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唯「お疲れ様でした~」

バイトが終わり夜の11時間。
家に帰る道を照らすには月明かりじゃ頼りにならない、だから街灯の明かりを頼りに家へ帰る。
何をするにも足を動かすという作業は面倒だ。

唯「ん……何か落ちてる…」

落ちている物を拾う。
鏡だ…何の変哲も無いただの鏡。
だけど…何故か私はこの鏡に不思議な魅力を感じる。
持って帰ろう。
鏡を鞄に入れて私は再び歩く。
あぁ…かったるい…。

夜道をただひたすらに歩く。
そして、考える今日の事を…。
何も無い一日。
学校には友達もいないし部活もやっていない。
青春を楽しめ?馬鹿馬鹿しい。
学校は勉強さえ出来れば物足りてる。
友達なんていらない。


朝起きて勉強しバイトで金を稼ぐ。
無駄が無い、そこら辺の人間より無駄が無い生き方だ。
友達何ていたって損をするだけだ。
スムーズに私はスムーズに生きたい。
余計な人間関係なんて邪魔なだけだから。

唯「ただいま…」

妹が玄関まで向かえに来てくれた。

憂「おかえりお姉ちゃん!」

唯「バイト行く前に私が作ってたご飯は食べた?」

憂「うん!美味しかったよ」

唯「ありがと…」

唯「じゃあ私も食べようかな」

憂「あ…お姉ちゃん…」

唯「なに?」

憂「あの…お母さんが買って来たアイス二つ共食べちゃった…」

どーでもいい。

唯「そーなんだ、じゃご飯食べるから」

唯「はぁ……」

冷蔵庫を開き私が作っておいた夜ご飯を取り出しレンジに入れる。

憂「ねーねーお姉ちゃんあのね?」

唯「なに?また学校の話し?」

憂「う、うん……」

唯「バイトで疲れたんだ…一人にして」

憂「ごめん……」



鞄からさっき拾った鏡を取り出し自分を写す。
目の隈が酷い…最近あまり寝ていない。
私は勉強ばかりやっているからかなぁ…。
電子レンジがチーンと鳴る。
夜ご飯を温め終わったみたいだ。


唯「美味しい……」

自分で言うのも何だが私は料理が上手い。
妹は全然ダメだ、この前なんか簡単なカレー作らせたらいつの間にかシチューになってる。
だが可愛い妹だ。
あんな冷たい態度を取ってはいるが私は妹が大好きだ。
のほほんとしている。
あの、のほほんとした雰囲気はアルカパだって出せやしない。

ご飯を食べ終わり風呂にも入り私はベットに横になる。
目覚まし時計は6時にセット。
朝は憂と私の分の弁当を作らなければならない。

唯「おやすみなさい」

誰もいない空間に私はポツリと呟いた。
明日もまた同じような一日が繰り返す。
不安も何も無い……うん、不安なんか無い。
私は瞼を閉じる。


朝日が私を照らす。
眩しい…目覚まし時計を見る。
今日も目覚まし時計より早く起きた…何だか勝った気分。
時計のスイッチを切り私は昨日拾った鏡で自分を写す。
寝癖が無いかチェックだ。


鏡は自分を写す。
当然、誰もが知っている事だ。
だが…鏡を見ると確かに私が写っている。
うん、これは私だ。
しかし、違和感がある。
鏡に写っている私は寝癖で髪がボサボサ。
パジャマも違うし何より間抜けな顔をしている。

唯『ほぇ?』

唯「喋った……」

唯『うおっ!鏡の中が喋った!』

何だその反応。

唯「私…だよね…」

唯『ういー!鏡の中の私が喋ってるー!』

これは一体どーいう事?

きっと夢だ…夢に違い無い…。
こんなの、現実的じゃない。

唯『ういー!まだ寝てるのかなぁ?久しぶりに早起きしたのに!』

唯「……………」

唯『ねーねー私?』

悪い夢だよ本当に…。


唯「な…何?」

唯『喋ったぁ!』

こっちの台詞だ馬鹿野郎。
いや…私に馬鹿野郎と言ったら自分に馬鹿野郎と言ってる様な物じゃないか?どーでもいいか。

唯「ア…アナタの名前は?」

唯『平沢唯だよ~』

唯「わ、私も平沢唯」

唯『知ってるよ!だって私なんだもん!』

本当に夢であって欲しい。
昨日拾った鏡を見るといきなり私が私に話しかけてくる。
これは一体どう言う事?

