春、新年度!

先生「えー、おまえらも今年から二年生でな、サンドイッチでいうとハムの部分や」

先生「しっかりこの学校の中心となって、下級生の見本になるような、あるいは上級生が安心して後を任せられるような――」

先生「そんな感じのを目指して、今年一年間、一緒に頑張っていこう」

和「先生、質問が」

先生「なんや、真鍋」

和「どうして私が平沢唯と違うクラスなんですか」

先生「えっ…どうしてって…」


澪「和、お昼一緒に食べよう」

和「うん」

澪「和はお弁当なんだ。もしかして自分で作ってたりするの?」

和「そうだけど」

澪「へー、すごいなあ。どんなの、どんなの?」

パカッ(弁当の中身はのり弁)

澪「………」

澪「……なんか、ごめん」

和「どうして謝るのよ」

和「なあなあ、澪」

澪「へっ?な、なに、どうしたの、和」

和「ウチら関西人やん」

澪「お? お、おおう、ほんまだなあ…」

和「なんで東京弁で喋らなあかんの?」

澪「それはほら、あれやん…?」

和「なに?」

澪「あの~ほら、なんていうかその…」

澪「……だめだ、わがんね」

澪「和って普段音楽聴く?」

和「聴くよ。最近はもっぱらロッケンロゥばっかりだけど」

澪「ロックか…。やっぱりビートルズとかオアシスとか?」

和「う~ん、オエイシスは聴くけど…オアシスは聴かないわね」

澪「オエイシス…スペインあたりのバンド?」

和「さあ、曲にしか興味ないから分かんない。あ、あとルナシーも聴くかな」

澪「ルナシーかあ。Rosierとかもいいけど、初期のMechanical Danceとかいい曲だよね」

和「ロージア?メカニカルダンス…? 聞いたことないなあ」

澪「え?Luna Seaだよね?」

和「うん。Lunaseaだよ」



和「かっわいった~♪ 風をぅかっらまっせ~♪」

澪「あ、それ知ってる。ラルクのHONEYだよね」

和「この曲ね、実は骨井っていう曲名なのよ」

澪「ホネイ…?」

和「そう。自転車で坂を猛スピードで下っていった骨井くん」

和「最終的にスピード出しすぎて派手にぶっこけた骨井くん」

和「そんなおっちょこちょいで可愛らしい彼のことを歌った曲なのよ、これは。だから、骨井」

澪「そう……なんだ。…その骨井くんって今どうしてるんだろうな、ははは」

和「四人でバンド組んでるけど、今はソロ活動の真っ最中よ。この前アルバムを出してたわ」


澪「梓って、邦楽聴く?」

梓「はい。昔からラルクが好きで、今でも聴いてます」

唯「そうなんだあ。和ちゃんもラルク好きだよ」

律「でも一応ロックだよな。梓んちってジャズ家族じゃなかったっけ?」

梓「………」ブルブル

唯「あずにゃん? どったの?」

梓「両親がジャズ好きなせいで、私の名前は月(むーん)になりかけたんです…」ガクガク

紬「むーん? どうして月なの?」

梓「親が二人ともFly me to the moonを好きなばかりに……」

唯「そっかあ。でもあずにゃんが望むなら、私あずにゃんのこと『むーんにゃん』って呼ぶよ!」

梓「やめてください冗談抜きでやめてください」

紬「そういうわけで梓ちゃんはロックに目覚めたのね…」

唯「甲子園くんと同じ理論だね、むーんにゃん!」

梓「ちょっとマジでシャレになりませんやめてくださいお願いしますやめろ」グググ

律「落ち着け。…あ、じゃあさHONEY知ってるよな」

梓「はにい?」

律「ほら、あれだよ。かっわいった~♪ってやつ」

梓「かっわいった~♪ですか。あれはHONEYじゃなくて骨井っていう曲名です」

律「え? ほねい?」

梓「はい。自転車で坂を以下省略」

澪(和と同じこと言ってる…。私と律が間違ってるのかな…)


