アーチャー『なに? この屋敷は人間じゃないのをメイドや執事にしてるわ
け?』
澪『え?』
アーチャー『あのメイドと執事、揃ってサーヴァントよ。キャスターとアサシン
ってところでしょう』
澪「え!?」
律「どうした澪ー」
澪「いや、会場が余りにも大きかったもので、声が出た」
セイバー「……」
メイド(キャスター)「どうぞ、お飲物を」
セイバー「……私は必要ない」
紬「?」
セイバー(ツムギは気が付いていない? この従者がサーヴァントだという
ことに――)
執事(アサシン)「こちらの美しい方に、酒の類は禁止とのことだ」
メイド(キャスター)「そ、そう。紬お嬢様のご友人ですからね」
セイバー「……申し訳ないが、話しがある」
紬「?」
セイバー「申し訳ないがツムギ。このお二人は、どうやら私の知り合いのよう
だ」
梓「そうなんですか?」
メイド(キャスター)「……はい。そのようで」
セイバー「……」
アーチャー(キャスターの顔が引きつってる。猫かぶりがそんなに大変?)
執事(アサシン)「どうぞ」
律「りんごジュースうまー」
アーチャー(アサシンの方は、随分と手慣れてる。これは――)
セイバー「ユイ、失礼します」
唯「う、うん」
…
セイバー「これは、どういうことです?」
キャスター「別に。話すことでもないわ」
セイバー「……ここで戦いたくはない。ユイの友人を巻き込みたくはない」
アサシン「それはお前次第でもあるのだぞ。セイバー。お前がここでもめ事
を起こすのであれば――こちら側に拒む理由はない」
キャスター「わかった? セイバー。貴女には効いてないかもしれないけど、
この屋敷全体が私の結界みたいなものなのよ?」
セイバー「!?」
キャスター「もちろん、この屋敷全員を殺す。なんていうことは、マスターが
許さなかったけれどね」
セイバー「どういった結界かを問うて、答えるか?」
キャスター「答えるわけないじゃない。一つ安心させてあげるとしたら、今の
時点で、害はないわよ」
アサシン「ここで結界を使用していたとしたら、お前のマスターたちはこの
部屋に入る前に死んでいる」
セイバー「……争う理由は?」
キャスター「今はないわ。精々パーティを楽しみなさい。セイバー」
…
セイバー「ただいま帰りました」
唯「おかえり、どうだった?」
セイバー「……」
梓「?」
セイバー「楽しくやっているみたいです。友人として安心しました」
紬「そう? よかったわー」
澪『……アーチャー』
アーチャー『もちろん嘘だよ。しかし、セイバーの表情が明るいところを見る
と、どうやら最悪の状態ではないということね』
律「にくうまー」
アサシン「おやおや、口の周りについていますよ」
律「……」ふきふき
アサシン(この娘から……僅かに魔力の匂いがする。これは一体……)
律「ありがと。お兄さん」
アサシン(女狐に報告しなければならぬか)
セイバー「ユイ、あとで話が」ひそひそ
唯「うん」
梓「ゆいせんぱーい!」だきっ
唯「うわ!」
セイバー「アズサ……未成年だというのに、お酒を飲んでますね?」
梓「ゆいせんぱいかわいいー!」
唯「ちょっと待ってあずにゃん! くるしいよー」
梓「離れませんー」
和「梓ちゃんって、実は唯のこと……」
憂「!?」
澪「まさか、な」
紬「タマリマセンワー」
さわ子「まったく、見てるのが私じゃなかったら退学よ退学」
律「うわあああああああああ!! さわちゃんいつから!?」
さわ子「いつからって、あなたたちが来る前からよ」
律「気付かなかったー」
さわ子「私はこの場に相応しい女だからよ」
和「さっきからセレブな男を見つけては声かけてる人がなにを……」
さわ子「それは触れないのー!」
セイバー「ユイ、この方は?」
セイバー「そうですか。サワコ、私はセイバー。ユイの家でお世話になってい
る留学生です」
さわ子「あら綺麗な子。色んな衣装着せたくなるわね」
セイバー「衣装? あなたは衣服を作れるのですか?」
さわ子「自慢じゃないけど、得意な方よ」
律「ジャンルはアレだけどな」
セイバー「……ユイは、良い人たちに囲まれているのですね」
唯「……そろそろ帰ろうか。もう11時だもん」
澪「それもそうだな。夜道は危険だから、梓は特に気をつけろよ」
梓「それは私がー、小さいからですかー?」
澪「酔ってるからだ。ふらふらじゃないか」
