ギコ紬「えっ!?い、いない!?」

チチチ…
ニャーニャー
カサカサカサカサ

梓「――!?なんかいっぱいおる!!」

ギコ紬の足下に、小さな梓が五人集まって胸を張っていた。

梓達「ミニマムあずにゃんずです!!!!!」バーン

唯「何あれ欲しい」

ミニマム梓1号「突撃!」

3号「にゃー」ダッ

4号「ふみゃ」ダッ

5号「チチチチ」テテテッ

ギコ紬「あ!?な、何を!!ちょっ…やっ!!」

ミニマム梓1号の号令に3,4,5号がギコ紬の服の中へと突入する。


2号「何リーダーぶってんのかなぁ~?命令とか聞いてられないね~」カサカサカサ

グオオォンザクッ!!!

一人別行動を始める2号の目の前に、くすぐりに身をよじったギコ紬のノコギリが振り下ろされた。

2号「Oh…」

1号「死にたくないでしょ?」

2号「ちぇ。しゃくだけど命は惜しいもんね」カサカサ

1号と2号もギコ紬の服の中へ侵入した。ギコ紬はくすぐったさに足が震え、うまく身動きが取れずにいる。

ギコ紬「ちょ…やめっ…んっ!!」

律「なんかわかんないけどチャンスだ!今のうちにムギを止めるぞ!」

デブ紬「任せて!」

ノコギリを奪おうと駆ける軽音部のメンバー(澪除く)。だが、ギコ紬の方もなんとかノコギリを振るって、皆の接近を拒む。


デブ紬「くっ…せめて一瞬でも隙が作れれば…」

1号「ごめんなさいこれ以上未開の地へ進むのは私も胸が痛いです」

ギコ紬の服の中からくぐもった声が聞こえてくる。

紬「でも状況が状況だから――」

梓(許可するつもりですか!?なんか私が気まずくなっちゃいますよ!?)

唯「――ハッ!そうか!ひらめいたよ!」

まじまじとギコ紬を観察して何か頷いていた変態和の腕を引く唯。そして、他の唯達へのアイコンタクト。

変態和「へ?」

唯四人衆「そおい!!」ギュッ

変態和「いとをかしっ!!!!!!!!!!!!!!!11!!!!1!!!!!!!!」ブシャアアアァッ

ギコ紬「な、何!?」ビクッ

デブ紬「マンボッ!!」ブンッ

ギコ紬「も゛っ!!!!!」デュクシッ

ギコ紬は恐ろしい勢いで吹っ飛んで動かなくなった。

さわ子「見事に気絶してるわ」

律「何という恐ろしいコンビネーション…」

紬・和(…何だか凄く複雑な気分)