唯『何で頬っぺたつねってるの?』

唯「何でも無いから…」


唯『でもびっくりしたよ!昨日拾った鏡に私が写って、しかも喋ってるんだよ!』

唯「アハハ………」

唯『不思議だね~何でかな?』

唯「知らない……って言うかアナタも鏡を拾ったの?」

唯『うん!』

唯「……ごめん、少し待って確かめたい事がある」

私は拾った鏡をベットに置いて洗面所に向かう。
そして、鏡を見る。
私が写っている……だがあの鏡みたいに好き勝手喋ったり動いたりしない。
うん…これは私だ…。
あの拾った鏡に…きっと何かあるに違い無い。

唯『あ!おかえり~』

唯「うん……」

はぁ……この私は脳天気過ぎる。
妹を見てるみたいだ。

唯『調べたい事って何だったのぉ?』

唯「いや…洗面所の鏡を見たんだよ、そしたら私が写ってたんだけど…勝手に喋ったり動いたりしなかった……」

唯『そーなんだぁ!』

唯『でも、何だか楽しいよ!私とお喋り出来るんだもん!』

唯「私も最高に楽しいよ…」

唯『えへへ~…』

皮肉を言ったつもり何だけど気付いてない…。

唯「一緒に考えてよ…何で鏡に写った私が喋るのか」

唯『うん!わかった~』

唯「あれ?そのパジャマの文字………」

唯「そのハネムーンってパジャマの文字」

唯『これぇ?』

唯「反転してない…文字が反転してないよ」

唯『そーなの?』

唯「うん…鏡なのに何で反転してないんだろう?」

唯『う~ん…きっと私達はお互い違う世界の住人なんだよ!』

唯「違う世界の住人?」

唯『えーっとね~何だけ…パ、パ…』

唯「パラレルワールド?」

唯『それだよ!きっとこの鏡は違う世界を写す鏡なんだよ!』

唯「へ~…」

何だか少し納得してしまった。
…って言うかいつの間にか私はこの事を夢では無いと思ってしまっている。

唯『その世界の私は何をやってるのぉ?』

いきなりの質問に私は少し固まってしまった。
何をやってるか……私は特に何もやっていない。

唯「別に何もやっていないよ」

唯『えー!何もやってないの?』

唯「あ……バイトやってる」

唯『すごーい!バイトかぁ~』

何だかいちいちリアクションが大袈裟な私だなぁ。


唯「ファミレスでバイトしてる」

唯『凄いよ!私もバイトしたいな~』

アナタじゃ無理そうだね…とは言わなかった。

唯「アナタは何をやってる?」

唯『よくぞ聞いてくれました!バンドやってるんだよ!』

唯「バンド……?」

唯『バンド名は放課後ティータイムだよ!』

唯「放課後……何だって?」

唯『放課後ティータイムだよ!』

唯「おかしなバンド名だね……」

唯『うん!さわちゃんが名前付けたんだ!』

唯「さわちゃん?」

唯『さわ子先生だよ!』

唯「山中先生が付けたんだ…あの熱血な先生がそんな名前付けたんだ…」

唯『熱血先生?』

唯「うん、音楽の先生何だけど凄い熱血なんだ…松岡修三みたいに熱血…」

唯『想像出来無い…』

唯『あのね~私の世界のさわちゃんはメタルバンドやってて面倒臭がりなんだよ!』

唯「うわぁ…想像出来無い……」


部屋のドアが突然開く。
憂が目を擦りながら立っていた。

憂「お姉ちゃんおはよう……」

唯「あ…わわっ…」

私は鏡をベットの下に急いで隠す。
バレて無いよね?