和「暑い…」パタパタ

澪「ちょ、ちょっと和。スカートの中扇ぐなって」

和「見えなきゃ大丈夫よ」

澪「見えてるから言ってるんだって!」

和「またそんなこと言って…。澪は嘘が下手ね」

澪「いやホント見えてるから」

和「じゃあ色と模様を当ててみて」

ピラッ

澪「………」ジーッ

澪「水色でセンターフリル」

和「おい」

澪「和って、ブラウスの上にベスト着ないんだ」

和「うん。面倒くさいし、暑いから」

澪「でも透けて見えるの、イヤじゃないの?」

和「別に女子校だし気にしないかなあ」

澪「そ、それはそうだけど…」

和「それにせいぜい見えても紐だけでしょ。キャミ着てるわけだし」

澪「そ、そうだけど…」

和「まあ紐から下があるとは限らないわけだけど」

澪「そ、そうだけど……ん?」

澪「……なあ、律ってベスト着ないよなあ」

律「そうだなあ。暑いからなあ」

澪「でもさ、透けるじゃないか。現に今だって…」

律「見えてても紐だろー? それにスリップ着てるし」

澪「やっぱりそうだよなあ…」

律「なになに? もしかして~、見られて恥ずかしいような下着を着てるのかな!?」ビヨーン

澪「うわっ!ばか、やめろ!」

律「うっひょう!黒だ!」

澪「白だよ!」

澪「……あ」

律「大声で下着の色ばらしちゃう澪ちゃん可愛い~」

和「いか~ない~で~♪」

和「そ~ばにい~てほ~しい~い♪」

和「ふぅるえった~声が~……」

和「最近唯と顔合わせてないなあ」

澪「どうしたんだ、和。元気ないみたいだけど」

和「ねえ、澪。テレビ電話って実用性あるのかしら」

澪「? さあ使ったことないから分からないなあ」

和「ケータイのだと、テレビ電話っていうよりコマ送り電話になるんじゃないかって思ってなかなか使う気起きないのよ」

澪「うん……?」

和「あ、でもあれはやってみたい。高速でカメラの前動いて『残像だ』ってやるやつ。あれ、見てるほうは本当に残像っぽく見えるじゃないかな」

澪「ん……? うん……」




唯「やだ!和ちゃんやめて!離して!」

和「大人しくしなさい、唯。暴れたって、痛いだけよ」

唯「やだ、いやだあ!誰か…誰か助けてぇ!!」

和「誰も来ないわよ。ほら、観念しなさい」ヌガシヌガシ

唯「うぅ…グスン…和ちゃん、こんなの…イヤだよぅ…」

和「すぐに気が変わるわ。…私だけしか見れないようにしてあげるから」デロン

唯「ひっ!なにそれ…なんでおちんちんが和ちゃんに生えてるの…?」

和「愛ゆえ、よ」ギンギン

和「ほら、力抜いて。痛みは一瞬だから」

唯「やだやだやだ!やめて!和ちゃん、やめてよ…」

和「……じれったいわね」ググッ

唯「あっ!?痛っ、痛い!やめて!和ちゃん、やめて!」

和「イヤよ」メコリメコリメコリ

唯「あああああああああああ! ……いだ…痛いよぅ…痛いぃ…」

和「ふふ、唯。可愛い…」ズッコバッコ

唯「いやあああああ!やめて!痛い!痛いぃいいいい!!」

唯「お願いっ…!抜いて!もうやめて!和ちゃん…和ちゃあん!!」



和「という夢を見たのよ」

澪「ど、どうしてそんな夢を……」ガクブル

和「おかしいよね。私、ちんこなんて生えてないのに」

澪「そこなんだ、疑問に思うところ」

和「夢をみ~た~♪ ところ~でどうせ~♪」

澪「なんで和が唯にそんなことするのか、とかじゃないの?」

和「枯れた血~で~♪ くぅり返し~てく~だぁけぇさっ♪」

和「死ぃの灰か…何か……」

澪「あの、和……?」

和「…溜まってるのかなあ」


というわけで正夢にならないように放課後、唯を誘ったんだけど(アニメ11話参照)

…なんで澪がいるの

澪(放っておいたら和、夢の内容実行しそうだし…。ここは私が見張っておかないと…!)

