立花「平沢さんっ!」
唯「なあに?姫子ちゃん」
2人は民家を出て、民家に1つしかなかった傘を相々傘で道を歩いていた。特に目的もなく。
もうここまできたら唯以外のすべての人間を殺す。
誰かと鉢合わせすれば、その人間をこのマシンガンで撃つだけ。
立花「ゆゆゆっゆy」
唯「おん?」
立花「ゆゆゆ唯ちゃん……って呼んでもいいかな…」
唯「いいよー!私もうすでに勝手に姫子ちゃんって呼んでるし!」
立花「ほっ本当!?やった!唯ちゃん!」
唯「ひーめっこちゃん♪」
立花「私たちなんかカップルみたいだね……」
唯「あっ!そうだねぇ…腕組んだりしちゃったりしてっ!ほれっ!」
立花「えっ…ちょ」
唯「あはははじょーだんだよー!姫子ちゃん可愛いー」
立花「もうすぐ12時になるけど、唯ちゃん眠くない?」
唯「うん!へーき!私お昼寝しちゃったんだぁ」
立花「そうなんだ」
2人は目的もなく歩いていると、やがて1つの運動場らしきところにたどり着いた。
唯がいた民家から50mも離れていない。結構近い所に運動場はあった。
こんな見晴らしのいい所は、本来危険な場所である。狙撃される対象となりやすい。
唯「あっ!あそこに部室みたいのがあるよ!あそこ入ろうよ」
立花「そうね、雨も避けられるし」
まだ時間はたくさんあった。
そう、唯と一緒に過ごす時間も。
まだゲームが始まってから1日と少ししか経ってないのだから、
あとまるまる2日はあることになる。
プッ―
立花「あっ…放送の時間だ…」
唯「姫子ちゃん、私地図持ってないんだ…」
立花「大丈夫、私がチェックする」
体育倉庫の3人は、隅でこっそり懐中電灯を使い、あまり音を立てないように集まっていた。
懐中電灯はまだ1本目。必要のない時は電源を切っていたから意外と持った。
律「来たな…」
そう言うと3人は地図をデイパックから取り出した。
坂持「おーい、おまえらぁ~元気にやってるか~雨辛いかもだけど頑張れよー!」
どこかの学園ドラマを思い出させるような嫌な声が聞こえてきた。
坂持「まっずは~、死んだ人~今回の大会はすごいぞぉっ!」
坂持「22番 瀧 エリ、28番 野中 春子、35番 藤原 みづき、7番 北村 静香、27番 仁科 楓、35番 槇 千鶴」
律「なにっ!?こんなに…っ!」
坂持「うらー!!頑張れよ~ラストスパートだっ!」
坂持「次の放送がないことを祈るぞっ!じゃあな~」
プッ―
紬「えっ…」
律「ん?どしたむぎ?」
紬「もう…あと残り6人…」
律「えっ?嘘…」
紬「私たち3人、唯ちゃん和ちゃん、立花さん…」
澪「何!?」
律「おいおい…うちら5人vs立花さんってことか…?」
澪「唯と和…っ!大丈夫かな……」
律「5対1でも…こりゃ全然有利じゃねえぞっ…」
仮にこの後、5人合流しても5人の武器は
律=銃、澪=通水カップ、紬=ヌンチャク、和=探知機、唯=ナシ
サブマシンガン、拳銃4丁、スタンガン。
圧倒的不利…っ!!
