成績は下がり調子で両親にもよく怒られるけど、そんなことなど気にならないほど練習が楽しかった。

今なら、あの時の唯の気持ちがわかる気がする。

和「澪…お願いがあるんだけど…」

律「私からもお願いしやす…」

澪「…またか?」

和「…宿題を教えてほしいの…」

律「私からもお願いしやす…」

澪「だめだ!自分の力でやれ!」

…今の私を、唯が見たらなんて言うのかな?



―数日後

がちゃっ

さわ子「みんなー!練習やってるー?」

律「あ!さわちゃん!」

澪「みんな真面目にやっていますよ」

さわ子「関心関心!なんて言ったって学祭は2週間後なんだからね」

そう。さわ子先生の言う通り2週間後には学祭がある。

そこで私達は、初めて人前で演奏するのだが…

さわ子「和ちゃん!ギターの調子はどう?」

和「はい…なんとか大丈夫だと思います…」

さわ子「…?」

…はたして成功するのだろうか?もし失敗しちゃったどうしよう?

和「………」

律「…和のやつ。最近ずっとこんな調子なんだ」

さわ子「ふーむ…」

和「………」

さわ子「…みんな!ちょっと和ちゃん借りていくわね!来なさい和ちゃん!」ぐいっ

和「せ…先生!?ちょっと…!」

律「えっ!?ちょ…ちょっとさわちゃん!」

ばたんっ!

律「いっちゃった…」


―さわ子宅

さわ子「適当にくつろいでいてちょうだい。今準備してくるから」

和「準備?準備って一体なんの…」

さわ子「いいから!帰っちゃだめよ?」


さわ子「お待たせ!さぁ始めましょう!」

和「これは…ギター?先生もギター弾けたんですか?」

さわ子「そうよ。…実は私も桜高の軽音部にいたのよ。担当はあなたと同じギター」

和「そうだったんですか」

さわ子「私達も武道館に向けて一生懸命練習したわ。…でも、それも昔の話」

さわ子「…あなた達を見てるとね。きっと武道館に行けそうな気がするの。
    だからあなた達は私の夢。その夢を一緒に追わせてもらえないかしら?」

和「先生…もちろんです」

さわ子「ふふ♪ありがとう。やっぱり私はあなた達の顧問になってよかったわ。さ、練習を始めましょう」

和「はい!」

ジャーン

和「…どうですか?」

さわ子「…すごいわ。あなた、本当に今年からはじめたの?」

和「はい。そうですけど…」

さわ子「技術の面では百点満点よ。後はもっと自信を持ちなさい」

和「…はい!ありがとうございます」

さわ子「…さて。あなたの練習に付き合ってあげたんだから私にも付き合ってもらうわよ」

和「?なんですか?」

さわ子「ちょっとまってなさい。…ふふ♪」


がちゃっ

さわ子「おまたせー!」

和「…これは一体何ですか?」

さわ子「なにって、服よ?それも私の手造りのね♪」

和「…これを私が来るんですか?しかもこんなに大量に?」

さわ子「そうよ。あなた以外の誰が着るの?」

和「………」

私がこれを全部着るって?ピンクのフリフリとかボンボンとかついたこの服を?

冗談じゃない…。丁重にお断りして早く家に帰ろう。

和「先生…。すみませんがそろそろ時間が…」

さわ子「…あぁ?」

和「……なんでもありません」



―次の日

和「おはよう…」

律「おはよう和。…朝から随分と疲れてるな」

和「まぁ…ちょっと色々とね…」

律「昨日、あれからさわちゃんと何かあったのか?」

和「!べ…別に何もないわ…」

律「そ…そうか…」


―放課後

がちゃっ

和「お邪魔します」

律「和!いいところにきたな!これ見てくれよ」

和「?…どれどれ」

―キミを見てるといつもハートDOKI☆DOKI

揺れる思いはマシュマロみたいにふわ☆ふわ

和「…なにこれ?」

澪「私が作曲したんだ」

律「…これはないよな?」

和「そうね…ちょっとこれは…」

澪「…だめかなぁ?」うるっ

和「だ…だめっていうか…その…。ムギはどう思う?」

紬「…すばらしいわ♪」

和律「え?」

澪「本当に…?」

紬「はい…嘘はつきません」

和「…私もいいと思うわよ」

律「えっ?さっきないとか言ってなかったっけ?」

和「…言ってないわよ」ぷい

律「目をそらすなよ…!」

和「とにかく、学祭はこの曲で頑張りましょう。えーっと…曲の名前は…」

澪「ふわふわ時間だ」

律「うわぁ」

律「…そもそもボーカルって誰がやるんだ?」

和「…私はいいわ。あんまり歌、うまくないし」

律「なら…澪!お前が歌え!」

澪「私!?嫌だ!こんな恥ずかしい歌、歌いたくない!」

律「おい作者。…和、どうしてもダメか?」

和「…わかったわ。でもあまり期待しないでね」

律「よし!ボーカルも決まったことだし早速練習だ!」

~♪

がちゃっ

さわ子「みんなー。練習してるようね…って…」

さわ子「…なにこの歌?」



―学祭当日

今日はライヴ本番の日。絶対に成功して見せる。

律「よし!今日の学祭張り切っていくぞ!」

和澪紬「おー!」

『次は、軽音楽部によるバンド演奏です』

ざわざわ

「なにあれー?かわいいー」

「一年生だってー」

「がんばれー!」

和「………」

律「…和?」

澪「和…」

紬「…和ちゃん?」

和「………」

…すごい人の量…。みんなが私達をみている。もし、失敗したらどうしよう…。

…弱気になっちゃだめ。武道館はもっとすごいんだから。それにあんなに練習してきたじゃない。

唯…私に力を貸して…!

