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空き教室
ガチャ
和「……」
唯「!」
唯(和ちゃんが1人できた……)
和「なんでこんな所に呼び出したの?……まあいいわ、唯に聞きたいことがあるのよ」
唯「……なーに?」
和「私以外と……澪と付き合ってるんだって?」
唯「……」
唯(澪と付き合ってる……澪と)
唯(もしかしたら、まだりっちゃんとは話してない?澪ちゃんと2人だけで話しただけなのかも……)
和「……」
唯(ここには澪ちゃんはいない……。うまく和ちゃんを誤魔化せれば……)
唯(でも澪ちゃんと付き合ってるのはもう隠し切れないし……ここは素直に認めて、二股だってことにして)
唯(素直に謝って、澪ちゃんとは後で一人で話をつけるってことにして……和ちゃんをこの話から切り離して
和「どうなの?答えて」
唯(うぅ……もう少し考える時間を……)
唯(そうだ!和ちゃんのことだから、カマをかけて私に喋らせようとしてるとか……)
唯(和ちゃんが知ってる情報以外を吐かせようとしてるのかもしれないし、ここは余計なことは喋らないで)
唯(あああ、でも隠してる事が後からどんどんバレてったら心象が最悪になって……傷口が……)
和「唯!」
唯「っ!」
唯(最低限の事だけ喋ろう……。それで素直に謝って、余計な事は知らないで通そう……。それでこの話は終わりに……)
唯「……ごめんなさい」
和「……嘘でしょ?」
唯「ほんとだよ……。ごめんなさい……」
和「……」
和「唯……。澪の事、好きだったの?」
唯「……」
和「なんで私と付き合ったの?私への告白は何だったの?」
唯「……」
和「ねぇ……」
唯(……たぶんここがポイントになる。ここをどう答えるかで……)
唯「澪ちゃんのことは……」
和「……」
唯「好きだよ」
和「……!」
和「そう……。じゃあ私の事は」
唯「違う!聞いて!」
和「え……」
唯「澪ちゃんへの好きは……友達としての『好き』だよ」
和「なっ……」
和「じゃあなんで付き合ったのよ!」
唯「それは……和ちゃんには本当に悪いことをしたと思ってる」
唯「でも……それでも、傷ついた澪ちゃんを放っておけなかったんだよ……」
和「……」
唯「澪ちゃん、りっちゃんにフられて本当に悲しんでた……」
唯「私だってもちろん慰めたよ。でも、所詮ただの友達だもん。失恋の痛みなんて分かち合えない……」
和「……」
唯「ただ口で元気だしてとか、諦めないでって言ったって……澪ちゃんには届かない」
唯「だから……。お試し、偽りの恋人関係でもいいから……。恋人になって」
唯「私は本気で澪ちゃんを元気付けたいんだよって……証明したかったんだ」
和「……」
唯「私が付き合ってって言ったのは、そういうことだよ」
和「……」
唯「和ちゃん、本当にごめん。私は和ちゃんの事、唯一の恋人って思ってる」
唯「それでも、あの時はああしたかった……。体と頭が勝手に動いちゃった……」
和「……」
唯(……)
唯(和ちゃんはどっちのタイプの女の子か……そこにかかってる)
唯(『恋人の和ちゃんだけ見てる』か『和ちゃんも大切だけど友達も大切』)
唯(私は和ちゃんも大切だけど友達も大切にしたいっていう気持ちを見せた)
唯(私がどんな理由でも他の事付き合ったら許せないって思うか……)
唯(それとも、友人を大切に思うからこそ和ちゃんを信じて他の子と付き合ったと思うか)
唯(私が今まで黙っていたのを……和ちゃんへの信頼への現われととってくれれば……)
唯(私の事を友達を大切にするどうしようもなくおせっかいな、優しい女の子と思ってくれれば……)
和「……バカ」
唯「!」
和「唯って……ほんとどうしようもないんだから」
唯(笑ってる……!)
唯(やった!やったやった!切り抜けたっ!さっきので正解だったんだ!)
和「人をこんなに心配させて……。でも、唯のそんなところ嫌いじゃないわ」
唯「の、和ちゃぁ~ん……」グスッ
唯(やった!まさかこんなにうまくいくなんて……。和ちゃんはまだ、話を全部聞いてなかったんだ)
唯(それにしても澪ちゃんがいなかったのはラッキーだったよ!今のは澪ちゃんが居たら言えなかった!)
和「まったく……。とにかく、澪にはちゃんと事情を説明しなさい?どんな理由だろうと、このままじゃダメよ」
唯「うんっ……!私、ちゃんと謝る!」
唯(やった……!後は澪ちゃんが余計な事を言う前にうまく処理できれば……!)
