律「きゃあっ!」
大きな音がした。
同じクラスの
田井中律だ。
彼女は凄いドジっ子だ。
前髪が長くてそのせいで足元が見えなくて、いつもこけている。
カチューシャか何かを付ければいいのに。
いや…たまに何も無い所で転んでるから効果は薄いかも。
昼飯の時間が終わり授業も全て終わった。
やっと帰れる…。
私は教科書を鞄にしまい席を立つ。
紬「あの……」
琴吹さんが話しかけて来た。
唯「なに?」
紬「一緒に帰ろう?」
琴吹さんは服の裾をギュッと掴んできた。
私が男なら彼女に惚れてる。
うん…間違い無い。
特に断る理由も無いし私は頷いた。
紬「ありがと…」
未だに服の裾は掴んだままだ。
また何か忘れてる気がする…まぁいいか。
忘れるって事はそこまで大事な事じゃ無いって事だ。
唯「じゃあ行こうか」
紬「うん…」
彼女は服の裾を掴んだままついて来る。
唯「裾を離してくれる?」
紬「ご、ごめん…」
唯「いいよ別に…」
紬「ごめん…」
彼女がイジメられる理由がわかった。
妙に子供っぽいし気が小さい。
唯「あ………憂」
憂「お姉ちゃん!えっーと…その人は?」
紬「……………」
妹に下を向いたままペコリと頭を下げた。
自己紹介ぐらい自分でしなよ。
憂「よろしくお願いします」
憂「えーと…今日は琴吹さんと帰るの?」
そう言えば…一緒に帰る約束してたっけ…。
唯「うん…三人で帰る?」
憂「だ、大丈夫だよ私は少し友達と話してくるからバイバイ」
唯「悪いねバイバイ」
紬「………………」
琴吹さん何か喋ろうよ。
唯「じゃあ帰ろうか」
紬「うん…」
しばらく二人で歩く。
無言…私達は本当に一緒に帰っているのか?って思うぐらいの無言。
紬「……………」
唯「……………」
紬「…………平沢さん」
唯「え?な、なに?」
紬「助けて…………」
唯「助けてって……琴吹さんを何から助ければいいのかな?」
紬「……私をイジメてる人達」
唯「無理無理…ぶっちゃけ私が次標的になるって」
紬「ごめんなさい……無理だよね」
唯「うん…ごめん」
紬「…ごめん」
紬「……………」
唯「……………」
彼女の言葉は深く私の胸に突き刺さった。
助けたい…助けたいんだけど私には無理だ。
そう言うのは友達に頼んだ方が手っ取り早いよそれか先生。
紬「今日はごめんなさい…」
唯「大丈夫だって…」
紬「私こっちだから…さようなら」
唯「さようなら」
私は長い間、琴吹さんの姿を見送っていた。
彼女の背中は小さく震えていた。
唯「はぁ……」
家に帰って来た私は自分の部屋へと向かいベットから鏡を取り出した。
唯『あ!いきなりいなくなるんだもん!びっくりしたよ~』
唯「ごめんごめん…あのさ…」
唯『どうしたの?』
唯「アナタの世界の琴吹さんってどんな人?」
唯『ムギちゃんは可愛いくておっとりぽわぽわで力持ち!』
ちょっと良く分からないぞ私。
唯「イジメられたりとかしてない?」
唯『ムギちゃんがイジメられる何てありえないよ!澪ちゃんから聞いた話しだと怒ったら怖いみたいだよ!』
唯「そっか……」
唯『そっちはイジメられてるみたいだね…ムギちゃん』
唯「うん…今日一緒に帰ったらイジメてる人から私を助けて欲しいって言ってた」
唯『そうなんだぁ……助けようよ!』
唯「でも…次は私が…」
唯『イジメの標的になるって言うんでしょ~?』
唯「うん…だから無理」
唯『でも…友達なんでしょ?助けようよ!』
唯「ち、違うよ!琴吹さんとはただのクラスメイトだから…」
唯『う~ん…何で友達作りたく無いの?』
唯「だって…友達なんてウザイじゃんお互い気を使ったり…私はもっとスムーズに生きたいから」
唯『友達はウザくなんか無いよ!それに…私は助けるよ!例え友達じゃなくても!』
唯「口だけなら何とでも言えるよ…じゃあ私やる事あるから」
唯『頑張ってね!』
唯「バイバイ……」
はぁ……向こうの私は考えが幼稚だ。
きっと親に甘えまくってるに違い無い。
憂「お姉ちゃんただいま~」
憂が帰っ来た。
私は玄関まで向かえに行く。
唯「おかえり憂」
憂「うん!お姉ちゃん今日一緒にいた人お友達なの?」
唯「違うよ」
憂「そうなんだ…」
憂「あ…今日ね梓ちゃんって人とね一緒にお昼食べたんだ」
唯「よかったじゃん」
うんうん、妹が学校生活を満喫してる。
憂「梓ちゃんってダジャレばっかり言って面白いんだよ~」
唯「親父っぽいね」
憂「そんな事ないよ!とっても可愛いの!」
