ギルガメッシュ「セイバーよ。まだ我に立ち向かうか」

セイバー「もう、私はお前には負けない」

士郎「……ああ。俺たちは絶対に負けないぞ」

ギルガメッシュ「――面白い。実に面白いぞ。ここまで胸が高鳴ったのは、
実に数万年ぶりやも知れぬ。――さあ来い人間! この我を楽しませて
みろ!!」

士郎「いくぞセイバー!」

セイバー「おう!」

ライダー「凛、早く!」

凛「ったく! アンタも治りが早すぎ! どんだけ桜からの供給がすごいの
よ!」

ライダー「聖杯になってますからね。魔力が、止めどなく溢れてきます」

凛「……もう。ゼルレッチさえあれば、私も参戦するっていうのに」

唯「いけー! セイバー!!」

澪「負けるなー!!」

ギルガメッシュ「王の(ゲート・オブ)――」

士郎「I am the bone of my sword.(我が骨子は捻じれ、穿つ)」

士郎「偽・螺旋剣(カラドボルグ)!!」

ギルガメッシュ「な――!」

セイバー「ハァ!!」ザン!!

ギルガメッシュ「――――ッ!」

士郎「投影・完了(トレース・オフ)!!」

ギルガメッシュ「――このッ!」ブン!

ライダー「やはりあなたは、石化の魔眼の影響を受けますね」

ギルガメッシュ「クソッ!」

セイバー「――英雄王おおおおおおおおおお!!」

ギルガメッシュ「セイバアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

士郎「――アーチャーのイメージが、今理解(わか)ったぞ。セイバー」

士郎「――投影・開始(トレース・オン)」

唯「――すごい」

澪「あのギルガメッシュを圧倒してるぞ」

凛「まあ、当然よ。サーヴァント3体と戦ってるようなものなんだから」

澪「3体?」

凛「士郎の身体。あれは一度死んでるのよ」

唯「!?」

凛「正確には、止まってしまったっていえばいいのかな。とにかく、今の士郎
の身体は、サーヴァントのものと同化した、人ならざるものなの」

澪「……アーチャーですか」

凛「そう。話を聞く限り、こっちのアーチャーと向こうのアーチャーは全く
違うみたいね。……あの子が関係してるんだろうけど」

唯「桜さん、ですか」

凛「ええ。あの子が取りこんできたサーヴァントが、こっちでまた聖杯戦争
をしてた。……恐らく、この世全ての悪(アンリマユ)が保険をかけたんで
しょうね。私たち側のアンリマユが死んでも、問題がないように」

