アーチャー「――いい? 私は何度だってバーサーカーを倒すよ」
バーサーカー「■■■■■―――――!!」ブオン
アーチャー「は?」ゴシュ
アーチャー「痛ったあ……」
アーチャー「でも、まあ攻撃は成功かな」
アーチャー「触れるためにある指先(チューニング・ツー)」
バーサーカー「■■■――――――!?!??」
律「バーサーカーの目が――!」
アーチャー「世界で一番器用で、力のある指先で突っついたんだもの。そ
りゃあ、目くらい潰せるよ」
アーチャー「嫌な感触だよねー」
アーチャー(そうは言ったけど、バーサーカーはまだ倒れないんだ。これは、
耐久戦になったら勝てないね)
アーチャー(私はバーサーカーを、少なくとも二回は殺している)
アーチャー「それでも、ねえ」
律「急げ! 急いで殺すんだ! バーサーカー!!」
律(なんなんだコイツ! 唯のくせに、どうして宝具級の技をこんなに
持ってるんだよ!)
アーチャー「……よし、この石にしよう」
バーサーカー「■■―――!!」
アーチャー「投げ飛ばす三角(オクターブ・スリー)」ヒュッ
律「!?」
アーチャー「今までの投擲とは段違いでしょ? これこそ、私が弓兵に
カテゴライズする由来となった宝具よ。ただ単に投げるだけだけど、
渾身の魔力を込めてある。防御一切無視、ダメージ固定の技」
バーサーカー「!!!!!!!!!!!」
アーチャー「吼えないでよ。うるさいから」
バーサーカー「■■!!!!」ブン!
アーチャー「うわ!」
律「いいぞバーサーカー!」
アーチャー(掠めただけで、左肩が壊れちゃったみたい。困ったなぁ、どん
どん生き返るスピードが上がってきてるみたい)
アーチャー(普通のサーヴァントなら、とっくに勝ってるっていうのに!)
アーチャー「!」
照明「ガシャン」
律「――あれ?」
律「唯は、どこにいったんだ?」
律「バーサーカー! 注意しろ! 私を狙ってくる!」
アーチャー「四糸切断(オクターブ・フォー)」
律「!?」
バーサーカー「■■■!!!」
アーチャー「ギー太の弦が切れなくってよかった。……これで4回目だね」
バーサーカー「……」
律「この暗がりで、確実にバーサーカーを殺してる……」
律「バーサーカーが、防御の体勢をとるなんて……ありえない」
アーチャー「あと、どれくらい命が残ってる? ヘラクレス」
バーサーカー「……」
アーチャー「来なよ。カウンターとるからさ」
バーサーカー「……」
律「なにやってるんだバーサーカー! さっさとそのとれかけの腕と足
くっつけろ!」
アーチャー(……澪ちゃんは、逃げ切れたかな)
バーサーカー「ルオオオオオオオオオオオオ!!!!」
キャスター「……」
バーサーカー「■■■――――!!」
律「まずい! キャスターを食うな! 結界が――」
アーチャー「……まだ、強くなるのね」
律「バーサーカー!」
バーサーカー「――」
アーチャー「別に音なんて気にしてないさ。これでベストコンディションなんで
しょ? それなら、私はそれ以上の強さで以て貴方を死に至らしめる」
律(なんでだ)
律(なんで、怯えない)
律(なんで、怖がらない)
律(勝てると思ってるのか? キャスターの魔力を取りこんだバーサーカー
を、倒せると本気で思っているとでもいうのか?)