梓「ちょっと待ってください。あのムギ先輩には2号達が…」

ミニマム梓1号「心配にはおよばないよ」キリッ

唯「あー!ちっちゃいあずにゃんだぁ!!おいでおいでー」

3号・4号「にゃー」

澪「特別って…こういう意味だったのか」

1号「はい…さすがに異様な光景だから気味悪がられるかと思ってたんですけど、それ以上に異常な出来事が起きましたから、思い切って解禁しました」

梓「っていうか、いつのまに復活してたんですか澪先輩」


さわ子「あのー…梓ちゃん一人潰れてたわよ…?」

ギコ紬を拘束したさわ子が、ミニマム梓の一人をつまんで持ってきた。

2号「」

1号「あぁ、2号なら平気ですよ。生命力異常ですから」

さわ子「それにしても…どうしてムギちゃんはこんな真似を…。野次馬もビックリしすぎて固まっちゃってるし」

梓「もう一度死んでくれって言われました…」

律「もう一度って…」

紬「じ、じゃああの私は…もしかして、梓ちゃんを…?」ガクガク

1号「――ありえなくもないですよ…。平行世界は無限にあるんです。私みたいなのもいるんですから…」

紬「…」ウルッ

梓「ム、ムギ先輩がそんなに気にすることないですよ!」

唯「そうだよムギちゃん!この世界のムギちゃんはおっとりぽわぽわで優しいムギちゃん、それは間違いないんだもん!!」


よく見て澪「イイハナシダナー」

かなりショックを受けてしまった様子の紬を慰める皆。そこへ――

憂「皆さん!」

憂が校門から息を切らせて走ってきた。

唯「あ、憂ー!」

憂「お姉ちゃん、大丈夫?どこか怪我してない?皆さんも…ノコギリを持った紬さんに出会ったりしませんでした?」

梓「あ、あー…そのムギ先輩ならついさっきみなさんの活躍で取り押さえたよ。でも、何で憂がそのことを?」

憂「そっか…なんとかなったみたいだね。私と純ちゃん商店街に寄ってたんだけど、そこで平行世界の律さん達に会って…。
  事情を聞いたら、律さん達もノコギリを持ったもう一人の律さんといざこざがあったそうなんです」

和「もしかしてムギ達を探しに行ってくれた律かしら?でも、達って言うのは――」

憂「澪さんと、大人の澪さんです。何とか律さんも取り押さえたられたみたいですけど、もう一人の律さん結構怪我しちゃってて…。
  逃げ出した紬さんの事が気になってて急いでこっちに向かってたんですけど、だいぶ無理してたみたいで途中で倒れちゃったんです」


律「お、おいおいマジかよ…」

澪(大人の私って…澪さんだよな。もう一人の私は…もしかしてあの追い出しちゃったヤツかな)

憂「あと、大人の澪さんも取り押さえた律さんをずっと背負ってたんですけど、体力が持たなかったみたいで動けなくなっちゃって…。
  それでもこっちの様子が気になるから、私が一足先に状況を見に来たんです。皆さん無事そうで安心しました」

紬「向こうは結構大変だったのね…」

和(こっちの解決の仕方が馬鹿みたいね…)

純「お~い…」

憂「噂をすれば――こっちの方は大丈夫だったみたいですよ!」

純とサンジュが最高律と瓶澪、そしてギコ律をほとんど引きずるような形でヨロヨロと姿を現した。

梓「ホントにみなさんボロボロって感じですね…」

サンジュ「…澪さん重いんですけど」ハァハァ

瓶澪「…大人の女は肉付きがいいの」


純「何で私が…こんな目に…」ハァハァ

最高律「――ごめんな…迷惑かけて…」ハァハァ

純「あ、いや、その、全然平気です!もっと耳元で囁いてください!」

最高律「…ん?」

池沼唯「あーりっちゃ!あー!」ダキッ

最高律「いつつ…おーどうした唯…心配してくれてたのか?」

澪「――!ひいぃ!ち、血が!血が出てる!」ガクブル

最高律「あー、気にしないで。例の傷が…ちょっと開いちゃっただけだからさ」

律「いやそれけっこう大事だぞ…。病院行くか?」

最高律「だーいじょぶだいじょぶ。そんなことより…おい、早く来いよ」

最高律に招かれて、サンジュがおずおずと皆の前へ出る。

梓「やっぱり、昨日の澪先輩だったんですね…」

最高律「いろいろ迷惑かけちゃったこと、謝りたいんだってさ」

サンジュ「…」

瓶澪「ほら」

サンジュ「……ミ、ミアネ……」

一同「?」

最高律「えっと…?」

サンジュ「ごめんって意味だよ…!恥ずかしいから言わせるな…!」

瓶澪「素直じゃないの」

サンジュ「うるさいな!」

澪「でもまぁ、反省してるみたいだし…昨日の一件は目を瞑るって事で」

サンジュ「あ、ありがと…」


律「さて一段落ついたところで、お互いいろいろあったことだし情報交換でもしといて。私はこいつを一応保健室に連れて行くから」

最高律「いてててて…引っ張らないでくれよ」

唯「うん、わかった。って…うん?」

律が最高律を連れて校舎の方へと向かう中、池沼唯が唯に急にしがみつき、ガクガク震えだした。視線は校門の外へと注がれている。

唯「どうしたの?」

池沼唯「…いやああああああぁぁ…」

唯(この子、ムギちゃんの時に思ったけど異変に敏感なのかな…?だとしたらまだ何か――)

