」

律「唯と仲良かったんだ~立花さん」

立花「今日初めてこんなに話したんだっ」

律「そうなんだ!あ、そっか~いつもはあたしたちと昼飯食ってるもんなぁ…」

立花「ねえ田井中さん、平沢さんと付き合い長いんだよね?」

律「あーうん、3年間同じ部でやってきたからな~」

立花「平沢さんってどんな感じの子なの?」

律「ん~………。いつもだらけてて…お菓子ばっか食べてて…いつも笑ってる…感じ?ごめんうまく説明できないや」

立花「そうなんだ…笑顔が可愛いよね!平沢さん」

律「そうなんだよ~、あの笑顔されちゃうとなんでも許しちゃうっていうか…ははは」

立花「だよね!!だよね!!」

律「でもアイツ、1人じゃ何にも出来ないからなぁ~」

立花「そうなの?」

律「家事とかなにもかも全部妹さんにやってもらってるんだぜ(笑)」

律「なんかでも…、1人じゃ何もできないから1人になった時とか心配だな…」

立花「そっかぁ…そうなんだ………ありがと♪」

律「うんっ」

立花「(ふふふっ、また平沢さんの新しい部分、知れたっ…♪)」


~~~~~○~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
     0
   o

立花「平沢さんは…私が守る…っ」

立花「みんな殺して…私と平沢さんが2人きりになって…」

立花「それで……っ」

マガジンの交換を終えた立花は速やかにそこから立ち去り、山を降りた。



……

ピッピッピッピ

和「ちょっと待って!この先誰かいるわ…」

紬と和はあの民家を出て西から山を登り、途中にあった小屋で一夜をやり過ごした。
睡眠は交代で取ったが、2人ともろくに寝ていなかった。
朝、坂持の放送を聞き終えて小屋を出て、また歩き始めた。

そして崖のあるところに差し掛かった。

和「100mくらい先かしら…?誰かいる…1人だわ…」

紬「唯ちゃんたちだといいわ…」

和「こっちに来る…隠れて誰か確認しましょう」

2人は森のしげみに隠れて様子を覗うことにした。

ガサガサ

数分待つと、道の向こうからあたりを警戒しながら1人の女子がやってきた。

紬「来たわ…っ」

その人物は高橋風子だった。
和とは今回の修学旅行で同じ班のクラスメートだった。

和「風子だわ…!彼女なら平気よ!!声をかけてもいい?むぎ」

紬「和ちゃんがそう言うなら信用できる子なのね!私は高橋さんとはあまり話したことないから和ちゃんに任せるわ」


和「ありがとう…むぎ」

ガサガサ…

高橋「…っ!!」

和「風子…!」

高橋「!?……真鍋さん……??」

和「風子!!」

高橋「真鍋さんっ!!」

和「よかったわ!無事で…私たち、昨夜から一緒なの。むぎなら大丈夫よ。殺し合いなんかする気ないわ」

高橋「…よかった…」

和「え?」

高橋「ずっと1人で寂しかったの…」

和「もう大丈夫よ。これから3人で行動しましょう」

高橋「うんっ!」

紬「よろしくね、高橋さんっ」

高橋「よろしく…琴吹さんっ!」


3人は探知機から目を離さずに山を登った。

和「そうだったの…」

高橋「多分…だから仁科さんは注意が必要かもしれないわ…」

高橋は昨夜あった出来事を2人に話した。
昨夜、高橋がとある民家の周りを歩いていた時に、民家の中から銃声が聞こえた。

恐る恐るその民家を遠くから観察していたら、なんと仁科楓が民家から出てきたのだった。
今朝の放送を聞く限りその殺された人物は菅原有紀だということが推測できた。

紬「やっぱり…このゲームに参加している子がいたのね…ショックだわ…」

和「他にも殺し合いに進んで参加している子がいるかもしれないわ…」

高橋「ええ、仁科さんだけが要注意ってわけでもなさそう…」

和「これがある限り鉢合わせの心配はないわ。でももし仁科さん他、殺し合い参加者に出会った時の対処法も考えておきましょう」

紬「そうね…私の武器はこれだし…相手が拳銃だった場合、太刀打ちできないわ…」

高橋「私の武器も…これ…」

そういうと高橋はデイパックからバタフライナイフを取り出した。
紬よりはいい武器だが、どのみち拳銃には歯が立たない。