律「――諦めてくれよ……。いい加減さぁ」
アーチャー「諦めて、引き返すほどの常識と勇気さえあれば、私はここに
いなかったのかもしれないわね――」
律「!!」
アーチャー「和を喪ったあの日から、私は巻き戻すまでは死んでも消えて
も、どうあったって諦めない! 命を、心を、この身体を!!」
アーチャー「ヘラクレス、あなたの命がいくつあるのかは知らない。けれど、
これで全て吹き飛ばす――!」
バーサーカー「―――■■■!!」ブン
アーチャー「くっ! ……背骨も、もうダメみたいね」
アーチャー「……澪ちゃん、もしかしたら駄目かもしれない。でも、諦めない!」
アーチャー「――H・T・T(放課後ティータイム)」
…
澪「!!」
唯「澪ちゃん?」
澪「アーチャーが……アーチャーが……」
セイバー「……令呪が、消えましたか」
澪「……」こくり
唯「アーチャー……」
澪「アイツ、結局自分のことなにも教えてくれなかった!」
澪「仲間だったのに!」
澪「友達、だったのに――」
セイバー「……アーチャーの無念は、私が必ず討ちます。ミオも、協力
してください。それと――」
澪「!」
セイバー「貴女のように、サーヴァントのために泣いてくれる人がいること
を、私は誇りに思います。どうか、今はアーチャーのために泣いてあげて
ください」なでなで
澪「う……うわああああああああああああああ!!!!!」
…
律「な、なんだっていうんだよ。アイツ」
律「殺していきやがった……」
律「12あるヘラクレスの命。その半分以上の7回も――」
律「……くそ! ヘラクレス! さっさとしろ! セイバーを殺しに行くぞ!!」
?「セイバー、とほざいたか。下郎」
律「!?」
?「セイバーを殺す? 否、そのような真似は断じて出来ん」
律「え?」
?「――なぜなら、アレは我(オレ)のものだからだ」
?「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」
バーサーカー「!?」
?「ほう、数多ある命とは、さすがは神の子ヘラクレスよ」
?「それでも、この我には敵わんよ」
律「……あ」
――次の日――
セイバー「――」むくっ
唯「すーすー」
澪「んん……」
セイバー「あどけない寝顔だ。私は、この子たちを戦いに巻き込んでしまっ
た。……聖杯戦争とは、あまりにも非道なものだ」
セイバー「――それでも」
セイバー「それでも、私は彼女たちを巻き込んでしまったのだ。ならば、
私にはこの子たちを守る義務がある」
唯「――ぅ」
セイバー「……ユイ」
唯「……ん?」
セイバー「起きましたか。それでは、朝食にしましょう。ウイが待っている」
唯「……澪ちゃんは?」
セイバー「よく眠っています。――今日は、とにかく寝かせておいてあげまし
ょう」
唯「うん……」
憂「おはよう、お姉ちゃん。セイバーさん」
セイバー「おはようございます。今日の朝食は?」
憂「今日はお休みだから、ちょっと頑張っちゃってみましたー!」
セイバー「ほう、それは素晴らしい。……うん、良い香りだ」
憂「お姉ちゃんも座って座って。澪さんは、まだ寝てる?」
唯「うん。まだぐっすり眠ってるよ」
セイバー「今週は色々と忙しかったですからね。今日は、よく寝かせてあげ
たほうがいいでしょう。……ところでウイ」
憂「はい?」
セイバー「ユイとウイは、姉妹なのですよね?」
唯「そうだよー。私がお姉さんなの!」
セイバー「そのわりには、ウイの方が肉体の発達がいいですね」じー
憂「ど、どこ見てるんですか!」
唯「うう……。少しだけ気にしてるのにー」
憂「セイバーさんは綺麗ですよね。華奢な身体が、守ってあげたくなります」
セイバー「それは素直に喜んでいいのでしょうか」
憂「喜んでほしいですねー。私が男の子だったら、セイバーさんのこと好きに
なっちゃいますよ」
セイバー「フフ。ありがとうございます」
唯「おいしー」もぐもぐ
セイバー「ユイも、ウイに負けないくらいに美しい女性ですよ」
唯「――」もぐもぐ
憂「あ、お姉ちゃん照れてるー」
唯「照れてないもん!」
セイバー「ただ――」
憂「?」
セイバー「日本女性の美しさを、最も色濃く感じるのはミオですね。彼女は、
間違いなく美しい」
唯「――じゃあ、澪ちゃんのサーヴァントになっちゃえばいいじゃん」
セイバー「ユイ?」
唯「ふんだ」
セイバー「あ、あの。そのようなつもりで言ったのでは断じて――」
唯「つーん」もぐもぐ
セイバー「ユイが一番です! ユイは仔犬のような愛らしさがある!」
唯「――」もぐもぐもぐ
憂「……」
セイバー「ユイ……」
憂「フフ」
セイバー「ウイ、どうしたのですか?」
憂「いいえ。お姉ちゃん、意地悪しないの。セイバーさん困ってるじゃない」
唯「……えへっ」
セイバー「ユイ!」
唯「あわてるセイバーちゃん、可愛かったよー。これはお返しお返し!」
セイバー「……まったく、困った人だ」
澪「……おはよ」