律「私が送っていくよ。ほら、掴まれ梓」
梓「ゆいせんぱいがいいー」
憂「……」じー
梓「……律先輩でいいです」
律「それじゃあ行くよ。ありがとな、ムギ」
紬「ううん。また明日ね」
セイバー「綺麗な服を貸していただいてありがとうございました。彼女たち
にもよろしく伝えてください」
紬「ええ。斎藤、皆さんを玄関までお見送りして」
斎藤「承知しました」
セイバー「……」
斎藤「後ほど、お話がありますので平沢様とご一緒に裏に来てください」
…
唯「セイバーちゃん、どうしたの?」
セイバー「あの執事、只者ではなかった。もしかすると、戦闘になるかもし
れません」
唯「う、うん!」
斎藤「時間を取らせてしまって、申し訳ありません。セイバー様。平沢様」
唯「ムギちゃんの――」
斎藤「執事の斎藤でございます。以後、お見知り置きを」
セイバー「ただの挨拶だけではあるまい。私たちだけを呼び出したというこ
とは、大体察しがつく」
斎藤「さすがは最良のサーヴァント、セイバー。その直感は神が如しと訊き
ますが、まさしくその通りでございます」
キャスター「パーティは終わって、私たちが戦わない理由はなくなったわ」
アサシン「左様。存分に死合おうじゃないか」
セイバー「……ユイ、アーチャーとミオを呼びましょう」
唯「わかった」
キャスター「それは出来ないわよ。だって、もうこの屋敷は出られないし入れ
ないもの」
セイバー「先刻の結界か」
キャスター「そうよ。アーチャーがいたことも気がついてたけれど、正体が
知れてる貴女から殺った方が効率いいもの」
セイバー「――なぜ、私の真名を知っている」
キャスター「……さあ。教える理由がないもの」
アサシン「キャスター。ここは拙者が」
キャスター「好きになさい。ただし、やるなら三人で」
アサシン「一対一を許しては?」
斎藤「なりません。勝率は、上がられるだけ上げるべきです」
アサシン「……左様か」
セイバー「……まずいですね」
唯「セイバーちゃん……」
セイバー「もし、私の真名を本当に知っているのなら、宝具を使います。いいですか?」
キャスター「セイバーを中心に、突風が吹いてる――」
アサシン「これが、セイバーの宝具か」
セイバー「真名を知っているのならいい。それならそれで、私本来の戦い
方をするまでだ」
唯「セイバーちゃん?」
セイバー「ごめんなさい、ユイ。もしかすると、魔力を使いきってしまうかも
しれません」
唯「……なら、私がおぶって帰るから、平気だよ」
セイバー「ありがとうございます」
アサシン「これは、形勢が変わるやもしれぬぞ」
キャスター「ここは私の陣地なのよ? あの英雄の宝具くらい、受け止められ
る筈」
アサシン「そうは言っても、相手は最強の聖剣だ。無傷では済まんだろう」
セイバー「いきます――」
キャスター「――ごめんなさいね。アルトリア。その光を食らうわけにもいか
ないわ」
セイバー「!?」
――ビル屋上――
アーチャー「あちゃー。セイバーったら、宝具使ってる」
澪「仕方ないだろ。私たちが介入できないんだから」
アーチャー「それはそうだけど、これで私にもセイバーの正体分かっちゃった
わ」
澪「誰?」
アーチャー「アーサー王。といえば日本人でも知ってるわよね」
澪「アーサー王って、イングランドの?」
アーチャー「そう。エクスカリバーの人よ」
澪「でも、アーサー王は王様だろ? セイバーは女の子じゃないか」
アーチャー「だから、アーサー王は女の子だったのよ。私だって信じられな
いわ」
澪「性別を偽ってたってことなのか」
アーチャー「そうみたいね。道理で女の子らしいことが苦手なわけよ」
澪「――ランサーやバーサーカーのマスターは見たかな」
アーチャー「わからない。少なくともキャスターたちにはバレてしまった。
セイバーがアーサー王で、エクスカリバーの所有者だということがね」
…
セイバー「ハァ……ハァ……」
唯「セイバーちゃん!」
セイバー「申し訳ありません。まさか、瞬間移動だなんて……」
唯「そんなのいいよ。大丈夫?」
セイバー「風王結界を解いただけで、ここまで疲労するとは思いませんで
した。魔力が不足していたわけではないのに――」
唯「肩掴まって、結界も解けたみたいだよ」
セイバー「そのようです。どうやら、キャスターたちは確認のために、私に
宝具を使わせたようです」
唯「……アルトリア」
