ファンクラブ1「私たち、あれからすごく反省したんです……」

ファンクラブ2「私たちは、自分が澪先輩とくっつくことばっかり考えて、澪先輩自身の幸せのことが全く頭にありませんでした。」

ファンクラブ1「ファンクラブ会員としてあるまじき所業です。私たちは本来、澪先輩の幸せを第一に考えるべき存在ですから……」

ファンクラブ2「それで、私たち2人は考えました。澪先輩にとって何が一番幸せか、そのためにできることは何か」

ファンクラブ1「二人とも、同じ答えを出しました。澪先輩にとっての幸せは、律先輩と一緒にいることだと。」

澪「なっ……」

ファンクラブ1「私達は」
ファンクラブ2「そのために、私達にできることをします」

ぐっ

澪「これは……」
律「2年生のロザリオ?」


ファンクラブ1「お二方、このロザリオを受け取ってください」

律「……おいおい、それじゃあさっきと……」

ファンクラブ1「違います」
ファンクラブ2「名前シールは剥がしてあります。このロザリオはこれから、律先輩と澪先輩のロザリオになるんです」

澪「えーと……それはどういう」

ファンクラブ1「先輩達は、名前シールをこの赤いロザリオに貼ってください。私達も、自分の名前シールを青いロザリオに貼ります。」

澪「私達のロザリオと、二人のロザリオを入れ替えるってことか?」

ファンクラブ2「そうです。そうすれば、先輩達は赤いロザリオに青ネクタイ、もう下級生に声を掛けられることはなくなります。」
ファンクラブ1「その上で、今度は先輩達同士で、お互いの名前のついたロザリオを交換してください。」
ファンクラブ2「そうすれば、先輩達は名実ともにスール同士。お互いの絆は保たれますし、もう横やりが入ることはないでしょう」


澪「そ、それって……アリなのか?」

ファンクラブ2「確かに……同級生同士でロザリオを交換する例は他にありませんが……」
ファンクラブ1「やってはいけないという話はありませんでした。規定では、『3年生は必ずスール契約を結び、赤か緑のロザリオを所持すること』とあります」
ファンクラブ2「この方法なら、ルールを破らずに二人が一緒にいられるんです」

律「考えたな……」

ファンクラブ1「さっきの律先輩の振る舞いを見て、澪先輩を任せるなら律先輩しかいないと思いました。」


ファンクラブ2「これは提案でなく、お願いです。律先輩、どうか澪先輩のスールになってください!」

律「……」
澪「律、どうする?私は……」
律「……よし、澪」
澪「ん?」


律「私の、妹になれ」にっ


澪「……!!/////」



ファンクラブ1「(み、澪先輩が真っ赤に……)」
ファンクラブ2「(これはええもん見ましたわ…………)」


澪「ということがあったんだ」

唯「なるほどー」
律「だから、私達はスール契約騒動から一抜け。一抜けっていうか二抜けだけど。な?」
澪「そうだな……////」

紬「(澪ちゃん、律ちゃんのロザリオを大事そうに握って……見せつけてくれちゃうわね)」にまにま

唯「でも、赤ロザリオならもうファンクラブがわーって来ることないね。よかったねぇ。」
澪「そうだな、あれはもう懲り懲りだ」
唯「いいなー、私も赤ロザリオ欲しい」
梓「!」

梓「あ、あの……私の」



唯「うーん、でも憂がだめならしょうがないよね。そうだあずにゃん、ロザリオちょうだい!」

梓「!」


唯「だめ?」

梓「……(……うれしい…………でも、)」

梓「……(『しょうがない』……?)」

梓「……」

梓「……いやです」

唯「え?」

梓「ぜっっったい!いやです!!」

唯「???」



紬「(あちゃ~……)」


唯「ふえぇ……あずにゃんにスール断られちゃったよぉ……」

澪「単純にロザリオ授受の時間がなかったってことかもな?あのあと急に楽器片付けて帰っていったし……」
唯「それはきっと、私の顔を見たくなくなっちゃったからだよぉ……」うるうる
澪「ち、違う、違うぞ、大丈夫だ……たぶん」

