梓「私は本当に平沢唯なのか?って疑念が少しでもあるうちは、まだ記憶が戻っていない証拠なんです」

「……なるほど」


「確かに、まだ不安です……だって、本当に何も……記憶が無いんだもん」

「あたしは本当に……平沢唯で、いいのか……」

梓「それを探してほしいからここへ連れてきたんです」

梓「さあ続きを……」



「……」ペラッ

「……あの、これは?」

梓「ああ、それは文化祭の時の写真です」

「文化祭……」

(これが……秋山澪、こっちが……田井中律、奥が琴吹紬……隅にいるのは……中野梓、この人)

(んでこれが……平沢唯……あたし……なの?)

(……?)

(この人……中野梓……写真だと結構背が低く見えるような……)

(もしかして……大分時間が経ってるのかもしれない……背が伸びたのかも……)


梓「どうかしました?」

「いや、別に……ただ、あたしが記憶喪失になってから、どれくらい経ったのか気になって……」

梓「……」

梓「時間的な記憶は、自分で思い出した方がいいんですが……」

梓「まあ、そこまで長い時間は経っていない、とだけ言っておきます」

「……そうですか」

「……ん?これは」


『軽音部の日常 ××年 ×月×日』


「DVD……?」


梓「見ますか?」

「……はい、見せて下さい」



 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 



律「……なにこれ、電源入ってんの?あっ、入ってる入ってる……よーし」

律「えー本日はわたくし軽音部部長田井中律が、我が軽音部の活動風景をまだ見ぬ後輩たちの代にも伝えるべく……」

唯「あっはっはっはっは!!ムギちゃんヤバいってそれ!!」

律「うっせえ!!声が聞こえねえだろ!」

澪「もう、ビデオ回してるって言ってるだろ唯!」

唯「だってぇ~」

律「ほーらその爆笑ヅラ撮ってやるぅー」

唯「やっ!やめなさいったらりっちゃん!」

梓「もう!唯センパイも律センパイもふざけすぎです!」

紬「うふふ」

律「油断させといてぇぇ、澪ぉぉ!」

澪「うわぁっ!!近い近い!恥ずかしいからやめろぉっ!!」

律「さっきからこそこそ何を書いているのかな~?」


澪「きゃああああああ!!それだけはやめてぇっ!!」

律「えーと……なになに?今日は律の」

澪「わあああああああ!!」ガッシボッカ

律「いてっ!何すんだよ澪!」

澪「いやああああ!」ダダダダダダダ


バタンッ


梓「日記持って逃げた……」

律「なんだよ全くぅ」

紬「日記には何て書いてあったのかしら……」ドキドキ

唯「お次はあずにゃんだ!」

梓「わっ!?やめて下さいセンパイ!」

律「ナイスだ唯!そのままそのまま」

梓「ちょっとどこ触ってんですか唯センパイっ……んっ」

紬「あらあら」

唯「あずにゃん可愛いー」スリスリ

紬「うふふ」


ブツッ……ザ―――――



 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 



「……」

「これが軽音部……」

「平沢唯……」

「これが……あたしなのかな……?」

(……それにしても、あたしこの人と仲良かったんだ///)

(あずにゃん、なんて呼んでたし……)

