店員「オーキャクサマーァ! オーキャクサマーァ! ヒトクチドゾーウ!」

唯「あっ、もしかして試食コーナー!?」

律「おー、やってるねぇ。お肉が焼けるいい匂いだ」

澪「最近のスーパーじゃめっきり見なくなったもんなぁ」

梓「そうですね。スーパーは大型化機械化に伴って変わっていくものですが」

梓「コストコの試食はいつまでも変わらないでいて欲しいものです」

唯「そうらねぇ、おいひいもふ」

律「もう食ってきたんかい! 私も食うだー」

店員「ハイアーリガトゥッ! オーキャクサマーァ! ヒトクチドゾーウ! アジツキダヨーゥ!」

澪「あの、私にも一つ」

紬「味付きならシェフさんも助かるわね。一つ買おうっと」

唯「くんくん。次はあっちのソーセージでも試食しに」

梓「ちょっとタンマです! 唯先輩、まさか全ての試食を渡り歩くつもりじゃ」

唯「……ダメカナ?」

梓「ダメデスヨ。お腹いっぱいになったら、食料品が美味しく見えなくなりますって」

梓「それにお昼はコストコ内で食べるって決めてきたじゃありませんか」

律「コストコ内で? よくあるフードコートみたいなのがあるのか?」

紬「そういえば、入り口からまっすぐ行ったところにそれらしい場所があったけど」

紬「私たちは通路を曲がっちゃったから」

梓「まぁまぁ、それについての詳細は控えておくとしましょう。後のお楽しみです」

梓「それより、お肉は味付きのもの以外買わなくていいんですか?」

唯「あっ! 忘れてた!」

律「牛肉に豚肉に鶏肉と。それにしても、お肉は一段とボリュームがあるんだな」

澪「そうだな。ステーキタイプのものも結構多いな。バーベキューのお肉なんかを買うには嬉しいかも」

紬「アメリカ産のものが多いのね。コストコの本店があるからかしら」

澪「だろうな。それだけじゃなく、今は口蹄疫の問題もあるから」

紬「ああ、そうね。宮崎では大変なことになってるけど、向こうから見れば輸出のチャンスなのよね」

澪「だな。豪州も力を入れてくるだろうなぁ」

律「何ニツイテ、話シテルノ」

唯「日本語ヲ喋ロウヨ二人トモ」

梓「お二人はもうちょっと世界情勢というものを知るべきですね」

唯「ふんふんふーん。今日は憂に唐揚げ作ってもらおーっと」

梓「皆さん結構買い込みましたね。ちょっと重くなってきたような」

紬「無理しないでいいのよ」

梓「なんのこれしきです!」

紬「次は、ピザのコーナーね」

律「またしてもジャンボ……。ピザハットも驚きの大きさだな」

澪「驚くのは大きさだけだけじゃないぞ。値段を見てみろ値段を」

律「すげぇ! 宅配ピザの半額以下のお値段で買えてしまうとは……」

梓「まぁ、ピザについては材料費から見て、日本の業者が高く設定しすぎているというのもありますね」

梓「できるだけシンプルなのを買って、後から更に好きな具やチーズましましで食べるのなんていいんじゃないでしょうか」


唯「この大きさ、座布団にも使えちゃったり」

律「そのままオーブンに入れられて泣き目を見たりな」

澪「律、それはちょっと酷いんじゃないか……」

紬「とりあえず三枚くらい入れておくわね~」

梓「また随分と買いますね。冷凍しておけばいいという利点もあるのでしょうが」


澪「ここからは、惣菜が中心か」

唯「おおぉ! お寿司がいっぱい! 寿司がすし詰め!」

律「いよっ、座布団一枚っ」

澪「お前らはどこででも楽しそうだな」

紬「そそくさそそくさ」

梓「あのムギ先輩、そんなにピザを取り出したいですか。座布団に反応しすぎですって」


紬「鮮魚コーナーね」

律「パックにこれでもかと盛られてビニール巻かれてんなぁ」

梓「若手芸人のストッキング芸を彷彿とさせますね」

澪「ううぅ。イカ詰めがちょっと怖い……」

