律「」
裏不無律「いくぞ・・・澪おおおおおおおお!!」
双剣から炎をまき散らしながら裏不無律はゲロ澪に飛びかかっていった。バイハザ和もそれに加勢する。
律「もう笑うしかない」
梓「平行世界って…広いんですね…」
石ころ唯「世界は広い。それ故に美しい」
よく見て紬「けいおん!は本来ほのぼのとした日常を描いたアニメです!」
よく見て澪「一体何を言ってるんだムギ?」
よく見て紬「言わなきゃいけない気がしたの!」
最高律の介抱をしつつ遠巻きに事の成り行きを見守るクラスメイト達も、皆があっけにとられて呆然としていた。
腰巻き「何この展開。私頭おかしくなってないよね」
最高律(体はって男達から澪を守った私の努力はなんだったんだろう)ハァハァ
たまねぎ頭(かっこいいいいいいいいいいいいいぃいい!!!)
ゲロ澪の咆哮、裏不無律の爆炎、クラスメイト達の悲鳴。
さわ子「何これ地獄絵図?」
校長「山中先生!!何ですかこの騒ぎは!?」
さわ子「こ、校長先生…」
唯「あ、あの!これは、映画の撮影なんです!」
校長「…は?」
唯「アポなしでのサプライズ収録なんです!りありてぃを求める監督のアイデアなんです!」
律「唯が暴走してるぞ」
和「そりゃパニックにもなるわよ。私は逆に何か笑えてきたわ。ビックリするほど冷静よ」
律「奇遇だな、私もだ。――しっかし、あんなめちゃくちゃなこと言ってごまかせるわけないよな。どうするよ?」
校長「なるほどそれは面白い!!ちょっととっておきの一張羅に着替えてくる!」
律「マジか」
和「今の校長は自分が目立つことしか頭にないみたいね。私に頼み込んでくるぐらい出番に飢えていたから」
梓「…あれが私達の学校の長ですか。泣けてきますね」
ズガッ!!
ゲロ澪「吐いちゃうよおおおおおおおおおおおおおお」
バイハザ和「くっ…!!化け物並の存在とはいえ澪…下手に傷付けられないからキツイわね…」
裏不無律「あぁ…。気絶させようにもなかなか隙ができないな」
ミニマム梓「苦戦してますね…」
変態和「とにかく…あの二人が時間稼ぎをしてくれてるうちに対策を練らないと」
紬「ねぇ澪ちゃん、あの澪ちゃんは助っ人だって言ってたわよね?何か知ってるんじゃない?止める方法とか」
サンジュ「あ、え、えーっと…」
澪「というか、アイツを助っ人として呼んだ唯っていうのは何者なんだ?どこにいるんだ?」
サンジュ「あーもうそんな次々言われたら混乱するじゃないか!!」
瓶澪「二人に荷担したあなたにも責任はある。あなたはみんなの役に立てるように頑張るって言った。今がその時」
サンジュ「わ、わかってるよ…!えっと、アイツを呼んだ唯は昨日梓を狙うための作戦を練っていた律とムギのところに急に現れたんだ。
何か異様な雰囲気を放ってたな。何ていうか…支配者的な感じ?」
よく見て唯「支配者のポーズ!!」ガバッ
サンジュ「あ、そう言えば…アイツ自分は平行世界から来たって自分で名乗ってた!」
和「それはおかしいわね…。平行世界から来たみんなは、私達に出会うまで自分たちは平行世界に来たんだって気付いてなかったのに」
律「この一連の騒動について何か知ってるかもしれないな…。今その唯はどこにいるんだ!?」
サンジュ「そ、そんなのわかるわけ――」
その時、サンジュの脳内に昨晩の唯?の言葉がよみがえる。
唯?『助っ人ちゃんは目に入った人誰でも殺しに行っちゃうような危険人物だからね。ちゃんと監視して制御しないと私達まで危なくなっちゃうほどに』