憂「お姉ちゃん…電話してたの?独り言が部屋まで聞こえたよ」

唯「そ、そうそう…電話だよ電話!友達に電話!」

友達なんかいないけど。
それより…何か忘れてる気がする。

憂「お姉ちゃん…7時だけどお弁当は?」

唯「あ…ごめん作るの忘れてた…」

憂「ううん…大丈夫だよぉ…今日はパン買うね」

唯「本当にごめん…」

憂「だ、大丈夫だよぉ~私、制服に着替えてくるね」

唯「うん……」



午前8時00分。
私と憂は制服に着替えて家を出た。
あれから鏡はベットの下に隠したまま触っていない。
向こうの私はびっくりしていると思う。

憂「あ…お姉ちゃん昨日の学校であった事話していい?」

唯「……うん」

憂「あのね~私の友達が作ったお菓子が美味しかったの~すっっごく美味しいかった~」

唯「あまり食べてばかりだと太るよ」

憂「えへへ~大丈夫だよぉ」

唯「憂もお菓子作って見る?」

憂「えー…私不器用だから!」

高倉建か…と言いたい気持ちをグッと堪えた。

唯「やってみなきゃ分から無いでしょ?今度教えたげる」

憂「ありがとう!」

唯「着いたね学校」

憂「うん!じゃあ私、教室に行くからね」

唯「バイバイ…」

憂「うん!あ…お姉ちゃん今日はバイト休みだから一緒に帰れる?」

唯「あー…いいよ」

憂「わぁ!やった!!じゃあ教室に行くからね~バイバイ!」

唯「うん……」


自分の教室に着いた私は誰とも挨拶せずに席に座った。
私は鞄からナンプレの問題集と筆箱を取り出し集中。
この問題集を解いてハガキで送るとDSが貰える。
私の趣味の懸賞とナンプレ、同時に私の二つの趣味が出来る優れたアイテムだ。
まさに一石二鳥って奴だ。


紬「平沢さん……」

何の用か知らないけど琴吹紬が私に話しかけて来た。
今は集中してナンプレやってるに…やめて欲しいよ本当に。

唯「どうしたの琴吹さん?」

紬「この前私に貸してくれた小説を……」

そーいえば、貸してたっけなぁ…すっかり忘れてた。

紬「面白かった…」

彼女は私に小説を渡し去って行った…じゃなくてまだ私の側で立っていた。

唯「どーしたの?」

紬「ナンプレ…何時もやってるね」

唯「うん、琴吹さんのおかげで悩んでた所を忘れる事が出来たよ」

紬「そ、そうなんだよかった…」

いや…皮肉なんだけど。

唯「いや…大丈夫だよそれより続きやりたいから」

紬「ごめん……また小説貸してね」

唯「わかったわかった」

彼女は今度こそ自分の席へと戻っていった。


彼女も色々と大変らしい。
家は貧乏でクラスの人達からイジメられている。
私もあんな皮肉を言わなければよかったって少し後悔している。
それより…琴吹さんは綺麗で性格も良くて頭もいいのに何でイジメられるんだろう?
よく分からないなぁ…。


授業のチャイムが鳴り山中先生が入って来た。
私は机に出ている物を引き出しの中へ入れる。

山中「みんなおはよう!」

クラスのみんながやる気の無い挨拶をする。

山中「声が小さいわ!朝の眠気や勉強したくないと言う気持ちは全て挨拶で吹き飛ぶの!さぁもう一度!」

次は学校全体に聞こえるんじゃないか?ってぐらいの声でクラスのみんなは挨拶した。
暑苦しいなぁ…。


山中先生のHRが終わり1時間目。

唯「はぁ……」

さっそく琴吹さんに消しゴムのカスが投げ付けられている。
何であんな事するかなぁ…。
消しゴム代がもったいないし…琴吹さんが可哀相。
彼女はただ下を向いて我慢していた。
イジメ格好悪い。
随分前にそんなCMがあったのを思い出した。


2時間目…3時間目4時間目が終わり昼飯。
私は琴吹さんが消しゴムのカスを投げ付けられてるのをただ見ていただけだったなぁ…。
何かしてあげたいけど…そりゃ無理無理。
次は私がイジメられるもん。
この時間琴吹さんをイジメてる人達は中庭へ昼飯を食べてるからこの時間は安心だろうね琴吹さん。


和「大丈夫?琴吹さん」

紬「うん……」

真鍋和が琴吹さんに話しかけている。
まぁ…彼女も私と同じ傍観者だけど声をかけるだけ私よりまだマシだね。
そんな事より私はこの幻のチョコパンを味わいたい。
美味しいんだろな…なんてたって幻だから。


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最終更新:2010年06月06日 23:03