律「実はこのイカたちはお腹が空くと同じパックの中の仲間を」

澪「ひいいいいいいぃぃ!」

唯「澪ちゃん! そんなことなイカら大丈夫!」

澪「ううぅ……。本当に、本当か?」

唯「うん。だって私イカ好きじゃないから共食いしても気になら」

澪「ひいいいいいいいいっっ!」

梓「思いっきり逆効果みたいでしたね」

唯「てゆーか、魚って食べにくいからあんまり好きくないし……」

梓「そうやって好き嫌いしてると成長しませんよ」

律「お前が言うな」

澪「お前も言うな」

紬「あらあら」

唯「とりあえず、お刺身の盛り合わせは食べやすいから好き~」

梓「懲りませんね。まぁ捌く苦労がない分、憂は喜ぶでしょうが」

律「甘いな梓。憂ちゃんは唯のために苦労するほど喜びを感じる子なのだよ」

梓「え゛……。うーん、言われてみれば確かに」

唯「じゃあ、憂と私のことを考えて、この屋根瓦みたいなシシャモでも」

澪「憂ちゃんも色々と大変だな……」


唯「大変! あんなところに人が閉じ込められてる!」

律「何、どうした!? って、おい」

梓「どう見ても冷蔵庫の中で店員さんが整理してるだけですけど」

唯「一大事件だと思ったのに、ぶーぶー」

澪「整理してるのはたまごか。普通は12個入りなのにその倍くらい包装されてるな」

梓「一般的な冷蔵庫のたまご入れに入るのが12個ですからね」

律「隣には冷凍ピザかぁ。これまたどでかいこって」

唯「あー!」

梓「もう、なんですか唯先輩。さっきから大声出しすぎですよ」

澪「どうした? 向かいの冷蔵庫には何が」

唯「アイス……。アイス……。アイス……」

律「おおぅ。唯の目がスポットを浴びたバニラアイス並に輝いているぅ!」

澪「こりゃあパターンに入っちゃったな」


梓「アイスは最後の最後ですよ。ここでやっと半分位なんですから」

梓「今カゴに入れたらお店を出るころには溶けちゃってるはずです」

唯「……アイスの試食は」

紬「残念だけどないみたい」

唯「ガックリ……」

律「観念するこったな」

唯「あううぅ。アイスのあーちゃん。チョコアイスのちょーさん……」

梓「アイスにまで名前つけてたんですかっ!?」


澪「野菜コーナーまでくると、少し人がすいてくるな」

律「果物もあるみたいだぞ。おっ、まだ青いバナナまで置いてある」

梓「見た目が青くても中は食べごろな種類のバナナもあるんですよ」

唯「あずにゃんバナナ好きだもんね~」

梓「まぁ、人並みですよ人並み」

梓「あと、野菜コーナーはここだけじゃありませんよ。あそこの小部屋みたいなところもそうです」

澪「この倉庫に比べれたら小部屋だけど部室よりは広そうだな」

唯「入ってみようよー」



唯「って寒ぅ!」

澪「冷房がきいてる……その為の野菜倉庫ってことか」

梓「ですね。キノコ類やトマトやごぼうなんかはここに置いてます」

唯「さ、ぶ、ひ、ひ、ひ……」

梓「あ、そういえば唯先輩って冷房苦手でしたっけ」

唯「平沢死すとも音楽は死なず……、ガクッ」


唯「平沢復活しました!」

梓「冷蔵野菜エリアを出ただけじゃないですか」

律「とりあえず私はもやしを大量に手に入れられたから満足かな」

澪「もやしは結構傷みやすいんだぞ。常温だとすぐに腐っちゃうし」

澪「冷蔵庫に閉まってても一週間くらいで黒く変色する……ものも……」

唯「澪ちゃん? 澪ちゃーん?」

梓「自爆しちゃったみたいですね」


律「ったくしょうがねーなぁ」

唯「おおっ!? りっちゃん。澪ちゃんを復活させる名案を思いついたんだね!」

律「なぁ澪、こっち向けよ」

澪「モヤシがモヤシが黒いモヤシが……」

梓「さっきの冷蔵庫の下りは実体験だったみたいですね」

律「おい澪」

澪「な、なんだよ、りりりつぅ」

律「ここに一袋に十五個入った五百円のじゃがいもがある」