サンジュ「あ」
ミニマム梓「なんですか?」
サンジュ「すっかり忘れてたわ。もしかしたらアイツ、近くにいるかもしれない。あの暴れ回ってる私は監視してなきゃ危ないって言ってたから」
律「だからなんでそんな重要なこと忘れてるんだよ!」
梓「でも、もしそれが本当ならその唯先輩を捕まえれば、あの澪先輩も抑えられるって事ですよね」
澪「よ、よし!じゃあみんなで手分けして探そう!」
律「そういうことだけど、二人とももう少し頑張ってくれるか!?」
バイハザ和「S.T.A.R.S.の狼をなめてもらっちゃ困るわね」
裏不無律「こっちはこの力を遠慮なく解放したくてうずうずしてたんだ。派手にやらせてもらうぜ」
さわ子「派手にやるのは構わないけどお願いだから校舎破壊したりしないでね」
石ころ唯「力あるものは周囲の人間の捉え方次第で正義にもなり悪にもなりうる」
各自分かれて校庭内を散策し始める軽音部員達と憂、和、純。しかしこの広い校庭内から唯?を見つけ出すのは骨が折れる。
唯(でも、早く見つけなきゃ…!少しでも何か手がかりになることがあれば…!!)
唯は特に捜索に力を入れていた。平行世界の者とはいえ、同じ自分がこの騒動の原因かもしれないからだ。
そのせいで、周りへの注意を怠ってしまう。
ゲロ澪「ううううううぅぅぅぅううう…」ピタッ
バイハザ和(何…?攻撃をやめた…?)
裏不無律(どういうつもりだ?)
風子「…大人しくなったね、秋山さん」
慶子「降参でもするのかな」
最高律「…」ハァハァ
そうだったらどれほど幸せだっただろうか。ゲロ澪は、バイハザ和と裏不無律の執拗な攻撃に苛立っていたのだ。抵抗しても、素早い動きに翻弄されるだけ。
この怒りを、どうすればよいのだろうか。
ゲロ澪「ああああああぁぁぁぁ…」
裏不無律「これってチャンスなのか?一撃入れてみる?」ゴォッ
バイハザ和「何を考えてるのかさっぱり読み取れないから…どうしたらいいものか」
二人が作戦を練ることで、一瞬ゲロ澪から気が逸れる。
ゲロ澪「ああああああああ」ギロリ
最高律「…!」
その一瞬、ゲロ澪は一人で校庭を駆ける唯の姿を視界に捉えた。彼女をずっと見つめていた最高律がいち早くそれに気が付く。
最高律「やばい…!!」
姫子「え?」
ゲロ澪「あああああああああああああああああ吐いちゃうよおおおおおおおおおおおおゲロ吐いちゃうううううううううううう」ダッ
バイハザ和「!しまった!!」
最高律「唯!!後ろ!!」
唯「え――」
これまで見せなかった尋常じゃない速さでゲロ澪は唯に迫り、一気に押し倒した。
唯「ひっ…うわっ!!」
裏不無律「くそっ」ゴオオッ
バイハザ和「駄目よ!唯が巻き込まれる!」
デブ紬(…あれ?私は?)プスプス
最高律「くっそ――いつつ…!」ガクッ
春子「だ、駄目だって田井中!」
一番近い距離にいる最高律は動けない。バイハザ和と裏不無律も駆けるが、距離がある。唯には何も抵抗する術がない。
ゲロ澪「うへへへへへへへゆうううういいいいいいいい」
唯「あ…」
ゲロ澪の手が唯の首に伸びる。誰もが最悪の結末を予期した。と、
ゲロ澪「!!」ビクッ
突如ゲロ澪が大きく震え、唯から離れた。その目は、校舎の方を睨んでいる。皆がその方へ目をやる中、玄関から姿を見せたのは――
憂?「お姉ちゃんに何してるんですか…澪さん?」
唯「う、憂…?」
最高律「っ…!」ゾクッ
普段と変わらぬ姿の憂だったが、何故か彼女を見た途端最高律の背中に戦慄が走った。平行世界の憂であろうことがすぐにわかった。
