「先生さようならー!」

「はいさようなら~」



私ももう「先生」なんて呼ばれるようになっちゃったか…

この廊下も、

この階段も、

あの頃と一緒だね

ギシギシ

ちょっとおじいちゃんになっちゃったみたいだけど

ガラガラガラ

「おじゃましまーす」


生徒A「あ!平沢先生!」

生徒B「違うよ!『ゆい先生』って呼ぼうって決めたじゃんか!」

生徒A「あははそうだっけ?」


唯「またお茶会?ちょっとはちゃんと練習したら?」

生徒B「いいじゃーんたまにわ~」

唯「もっと軽音楽部らしいことやりなよお!」

生徒C「まあまあ」

唯「んもう…」

変わらないなあ…本当

生徒A「ゆい先生も座ってくださいよ!」

生徒B「あ!そうだ!前言ってたゆい先生が軽音部だった時の話してよ!1番面白いやつ!」


唯「まったく…じゃあ話してあげるから終わったらちゃんと練習するんだよ?」
生徒「はーい!」

唯「私が高校3年生の時の話なんだけどね――――――――――――、



憂「お姉ちゃん!早く起きないと学校遅刻しちゃうよ!

唯「うぅ…」ムクッ

唯「眠い…」バタッ

憂「もう!お姉ちゃん遅刻しちゃうよ?」

憂「…って……あれ?お姉ちゃん昨日朝に部活あるって言ってなかったっけ?」

唯「あ、そうだっけ?」ムクッ

唯「行ってきばふ」モグモグ

憂「転ばないようにねーっ!」

唯(もう完全遅刻だよぉ!)

唯「もう夏だなあ」

唯(…………)

唯(あーあ、明日で1学期も終わりか…)

唯(夏休みはたくさん勉強しなきゃな…)
唯(…………)

唯(早いな~三年間…)

唯(いつの間にか…高校生活も終わって…)

唯(皆それぞれの道に進んで)


唯(……もっと……もっと皆といたいのになあ……)

唯(一緒にバンドしてたいよ)

唯(もっと……)

タッタッタ
唯(もっ――――――――――、

キキー

梓「唯先輩遅いですね」

律「ったく、あいつが『りっちゃん!明日の朝ちょっと練習しようよ』とか言ったくせにい!」プンスカ

澪「唯……まさか事故にでも……」

紬「唯ちゃんのことだから寝坊じゃない?すぐ来るわよ」

澪「それならいいんだけど…」


律「!」

律「唯からメール来てるぞ!」

澪「なんだって?」
律「『ごめん!寝坊しました!』だってさ。」

澪「ったく…」
梓「本当に唯先輩らしいというか」

律「まー時間ももったいないし、唯が来るまで合わせてようぜぃ!」
澪「そうだな」

律「1・2・3・4!」


唯(私最初は不安だったんだよ?)

唯(ギターも弾けないし、歌もうたえないし)

唯(私なんかがここにいていいのかなあ、なんて)

唯(でもいつの間にかギターも弾けるようになって歌もうたえるようになって)

唯(大切な友達もできて)

唯(いつの間にかこんな時間がいつまでも続けばいいな~なんて)

唯(本当だよ?)

唯(でも神様はいじわるだよ)
唯(いつもいつも楽しい時だけ時間を早めちゃう)

唯(あーあ…これからどんな未来が待ってるんだろう…)

唯(でも皆と一緒なら大丈夫だよね…)
唯(きっと…)

唯(そう考えるとちょっと楽しいかも!)
唯(あ!そうだ!)
唯(ねえ!)

唯(澪ちゃん、りっちゃん、むぎちゃん、あずにゃん!)

唯(次は…)


唯(次はどんな歌にしよっか!)


女「きゃあああああああ!」

男「おい!大丈夫か!?誰か!救急車だ!救急車を呼んでくれ!早く!」


……

律「遅い!」

澪「確かに遅い」

紬「もうHRの時間なのに…」

梓「そうですね……」

澪「にしても遅くないか?律にメール届いてから結構経ってるぞ」

律「むー、まあ教室にいるかもしれないし、とりあえず戻ろうか!」

澪「そうだな…」

梓「………」



教室

律「あれっ……ここにもまだ来てないのか…」

澪「まさか…本当に事故にあったんじゃ…」

律「縁起でもないこと言うなっ!」バシッ

澪「でも……」

紬「澪ちゃんは心配し過ぎよ!」

澪「うん…………」

キーンコーンカーンコーン


純「梓、元気ないよ?」

梓「え?そう?」

純「なんかあった?」

梓「いや……ていうか憂まだ来てないね」

純「あー本当だ!」

純「むー、これは事件だ!憂が遅刻するなんて事件しかない!」

梓「」バシッ

純「いっ…たぁ~い!」

梓「そんな訳ないよ!」

梓(……憂まで……)