紬「(澪ちゃん……)」
律「(墓穴掘ってるぞ……)」

紬「でも、まだ一週間の初日じゃない。澪ちゃんの言う通り、もっと時間の取れる時に言ってほしかったのかも」
唯「そうかなぁ」
律「それに、スールを断ったからって唯のことを嫌いだとは限らないだろ。ってか、そんなことは絶対ない」
澪「それは、そう思う!」
唯「かなぁ?かなぁ……」



……

憂「えー、梓ちゃんが!?」
唯「そうなの」しょぼん
憂「(おかしいなぁ、梓ちゃんはお姉ちゃんのことが大好きなはずなのに……)」
唯「憂はなんで和ちゃんのスールになったの?」
憂「えーと……」



  • 回想-

憂「(スール制度か……とりあえずお姉ちゃんに会いに行ってみよう)」

和「憂!」

憂「和さん!」
和「偶然ね、ほんと偶然。もしかしてこれから唯のところ?」
憂「へ?なんで分かったんですか?!」
和「危なかっ……ごほ、ううん、何となくよ。憂は唯のスールになるの?」
憂「うーん……いえ、とりあえずお姉ちゃんって感じで……」
和「そ、そう。そうなの…………あのー、もし憂が唯じゃなきゃだめっていうなら止めないんだけど……」
憂「どうしたんですか?」
和「……私のスールにならない……?」
憂「和さんの?!」

和「と、突然すぎたわね、分かってるわ大丈夫、憂が嫌なら無理強いしないし……」
憂「いえ……でもどうして?」
和「うーん……ほら、私も憂も唯のこと大好きじゃない?」
憂「そう……ですね。お姉ちゃんのことは、好きです」
和「でも、憂はクラスで唯がどうしてるか知らないでしょ?」
憂「確かに……」
和「同じように、私も唯が家でどうしてるか知らない。……だから、二人で情報交換したいの」
憂「!」
和「へ、変な意味じゃなくよ。私は家での唯のこと、ちゃんと知ってた方が学校でもサポートしやすいし……逆に憂の場合もそうでしょ?」
憂「それは、助かるかもしれませんが……」
和「憂が唯とスールになっても、今までとそう変わらないと思うの。それなら私と組んで、もっと唯の役に立ちたいと思わない?」
憂「う……」

和「それにね、さっき紬からメールがあったんだけど、私と憂がスールになったあとで……」
憂「?」
和「紬と私と憂の3人で、秘密裏に『唯を見守る会』を発足しないかっていう話があるの。私たち二人の情報に、さらに紬の持つ『軽音部での唯』の情報が加わったら……どうなるかしら?」
憂「!!」
和「勿論、スール制度っていうのは双方の合意がないと成立しないけど……」
憂「いいえ!!!!!」
和「!?」
憂「なりましょう、スールに!さぁ今すぐロザリオを!!」キラキラキラキラ
和「……(これでいいのよね、紬……?)」


憂「(……ほんとのことなんて絶対言えない)」

憂「……偶然会って、意気投合したからかな?」
唯「ふーん、その場のイキオイって感じ?」
憂「ま、まぁそんな感じ……?」
唯「なるほどなるほど」

憂「(……それにしても)」



  • またもや回想-

和「やっぱりここが一番良さそうね……うちマリア像ないし」
憂「和さん、意外にムード気にするタイプなんですね」くすくす
和「ち、違……私はただ、しかるべき場所でしかるべき儀式を行いたいだけよ。厳粛に。……それから」
憂「はい?」
和「このロザリオをつけたら、『和さん』じゃなくて『お姉さま』。いい?」
憂「……はい」ドキ
和「じゃあ、目を瞑って」

ふわ

憂「…………」


憂「(お姉ちゃん以外の女の人に触られるのって、ちょっと不思議な感じがするんだなぁ……)」
憂「…………」ドキドキ

唯「うい?」
憂「!」びくっ

憂「あっでっ」
唯「?」
憂「で、でも、お姉ちゃんはお姉ちゃんだけなんだからね!お姉さまがいてもお姉ちゃんはお姉ちゃんなわけで、お姉さまができたってお姉ちゃんよりお姉さま、なんてことには絶対……」
唯「…………言ってる意味が分からないよ、ういー」