クラスメイト達も皆口を閉ざして身を寄せ合っている。裏不無律も双剣を構え、バイハザ和に至ってはゲロ澪を傷付けないよう鞘に入れたままだった刀を抜刀していた。
そのうえ、痛みや恐れをまるで感じない様子だったゲロ澪が、本能的に危険を察知して唯から退いたということもあり、誰もがこの憂?が異常な存在であることを感じていた。
憂?「ねえ、澪さん。質問に答えてくださいよ。私の大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切な大切なお姉ちゃんに何するつもりだったんですか?」
ゲロ澪「あ、ああああああ、ああああああああああぁぁあああ」
バイハザ和(精神を病んでいるの…?目が正常な人間のものじゃないわね)
ヤンデレ憂「答えないんですね。まぁ答えても何も変わらないですけどね」ギラッ
自分に刃を向けているバイハザ和と裏不無律には目もくれず、ヤンデレ憂はゲロ澪に歩み寄っていき、懐から包丁を取り出した。
ヤンデレ憂「私のお姉ちゃんを傷付ける人は、問答無用で三枚に下ろしてあげますからね」
唯「」
律「おい!どうした唯!大丈夫か!?」タタタッ
純「ってあれ?憂?」
憂「え?私はここにいるよ?」
ゲロ澪「うああああああああああ吐いちゃうよおおおおおおおお」ダッ
ヤンデレ憂「なら吐けばいいじゃないですか!!なんなら腹かっさばいてぶちまけてあげましょうか!?あはははははははは!!」ブンッ
憂「」
澪「」フラッ
律「澪ぉ!!」ガシッ
和「気絶してばっかりね」
純(純粋でできた子な憂のイメージが…)
梓(何で平行世界の私達ってまともなのがほとんどいないんだろう)
……
さわ子「唯ちゃんは見つかったの?」
変態和「全然姿を見せてくれないんです。私がこんなに愛を振りまいているのに。本当にいるんですかね?」
大怪獣も真っ青の激闘を繰り広げるゲロ澪とヤンデレ憂。バイハザ和と裏不無律も一応ヤンデレ憂の援護に入っている。
紬「このままじゃ犠牲者がでてもおかしくないわ…。早くどうにかしないと」
焦りの表情を浮かべ始める皆の所へ、最高律が信代の肩を借りてやってきた。
最高律「…なぁみんな。あの憂ちゃん、さっき校舎の中から出てきたんだ。もし澪の言うようにその唯が平行世界からこの世界へ私達を送り込んでるんだとしたら…」
ミニマム梓「もしかして…校舎の中に唯先輩が!?」
律「その可能性は高いな!よし、探しに行こう!!」ダッ
軽音部員+αは校舎へと突入していく。校庭には大激闘に呆然としているクラスメイト達と、最高律、さわ子、そしてデブ紬が残された。
最高律「…あの、あそこで完全に忘れられてるムギも手当してやってくれないかな?」
信代「いやぁ…丸焦げになったとはいえ、アレにまみれた人に近付くのはちょっと…」
澪「また手分けして探すか?この学校、校舎馬鹿みたいに広いし」
梓「そうですね。見つけたら携帯に連絡――」
池沼唯「あーーーーーー!!あずにゃ!!」
突然叫び声を上げる池沼唯。その目は誰もいない廊下へと向けられていた。
唯「どうしたの?」
池沼唯「あずなん!!あずにゃ!!あーー!!」テテテッ
和「あっ唯!」
紬「どうしよう?」
よく見て紬「どうする!アイフ●!?」
よく見て唯「古い!」
よく見て澪「ひいいいいいいいいはああああああああああああ!!」
律「追おう!あの唯は一人にしてたら何するかわかんないし」
