昼休み。

唯「ふはー、やっとお昼だー」

和「唯、お昼ご飯……」

唯「姫子ちゃん!! 一緒に購買行こう!!」

姫子「えっ!? でも唯はお弁当……」

唯「お弁当も一緒に持っていくから!!
  今日も偶然澪ちゃんたち休みだから大丈夫!!」

和「ちょっと唯! 待ちなさい!」

姫子「真鍋さんが呼んで……」

唯「あんなのほっといていいから!
  ほら早く行くよ、姫子ちゃん!!」だだっ

姫子「ちょ、ちょっと待って唯……」



和「……」




食堂。

唯「いただきまーす」

姫子「いただきます」

唯「姫子ちゃん良かったね~、
  ゴールデンチョコパン買えて」

姫子「ああ、うん……
    珍しかったからつい買っちゃった」

唯「良かったね~」

姫子「うん」

唯「良かったね~……」

姫子「……一口食べる?」

唯「えっ!? いいの!?」

姫子「うん、一口だけね」

唯「わーい、ありがとー」ぱくっ

姫子「どう?」

唯「おいしー!」

姫子「そういえばさっき、真鍋さんなんか呼んでたみたいだけど」

唯「いいのいいの、
  和ちゃんのことなんか気にしなくて」

姫子「ふうん……?」

唯「私もお弁当食べよ~」ぱかっ

姫子「わっ、美味しそうだね。唯のお弁当」

唯「えへ、そうかなー」

姫子「お母さんお料理上手なんだね」

唯「あ、これ作ったの妹なんだ~。
  うちお母さんいないから」

姫子「え、あ、そ、そうなんだ……
    なんかごめん」

唯「お父さんといっつも海外行っててさー。
  全然家にいないんだよね~」

姫子「あ、そういうこと……」


唯「姫子ちゃんのお母さんは? どんな人?」

姫子「ろくでなしだよ。
    私が10歳のときに不倫して離婚した」

唯「へえー」

姫子「そのときお母さんのほうに付いてったのが間違いだったな。
    新しいお父さんもろくでなしでさー、酒飲んでばっか」

唯「ふーん……」

姫子「まあそれで色々嫌になって、
    中学の頃から悪いことばっかしてたな~」

唯「タバコとか?」

姫子「タバコは高校入ってからだよ。
    中学の時は授業サボってゲーセン行ったりとか……
    はは、こんなこと人に話すの初めてだ」

唯「そーなんだ。
  もっと聞きたいな、姫子ちゃんの話!」

姫子「別に話してもいいけど……
    もう昼休み終わっちゃいそうだよ」

唯「うわ、急いで食べなきゃ……」もぐもぐ

姫子「ふふ」




放課後。

さわ子「はい、じゃあHRはこれで終わり。
     みなさん、さようなら」

生徒「さよならー」
生徒「さよーならー」
生徒「あーやっと終わったー」
生徒「つかれた帰ろー」

ざわざわ

唯「姫子ちゃん! 一緒に帰ろ!」

姫子「えっ?」

和「ちょ、ちょっと待ちなさい、唯!!」

唯「うるさいな、和ちゃんは早く生徒会行けばいいでしょ!!
  私のことはほっといて!!」

和「ほっとかないわよ、待ちなさい!」

唯「やだよ!!」

姫子「な、なに喧嘩してるの?」


唯「ほら姫子ちゃん、早く帰ろ!!」

姫子「え、あ、でも真鍋さんが」

唯「ほっといっていいから、帰ろ!!」

和「待ちなさい、唯!」

唯「いーっだ!!
  和ちゃんなんてシイタケになれ!」

姫子「意味がわからない」

唯「早く行こう、姫子ちゃん!」だだだっ

姫子「え、ちょ、ちょっと待ってよ」


和「唯…………」




音楽室。

梓「今日もひとり……」




帰り道。

唯「まったくもう、和ちゃんは……」ぷんすか

姫子「ねえ、唯」

唯「何?」

姫子「真鍋さんと喧嘩でもしたの?」

唯「なんで分かったの!?」

姫子「見てたら分かるよ……
    なんで喧嘩してるの? いっつも仲良かったのに」

唯「えー、だって和ちゃんったら、
  唯は姫子ちゃんと仲良くするな、なんて言うんだよ?
  姫子ちゃんが留年してるからって」

姫子「あ、そ、そうなんだ……私のせいで」

唯「あ、いや別に姫子ちゃんが悪いわけじゃないよ!