「……これはなんですか?」

梓「これは記憶にまつわる学説や論文です。必要あれば見てもいいですが、難しいですよ」

「……確かに……難しそう……」

「……このDVDは?」

梓「精神病に詳しい人が、街角で人々に精神病のなんたるかを説いてる映像です」

「ふーん……」

梓「見ます?」

「……はい、んじゃ一応……」


 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇ 



長門「ああアア―――ああ―――アア。右や左の皆様方へ。紳士淑女にお年寄り、其処等に群れる子供たち」

長門「私の話を聞いてはいかぬか。怪奇悪徳、暴力猟奇、外道だらけの怪しい話じゃ」

長門「金は取らない聞くだけ得だよ。サッサ来た来た、来てみてビックリ……」

長門「スチャラカ、チャカポコ。スチャラカ、チャカポコ……」

長門「何処へ参るか分からない、今日が初めてこの道端に、やって来ましたチャカポコチャカポコ……」

長門「寄って見ていき、ほんとのタダだよ。押してはいけない、スチャラカチャカポコ……」

長門「日本狭しと言われども、田舎は未開のヤポネシア」

長門「これは場末の高校の、外道畜生まかり出る、愉快痛快、奇怪なお話……」

長門「スチャラカ、チャカポコ。スチャラカ、チャカポコ……」

長門「頭脳明晰、容姿端麗、爽やか笑顔の好青年。昼のペルソナ夜の素顔、周りにゃバレないキチガイ沙汰じゃ……」

長門「あ―――ア。彼の夜の顔裏の顔、私はなんでもお見通し……」

長門「ちっちゃな動物さらって来ては、部屋で解体、剥製作り。血肉骨肉弄ぶ」

長門「ペットショップから野生のものまで、里親募集の子猫さえ、彼は集める動物共を」

長門「可愛い内臓こね廻し、ちいさな眼孔指ほじくり廻す」

長門「死肉で遊ぶキチガイを、外道と呼ばずになんと呼ぶ」

長門「おっと皆様まだ気が早い。所はまだまだ冥府の門外。キチガイ地獄の序の序の序」

長門「笑顔の仮面の人非人、さらに進まん非道の道を……」

長門「スチャラカ、チャカポコ。スチャラカ、チャカポコ……」

長門「あ―――ア。彼の秘密のアルバイト、閉鎖空間化け物狩りにて」

長門「その日は二人で神人狩りを、セッセセッセとこなす予定が」

長門「何を思たかその青年は、味方の腹へとナイフをズブリ」

長門「友の死体を抱えつつ、敵の及ばぬ場所へ逃げては、解体ショーのはじまりはじまり」

長門「あ―――ア。笑顔振り撒く好青年が、仮面剥いだら鬼のツラ。人を外れた外道の話じゃ」

長門「誰もその場に立ち入らないのを、逆手に取ったが人の業。完全犯罪、似非密室」

長門「皮に骨肉、脳味噌、目玉。五臓六腑をブチ撒けて、躯亡きまでバラバラじゃ。これじゃあ死者も浮かばれぬ」

長門「事を済ましたその後の手筈は、敵にやられた殺されたんだと、声を大にして被害者気取り」

長門「極悪非道もここまで来れば気持ちがいい……よかねーか」

長門「周りは知らない、男の本性。これぞ無間のキチガイ地獄の、げに恐ろしき、怖きかな……」

長門「ここらで皆様、疑問に思う、人もチラホラあるかもしれぬ」

長門「よりにもよってなんでまた、笑顔輝くの好青年が、そないな事を仕出かすか」

長門「それは実に単純明解、朱に交わればナントヤラ」

長門「人間皆是キチガイ。これに尽きるので御座います」

長門「人類は元々皆ケダモノ。誰しもがキチガイじみる可能性を、誰もが等しく持っている」

長門「家庭教育、啓蒙書、何がきっかけか分からぬが、脳を御する理性の枷を、外す輩がたまにおる」

長門「それこそ世に言うキチガイ、白痴。頭のネジが二、三本、取れた椰子共の事で御座います」

長門「あ―――ア。綺麗は汚い、汚いは綺麗。」

長門「皆様方も心得よ、人間皆是キチガイじゃ。何時弾けるかは分からない……」

長門「スチャラカ、チャカポコ。スチャラカ、チャカポコ……」



   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇





「……」

(……なんだか難しい言葉遣いで分かりずらかったなぁ)

(人間はみんな狂ってるって言いたいみたいなのは分かったけど……)


「ほかには何かないかな……」

「……ん?」

「これって……」

(秋山澪って書いてある……)

(日記……?さっきのDVDで言ってた日記かな?)

「……見てみよう」ペラッ



×月○日

今日は律の機嫌が悪そうに見えた。
何か悪いことをしてしまったんじゃないかと思わず不安になる。
不安でしょうがない。不安でしょうがない。不安でしょうがない。
どうしたらあの二人みたいになれるだろう。



×月△日

律の制服に食べ残しがくっついていた。
ほんとズボラなんだから。私がついていないとダメだ。
律を真に分かっているのは私だけだから



×月□日

唯と梓は本当にいい組み合わせだと思う。
端から見て、すごく理想的に見える。
私もあんな風になりたい。
律と一緒に。



×月▽日

唯と梓がまたイチャイチャしてる。
皆は知らないけど、私はそれがネタじゃないってこと知ってるんだから。
二人はどこまでいったんだろう。
うらやましい。
あの二人みたいに、お互いが求め合えたらどんなに嬉しいだろう。
律が私を拒絶するなんて考えたくもない。けど、そうなったらどうしよう。
死んじゃいたくなる。



×月×日

ビデオ撮影の後、律に告白した。
律は困ったような顔をして、話をそらすだけだった。
私は本気なのに。
幼い頃から律を見てきて、ずっとずっと好きだったのに
律も私のこと好きだと信じてたのに
なんで分かってくれないの
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで




(この間、長い空ページ)


○月×日

これで、ずっといっしょだね




「……これは」


3
最終更新:2010年01月28日 03:32