和「じゃあ……早速澪に謝りましょう?こういうのは早いほうがいいわ」
唯「うん!私行ってくるよっ!」
和「ああ、私も行くわ」
唯「えっ……」
和「だって唯が一人で行って、本当の事を言ってみなさい?大変な事になるわよ」
唯「え……?そ、そうかなぁ……?」
唯(ちょっと待ってよ……。そ、そんな事されたら……)
唯(今の状態で澪ちゃんに会われたら終わりだよ……。せめて先に澪ちゃんと話をして……口裏を……)
和「いくら澪のためを思ってだとしても、澪には好きって言ってたわけでしょ?」
唯「う、うん」
和「好きって言ったからこそ心を開いてくれたのかもしれないのに、実は違うなんて言ったら澪はどうなると思う?」
唯「あ……それは、私がうまく……」
和「上手く?誤魔化すのは良くないわよ。ちゃんと説明しなさい」
唯「う、うん。だから私一人で……」
和「いえ、これは恋人の私にも関係のある話よ。私も一緒に行って謝らないとダメよ」
唯「う、う……」
唯(ダメ……。もうバレる……)
和「どうしたの?私がいたら不都合な点でもあるのかしら?」
唯(まさか……本当は全部バレてる?)
唯(それで私を追い込んで、保身に走るのを確認しようとしてるんじゃ……)
和「……」
唯(そうだ、間違いないよ。だって和ちゃんがこんなに簡単に騙されるわけない)
唯(もう……)
唯「……うん。一緒にきてくれるかな……」
和「……わかったわ」
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唯の家
和「今話したので全部かしら?」
唯「……うん」
和「それにしても……。澪どころか軽音部全員に手を出してたなんて……信じられない」
梓「酷すぎます……」
紬「あの、澪ちゃんは?」
和「律の家に行ったわ……。律に謝らなきゃって」
憂(お姉ちゃん……)
唯(全部バレた……全部。私、どうなるんだろ……)
和「はっきりいって私は許せないわ。皆は?」
梓「私は……。ちゃんと反省してほしいです。こんな事二度としてほしくないです」
和「二度とって言っても……。唯はまたやりかねないわよ?今のこの子は異常よ」
憂(お姉ちゃんがおかしくなったのは、やっぱりアレが生えてからだよね)
憂(アレがなくなれば……元のお姉ちゃんに戻ってくれるのかな)
紬「私も反省してくれればそれ以外には何も……」
和「唯がおかしくなったのは、男のアレが生えたからでしょ?」
和「じゃあ、それをとるわけにはいかないの?」
唯「!」
梓「と、とるって……!どうやって?」
和「それは、病院で手術とか……。性転換手術とかあるんだし、不可能ではないでしょ?」
紬「何もそこまで……。私はちゃんと心を入れ替えてくれれば……」
和「たぶん無理よ、それじゃ」
唯「やだよぅ……」
和「……」
唯「手術こわいよぉ……。お願い、もうしないから……許してよぉ!」グスッ
憂(うう……)
和「あんたねぇ、どれだけ皆にひどいことしたかわかってるの?痛かったとかそういうんじゃないのよ?」
和「あんたがイヤらしい事しか考えられなくなって、色んな女の子に手を出したりするのがダメなのよ!」
梓「……唯先輩。病院へ行きましょう。やっぱりソレは無いほうが……」
唯「で、でも手術にもお金がかかるよ?」
紬「それは……私がお願いできるけど……」
唯「そ、そんなぁ……」
和「それは唯のためでもあるのよ……だからそうしましょう」
唯「う、ううー……」
梓「あの……私は別に唯先輩の事嫌いになったわけじゃないですから……元気だしてください」
紬「わ、私も。唯ちゃん、元の唯ちゃんに戻りましょう?」
唯「……」
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律の部屋
澪「本当にごめん……!」
律「……」
澪「律は私のためを思って行動してくれてたのに……。私は律に酷い態度とって……」
澪「本当に悪かった……」
律「……」
澪「私、律が好きで……律に振り向いてほしい一心で、律の気持ちをないがしろにしてた」
澪「親友にあんな気持ち抱いた私が全部悪かった。それを押し付けた私が悪かった」
律「……」
律「違うよ」
澪「え……?」
律「澪のためだけじゃない。自分のためでもあったんだ」
律「私、澪が唯にとられて……嫉妬してたんだ。もっと澪と一緒にいたかったから、唯とああしたんだ」
澪「……」
律「もちろん、澪が騙されてるっていうのにも我慢できなかったけどな……。それだけじゃないってことだよ」
律「それに、澪の事恨んでるわけないだろ。お前のせいだなんて全然思ってないよ」
澪「律……」
律「私は澪の事……好きだ」
澪「!」
律「でもそれは、友達としてだ……。悪いけど、これに関しては嘘はつけない」
澪「……それでいい」
律「澪……」
澪「それでいいんだ。私、律と一緒に……側にいられるだけでよかったんだ」
澪「私バカだから気づかなかったんだ。律と仲良くできるだけでどれだけ幸せなのかって」
律「……それは私だって思ってるよ。澪のことは一番の親友だと思ってる」
澪「また友達に戻ってくれる?」
律「……親友だぞ」
澪「あ……ありがとう……っ」
律「……」ナデナデ
……
その後、お姉ちゃんは手術をして男の人の物を切除しました。
手術後は変貌後とはまるで別人で、昔の優しいお姉ちゃんに戻ってくれました。
ただ、梓ちゃんや紬先輩や和さんはお姉ちゃんを好きな事に変わりはないらしく……
お姉ちゃんは皆さんとの関係の整理に追われているようです。
どうするんだろう、お姉ちゃん……。
唯「もうあんなことこりごりさ。 二度とあんなバカな真似はしないよ」
END
最終更新:2010年06月10日 01:16