すごく…予想外です…

律「お二人さーん!仲良いっすねー!」

澪「律!? なんでここに?」

律「ふふん、たまたまね~」

おい待て

唯「和ちゃんのケーキも美味しそ~。一口ちょーだいっ」パクッ

唯「おいひい~!私こっち頼めばよかった~」

和「そう?じゃあ交換する?」

唯「え~悪いよ~。私もう自分のやつ半分食べちゃてるし…」

唯「あ、そうか!じゃあ、私が和ちゃんのやつを半分まで食べて、それから私と和ちゃんのケーキ交換すれば、半分と半分の交換で、誰も損しないよ!?」

律「……」

澪「……」

和「すいません、追加注文お願いします」

唯「なんかこうやって和ちゃんと二人で帰るのって久しぶりだね~」

和「そうね。一年ぶりぐらい」

唯「そんなに~?…ってそうか。それぐらい経ってるのかあ」

和「……ずっと~な~が~めてい~た~♪」

和唯「遠く~おっさない~頃か~ら~♪」

和唯「今もぉ色ぅ褪せたその景色わぁん♪ ましろなかっべに~♪ かぁざぁってあるぅ♪」

唯「かっわいったぁ~……って、あれ?」

和「…秋に歌うHONEYも、オツなもんね」

唯「和ちゃん、この曲好きだもんね」

和「そうね。昔無理やり唯に聴かせたぐらいだもの」

唯「覚えてるよ~。遊んでる間ずっとラジカセから流してたもんね~」

和「いつの頃の話だっけ」

唯「中学入ったか入ってないかぐらいじゃなかったけ?」

和「…ああ、それぐらいかも。ちょうどその頃、近所にレンタルショップができてたはずだし」

唯「でもあのお店もうなくなっちゃったよね。思えばこの辺も大分昔とは違うよね~」

和「そうねえ。公園だって、遊具が撤去されたり色塗り替えられたりしてて、昔の面影がちっともないもの」

唯「三ヶ月に一通は、どこどこのだれだれさんがお亡くなりになって云々っていう手紙も来るよね」

和「来るねえ。あれが届くたびに誰だよこの人って思うわ」

唯「でもこの前お通夜だった村岡さんって、小学生のときによく行ってた駄菓子屋のおじちゃんでしょ?」

和「う~ん……ああ、そう言われてみればそうね。懐かしいなあ。憂と三人でよく行ってたもんね」

唯「三人でどれが欲しいか相談しながら買ったりね~。あの頃は100円あれば何でも買える気がしたなあ」

和「今日食べたケーキなんて、あの大きさで400円だったよ。成長すると、何でも小さく見えちゃうのね」


唯「もうあの駄菓子屋って、何年前からお店閉じてるっけ?」

和「小学5,6年生のときぐらいじゃない? 学校の帰りに言ったら閉まってて、二人でテンションだだ下がりの状態で家に帰ったの覚えてるわ」

唯「そんなに前からかあ。でも、今もたまにどこかで駄菓子屋っぽいにおいって漂ってるよね」

和「ああ、土間のある家とか行くとしてるかも。あのなんとも言えない匂いね」

唯「言葉にはしにくいんだけど、嗅いだら『駄菓子屋だ!』って思うんだよね~。ああ、懐かしいなあ。それにお腹減ってきたなあ」

和「ほんと。ケーキ食べたばかりなのに、なんか食べたくなってきたね」

唯「あ!あれ食べたい!飴にパウダーつけて食べるやつ!」

和「あったわねえ、なんか白い犬みたいのがパッケージのやつでしょ? 私あれ食べたい。なんかトレーみたいなのに乗ってる正方形の…」

唯「グミみたいなやつでしょ!? わー、懐かしい!食べたい食べたい食べたぁい」

和「みんなで好きな色の取り合いとかしてたね」

唯「してたねえ~。一本のつまようじに何個刺せるか、とかもやったねえ~」


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最終更新:2010年01月25日 03:58