……

唯「……うい」

憂「ん? なに?」

唯「なんで今日はカニカマだけなの?」

憂「夕飯の材料買うの忘れちゃってて、それしかなかったんだよ」

唯「そんな……。カニカマだけなんて拷問だよ!」

憂「ごめんね。今日はこれで我慢してね?」

唯「えー、やだよー」

憂「お願い」ニコッ

唯「ひゃ、ひゃいっ!」ガクガク

憂「じゃあ私、部屋に戻るね」

唯「うん」




――憂の部屋

バタン

憂「……」

憂「……」

憂「……」

憂「どどどどどどどうしよ」ドキドキ

憂「もう、頭の中純ちゃんでいっぱいだ……!」

憂「なんであんなに優しいの? あんなの純ちゃんじゃないっ!」ジタバタ

憂「いやああああっ!! 私の中の純ちゃんのイメージがぶっ壊れるうう!!」ジタバタ


憂「はあ……はあ……」

ウイー メールダヨー ウイー メールダヨー

憂「はっ! メール……純ちゃんからだ」カチッ


件名:ごめん

今日は急に帰ってごめんね!
なんだか恥ずかしくて……先に帰っちゃった。

でも、憂が喜んでくれたからいいよね?

じゃあ明日、楽しみにしてるからね!


憂「……」

憂「なにこれえええっ!!? 胸がきゅんきゅんするうううっ!?」ドギュン

憂「惚れてまうううっ! 純ちゃんに惚れてまううううっ!」ギャオン


憂「やばいやばいやばいやばいやばい……おちつけおちつけおちつけ私!」

憂「純ちゃんはただ謝罪のメールを送ってくれただけじゃないか……そうだそうだよ!」

憂「私は純ちゃんに普通のメールを返せばいいだけ……よし!」カチッ

憂「……」

憂「なんて送ればいいのかな……。ま、まずはお礼の言葉だよね」

憂「『こちらこそこのような素敵なものを頂戴いたしまして感謝の念でいっぱいでございます』……」

憂「いやいや、こんなにかしこまっちゃだめだよ」

憂「『純ちゃんがこんなの送ってくれるなんて意外でした』……」

憂「いやいや、これじゃ最初の印象が悪かったって言ってるようなものじゃん」

憂「あー、どうしよ!」


憂「『それでは、また学校で会いましょう』……よし、送信!」カチッ

憂「ふうー、やっと終わったー」

憂「軽く500文字はいったかな……」

憂「これで……純ちゃんも……喜んでくれる……」ウトウト

憂「くー……」

……



――翌日

憂「えへへ……そこはだめだよぅ……」ムニャムニャ

唯「ういっ! 早く起きてっ!」

憂「んにゃっ? お姉ちゃん?」

唯「もう8時だよっ! 早く支度して!」

憂「ふえっ!? 8時! うそっ!」

唯「うそじゃないよっ! もう、憂ったらしっかりしてよね!」

憂「あうっ……」

憂(そっか……昨日純ちゃんにメール送るって5時間はかかったもんね……)

憂「はやく支度しなきゃ!」


憂「あっ……髪留め……どうしよ」

憂「純ちゃんがせっかく買ってくれたんだもん……別のを使わなきゃ」

憂「これは……だめだ。なんか違う」

憂「これは……ううん、これもだめ」

憂「これは……ああ、これじゃ純ちゃんが気に入ってくれるかどうか……」

唯「ういー! もう学校行くよー!」

憂「ひゃっ! ま、待ってお姉ちゃん!」

……



――学校

純「おはよう梓」

梓「おは、ブフッ……よう」

純「……なんで笑ったの?」

梓「なんでも、ククッ……ないからっ、ギヒヒッ……」

純(異常にむかつく)

梓「でもなんだか純ってばうれしそうだね」

純「そ、そうかな?」

純(だって憂が私の買った髪留めをつけてくれるし……うれしいに決まってるじゃん)

純(昨日あれだけよろこんでメールしてくれたからね。きっといいものを着けてくれるはず……)



ガチャン

憂「おはよう……」

梓純「憂、おは……よう?」

梓「……唯先輩じゃないですよね?」

憂「あっ……今日ね、髪留めするの忘れちゃって……」

純「……」ショボーン

憂「じゅ、純ちゃん! これには深いわけが……」

純「いいんだよ憂。憂の気持ちはわかったから」

憂「違うのっ! そんなんじゃないのっ!」

純「……それじゃ」

憂「純ちゃん……」

梓「あっちゃー……」

……

唯「みんなの裏切り者おおぅ!」

律「だから悪かったって」

澪「まったく……連絡するって言ったのは律だぞ!」

律「すっかり忘れてた」

紬「ごめんね唯ちゃん。昨日は休みだったの」

唯「もう! みんながいなかったから寂しかったんだからね!」ウルウル

律澪紬(ああなにこのかわいい生物)