律「はいはいどいたどいたー。通してくれよー」

姫子「あの、田井中さん。保健室、今日先生出張で閉まってるよ?」

律「なんと!」

最高律「う…応急処置できないってわかったら急にめまいが…」ハァハァ

律「うおおぉい!しっかりしろお!!」

池沼唯の異変に気付かない周りは至って平和(?)だったが、唯は非常に嫌な予感を感じていた。


ミニマム梓「唯先輩?どうかしましたか?」

2号が復活したため合体して再び元の姿に戻ったミニマム梓が、唯達の様子に気が付き声をかけた、その時だった。

澪?「…うううぅ…」

和「――!?また澪が現れたわ!」

澪「ま、また?これで何人目だよ…」

校門からふらり、ふらりと俯いたまま校庭に入ってきたのは、まぎれもなく澪だった。だが、

唯(何だろう、この嫌な感じ…)

池沼唯「やあああああああああああああぁ!!」

突然池沼唯が甲高い悲鳴を上げだし、さっきよりときつく唯にしがみつく。その場にいた全員が驚き、彼女に目をやった。

唯「え、え、え!?ちょ…どうしたの?大丈夫?」

澪?「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

すると今度は今し方現れたばかりの澪が狂ったように吠えながら、顔を上げた。まるで別人――いや、人とは思えないほどに狂った表情だった。

澪?「ああああああああぁああああゲロ吐いちゃうよおおおおおおおおおおおおぉ!!」


一同「!?!?」

澪「」

さわ子「今度は何なのよ一体!?」

呆然としていたサンジュが、思い出したように呟く。

サンジュ「そうか…す、助っ人だ…。唯が呼んだ助っ人だ!!」

唯「私?」

サンジュ「違う」

池沼唯「あう?」

サンジュ「違う!」

石ころ唯「私だ」

サンジュ「違う!!」

よく見て唯「なんだ、お前だったのk」

サンジュ「違うっつってんだろおおおがあああああああああああ!!!アイツはばけもんなんだぞおおおおおおおおおお!!!」

最高律「な、何だあれ…一体何がどうなって…」ハァハァ

サンジュ「そこで気絶してる律とムギの助っ人なんだよ!すっかり忘れてた!」

律「そんな大事なこと忘れてんじゃねー!…つーか、これファンクラブの人には結構衝撃的な光景だと思うんだけど――」

佐々木「大人の秋山さんも美人で素敵だけど…あの秋山さんはワイルドで新しいわ…」

律「ありなのかよ」

そんなのはごく一部で、異様な雰囲気を放つゲロ澪に野次馬達は悲鳴をあげる。それに反応した彼女は、近くにいたクラスメイト達の所へ駆け出した。

あかね・エリ「ひっ!!」

エリ「い、嫌…逃げ――」

ゲロ澪「あああああぅうううう」ギロリ

ゲロ澪の人とは思えない異常な狂気に光る目つきに、思わず足がすくんでその場に腰を抜かしてしまう二人。その二人にゆっくり近づいていくゲロ澪。

梓「わ、私が狙いじゃないんですか!?」

サンジュ「アイツは目に入った人誰でも殺しちゃうようなヤツだって聞いた」

澪(どういうことなの)


ゲロ澪「あああああああ吐いちゃうよおおおおおおおおおおお」

エリ「こ、来ないで!来ないで!!」

梓「っていうかやばいですよ!このままじゃ――」

クラスメイト達は恐怖に身がすくんでどうしようもない。それは軽音部員達も同じだった。だが、その中で一人若干暴走気味な人がいた。

律(――傷持ちの私も体を張って梓を殺そうとしてた私を止めた・・・!澪さんの世界の私も命をかけて人を救った・・・!)

律「異世界の私ができて、私にできないはずがない!」

姫子「た、田井中さん?」

律「そっちの私のこと頼んだ!救急箱でも取ってきて手当てしてやってくれ!!」ダッ

一人猛ダッシュする律。そして、ゲロ澪に後ろからしがみついて動きを封じた。

エリ「田井中さん!!」

律「コイツは私が押さえてるから今のうちに逃げろ!」

唯(りっちゃんそれ死亡フラグううううぅ!!)

