唯「やっぱり飼い主はきちんと役目をはたさないといけないよね?」
梓「まあそれはそうですけど……薮から棒になんですか?」
唯「ううん、思ったことを言っただけだよ」
梓「はぁ……言っておきますけどトンちゃんの面倒はきちんと見てますよ」
唯「うん、知ってるよ。突然話が変わるけど私は飼い主歴十年だからね!」
梓「え?唯先輩何かペット飼ってましたっけ?」
唯「うん!カワイイカワイイペットだよ」
梓「なんですか?」
唯「憂だよ」
……
唯「うーい、アイスー」
憂「アイスは食後でしょ、お姉ちゃん」
唯「えー今食べたいなあ」
憂「だーめ」
唯「憂のケチんぼ」
え?妹さんのほうがよっぽど飼い主みたい?
どうも皆さん平沢姉妹について理解していないみたいですね。
よござんす!教えてさしあげます。
一見今の会話は私がいいようにあしらわれたように見えます。
しかし、しかし。
実際には私の計画通り。
唯「じゃあご飯食べたら絶対アイス食べていいんだよね、憂?」
憂「うん、ご飯食べたらね」
唯「わーい」
実際には憂は見事私の作戦にハマッているのです。
この会話によって私は食事の前にアイスは食べられないけど、確実に食後にはアイスを食べられるんです。
ふふ、憂はいつも飼い主である私にコントロールされているんだよ。
例えば他には。
憂「お姉ちゃん朝だよー」
唯「うー」
憂「お姉ちゃん起きてー」
唯「うーあとちょっと~」
憂「だーめ!早く起きないと遅刻しちゃうから」
だらしない姉が妹に起こされているという風にしか見えないこの場面。
しかし、しかし実際にはそうではないのです。
憂「お姉ちゃん、今日はお姉ちゃんの大好きな朝ご飯だよー」
唯「起きます!」
憂「はいおはよう」
わざと寝坊をして憂に私を起こさせます。
そうすることで飼い主とペットとの関係を無意識に自覚させます。
ふふ、計画通り。
憂「って二度寝はだめ!」
唯「うーねむーい」
時には訓練のために難易度をあげます。
はたまたこんな場面。
憂「お姉ちゃん!」
唯「は、はいっ!」
憂「このぬいぐるみの山はなに?」
唯「そ、それはゲームセンターで……」
憂「こんなにとってきちゃって、めっ!」
唯「……ごめんなさい」
一見姉が妹に無駄遣いを責められているようにしか見えないこの場面。
しかし、しかし。実際にはこれも違うのです。
憂「今月はお姉ちゃんのお小遣あんまり多くないんだから」
唯「は、はい」
憂「気をつけようね」
唯「うん、もうムダづかいは二度としないよ!」
実際には姉である私が無駄遣いを働くことにより、妹の金銭感覚を厳しくするという
我ながら非常にかしこい訓練をさせているのです。
将来、私からはなれても一人で生きていけるように金銭感覚をしっかりさせているんです。
さすが私。なんていい飼い主なんでしょう。
唯「憂、これあげる」
憂「いいの?」
唯「うん!」
憂「お姉ちゃん、大事にするね!」
飼い主としてさりげなくご褒美をあげるのも忘れちゃダメです。
今度はこんな場面。
唯「ふふんふふん♪」
憂「お姉ちゃん、お風呂入らないの?」
唯「もうちょっとしたら入る」
憂「先に入ってもいい?」
唯「うん、いいよ」
一見、姉がギターの練習に熱中しすぎて、そのまま練習し続けたいから
妹にお風呂を先に譲ったという風にしか見えないこの場面。
しかし、しかし違うのです。
憂「じゃあ入ってくるねー」
唯「いい湯で~」
憂「あはは、なにそれ?」
唯「いい、湯、だっな~」
しかし、実際には一番風呂を譲ることにより私は冬の寒い一番風呂を回避しているのです。
冬の一番風呂は寒いですから。
言わないだけでもちろん私の妹はソーメイですので、
きちんとそれを理解してして暖かくなった二番風呂を私に提供してくれているのです。
自然に飼い主への優しさを身につけさせる。
飼い主として当然の役目です。
憂「今日は一段と暑かったから汗かいちゃった」
唯「そういえば今は夏だねー」
そしてこんな場面でも。
唯「やっほーういー」
憂「きゃあ!?」
唯「やっぱり一緒にお風呂に入ろっ」
憂「え……うん」
唯「身体洗ってあげるね」
憂「ちょ、ちょっとお姉ちゃんど、ど、どこ触ってるの!?」
唯「ほれほれ」
憂「ぁん……」
一見二人の姉妹が仲良くお風呂でじゃれあっているようにしか見えないこの場面。
あ、ちなみにこの場面は文章のみでお楽しみ下さい。
しかし、しかし違うんですよ。
憂「もう、お姉ちゃんったら!」
唯「ひゃう!?」
憂「仕返しだよっ」
唯「憂、もみもみしないで……ん、」
憂「気持ちいい?」
唯「……ぅん」
実際にはこうして妹のおからだに触れてどこか異常がないかチェックするのです。
飼い主としてペットの体調管理に気をつけるのは当たり前です。
唯「ああ、気持ちいい」
憂「私、上手でしょ?」
唯「うん!憂の肩もみは最高に気持ちいいよ」
憂「えへへ」
唯「ん……」
あらら、こんな場面でも。
唯「うーい、テストどうしよ~」
憂「どうしたのお姉ちゃん?」
唯「テストが近づいてきてるのにいっこう勉強が進まないんだよ~」
憂「まかせてお姉ちゃん!」
唯「おお!さすが私の妹!」
テスト前に勉強がまるで進まず泣きつく姉を助けようとする妹。
なんて素晴らしい姉妹の愛の場面。
しかししかし……なんか同じことばかり言ってるなあ。
憂「いい、お姉ちゃん?」
唯「はい!憂先生!」
憂「まず、関係代名詞っていうのは……」
実際にはこうして妹に一学年上の姉の勉強をさせることで、常に同じ学年のライバルたちよりも勉強をリードさせるのです。
飼い主が優秀なんだからはペットも優秀じゃなきゃね。
憂「お姉ちゃん、寝ちゃダメっ」
唯「むーり……」
ペットの世話は大変!