  • 翌日-

和「(『お姉さまへ 昨日のお姉ちゃんは、ハンバーグをおいしそうに食べていました でもちょっと元気がなかったみたい 憂より』)」

和「なるほど」

和「(憂へ ありがとう たしかに今日の唯は元気がないかも 今もなんだかぼーっとしています)」ぷちぷち
和「(和 より)」ぷちぷち

和「…………ふふっ」
紬「なぁに?楽しそう」
和「!」びくっ
紬「珍しいわ、和ちゃんのそんな顔」
和「紬ったらびっくりさせないでよ。そうだ、憂との件はありがとう」
紬「うまくいってよかった。二人は絶対気が合うって思ってたの」
和「ど、どういう意味よ」
紬「さぁ?」にまにま

和「まぁ、似た者同士ではあるかもね。これからは紬と三人で情報共有ができるって言ったら喜んでたわ」
紬「似た者同士、仲良くできるといいわね」
和「ゆ、唯を見守るっていう目的の下では同志な訳だし、うまくやるわよ!……あくまでも目的のためによ!」
紬「(意外と分かりやすいタイプよねえ)」

さわ子「おはようみんな。……あら、さっそくロザリオの色が違う子がいるわね。侮れないわ」

和「……」にこにこ

律「……」にこにこ
澪「……」かぁぁっ

さわ子「でもまだの子も焦ることないわよ。まだ6日もあるんだから、ゆっくり良い相手を見つけてね」

律「ほら澪、お・ね・え・さ・まって」ぼそ
澪「ばか、HR中だぞ!」ぼそ
いちゃいちゃ



唯「(……あずにゃん……)」




  • 放課後-

紬「みんな、まだかしらね」
唯「……」ぼーっ
紬「(唯ちゃん……)」

ガチャ

唯「!」ぴくっ

梓「お疲れさまで」

唯「あああああずにゃああああああああああああんっ」だきっ
梓「!?」

唯「あずっあずにゃっああああああん」ぐずぐずぼろぼろ
梓「ゆ、ゆい先ぱ、くるし、」
唯「ごめんなさいいいい嫌いにならないでえええええええええええ」ぼろぼろ
梓「/////!な、なりません、なりませんからとりあえず……離して……」ぐい
唯「うぅ……」ぐすぐす

梓「びっくりした……」

唯「うっうぇっ」ぐずぐず
紬「ごめんなさいね。唯ちゃんたら、朝から梓ちゃんのことばっかり気にしてて」
唯「そ……なのっ……だっ……もっ……来なっ……」ぐずぐず
紬「そう、もう来ないんじゃないかって」
唯「……ゆ……わが……おご……うぇっ」ぐずぐず
紬「理由は分かんないけど、怒らせちゃったことは確かだから、ずっと謝りたかったのって」
唯「う……うっ」ぐずぐず
梓「唯先輩……」
紬「ね、もし唯ちゃんのこと嫌いじゃないなら、今日もいつも通り、一緒に練習してあげられないかしら。……スールの話は、すぐに考えなくてもいいから」
唯「そ……す……じゃ…く…も………しょに、て……ばい……」ぐずずっ
紬「……唯ちゃんも『スールじゃなくてもいいから一緒にいてください』って言ってるわ?」
梓「……」

梓「……分かりました。昨日のことはひとまず忘れます。っていうか、こっちこそすみませんでし……」
唯「うわああああっよがっあずっにゃあああああ」ぶわっ
梓「だ、だから抱きつかないでくださいってば!!!!」じたばた