和「ほら、みんな謝ってるんだから許してあげなさい」

唯「わかったよ……えーっと」

和「和よ。今初めて出てきたけど」

唯「うん! わかったよ和ちゃん!」

和「今『わ』って言ったでしょ? 漢字じゃわからないけど」

紬「あとでおいしいケーキあげるから元気出して?」

唯「うっしゃああおらあああっ!」

……



――放課後

憂「……はあ」

梓「憂」

憂「あっ、梓ちゃん」

梓「大丈夫? なんだか元気ないよ?」

憂「う、うん……。ちょっとね」

梓「……純関係のこと?」

憂「!!!」ビクン

梓「そうらしいね」

憂「うん……」

梓(まあ知ってたけど)

憂「私、純ちゃんのことなんてただの友達だと思ってた」

梓「うん」

憂「でも……あんなに優しくしてくれる純ちゃんが今じゃすっごく愛おしくて……」

憂「私にはお姉ちゃんがいるのに……。お姉ちゃんがいるのにこんな気持ちになるなんて思いもしなかった」

梓「うん」

憂「梓ちゃん! 私、どうしたらいいのかな? 自分の気持ち、全然わからないよ……」

梓「うい……」

憂「……」

梓「これはあくまで私の持論なんだけど」

梓「人が誰かを好きになるっていうのは、そんな短期間じゃできないんだよ」


憂「えっ……じゃあ私……」

梓「だから、憂はずっと前から純のことが好きだったんだよ」

憂「私が、純ちゃんを……?」

梓「そう。だから、憂が純のことを好きになるっていうのは別におかしなことじゃないんだよ」

憂「そうなのかな?」

梓「ほら、思い返してみよ。今までの純との関係を!」

憂「純ちゃんと……私……」


純『憂! この卵焼きちょうだい!』

純『憂! 昨日の宿題見せて~』

純『憂! あのマンガの続き、持ってきてね!』


憂「別にいい関係とは言えないね」

梓「あうっ……」


憂「でも……純ちゃんに頼られると、なんだか嬉しかった」

梓「そうそう! その気持ちだよ! その気持ちが今の憂の『純が好き』っていう気持ちにつながっているんだよ!」

憂「そっか……。そうだよね」

梓「うん!」

憂「私は純ちゃんのことが……好きなんだ!」

梓「うんうん!」

憂「私、純ちゃんに髪留めのこと謝ってくる!」

梓「うん。せっかく純が買ってくれたんだしね」

憂「うん!」

憂「……あれ? なんで梓ちゃんがそのことを知ってるの?」

梓「ギクッ!」

憂「そういえば、私の話を何の疑問もなく聞いてたよね?」ニコッ

梓「ひいいいぃっ!?」


梓「申し訳ありませんでした」ドゲザ

憂「まさか見られてたなんて……は、恥ずかしい……///」

梓「わ、私は悪くないんだよ? ムギ先輩や律先輩がどうしてもって言うから……」

憂「まあ過ぎたことだし、今回は許してあげる」

梓「あ、ありがたき幸せ!」

憂「……大丈夫かな」

梓「憂?」

憂「私、あのお出かけで素っ気ない態度だったし……純ちゃん怒ってないかな?」

梓「だから大丈夫だってば! もし純が怒ってたら、クレーンゲームで捕ったぬいぐるみやあんなにたくさんの髪留めをあげるわけないでしょ?」

憂「う、うん」

梓「だから安心して、憂の気持ちをぶつけてごらんよ」

憂「梓ちゃん……」

梓「……」

憂「わかった……。私、行ってくる!」

梓「がんばってね! 私、応援してるから!」

憂「うん!」

梓「あっ……、ほら、私のヘアゴムで髪をあげてから行ってよ」

憂「うん、ありがとう梓ちゃん」

梓「どういたしまして」

憂「……よし」ムスビ

憂(もうどうなってもかまわない……。純ちゃんに私の気持ちをぶつけてみよう……)

憂(純ちゃんに私の気持ち……届くといいな……)

……



――音楽室

唯「あずにゃんのばかっ! ちっちゃい! かわいい! 天使っ!」

梓「後半はほめてくれてありがとうございます」

唯「まあ、みんながあやまったからもう大丈夫だよ!」

律「そうですかい」

紬「はい唯ちゃん。約束の高級モンブランよ」

唯「ちょもらんま!」

澪「……なあ梓」

梓「はい、なんですか?」

澪「憂ちゃん、大丈夫かな」

梓「もう大丈夫ですよ。私が一生懸命説得しましたから」

澪「でも……心配だな」

紬「大丈夫よ。二人とも好き同士になったんだし」

律「そういう時に限ってなにかがあるのよねー」

澪「り、りつ! 不吉な発言はやめろ!」

唯「うまし! うまし! うまし!」モグモグ


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最終更新:2010年07月04日 01:53