「柔道部に入部しませんか!」
「吹奏楽部に入部しませんか?」
「ソフトボール部で一緒に頑張りませんか!?」
…うざったい。私は部活なんてやるつもりはない。
和「邪魔ですよ。先輩方」
「…………」
「なにあんた…あんたみたいのもう誘わないわ」
だれもさそってくれなんて頼んでない。
和「その方が助かります。では…」
和「………」
女A「真鍋さん。一緒にお弁当食べない?」
和「…いい。一人で食べたいの」
女A「でも…いつも一人じゃない。たまには私達とでも…」
和「…うるさいわね」
女A「そんな…」
女B「行きましょう。ほっときましょうよ」
そうだほっといてよ。あなた達なんかといたって楽しくなんかないんだから。
和「……つまらないなぁ」
?「…お前さぁ、いつも一人でさびしくないの?」
和「…別に」
?「ふーん。私なら一人なんて嫌だけどな」
和「だからなんなの…?」
?「様は…私と一緒に飯食おうぜ!」
和「……嫌よ」
?「いいから!一人で食うより二人だよ!」
和「はぁ…?意味わかんないんだけど」
?「二人で食った方が飯だってうまいだろ?そういうことだ!」
なんなんだこいつは。うるさくてかなわない。
…でも、いい暇つぶしにはなるかもしれない。
和「わかったわよ…。一緒に食べましょう」
?「よし!そうこなくっちゃ!名前はえーっと…
真鍋和さんだっけ?」
和「そうよ。あなたは?」
律「真鍋さんは部活決めた?」
和「…やる気ない」
律「なにか楽器とか弾ける?」
和「…弾けないわよ」
律「そっかー。だったら一緒に軽音やろうぜ!」
和「はぁ!?」
なぜそういう話になるんだ。私は部活をする気なんてないっていっただろ。
楽器だって弾けない。こいつは人の話を聞いてないのか?
律「いやさぁ。軽音部に部員が足りなくて…あと一人入部しないと廃部なんだ」
和「…だから?その話が私に関係ある?」
律「ないよ!けどお願い!一緒にバンドやろうぜ!」
和「…話にならないわ」
律「そこをなんとか!」
和「嫌よ。大体楽器も弾けないのよ?私が入って何になるの?」
律「それなら心配ないよ。これから覚えればいいんだから!」
和「嫌よ面倒くさい。勝手にやってれば?」
律「そんなこといわずにさ~。試しに見学しにでも来てよ」
和「……暇だったらね」
律「やった!場所は音楽室な!今日の放課後待ってるぞ!」
―放課後
和「………」
和「………」
和「………」
和「…音楽室だっけ?暇つぶしに行ってみるか…」
がちゃ
和「失礼します…」
律「真鍋さん!まってたよ。よく来たな~」
和「…暇だったからね」
?「律…この人がさっき言ってた?」
律「そうだよ」
和「…真鍋和よ」
律「じゃあさっそくだけど演奏始めようか!」
澪「そうだな。真鍋さん、ゆっくり聞いていってくれ」
紬「お菓子もあるわよ♪食べてね」
和「ありがとう…」
…律がドラム。秋山さんがベース。琴吹さんがキーボード。
どうやらこの部にはギタリストがいないらしい。
…なら、もし入部すれば私がギターのポジションなのは必然か。
律「わん!つー!」
~~~♪
和「………」
…あんまりうまくないな。
律「よしっ!きまった!どうだった?私達の演奏」
和「…なんていうか、その…」
澪「うんうん」
和「…あんまりうまくないわね」
律「ばっさりだー!」
でもとても楽しそうだった。入部すれば退屈はしないで済みそうだな。
…でも、この居場所は私のものではない。
ここは、今生きていたらきっと唯の居場所だった筈だ。
私は唯の居場所を奪うことなんかできない。
律「で、どう?一緒に軽音部やってみない?」
和「………私は…」
和「…ごめんなさい」
律「…!そ そんなぁ…」
和「………」
律「…どうしても?」
和「…ごめんなさい」
律「本当にどうしても…?」
澪「しつこいぞ律。ごめんな真鍋さん。気にしないでくれ」
和「……気にしてないわ」
紬「またお菓子でも食べに来てね」
和「ありがとう…じゃぁまた…」
がちゃ
律「真鍋さん!期限まであと1週間あるから!もう一度考えてみてくれ!」
和「………」
ー帰り道
和「………」
和「…これでよかったのよね」
そうだ。これでよかったんだ。
…私に唯の居場所を奪う資格なんてないんだから。
…でも、少しだけあの部活に入部したかったな。
憂「和さ~ん!」
和「憂ちゃん…?」
憂「今帰りですか?」
和「そうよ…」
憂「…和さん、またお姉ちゃんのことで悩んでますね?」
和「…え?」
和「…そんなことないわ」
憂「嘘です」
和「………」
憂「私にはわかりますよ。何を悩んでいるんですか?」
和「…私ね。軽音部に誘われたんだ」
憂「そうなんですか…」
和「それでね…」
憂「お姉ちゃんなら気にしませんよ。ぜひ入部してください」
和「…え?」
憂「和さんはお姉ちゃんに引け目を感じているんですよね?お姉ちゃんの好きだった音楽を自分がやることに」
和「………」
憂「そんなこと気にする必要なんてないですよ。自分のやりたいことをやってください」
憂「それに、お姉ちゃんが生きてたら…和さんに私と同じことをいったはずです」にこ
和「憂ちゃん…ありがとう」
憂「気にしないでください♪」
憂ちゃんは強いな。唯が死んだ時、一番悲しかったのは憂ちゃんの筈なのに。
憂「だから軽音部、入部してくださいね」
和「うん…もう少し考えてみるよ」
―1週間後
律「………」
澪「………」
紬「………」
澪「…結局、真鍋さんはこなかったな」
紬「…廃部は免れませんでしたね」
澪「律…もう帰ろう」
律「…まだだ。真鍋さんは今日中に絶対来る」
澪「…でも、下校時間まであと10分だぞ?」
律「私は来るって信じてる」
澪「……そうだな。信じよう」
紬「私も信じます…」
がちゃっ!