  分からず屋であんぽんたんの和ちゃんが悪いんだから!」

姫子「いや、でも真鍋さんの言うことも尤もだよ。
    大事な友達が、こんな不良と仲良くしてるなんて分かったら、
    不安にもなるよね」

唯「姫子ちゃん……」


姫子「私たち、仲良くならない方が良かったかも知れないね」

唯「そ、そんなことないよ!
  仲良くならない方が良いなんてこと、絶対ない!
  友達がいっぱいいたほうが楽しいもん!」

姫子「でも……私と仲良くしてたら、
    ずっと真鍋さんと喧嘩したままになるよ?
    それでもいいの?」

唯「そ……それは」

姫子「唯にとっては、私より真鍋さんの方が大事でしょ」

唯「どっちが大事かなんて決められないよ。
  和ちゃんは親友だし、姫子ちゃんとももっと仲良くなりたいよ……」

姫子「唯の気持ちは嬉しいけど……」


姫子「ごめんね、やっぱり私が退くよ。
    私が唯と絶交すれば、それで解決するもんね」

唯「だ、だめだよそんなの」


姫子「唯……」

唯「せっかく友達になったのにお別れなんて嫌!
  もっと姫子ちゃんと遊んだり喋ったりしたいよ!」

姫子「でも、真鍋さんが……」

唯「う……和ちゃんとも仲直りしたいけど……
  だけど……」

姫子「……」

唯「わ、私どうしたらいいんだろ……
  姫子ちゃんか和ちゃん、どっちか選ばなきゃいけないのかな……
  そんなのやだよ……
  両方と友達でいたいよ」

姫子「……」

唯「どうしたらいいのか分かんないよ……
  姫子ちゃん、どうしよう……ぐすっ」

姫子「私は、私と唯が絶好すれば良いと思うけど……
    唯はそれじゃ嫌なんだよね」

唯「絶対いや!」

姫子「そっか……」

唯「そもそも和ちゃんが悪いんだよ……
  姫子ちゃんのことあんなふうに言って……」

姫子「真鍋さんのこと、そんなふうに言っちゃだめだよ。
    きっと真鍋さんは真鍋さんなりに
    唯のこと心配してくれてるんだから」

唯「……姫子ちゃんはやっぱり大人だね」

姫子「1コ上だからね」

唯「私は全然そんなふうになれないや……
  なんかあったらすぐ人のせいにしちゃうし、
  悩みごとがあっても頭の中こんがらがっちゃって
  一人で解決なんてできないし……
  今だってそう」

姫子「ふうん……じゃあ、バイク乗せてあげようか」

唯「え、バイク? 姫子ちゃんの?」

姫子「うん。後ろに乗せてあげる。
    ガーっとすっ飛ばしたら、頭すっきりするよ。
    私もなんか悩みがある時はよく乗るんだ」

唯「へー、なんか楽しそう。
  じゃあ乗せて、姫子ちゃん!」



一方その頃、和は。

和「はー、今日も生徒会疲れた……
  早く帰ろう」

梓「あっ、和先輩」

和「あら、梓ちゃん。奇遇ね、何してたの?」

梓「音楽室にいました」

和「え、でも今日は部活ないんじゃないの?
  偶然にも澪たちがみんな休んでるから」

梓「あっ、そうだったんですか?
  良かったー、2日続けて誰も来ないから、
  私だけハブられてるのかと思いましたよ」

和「ハハッワロス」




帰り道。

梓「そういえば唯先輩も休んでるんですか?」

和「いや、唯は他の友達と帰ったわ」

梓「へえ、唯先輩って軽音部以外に友達いたんですね」

和「梓ちゃんはいないの?」

梓「いますよ!!!!」

和「そんなに力強く否定しなくても……」

梓「その友達ってどんな人なんですか?」

和「ああ、不良なのよ、不良」

梓「不良!?」

和「うん、タバコとバイクでなんども謹慎喰らって、
  2回目の3年生をやってる人なの。
  見た目も派手だし、制服の着方もだらしないし」

梓「へえー、唯先輩がそんな人と仲良くしてるなんて、
  あんまりイメージ出来ませんね」


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最終更新:2010年06月11日 23:32