和「うん……。これを使うときが来なければいいけど…」


……

律「ふぅ、まさかこんな所まで登ってくるやつはいないだろう…」

澪「悪いな…律…鞄とか持たせちゃって…」

律「いいっていいって!それよか澪、傷の痛みどうだ?」

澪「まだ少し痛むけど、昨日よりは平気…」

律「ん!ならよかった!」

律と澪は島の中心よりやや北にある山に登って来ていた。
こんなところまで誰も来ないだろうという、律からの怖がりな澪への配慮である。

律「禁止エリアにも含まれてないし、とりあえず昼までは安全だな…」

澪「そうだな…」

律「とりあえず…腹も減ったしメシにするか!っつってもパンしかないけどな」

そういうと律は支給されたジャムパンの封を開ける。
パンは1人3つしか支給されなかったので、後のことも考えて昨日の夜は2人とも半分しか食べなかった。

律「水もまだ1本以上残ってるけど、考えて飲まないとな…」

澪「そうだな…」

律「どした澪?疲れちゃったか?」

澪「いや…、ちょっと…考え事…」

律「なんだよ…むぎのことか?」

澪「ううん…、どのみち私たち…みんな…明後日には死んじゃうんだなぁって…」

律「…」

澪「最後に…みんなに会っておきたいな…ってさ…」

律「…そうだよな…あたしも…会いたいよ。唯や紬や和に…」

澪「みんな今頃なにしてるんだろうな…」

律「今までこんなに…今みんなが何してるかとか考えたことなかったな…」

澪「こういう状況になってみて…やっぱりみんな大切な仲間なんだな…って改めて実感した…」

律「そうだよな…なんだかんだで3年間仲良くやってきたんだもんな…」

澪「みんな…無事でいてくれ…」

律「うん…今は祈るしかないな…」


この島の中心部からやや東にある診療所に佐々木恵美は昨夜からずっと身をひそめていた。

佐々木「ハァ…もう疲れちゃったよ…」

誰とも話すことなく、この診療所の一室にずっといたのだから無理もない。
佐々木はベッドの上で私物の鞄の中身を出した。

佐々木「澪ちゃん…可愛いなぁ…」

鞄の中から出された出されたのは澪のブロマイドだった。
このゲームが始まってから何回見ているだろう…

佐々木「澪ちゃんに会いたいなぁ…」

このブロマイドは俗に言う『秋山澪ファンクラブ』で売られているものだった。
このファンクラブに所属している写真部員が撮ったものである。
ファンクラブの会員の者は1枚100円で極秘に購入することが可能である。もちろん校則違反だが。

佐々木「まだ澪ちゃんの名前呼ばれてないよね…。澪ちゃん生きてるんだね…よかった…」

佐々木は3年生になって初めて澪と同じクラスになり、歓喜していた。
1年の文化祭のときからの澪のファンであった。
あの文化祭のステージ上で転んだ澪を彼女は今こんな状況でも忘れはしないだろう。

佐々木「っふふ…澪ちゃんったら可愛すぎ…」

またあの時のことを思い出して苦笑した。
まだゲームが始まって1日も経っていないが、何回このことを思い出しては思い出し笑いしていただろう。
彼女はもう澪のことしか考えられなかった。


「いやあああああああああああああ」

佐々木「!?」

診療所の外から大きな悲鳴が聞こえた。
佐々木はベッドから降り、ベッドの下に身を隠した。

佐々木「なに??…何なの!?」

ぱんぱんぱんぱん―

銃声らしき音がだんだん近くなってくる。

佐々木「やめて…っ!こないでぇ…っ!お願い…神様…」

ガチャン!!

佐々木「ひぃっ!!」

佐々木の祈りもむなしく、診療所のドアが開いてしまる音がした。
誰かがここに逃げ込んできたのだ。

追われている側が逃げ込んで来たのだから巻き添えになる可能性が高かった。
そう思った佐々木は診療所の窓から脱出を試みた。

入ってきた者に気づかれないよう、荷物を持ってそっと窓を開けて脱出した。

佐々木「これで…もう大丈夫…。よかった…誰だか知らないけど、ごめんなさい」

佐々木「澪ちゃんに会いに行こう…そうだ!澪ちゃんを探しに行こう!!」


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最終更新:2010年06月06日 02:18