鉢合わせすると、いくらこっちが5人でも勝ち目はなかった。
……
立花「えっ…?」
唯「どっ…どうしたの?姫子ちゃん」
立花「残ってるのは私たちと、軽音楽部のみんな、あと真鍋さんだけよ」
唯「え……でもみんな…無事だったんだ…良かった…」
立花「そうみたいね」
立花はちっとも嬉しくなかった。
逃がした仁科がてっきり殺ってくれるものだと思っていたからだ。
しかし、仁科が殺したのは槇1人だけ。
立花「(使えない子…)」
唯「ねぇ、姫子ちゃん。最後に皆に会いたいんだ…お願いっ!一緒に探してくれる?」
立花は笑顔を見せた
立花「もちろんっ!」
唯「ありがとう!姫子ちゃん!!」
立花「でもここじゃ濡れちゃうから、あの小屋に入ろ」
唯「うん!」
2人は小屋に向かって歩き始めた。
……
和「みんな!無事なのね!!唯も!!よかった…」
放送で皆の生存を確認すると、立ち上がり玄関に向かった。
和「探しに行かなきゃ…みんなと合流しなきゃ…でも…そう考えると、立花さんが…みんな殺したってことよね…」
和は急いで民家を出た。
皆が立花と遭遇するのはまずい。
一刻も早く5人を見つけ出さなくてはっ!この探知機で
和は外に出ると雨の中、西の運動場の方へ走った。
……
律「どうするんだよ!」
紬「落ち着いてりっちゃん、時間はまだあるわ」
律「あるって言っても、唯と和は合流してるかわからないんだぜ!?」
澪「確かに…勝手に合流したものだと思い込んでたな…」
律「2人が立花さんと鉢合わせ……和は探知機があるから平気だとしても唯が…っ」
紬「っ…」
澪「!!」
律「どうした澪!」
澪「人影が見えた…」
紬「本当!?」
澪「今…確かに見えたっ!!」
律「和か!?」
紬は懐中電灯の明かりを消した。
ジャッジャッジャッ―
雨の音のせいで微かにしか聞こえないが足音が近づいてくる。
律「ちょっと見てみる」
澪「律!」
律「大丈夫だ。見に行くだけだ」
紬「どうだった?」
律「だめだ、雨のせいで全然見えねえ、ただでさえ曇りガラスなのにっ」
紬「ここに入ってきたらどうしよう…」
澪「やだっやだっ!!」
律「そう…来るのが和だという証拠はないっ!」
紬「どうしましょう…」
律「出よう…っっ!」
澪「ここから!?」
律「そうだ!入ってこられる前にっ!」
紬「それしかないわ!!早く!!荷物をまとめてっ!澪ちゃん!」
澪「わっわわかった!」
澪「そおっとだぞ…」
律「わかってるっ!」
律はそっとドアノブに手をかけ、ゆっくりと右に回した。
キイィィという音もなしにそっと扉は開いた。
律「倉庫の裏に回るぞっ!」
澪と紬は静かに頷いた。
律「後ろに回り込んで姿を確認するっ!和だったら声をかける。それで行くぞ!」
紬「わかったわ!」
3人はドアを開けて、右に回り、倉庫の裏に回り込んだ。
律「来たっ!!」
倉庫をまたいで対面にもうその人物はいた。
雨音のおかげで3人の足音がかき消される。
ようやく3人は倉庫の入り口側とは逆のところに着いた。
律が先頭、紬、澪と続く。
初めてその姿を確認したのは、律だった。
そこにいたのは1人ではなく2人だった。
律は言葉を失った。
その2人…唯と和ではなかった。
1人は唯だった。後ろ姿だったが、ギターケースで一目瞭然。
修学旅行にギターを持ってきたのは唯だけだった。
もう1人、黒髪のショートヘアとは真逆、明るい髪のロングヘア。
律たち5人の他に生き残っている、ただ1人の敵…っ!
立花姫子だった。
律「!?」
紬「なんでっ!?」
澪「立花さんは…」
律はもう我慢できなかった。
唯が危ない。唯があのマシンガンを持った殺人鬼に殺されるっ!!
律「唯っ!!!逃げろっ!!!」
唯「えっ!?」
唯と立花は声のした方を振り返った。
そこには、ずっと会いたかった軽音部の3人の姿っ!!
唯「りっちゃん!!澪ちゃんむぎちゃん!!!」
律「唯っ!!そいつは駄目だっ!!何人も人を殺してる!!一緒にいちゃ駄目だ!!」
立花「ちっ」
立花の舌うちは雨のせいで唯の耳には届かなかった。
律「今すぐ離れろっ!!走れっ!!」
澪「唯っっ!!!」
紬「唯ちゃん!!走って!!」
唯「え?え?みんな!?どうしたの!!」
立花「田井中さん、勘違いしてるわ!私は唯ちゃんを守ろうと―」
律「動くなっ!!」
律は肩に背負っていた鞄とデイパックを地面に落とし、
手に持っていたワルサーPPKを構えた。
立花「ちょっ…田井中さんっ」
澪「唯!!走れ!!!!」
律「その肩に背負ってるのマシンガンだろ!!そいつで何人も殺してきたっ!あたしたちは見たんだっ!!」
唯「えっ?」
立花「ちが…唯ちゃん、田井中さんは気が動転しておかしくなってるのよ」
いや。
唯はわかっていた。3年間付き合って来た、律の性格くらい。
律がこんな状況でおかしくなるわけがない。律は人一倍気使い屋さんで、気が強い。
こんな状況になっても、リーダーシップを率先して発揮するだろう。
ましてや気の小さい澪も一緒となると。律は必死で仲間を守るだろう。
軽音部の…部長として―。
唯「姫子ちゃん…」
立花「……」
律「さ、唯っ!こっちに来いっ!!」
律は右手で銃を構え、左手を伸ばした。
その時だった―
和「みんなっ!!」
探知機で場所を突き止めた和が運動場の敷地内に入ってきた。
和は、立花と唯が来た逆の方向から来た。
裏から回ってきたのだ。
律の方を向いていた唯は和の方を振り返った。
律「和っ!!」
唯「和ちゃん!!!」
みんなが和に視線が行った次の瞬間―。
パンッ!
最終更新:2010年06月06日 02:27