律「そしてこっちに、同じように一袋に十五個入った五百円のたまねぎがある。随分と仲がいいんだな」

澪「だ、だから何なんだよ」



律「じゃがねぎ」

澪「へ?」

律「じゃがねぎ」

澪「……っぷ。くくっ」

律「じゃがねぎ」

澪「ぷっ、くうっ……」

唯「じゃがねぎ」

澪「ちょ、やめ、じゃがね……ぷふっ」

律「じゃがね」

澪「やめろってば!」

律「あいたぁ!」

唯「どうしていつもりっちゃんだけなんだろうね」

紬「これが幼馴染というものなのね」

梓「いや、この二方がやや特殊なだけなような……」

律「お、ドリンクコーナー。聡にコーラ買ってきてくれって言われてたんだよなぁ」

澪「ペットボトルより缶の方が多いみたいだな。種類も在庫も」

紬「確か、ホームセンターはペットボトルの箱詰めばかりだったわね」

梓「缶が多いのも、アメリカオーナーな所以ですかね」

梓「あ、買うものはカートの下に入れてください。この為に空けておいたんですから」

唯「ふんぬー! ふんぬー!」

律「って、ミネラルウォーターだけ馬鹿みたいにでけぇ!」

紬「唯ちゃん私に任せて。そぉれい!」

梓「ムギ先輩……凄い。私、いつも店員さんに取ってもらってるのに」

唯「ありがとうムギちゃん!」


律「さてと、とりあえず外周は回り終えたわけだけれど……」

梓「次は、島、ですね。おかし、コーナーが」

澪「水は重いもんな。十分頑張ったよ梓、ムギに替わってもらえ」

梓「はい。スミマセン……」

紬「今までありがとうね」

梓「ですが、ここからはレジ前の混雑と甘いものの誘惑で足を止める人が多いゾーンに」

梓「コストコのカートは後輪が固定されているので、上手く操らないと」

紬「それなら、曲がるときは後輪を浮かせればいいのね」

梓「なんというテクニック!?」

律「おかしのパックがすげー」

唯「ね! コンビニで買えるやつの三倍くらいの大きさのもあるよ!」

梓「それもありますが、主要メーカーでないおかしも数多くありますから、結構掘り出し物もあったりするんですよ」

澪「野菜チップスとか健康に良さそうだよな」

店員「試食いかがですかー? チョコレートの」

唯「ピクッ」

梓「ジロッ」

唯「……言われる前に食べてやるっ!」

梓「ああ、もうっ! お昼は目の前なのにっ!」

律「島の中心はほとんど洋服かぁ」

唯「おおぉ。魅力的なTシャツが盛りだくさん!」

梓「魅力的な言葉が印字されたTシャツ、の間違いですね」

紬「まぁまぁ。そうかっかしないで。もう少し回ればお腹もすくだろうから」

律「んー、やっぱ服に関しては数が多いがちょっとな」

梓「ですね。見ないメーカーも多いですし、外行き様の服はあまりありませんね」

澪「え、梓今なんて……」

梓「外行き様の服は、ここより他で探した方が良いかと」

澪「…………」

律「梓。察してやれ」

梓「はぁ。よく分かりませんが」

唯「コストコって書いたTシャツ見つからなかったぁ……」

梓「まぁ、自社製造を行ってないところですから」

律「さてと、これで大体見尽くしたかな」

澪「結構時間かかっちゃったな。もう入ってから一時間半も経ってるし」

紬「ちょっとお腹がすいてきたわね」

梓「今回はみなさん始めてでしたから、必然的に時間はかかっちゃうものですよ」

梓「そろそろレジ行っちゃいます? あまり時間を遅らせるとお昼が大変に……」

唯「その前にアイスだよ! アイス!」

梓「ああ、そうでしたね」

澪「流石の唯でも大好物のことは覚えてたか」

唯「もちろんだよ。あいすのあーちゃんが私を待ってる! だっ!」

律「って唯一人で行ってくるのか。迷うなよー」

唯「一周回って覚えたもん! だいじょーぶー」


3
最終更新:2010年06月19日 18:26