ガチャ

律「おーっす!」
澪「……ほら律、もう着いたから、離して……」ぼそ

唯「律ちゃん!」ぐずっ
律「なんだ唯そんな顔して!何かあったのか?」
唯「あのね律ちゃんあのねあのねぇっ」ぶわっ
梓「唯先輩ちょっと待って!」

唯・律「?」

梓「律先輩……」

律「ん?」

梓「……なんで澪先輩と手繋いでるんですか……?」

澪「!!!」


唯「!し、しかも恋人繋ぎだよ……上級者だよぉ……」

律「ああ、これ?」ぐい
澪「きゃっ」
律「こっちに来る途中でスール同士っぽい二人がやってたんだよ。で、何か楽しそうだったから」

梓「楽しそうだったから、じゃないですよ!そ、そういうのは本当に大事な人ができた時に……」

律「何言ってんだ梓、澪は今でも十分大事だぞ。なー?」にぎにぎ
澪「り、りつーっ!」かあぁっ

唯「ふわぁ、なんかスールって色々楽しそうなんだね。……あれ、ムギちゃん?」

紬「……」パアァ……ピヨピヨピヨ

梓「召されてる……」


澪「だ、だから私はやめようって言ったんだ……だいたいごにょごにょごにょごにょ」

紬「さぁ、皆!今日はめいいっぱいおいしいお茶を入れたから!飲んで飲んで!」
唯・律「わーい!」
唯「のーんでのんでのんで」
律「のーんでのんでのんで」
唯「みおちゃんの、」
律「ちょっといいとこ見てみたい♪」
澪「いつまで飲み会ネタ引っ張ってるんだあんたらは!」
紬「うふふふふ」

梓「(紬先輩の眉毛が三割増しぐらいで輝いてる……)」

梓「(……でも)」ずず



梓「(スールになるってことは、友達以上の関係を築くってことだから……)」

律「澪、あーん」
澪「バカッ」

梓「(律先輩と澪先輩みたいなことになってもおかしくない、のかも……もし唯先輩のスールになれたら……)」


(唯「あずにゃん、あーん」)


梓「……////」ぼたぼた

紬「あらあらうふふ」



がやがや

唯「ずるいー、律ちゃん私にも」
律「しょうがないな、唯は。あーん」
唯「あーん」もぐもぐ
澪「律」
律「ん?」
澪「あーん」
律「ばっ、そっちからはナシだろ!」
澪「なんでそうなる」
唯「えーなになに、律ちゃん照れてるの?」
律「ちがーう!」////



梓「(やっぱり、唯先輩のスールになりたいな……)」

梓「(……でも)」

(唯「憂がだめならしょうがないよね。」)

梓「(…………誰かの代わりなんて、いやだ)」



澪「ほら、口開けて」
律「うぅ……」



  • 翌日-

さわ子「……だいぶ色違いさんが増えてきたみたいね。」

さわ子「みんな楽しそう。先生の時代にもこんな制度があったらなぁ……」

和「(唯は昨日より少し元気になりました でも考えごとは続いているみたい)」
和「(和より)」

唯「(……どうしたらいいのかな……)」

紬「(唯ちゃん、何を考えているのかしら……)」


  • 昼休み-

律「ぷ、プロポーズ大作戦!?」

唯「そう!」
澪「プロポーズっていうか、今回はスール申し込みだろ」
唯「細けぇことはいいんだよ!とにかく、あずにゃんにとっっっっっても素敵なシチュエーションでスール申し込みがしたいの」
紬「シチュエーション、ねぇ……」

唯「あのね、私考えたんだ」
唯「この前、何がいけなかったのかなって」
唯「それでね、こういうのに大事なのは、やっぱりシチュエーションだと思うの!」
唯「この間は、ほら、何かノリだけでぱーっと言っちゃったから、いけなかったんだと思う!」


澪「なるほど。シチュエーションは大事かもしれないな……(確かにあの時の律も……)」
律「?何赤くなってんだよ澪」
澪「気のせいだ!」

唯「きっとね、とびきりゴーージャスでマーーベラスなドキドキシチュエーションでおねがいしたら、あずにゃんもうんって言ってくれると思うんだ!」えっへん
律「面白そうだな、乗った!」
澪「私も……出来る限り協力するよ」

紬「(みんな……)」

紬「(本当はそれだけじゃだめなのよって、教えてあげたいけど……)」

紬「(……もう少し黙ってましょう。唯ちゃん、気づくといいな)」


唯「あずにゃんをびっくりさせるぞ、おーっ!」


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最終更新:2010年06月16日 00:33