セイバー「アーサー王と呼ばれた、この私の真名を確認したかったのでしょ
う」
唯「セイバーって名前よりもずっとずっと可愛いよ」
セイバー「その名前は捨てました。私はセイバー。貴女の剣です」
――次の日・夜――
セイバー「申し訳ありません」
唯「なにが?」
セイバー「私の魔力が回復しないために、見回りが出来なくなって」
唯「あはは。そんなのいいよ。アル……セイバーちゃんのためだもん」
セイバー「ですが……」
唯「いいったらいいの。セイバーちゃんは私を守るために、魔力を使って
くれた。だったら、半人前以下の私はセイバーちゃんに付き合うの」
憂「おねえちゃーん。ごはんできたよー」
唯「ご飯だって、セイバーちゃん。今は食べよ」
セイバー「――はい。貴女は、私が今まで出会ったどんな人間よりも温かい」
唯「なんか照れちゃうな~」
セイバー「本心からですよ。ここまでサーヴァントを気遣うマスターはいない」
唯「うーん。セイバーちゃん可愛いから、他の人も優しくするよ」
セイバー「……前のマスターは、そうではなかったものですから。嬉しいのです」
セイバー「――やはりウイの料理は素晴らしいです」
憂「えへへ、ありがとうございます」
セイバー「笑った顔が、本当にユイに似ていますね」
唯「そりゃあ姉妹だからねー」
セイバー「しかし、性格はまるで違いますね」
唯「ぶー」
憂「お姉ちゃんはゴロゴロの天才だよっ」
唯「わーい。ありがとーういー」
セイバー(褒めているのだろうか)
セイバー「それにしても美味しいです。この煮物は特に」
憂「あ。それはお隣のおばあちゃんからいただいたものなんですよ。お口に
合ったようでしたら、よかったです」
セイバー「そうなのですか。まさに日本の味ですね。醤油万歳」
唯「あははー。セイバーちゃんってご飯のときは面白いね!」
セイバー「ムム」
唯「セイバーちゃーん」
セイバー「なんでしょうか」
唯「セイバーちゃんの笑顔。私も好きだよ」
セイバー「なにを唐突に! 脈絡というものがありません!」
憂「私も好きー」
セイバー「ウイまで!」
唯「――だからさ、セイバーちゃんが笑っていられるように、私も頑張る」
セイバー「ユイ……」
憂「お姉ちゃん、セイバーさん。おかわりは?」
唯「いただきます!」
セイバー「ええ、いただきます。大盛りを所望します」
憂「りょーかーい」トテトテ
セイバー「……私も、ユイとウイの笑顔を守りたい」
セイバー「いいえ、出来れば。誰の泣き顔も見たくない」
セイバー(今度こそは、絶対に――)
――秋山宅――
アーチャー「ひまー」
澪「漫画でも読んでれば?」
アーチャー「ミオんちの漫画は読みつくしたー。たまには少年漫画も
買いなさいよー」
澪「いやだよ。私は甘い恋の物語が好きなんだ」
アーチャー「キー」
澪「勉強の邪魔はしないでくれよ」
アーチャー「……外でも見るわ。千里眼で遠くまで見てる」
澪「便利だな」
アーチャー「便利よー。ミオも欲しい? 訓練すればある程度までは――あ、
あそこの新婚さんキスしてる」
澪「目が良いのは便利だけど、そういう出刃亀はよくないだろ」
アーチャー「暇なんだもの」
澪「はいはい」
アーチャー「そういえば、ミオって好きな人いるの?」
澪「!?」
アーチャー「花も恥じらう女子高生なんだから、好きな人くらいいるでしょ?」
澪「うう……」
アーチャー「もしかして、もう彼氏いた?」
澪「いるわけないだろ!」
アーチャー「おお! びっくりした」
澪「……」
アーチャー「なんか、ごめんね。気分害しちゃったみたいで」
澪「……よ」
アーチャー「え?」
澪「好きな人、いるよ……」
アーチャー「そっか。誰?」
澪「……律」
アーチャー「あー。あの元気のいい子かー。うん、問題ないよ。大丈夫」
澪「?」
アーチャー「お似合いだよ。ミオとリツは」
澪「あり、がと……」グスっ
アーチャー「泣かないの。大丈夫だから。ね?」
澪「うん……」
アーチャー(しっかし、まずいなぁ。バーサーカーのマスターがミオの好き
な人か……ホントに困った)
澪「……」
アーチャー「……あれ? 寝てる?」
澪「すー」
アーチャー「このままじゃあ風邪ひくよ。よいしょっと」
澪「……」
アーチャー「ホントに可愛いんだから。私のマスターは」
アーチャー「おやすみ。澪」ちゅっ
最終更新:2010年06月25日 21:24