和「はぁ…はぁ…!」
律「真鍋さん!」
和「おそくなってごめんなさい…」
和「私を…入部させてください!」
律「………」
澪「………」
紬「………」
和「…だめ…かしら?」
律「…夢じゃないよな?」
澪「ああ…夢じゃない…」
和「…?」
律澪紬「やった~!!!」
律「よかったー!これからよろしくな!真鍋さん!」
和「…和、でいいわよ」にこっ
律「!わらった…。澪!あの真鍋さんが笑ったよ!」
澪「落ち着け律!真鍋さんに失礼だろ!」
紬「まぁまぁ♪よろしくね。和ちゃん」
律「あ、そうだ…。よろしくな、和!」
澪「軽音部にようこそ!よろしくな…和」
なんて楽しい人達なんだろう。ここなら私はうまくやっていける気がする。
唯。私の居場所、見つけたよ。
和「ええ、みんな…これからよろしく」
ピンポーン
がちゃ
憂「はーい!あ、和さん!」
和「こんにちわ憂ちゃん」
憂「こんにちわ。和さん、軽音部に入部したんですね」
和「え?なんでわかったの?」
憂「だって、前にあった時よりも顔が明るいですから」
和「あはは…。憂ちゃんには隠し事はできないわね」
憂「えへへ♪さあどうぞ。上がってください」
チーン…
和「………」
…唯、私ね。軽音部に入部したんだ。
しかも唯と同じギターまでやることになったんだよ。
私、唯の分まで頑張っていっぱい練習するから。
…だから唯。見守っててね。
唯『和ちゃん…ありがとう』
和「! 唯!?」
憂「わっ!びっくりした…」
和「う 憂ちゃんか…ごめん」
憂「いえいえ。そういえばこれ…はい、ギターの本です」
和「ありがとう。でも本当に借りちゃっていいの?」
憂「いいですよ。…あとこれも」
和「これは…唯のギターじゃない!こんな大事なもの借りられないわ!」
憂「いいんですよ。和さんが使ってくれるなら、お姉ちゃんだって喜びます」
憂「それに…まだギター買ってないんですよね?」
和「…憂ちゃんはなんでもお見通しね」
和「…本当にありがとう憂ちゃん。私、がんばるから」
憂「はい♪頑張ってください」
がちゃっ
和「お邪魔します」
律「よう和…ってそのギターどうしたんだ!?」
和「…友達から借りたのよ」
澪「そうか。でもこれでやっと軽音部らしい活動ができるな」
紬「えぇ♪よかったわ」
律「そうだ!なにか弾いて見せてよ!」
和「え…?でも私まだ全然…」
律「簡単なものでいいからさ!」
和「…わかったわ。…それじゃぁ…」
律「………」わくわく
澪「………」どきどき
紬「………ごくり」
チャラリ~ララ~♪
和「………」
澪「…チャルメラ?」
律「…ぶっ!」
紬「…くすくす…」
律「…あーっははは!!!チャルメラって…!
和のキャラじゃねえよ!!!」
和「なっ!?」
紬「あはははは!ご…ごめんなさい和ちゃん!」
和「ちょっと失礼よ!がんばって練習したんだから!」
澪「…和。ちょっと待ってて」ゴツンッ!
律「あいたっ!」
澪「よし…これで静かになったな。和に謝れよ律、ムギ」
律紬「…ごめんなさい」
和「別にいいわよ…。それに、これからいっぱい練習してうまくなる予定なんだから」
律「おお!心強いねぇ!この分なら武道館も夢じゃないかもな!」
和「…え?」
和「…律は…プロになりたいの?」
律「当たり前だろ?目指すは武道館!」
唯『うん!目指すは武道館!』
すこし昔のことを思い出していた。
唯が武道館に行きたいなんて言い出した時は、もしかしたら唯なら…って思った。
それだけ唯の演奏が上手だったから。
私だけの力なら、決して武道館に行けないけど…みんなでがんばれば…もしかしたら…
澪「おいおい…。プロになんてなれるわけないだろ。なぁ和」
和「わ…私も武道館行きたい!」
澪「えっ!?」
澪「お…おい!本気なのか!?」
和「うん!」
澪「でも…プロになるって大変なんだぞ!和だってまだ始めたばかりじゃないか!?」
和「それでも…私、頑張って練習するから!行こうよ武道館!」
律「…そうだな!でも、和はどうしてそこまで行きたいと思うんだ?」
和「…私の友達にね。武道館にどうしても行けなくなっちゃった人がいるの」
紬「…まぁ」
和「だから、その友達の夢を引き継ぎたいの。このギターと一緒に」
澪「…まさか…それって…」
律「…だまってろ澪」
和「だからみんな…お願い。私と一緒に武道館に行きましょう!」
律「…だめだ」
和「え…?どうして…」
律「だって、その台詞は部長であるこの私の台詞だからな!」
律「みんな!必ず行くぞ!武道館!」
紬「おー♪」
澪「わかったよ…とことん付き合ってやる。おー!」
和「みんな…」
律「ほら、和も一緒に!」
和「うん…!おー!」
それから私は、勉強そっちのけで一生懸命練習した。
最終更新:2010年01月28日 03:19