和「…皆さんこんにちわ!軽音部です!」

和「早速ですが聞いてください!ふわふわ時間!」

―放課後

律「…ふぅ。今日のライヴは大成功だったな!」

澪「本当だな。私達の演奏にみんな驚いてたぞ」

紬「みんな♪お茶が入ったわよ♪」

律「サンキュームギ♪まさかまだティーセットが残ってたなんてな」

紬「またみんなでお茶がしたかったの。だからそのまま残しておいたのよ」

澪「…ここ音楽室だよな?」

紬「まぁまぁ。今日くらいはいいじゃない♪はい和ちゃん」コトッ

和「………」

律「和?」

和「…私、本当にライヴができてよかった。こんなに人前に立つのが気持ちいいなんて…」

澪「…そうだな」

和「それに私…。軽音部に入部して本当によかった!」

和「みんな…私を誘ってくれて、本当にありがとう!」

律「…礼を言うのはまだ早いんじゃないか?」

和「え…?」

律「…なんでもない!武道館に行ったときに聞かせてやるよ!」

それからも私達は練習に励んだ。冬はムギの別荘で合宿。

学校に泊まり込みで練習など…。

あと、ライヴハウスにも何度か出演した。私達のバンドは結構人気があるらしい。ファンクラブが出来る程だ。

…それから年が明け、私達が二年生になった頃…。

和「憂ちゃん。合格おめでとう」

憂「ありがとうございます和さん」

和「今日の新歓で私達、演奏するからみに来てね」

憂「はい!」


『次は軽音楽部によるバンド演奏です』

和「こんにちわ。軽音部です」

和「では早速聞いてください。ふわふわ時間!」

~~~♪

憂「和さん…すごい…」

憂「…私も負けてられないな」


律「入部希望者こないなぁ…」

澪「…やっぱり軽音部って人気ないのかな?」

和「…まだわからないわ。もう少し待ってみましょう」

紬「みんな♪お茶の用意が出来たわよ」

和「…だれも来ないわね」

律「どうしよう…こうなったら拉致ってくるしか…」

澪「おいおい…」

がちゃっ

?「すいませーん。入部希望なんですけど…」

律「おお!いらっしゃい!」

和「え…?憂ちゃん…?」

律「?和、知り合いなの?」

和「えぇ。友達の妹…」

憂「みなさんはじめまして。入部希望の平沢憂です。よろしくお願いします」ぺこ

澪「礼儀正しい子だな。楽器は何か弾けるのか?」

憂「はい!ギターが弾けます」

紬「まぁ♪和ちゃんと同じね」

和「初耳よ…」

律「何か弾いてみて!」

憂「はい!では…」

~~~♪

律「す…すげぇ…」

澪「これは…」

紬「驚いたわ…」

和「す…すごい…私より上手…」

憂「…どうでしたか?」

律「すげえよ!上手だな!」

澪「ギターはいつからやってるんだ?」

憂「小学校5年生からです」

和「え…」

小5から?なら憂ちゃんは、唯が死んでからずっと練習してきたの?

でもそんなこと一言も…。

律「とりあえず今日は解散だ。明日からよろしくな憂ちゃん」

憂「はい!こちらこそおろしくお願いします」

和「………」

憂「和さん。一緒に帰りませんか?」

和「…ええ…いいわよ」

憂「…和さん。ギターやってたこと黙っていてごめんなさい…」

和「…どうして黙っていたの?」

憂「それは…その…今はまだ言えません…」

和「どうして…?」

憂「…どうしてもです」

和「…そう。私、先に帰るわね」

憂「和さん!まって…!」

私は何を怒っているんだろう?憂ちゃんが私に隠し事をしていたから?

…違う。私は憂ちゃんに嫉妬しているんだ。私よりもギターがうまいから。

でも、そんなの当たり前じゃない。私はまだ1年ちょっと。憂ちゃんは4年近くもやってるんだから。

分かっているんだけど…。この気持ちはおさまってくれない。



がちゃっ

憂「こんにちわ~」

律「よう憂ちゃん。今日からよろしくな!」

憂「はい!よろしくお願いします」

澪「さあ、さっそくだけど練習しよう。ライヴまでもう少しだ」

律「そうだな。いっちょ気合入れてやるか!なぁ和!」

和「………」

律「和?」

和「…え?ごめんなさい。聞いてなかったわ」

律「おいおい、しっかりしろよ。後輩に先輩のやる気を見せなくてどうするんだ?」

和「ごめんなさい…」

憂「………」


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最終更新:2010年01月28日 03:23