意外とすばしっこい池沼唯は、何を追いかけるように一心不乱に駆けていく。その後を追う軽音部員+α。ようやく彼女に追いついたのは部室の前だった。
池沼唯「あずにゃ!!」
梓?「離してくださいよ」
澪「梓!?」
梓?「あ~、ほら。見つかっちゃったじゃないですか。せっかく皆さんの目を盗んで間近であの騒動を観戦しようと思ってたのに」
律「観戦って…不謹慎なヤツだな。こっちは苦労してるのに。つーか、何で私らの目を盗む必要があったんだ?」
梓?「私の存在が皆さんにばれるといろいろ面倒でしたので。まぁ、もういいでしょう。そろそろ潮時だと思ってましたし」
梓「何言ってるの?どういうこと?」
梓?「まぁ、とりあえず部室に入りましょうよ」ガチャッ
梓?が準備室の扉を開ける。そこには、今までずっと探してきた唯が椅子に腰掛けて笑っていた。
唯?「待ってたよみんな。疲れたでしょ?これでも飲む?」
コトン、と机の上に湯気を放つカップを置いて笑う唯。
唯「――ホットカルーアミルクだよっ!」
サンジュ「ゆ、唯…」
カルア唯「やぁ澪ちゃん。面白かったよ澪ちゃんの行動。あっちに付いたりこっちに付いたり自分に有利な道を必死に探してたね」
サンジュ「う…」
カルア唯「ファビョんなくなったのは成長だね。瓶澪さんにしかられたのと、最高りっちゃんに守ってもらったのが胸に響いたのかな」
サンジュ「う、う…」
カルア梓「先輩、それ以上いじめちゃったら本当にファビョっちゃいますよ」
律「下で暴れ回ってる澪を連れてきたのはおまえらなのか?」
カルア唯「そだよー。凄いでしょ?あの大バトル!予想以上だったよ」
唯「な、何でそんなことするの?みんな危ない目にあったんだよ!?」
カルア唯「そんな怒んないでよ。バイハザ和さんや裏不無使いのりっちゃんも派遣してあげたのは私だよ?」
サンジュ「そ、そうだったのか!?何でそんな――律やムギに協力するような事言ってたのに」
カルア唯「それは、あの二人に協力したら面白いものが見れそうだったからだよっ」
サンジュ「は?」
カルア梓「本気で協力しちゃったら、私の命まで危なくなっちゃうじゃないですか」
カルア唯「せっかく面白い話のネタを作りに来たのに、死んじゃったら元も子もないもんねぇ」
和「あ、アンタ達…何言ってるの?」
カルア唯「いや~ごめんね?みんなには大変な目に合わせちゃったね」
カルア梓「全部私達の計画だったんですよ」
澪「何だって…!?」
梓「何となく予想はできてましたけど…一体何の目的で?」
カルア唯「説明してあげても良いけど、いいの?下の人達は放置で」
紬「そ、それは駄目よ」
律「そうだな、まずはあの澪を止めるのが最優先だ!」
あまり乗り気でないカルア唯とカルア梓を引きずるようにして、皆は校庭まで戻ってきた。
最高律「…!見つけたのか!?」
律「ようやくこの騒動の犯人にたどり着いたぜ」
唯「さぁ、早く澪ちゃんを止めて!あと一緒に憂も!できるよね?」
カルア唯「ちぇー…せっかく面白いバトルを観戦できると思ったのにな」
カルア梓「仕方ないですよ。死人を出すわけにはいかないですし」
カルア唯「ほいほい…。――ゲロ澪ちゃーん、憂ー、帰って良いよー」
そう言うと、カルア唯は先ほどまでカルーアミルクを注いでいたカップを二人に向けた。途端、
ゲロ澪「あああああああああぁぁぁ」
ヤンデレ憂「うわあああああぁぁ」
まるでランプに戻る魔神のように、二人はカップの中へと吸い込まれ、その姿を消した。
一同「!?」
最終更新:2010年06月22日 02:30