なんとこんな場面でも。
唯「うう、もう食べれないよ……うぃ」
憂「全然食べてないのに、お腹いっぱいなの?」
唯「今日、ムギちゃんが用意したお菓子食べすぎちゃったんだ」
憂「うーん」
唯「ごめんなさい、憂」
憂「今度からは量を考えて食べてね」
唯「はあい」
お菓子の食べ過ぎでご飯を食べられない姉を叱る妹。
そんな何気ない食事風景。
ふふ、でも違うのですよ。
憂「パクパク」
憂「モグモグ」
唯「パクパク」
憂「お姉ちゃん……」
食べられない状態にも関わらず、あえて妹の愛のこもった料理を食べる。
そうすることで、飼い主である私の気高さを見せつけペットに尊敬させる。
やっぱり飼い主がナめられてちゃダメです。
唯「うっ……」
憂「お姉ちゃん、まさか……!?」
唯「ゲロはいちゃうよおおおおおおぉぉぉ」
憂「はい、ごみ箱!」
とっさの対応力を鍛えさせるのも忘れてはいけません。
これも?的な場面。
唯「ギー太」
ギー太「」
唯「今日は何して遊ぶ?」
ギー太「」
唯「お姫様ごっこ?」
憂「お姉ちゃん入るよー」
唯「いやん」
ギー太「」
ギターと遊んでいる姉という非常にシュールな光景を目撃した妹。
そんな二人の日常の一場面。
まあ、これにも飼い主の思惑はあるんです。
唯「ギー太、一緒にお風呂入ろっか?」
ギー太「」
唯「もう、ギー太は無口なんだからあ」
ギー太「」
憂「……」
これは、とても入りづらい空気にあえて割り込む能力を鍛えるための訓練です。
ペットたるもの空気を読むだけじゃなく、時には空気を壊すことも覚えましょう。
何に使えるかは知らないけど飼い主としてとりあえずしつけしときます。
憂「……」
妹は何も言わずにニコニコしながら部屋を出ていきました。
唯「あれ?」
ギー太「はは、ドンマイ」
あまーいこんな一時でも。
唯「ういー耳がかゆいよお」
憂「じゃあ耳掃除してあげようか?」
唯「たのもー」
憂「たのまれました」
姉が、耳がかゆいので耳掃除を妹に頼むというフツーの風景。
けれどもけれども。
憂「じゃあお姉ちゃん寝転がって」
唯「はーい」
憂「はい、ゴロゴロしないの」
唯「ゴロゴロゴロゴロ、ピタッ」
実際にはこうしてペットとして飼い主に尽くさせることで奉仕の精神を学ばせるんです。
唯「うーい膝枕しながら掃除して」
憂「知ってる?膝枕しながら耳かきしようとしても自分が影になって見えないんだよ」
唯「ええ、そうなんだあ」
時にはペットから学ぶこともあります。
このような場面でも。
唯「憂ー
憂「なあにお姉ちゃん?」
唯「コタツはいいね」
憂「そうだね」
唯「しあわせ~」
憂「ふふ、お姉ちゃん、本当に幸せそう」
姉妹がコタツに入ってゆったりとしているほのぼのとした光景。
しかし、しかし、しかし!
唯「……」
憂「……」
唯「みかん美味しいね」
憂「そうだね」
しかし、実際にはいつも働きもののペットをゆっくりと休ませているのであります。
ついでに私も休憩をしているのです。
唯「うい~みかんのかわみたいなのとって~」
憂「それとっちゃうと栄養価が低くなるんだよ」
唯「そうなんだあ。でもとって」
憂「はいはい」
ああ、し・あ・わ・せ。
さらにこんな場面でも。
憂「お姉ちゃん、それ私の服だよ」
唯「むにゃ」
憂「寝てるし」
唯「ううー」
自分の服を堂々と着る姉に困惑する姉。
これまたごくフツーの場面。
だが、しかし。
最終更新:2010年06月15日 22:43