憂「今日も私の名前を聞いた後に初々しいねって言ったんだぁ~」
ハハッ渇いた笑いしか出ないなそりゃ。
唯「あ…今日はカレーだから少し早めに作るね」
憂「私も手伝いたいなぁ~」
唯「それはダメ」
カレーを食べ終わり私達はテレビを見ていた。
憂「辞めちゃったみたいだね…」
唯「次の総理もすぐに辞めるよ」
それより何処も特番組んでてウザイんだよね。
唯「先に風呂入るから」
憂「うん!」
唯「はぁ………」
温かいお湯が私の体を包む。
唯「助けてか…」
琴吹さんの顔を思い出す。
彼女とは垢の他人なのに…彼女を助けたいと言う気持ちでいっぱいだ。
その気持ちはこの風呂蒲のお湯みたいに少し動けば溢れてしまいそう。
だけど私にはそんな勇気は無い。
私はただ傍観するしか出来無いんだ。
翌日の朝。
私は目覚まし時計の音で目を覚ました。
今日は目覚まし時計に勝てなかった…。
ベットの下から鏡を取り出すが真っ暗だ。
きっと向こうの私はまだ寝ているんだろう。
鏡をベットの下に隠す。
欠伸をして私はキッチンに向かう。
憂と私の弁当を作らなきゃ。
二つの弁当を作り終え麦茶を飲む。
そろそろ憂が起きる頃だ今日は少しだけ早く学校に行こう。
琴吹さんと話しをしたい。
憂「おはよう…」
目を擦りながら憂が現れた。
気付かなかった私は体がビクッとなった。
唯「お、おはよう」
唯「あ…今日は少し早く学校に行くから」
憂「うん……ふわぁ~」
唯「じゃあ制服に着替えるから…」
憂「私は後から行くね~」
唯「わかった…弁当はそこにあるからね」
唯「じゃあ行ってくる」
憂「うん!バイバイ~」
唯「行ってきます」
今日はいい天気だ。
温かい風が私の髪をなびかせる。
唯「琴吹さんいるかな……」
学校に着いて教室に行く。
琴吹さんは…いた。
だけど、またイジメられている。
消しゴムのカスやゴミを投げ付けられたり…アイツら消しゴムの使い方知ってんのかな?
琴吹さんは私に気付き私を少し見る。
そして視線を同じ場所に戻す。
ごめん…琴吹さんやっぱ助けられそうに無い。
澪「おい!お前ら」
隣のクラスの…名前何だっけ?まぁ…とにかく黒髪ロングが琴吹さんをイジメてる人達に話しかけている。
律「琴吹さん、可哀相だからね?やめよ」
確かこの黒髪ロングは田井中さんと仲が良かったような気がする。
紬「………………」
はぁ?ウザイ。
コイツ、ウザイんですけど~。
そう言って琴吹さんをイジメてる奴らは黒髪ロングと田井中さんを罵っている。
私は知ってる。
この黒髪ロングには色々と伝説がある。
例えば…電車の中でお尻を触ってきた男をグーで殴り失神させたり。
セクハラしてきた教師を一本背負いしたり。
とにかく彼女は気が強いらしい。
確か…合気道を習ってると聞いた事がある。
澪「律から聞いたよイジメなんかするな!」
律「可哀相だよ…」
イジメてる人達は少しビビッてる。
ざまぁみろだ。
それに、私もここぞと言わんばかりに彼女達に言ってやった。
唯「本当に不愉快だからアナタ達がそう言う事やってるの見ると」
琴吹さんは黙って下を向いているがきっと…ざまぁみろと思ってるに違い無い。
澪「今後一切彼女をイジメるなよ」
唯「そうそう、退屈な時間がさらに退屈になるから」
律「可哀相だからもうしちゃダメだよ?」
イジメてる人達はぶつくさと文句を言いながら自分の席へと戻って行った。
紬「……………」
唯「琴吹さん大丈夫?」
紬「うん……ありがと」
澪「大丈夫だよ、またイジメられたりしたら私に言うんだぞ」
紬「ありがと……」
唯「次は私が標的になるかもだからそん時は私も頼んでいい?」
澪「あぁ、いいよえーと…」
澪「平沢か…わかった今日はありがとう」
唯「へ?何が?」
律「琴吹さんのイジメを一緒に助けてくれた事だよ~」
唯「ち、違う助けた分けじゃ…ほら、不快だったからさ」
紬「平沢さんありがとう…」
唯「アハハッ……」
授業が全て終わり私は琴吹さんと一緒に帰っていた。
紬「私ピアノが趣味なんだ…」
唯「へー…」
紬「私のお家貧乏だからお家にあるピアノぐらいしかやる事なくて…」
今日の琴吹さんは妙に饒舌。
イジメから開放された事がよっぽど嬉しいんだろうね。
紬「じゃあ私こっちだから…」
唯「あ…うん、バイバイ」
紬「うん……えと、私達って友達だよね?」
唯「あー…アハハ」
まぁ…一人ぐらい友達がいても問題無いよね。
唯「そうだよ…じゃあまたね」
紬「うん…」
最終更新:2010年06月06日 23:05