憂「おはようございます。澪さんもご飯食べますか?」
澪「うん。いただこうかな」
セイバー「私の隣が空いています。どうぞ」
澪「うん……」
憂「どうぞ」ことっ
澪「――いただきます」
セイバー「……」
唯「……ねえ、澪ちゃん」
澪「――アーチャーのことは、もういいよ。それより、これからどうするかだ」
セイバー「……ミオ、貴女は強い人だ。悲しみをバネにして、より大きな
活力にしている。そうそう出来ることではない」
澪「そんなことないよ。強くなんて、ない」
憂「……」
セイバー「ウイにも、話しておきたいことがあります。私が、なにをしていた
のかを」
…
憂「……そうだったんですか。お姉ちゃんたちは、そんなことを――」
セイバー「早く伝えておくべきだとは思ったのですが、本当に申し訳ありません」ぺこり
憂「命の、危険があるんですよね」
セイバー「はい。最悪の場合は命を失います」
憂「――お姉ちゃん、澪さん」
唯澪「?」
憂「――頑張ってね。絶対に、セイバーさんを守ってあげてね」
唯「え?」
セイバー「ウイ、お言葉ですが私が彼女たちを守る立場です。私こそが、
貴女に約束しなければならない」
憂「でも、セイバーさん苦しそうですよ。一人で二人を守るのは大変です。
だから、お姉ちゃんと澪さんも、セイバーさんを守ってあげるくらいの気持ち
がないと、その聖杯戦争には勝てませんよ。……仲間って、そういうもの
ですから」
セイバー「――貴女は、本当に底が知れない。わかりました。サーヴァント
セイバーは、ユイとミオを守る代わりに、守られましょう」
唯「任せてよ!」
澪「……ふう。ごちそうさま、憂ちゃん。すごく美味しかったよ」
憂「それはよかったです。セイバーさんと澪さんに褒められると、なんだか
自信が付きますよ」
唯「ういー」
憂「ういだよー」
唯「私は毎日褒めてるじゃんー」
憂「お姉ちゃんは何食べても美味しい美味しいって言って食べるじゃない。
だから、お母さんとかに食べてもらって感想もらった方がいいの」
セイバー「……そういえば、ユイとウイの両親は?」
唯「あれ? 今はどこにいるんだっけ?」
憂「スペインのバレンシアだよ。うちの両親、仕事とか旅行とかで、よく海外
に行くんですよ。おかげで私の家事スキルがどんどん上がっていってます」
セイバー「そうだったのですか」
セイバー(家事スキル……)
セイバー「ユイ、ウイのデータは見れませんか? 料理のレパートリーを
知りたい」
唯「見れないよ……」
テレビ「――大地に咲く一輪の花! キュアブロッサム!!」
テレビ「海風に揺れる一輪の花! キュアマリン!!」
テレビ「ハートキャッチプリキュア!!」きゅりん!
セイバー「……」じー
唯「セイ……と」
澪「セイバーはどうしたんだ? あんなに熱心に見て」
唯「セイバーちゃんって、こういう正義の味方系の番組が好きみたいなんだ
よ。昼間にやってる水戸黄門の再放送も、欠かさずチェックしてるみたい」
澪「変わってるな……」
唯「でも、女の子向けのアニメ見てるセイバーちゃんって可愛くない?」
澪「――ああ。本当に可愛い。妹みたいになでなでしたくなるな」
唯「だよね! セイバーちゃんって委員長タイプだけど、華奢だから、妹
にしたいよ!」
憂「――へー」
唯「!?」
セイバー「ユイ、キュアマリンの宝具はどこに売っているのですか!?」
唯「ふんふーん」ポチポチ
澪「誰にメールしてるんだ? まさか、彼氏じゃないだろうな!」
唯「なななな、違うよ! 彼氏なんていないよ! いたこともないよ!」
セイバー「ユイに恋人がいたとは知りませんでした! ここはドラゴンボール
の視聴を取り止めて、ユイの馴れ初めを聞くことにします!」
唯「セイバーちゃん私の話聞いてた!?」
セイバー「現代日本の女子高生は進んでいると聞きます。昼のワイドショー
という番組では、常日頃から若者への憂いが――」
澪「セイバーが興奮している……」
セイバー「とにかくです! 恋人がいるのならば、疾く、その話を聞かせて
ください!」
唯「いや、だからね」
セイバー「もしかして、悪い男なのですか? その恋人は」
唯(可愛い画像探してただけで、どうしてこうなるの?)
憂「――」にこにこ
唯(憂は怖いし……)
澪「そういえば、アーチャーが言ってたな」
唯「アーチャーが何を?」
澪「サーヴァントって、能力だけでなくて性格もマスターに影響される
んだってさ」
唯「へぇー。そうなんだ」
澪「だから、セイバーが少しくだけてきたのも、唯の影響なのかも」
唯「私、あんなにだらけてる!?」
憂「だらけてるよー」
唯「ういー」
憂「ういだよー」
澪「憂ちゃんは意地悪しないの。……私は、畏まったセイバーも好きだけ
ど、見た目通りの、少しくだけたセイバーも好きだな」
唯「もちろん、私だってそうだよ。マスターだもん!」
セイバー「ウイ、ワンピースが終わってしまいました。そろそろ昼食の
準備をおねがいします」
最終更新:2010年06月25日 21:27