唯「その結果が、私たちの聖杯戦争……」

凛「そう。でも、それももう終わりよ――」


セイバー「シロウ――」

士郎「そうだ。これは、おまえの鞘だろ」

セイバー「決して帰ることのないと思っていた。その鞘……」

士郎「……真名は」

セイバー「全て遠き理想郷(アヴァロン)です」

士郎「オーケー。十分だ。いくぞ、セイバー、ライダー」

ライダー「ええ。望むところです」

セイバー「――はい!」

ギルガメッシュ「殺す! 殺す殺す殺す! 殺してやるぞ! 貴様らァ!!」

セイバー「きます!」

ギルガメッシュ「死ねェ!! 天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)!!」

士郎「いってこい! セイバー!!」

セイバー「はい! 全て遠き理想郷(アヴァロン)!!」

ライダー「……石化の魔眼で、ギルガメッシュのパロメータは下がってますが、関係ありませんね」


ギルガメッシュ「王の――」

セイバー「約束された勝利の剣(エクスカリバー)――――――!!!」

ギルガメッシュ「――――――――――!!!!」

唯「やった!」

凛「決まった!」

澪「直撃だ!」

ギルガメッシュ「貴様ァ!」

ライダー「往生際が悪いですよ。――騎英の手綱(ベルレ・フォーン)!!」

士郎「まったくだ。是、射殺す百頭(ナインライブスブレイドワークス)」

ギルガメッシュ「!!!!」

ギルガメッシュ「死ぬのか! この我が! 英雄王である、この我が――!」

セイバー「だれしもが、死を迎えねばならないのです。それを知れ――!」

ギルガメッシュ「ああ。我は不死を好んだが、不死は我を好まなかったようだ」

ギルガメッシュ「まるで、貴様のようだな。セイバーよ」シュウウウウン……

唯「……消えちゃった」


澪「ってことは?」

凛「ええ!」

士郎「勝ったのか……?」へたり

ライダー「ええ」

セイバー「ユイ! ミオ! やりました!! 私たちの勝利です!!」

唯「やったああああああああああああああああ!!!!」ガバっ

澪「セイバアアアアアアアア!!!」がばっ

凛「あらあら……」

士郎「……と、俺たちはまだやることが残ってたな」

ライダー「はい。サクラを、救出します」

凛「また暴れたらどうする?」

ライダー「そのときはそのときです」

士郎「ライダーがらしくないな。サクラを信じよう。セイバー」

セイバー「……はい」

士郎「そういえば、令呪を一度しか使ってなかったな」

セイバー「シロウは、そうだったかもしれません」

士郎「それじゃあ、二回目だ。セイバー、聖杯を破壊して桜を助けろ」キュイイイン

セイバー「――了解しました」

士郎「お前が聖杯を手に入れたいのは分かってる。でも、俺は桜の味方に
なるって決めちまった。だから、俺はお前の願いも一緒に打ち砕く」

セイバー「仕方ありませんよ。私も、それがいいと思いますから」

セイバー「こんな歪んだものを、私は望んでいたのでは、ないのですから」

凛「……」

セイバー「約束された勝利の剣(エクスカリバー)―――――――!!!」

聖杯「―――――――――」グシャリ……


士郎「桜、起きろー」

桜「――ん」

士郎「おはよう。随分と遅いお目覚めじゃないか」

桜「先――輩――?」

ライダー「サクラ」

桜「ライダー……」

凛「どーも」

桜「姉さん――」

士郎「心配掛けさせやがって、帰ったら炊事はやらせないぞ」

桜「――」

士郎「どうした? 変な顔して――あ! 遠坂! なんか布ないか!? 
大きめなやつ!」

桜「――フフっ」

士郎「?」

桜「私を、赦してくれるんですか? 先輩」

士郎「――ああ。当たり前だ。桜」

セイバー「これで、聖杯戦争は終わりました」

唯「聖杯、なくなっちゃったね」

セイバー「まったくです。……しかし、これでいいのですよ」

澪「よかったの?」

セイバー「私が望んでいた聖杯は、あんなものではなかったのですから」

唯「……そっか」

セイバー唯「――あの」

唯「――セイバーから言ってよ」

セイバー「ユイからどうぞ」

唯「じゃあ、言うね。……聖杯がなくなっちゃって、セイバーちゃんは消えちゃ
うの?」

セイバー「わかりません。ただ、聖杯だったサクラはここにいますから、どう
なのでしょう」

唯「それで、セイバーちゃんは?」

セイバー「はい。――私は、一度ここの櫻が見たいです」

唯「うん。見れれば、いいね」



epilogue

唯「今日はお花見です!」

憂「誰に話してるの? お姉ちゃん」

唯「わかんない」

紬「はい。唯ちゃん、お弁当」

梓「わ、私も作ってきました!」

律「お! 気が利くなー」

和「空気読みなさいよ……」

聡「そうだぞ、姉ちゃん」

澪「聡、食べられるか?」

聡「大丈夫大丈夫。もう殆ど回復したからさ」

桜「私のお弁当もどうぞー」

凛「へえ、桜の料理なんて久しぶりじゃないの」

唯「ホントだー。いつも士郎くんだもんね。お料理担当は」

士郎「当然だ。俺たちは居候で、桜は病み上がりなんだからな」

憂「私も、士郎くんとお料理作るの楽しいよ!」

桜「え?」

憂「ご、ごめんなさい。そういうわけじゃないから、安心して?」

凛「それにしてもびっくりよ! あんたたちが年上だったなんて!」

澪「ハハ……」

ライダー「見た目に惑わされるのは、魔術師としてどうなのですか? リン」

凛「仕方ないじゃない! 魔術師はなめられちゃいけないの!」

桜「自分を正当化しないでください」

凛「手厳しいわね、我が妹ながら」

紬「それにしても、驚いたわ」

梓「そうですよ! いきなり唯先輩の家に4人も!」

唯「お父さんたちもびっくりしてたよー」

律「当たり前だー!」


ライダー「……それは、リンの責任です」

凛「どうして!?」

士郎「そうだぞ遠坂。みんなに謝れ」

凛「はい!?」

桜「姉さんが宝石剣壊したから、帰れなくなっちゃったんですよ?」

凛「そうだけど、それ私の責任じゃないわよ!? セイバーが聖杯こわした
のも一つの原因じゃない!」

澪「そうじゃなきゃ、桜ちゃんは聖杯のままだろー」

凛「そうだけど……。ていうか、なんだって私は一般人にも魔術の話をして
るんだか……」

聡「桜さん、この唐揚げ美味しいです」

桜「え? それ、先輩のだよ?」

聡「やべ!」

士郎「いいっていいって、好きなだけ食べなさい食べ盛りくん」

聡「あ、あざーっす!」


和「まさか、この街がそんなに大変なことになってたなんてね」

唯「大変だったんだよー」すりすり

和「この体勢についてはどうでもいいから、おいおい話しなさいよ?」

ライダー「できれば、この話は闇に葬りたいのですが……」

唯「和ちゃんはいいのー。ライダーちゃんったら、お堅いよー」

ライダー「ライダーちゃん!?」

士郎「……死ぬほど似合わないな」

ライダー「士郎、なにか?」すっ

士郎「魔眼はやめて!」どかっ

士郎「あ、すいま……」

さわ子「あ?」ぎろ

士郎「こっちにもメデューサいたー!!」


凛「せんせー! 私たちが帰れなくなった当事者がなにも言わずにもぐもぐ
と料理食べてまーす」

セイバー「失礼。櫻と料理に夢中になっていました」

唯「セイバーちゃんったら、話より団子?」

セイバー「そのようです」

憂「セイバーさん。ちらし寿司、美味しいですか?」

セイバー「はい。実に美味しいです」

唯「もぐもぐ――」

唯「ういー、おかわりー」

セイバー「私にもお願いします」

憂「はいはい」


 ――その日は、桜の丘で二つの約束が叶った日だった。

 長いようで短い、戦争のおしまいを祝うかのように――
 櫻は、咲き乱れていた。


                                        FIN



最終更新:2010年06月25日 21:39