梓(やっぱり律先輩ってそういう運命をたどる人なんですね・・・)

デブ紬と紬が慌ててエリ達に駆け寄る。デブ紬はそのまま、ゲロ澪を律と共に押さえ込むことに努めた。

紬「大丈夫二人とも!?早く今のうちに!」

あかね「う、うん」

紬の手を借りて立ち上がり、その場から逃げ出す二人。

ゲロ澪「ああああああああゲロ吐いちゃうゲロ吐いちゃうよおおおおおおお」

律「コイツ力が半端じゃ――うわっ!!」ドサッ

デブ紬「りっちゃん!軽々とりっちゃんを吹っ飛ばすなんて・・・。よし、こうなったら――」

ゲロ澪「あああああああ吐いty」

デブ紬「どすこい!!」ブンッ

どごぉっ!!

ギコ紬の意識を一瞬で奪った鉄拳が、ゲロ澪の腹部にめり込む。


デブ紬「これでどう!?」

ゲロ澪「・・・うぶっ」

デブ紬「あ☆」

よく見て唯「映像が乱れております。しばらくお待ちください」

よく見て澪「ちゃらりらりらりらら~♪」

よく見て紬「澪ちゃん作曲のセンスない」

よく見て澪「ふうううううううううううぅぅぅぅ!!」

よく見て唯・澪・紬「ふううううううううううぅぅぅぅ!!!」

デブ紬「」

変態和「大変よ!ムギが汚物にまみれて瀕死状態だわ!」

澪「」

梓2号「こっちにも余波を受けて瀕死状態の人が!!」


ゲロ澪「ううううううううううぅぅぅ」

デブ紬「」

サンジュ「あの威力で殴られたのにぴんぴんしてるぞ・・・」

唯「む、ムギちゃんを助けなきゃ!」

律「助けたいのは山々なんだけど・・・」

さわ子「近づくのには勇気がいるわね、いろんな意味で」

ゲロ澪「ああああああああああああああ」

唯「ムギちゃんがピンチだよぉ!」

変態和「いくら愛する唯の頼みといえど、生理的に無理があるわ。ごめんなさい、ムギ」

ゲロ澪が放心状態のデブ紬の腕をつかみかけた、その時!

ヒュー・・・ズドーン!!ズドーン!!

ゲロ澪「ああああああああああああ」

デブ紬「」


どこからともなく飛んできた火炎球がゲロ澪に直撃した。デブ紬も爆発に巻き込まれて唯達の前に転がってくる。

デブ紬「」プスプス

唯「む、ムギちゃああああああああん!!」

梓「おぉ・・・見事に汚物が消毒されてます」

池沼唯「焼き豚」

澪「というか、何だ今の!?」

ゲロ澪「ううううううううぅうう痛いよおおおおおおお」

ふらふらと立ち上がるゲロ澪。そこへ、校門から閃光のごとく走り寄る影があった。それは――

「はぁ!!」ビシッ

ゲロ澪「うううううううううぅう」

和「わた、し・・・?」

鞘に入ったままの日本刀を振るいゲロ澪をひるませたのは、和にそっくりな大人の女性だった。身にまとったジャケットには、S.T.A.R.S.の文字が刻まれている。

和?「バイオハザードに巻き込まれたわけでもなさそうなのに・・・何て人間離れした顔をしてるの」

さわ子「えっと・・・どちら様でしょうか?」

バイハザ和「話は聞いてます。ここは平行世界らしいですね。あまり信じられなかったんですけど・・・この光景見て理解できました」

和「え、あ、はい。って・・・誰からそのことを?」

ゲロ澪「うあああああああのどがあああああああああああああああああああああああ」

バイハザ和「ごめんなさい、あまりのんびり話してる暇もなさそうね。あの澪は私達が押さえます」

澪「達・・・?」

バイハザ和「さっきの火炎球見たでしょ?さすがの私もあんな常識外れの技は使えないわ」

梓「じゃ、じゃあ一体誰が――」

「私だよ」

ゲロ澪の咆哮が響く中聞こえてくる声。校門から姿を現したのは、律だった。その姿はこの世界の彼女と変わらない。

律「・・・へ?」

ぽかんとする一同を尻目に、懐からドラムスティックを取り出し、器用にそれらを回す律?。するとどうだろうか。いきなりスティックが炎を上げ――双剣へと姿を変えた。

律?「――『裏不無』」


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最終更新:2010年06月22日 02:28