……

律「さわちゃんも遅刻かよぉ」

澪「職員会議が長引いてんだろ?」

和「それにしても唯…来ないわね」

律「ったく!人に心配ばっかかけやがってえ!」プンスカ

紬「まぁまぁ」

ガラガラガラ

律「もうさわちゃん遅いぞ!」


山中「ごめんごめん」

澪「先生、唯は?」

山中「…………」


紬「先生?」

山中「ちょっと話があるわ。HR終わったら廊下に出てくれる?」

律(おい!唯お前何しでかしたんだ)

澪(唯どうしたんだろ…)

紬(唯ちゃん…)

和(唯…どうしたのかしら…)


ガラガラガラ

律「先生!」

山中「ちょっと来てくれる?」

会議室

山中「実はね…今電話がかかってきたの」

澪「電話?」

山中「平沢さん……………交通事故にあったって………………………」

紬「……そんな」

澪「……え?」

律「さ、さわちゃん冗談キツいぜ~ははは…」


山中「私だって冗談だと思いたいわよ!」
律「…………」

澪「…本当に唯なんですか?」

山中「間違いないわ…平沢さんの妹さんがそう言ったそうだから」

紬「憂ちゃんが!?」

山中「私は今から病院に行くけど、あなた達は心配だろうけど学校が終わるまでは病院に行っちゃだめよ?」

律「そんな…先生!」
山中「信じなさい」
澪「でも…」

山中「あなた達の知ってる唯ちゃんはそんな弱い子だったかしら?」


澪「ヒグッ………でも…」

山中「大丈夫よ……だいたいあなた達が泣いてどうするの?もう授業も始まるし涙拭いて教室行きなさい!」

律「先生!」ガシッ

山中「え?」

澪「私も!」ガシッ

紬「私も!」ガシッ

和「私のも」ガシッ

山中「わかった。あなた達のパワーは十分受け取ったわ!任せなさい!」

律「先生お願いします!」

澪(唯のばか…)

紬(大丈夫かしら…)


キーンコーンカーンコーン


梓(憂…今日休みなのかなぁ)

梓(それならなんで何も言ってこないんだろう…)

梓(……)

ガラガラガラ

梓「う…………どうしたんですか律先輩?」

律「ちょっと話があるから来い!」

梓(なんだろ…)


澪「梓…実はな、唯…学校来る途中に交通事故にあったらしいんだ」


梓「へ…………?」

梓「そんな!嘘です!嘘に決まってます!唯先輩ドジだけどそこまでバカじゃありませんよ!」


澪「あ……梓…こ、これは…」

梓「皆して嘘つくなんて最低です!」ポロポロ

紬「梓ちゃん…」

律「そりゃこっちも一緒だ……」

律「みんな冗談であって欲しいって思ってるはずだ!」

梓「……グス」

律「学校終わったらすぐに病院行くから、玄関に来てくれ」

梓「…………」

澪「梓……」

梓「わかりました…」



救急車

憂「目を覚ましてよ!お姉ちゃん!」


憂「早く起きなきゃ学校遅刻しちゃうよ!」ポロポロ

唯「………」

憂「みんな待ってるの……お姉ちゃんのことみんな待ってるんだよ?」

憂「お姉ちゃん!」


唯『私けいおん部入ることにしたんだあ』ニコニコ

憂『スゴい!』

唯『でねーギター買いたいんだけどさー……』




唯『うふふ~♪可愛いいね~』


唯『ギー太!寝るよ!』

唯『一緒にお布団入ろうね~』

憂『お姉ちゃん…フフフ』

唯『あ!私お風呂まだだった!』

唯『ギー太も一緒に入ろうね~』

憂(それはダメだよ!お姉ちゃん!)


憂「死んじゃったら…もうみんなと二度とバンドできなくなっちゃうんだよ……?」

憂「みんなにもう会えないんだよ……?」



唯『合宿に行ってきます!』

憂『お姉ちゃん…頑張ってきてね!』


唯『じゃあ!行ってきます!』

憂『いってらっしゃ……あ!お姉ちゃん荷物忘れてる!』

唯『あっ!』ビクッ


唯『明日の文化祭大丈夫かなぁ……』

憂『大丈夫だよ!きっと!』

唯『緊張して眠れないよお~』

憂『お姉ちゃんなら大丈夫だよ!』


憂「いっつも心配かけて……」

唯「………」

憂「本当ドジなんだから…」

憂「お姉ちゃんのばかぁ……」ポロポロ



……

律(嘘だろ…唯……)

澪(………唯…)

紬「行きましょう……………!」

律「お、おい!マジかよ?さわちゃん言ってたろ?授業終わるまではダメだって」

澪「私も我慢できないよ」

和「私がなんとかしてあげるからみんな行ってきなよ!」

律「そんなことできるのか?」

和「私これでも生徒会長なのよ?いまのうちに行って!」


律「………」

律「悪い!」ガタッ

紬「ありがとう!」
澪「私梓呼んでくる!」
タッタッタ

和(唯……頑張って……)


ガラガラガラ

先生「起立!ん?そこの三人はどこ行ったんですか?」

和「三人とも早退しましたよ?」

先生「三人も………?」


和「はい」

先生「…………」

先生「あなたがそう言うならそうなんでしょう……じゃあ授業始めます」


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最終更新:2010年06月11日 02:37