梓「すみません、ホームルームが長引きまして……って、なんですかこのお通夜みたいな雰囲気」
唯「あ、あずにゃーん、今日は春の納涼大会だよ」
梓「……納涼?」
律「唯の思いつきもたまにはいいものだよな」
澪「……」
紬「箸でつかんだものは食べなきゃノーフューチャーなのよね」
梓「この匂い……鍋ですか?」
律「ちなみにもう澪は逝ってる」
梓「あ、なんとなくわかりました」
唯「ささ、あずさちゃんも座って座って」
梓「はあ、でもいいんですか? 学校で鍋なんて」
紬「許可はちゃんと取ってあるわ」
律「ちなみに、TORは厳禁な?」
唯「TORはだめだよ」
紬「TORした人はお片づけね?」
梓「でも私食材持ってきてないんですけど」
律「私も持ってきてないぞ」
唯「私もだよー」
紬「あのね、この闇鍋は新感覚の闇鍋なの」
梓「新感覚?」
唯「クラスのみんなや友達のみんなに、軽音部で闇鍋するんだけどどんな食材食べて欲しいってアンケートしたの」
律「で、後日みんなから食べて欲しいものを買ってきてもらって」
紬「この中に全部ぶち込んだというわけなの」
梓「……え? いいんですか」
律「澪ファンクラブは偉大だよな」
梓「当人一番最初に気絶しちゃってるじゃないですか」
律「じゃあ、開けるぞ?」
唯「ドキドキするねー」
梓「臭いの時点でちょっと来ますね……」
紬「どんな味なのかしら」
澪「……はっ」
律「オープンだ!」
澪「……へぷぁ!?」
唯「あ、澪ちゃん死んだ」
梓「澪先輩!?」
紬「甘いような、辛いような、酸っぱいような……不思議な香りね?」
律「私たち恨まれてんじゃないか?」
梓「た、食べる順番を決めましょう!」
律「だな」
唯「でも、どうするの? 電気つける?」
紬「電気つけて中身見たらお箸付ける自信がないけど……」
梓「ええい! わかったです! 私から行きます!」
唯「あずにゃん!?」
律「じゃあ、私は最後で」
紬「3番目でいいわ」
唯「はっ、しまった! 二番目になっちゃった!」
梓「……どうぞどうぞっていって欲しかったです……」
梓「じゃあ……行きますよ?」
唯「あずにゃん、死なないでね!」
梓「正直自信がありません……」
律「死体の処理とかって、ムギの家やってないの?」
紬「調べてみればあると思うけど……」
梓「死ぬ前提で話し合わないでください! 食材が入っているんです……! 武道館への志半ばで逝った澪先輩のためにもやってやるです!」
唯「そうだよ! 澪ちゃんのためにもがんばらなきゃ!」
梓「食べますっ!」
梓「(……これは……食感からすると……アスパラガスかな……? スープの味もまだ行ける方だし……食べられないことはないかも……)」
唯「ど、どう?」
律「ムギ、いざってときのためにバケツ!」
紬「らじゃー!」
梓「だ、大丈夫です。アスパラが入ってました」
唯「あ、味は大丈夫?」
梓「憂には死ぬほど感謝しないといけないかもしれないですね」
律「憂ちゃんのスープのおかげで助かったか……はっ」
紬「バケツ持ってきたー」
律「(もしかして後になって食材の出汁が出る最後のほうがやばい?)」
唯「じゃあ、私の番だね」
梓「唯先輩! 頑張ってください!」
律「唯! 骨は拾ってやるぞ!」
唯「だいじょうぶ、私結構運はある方だよ!」
紬「頑張って!」
唯「箸、入れるね! ぱくっ!」
唯「(あ、スープ美味しい……これは……じゃがいもかな? お芋の味がする、結構美味しいよぉ)」
梓「ど、どうですか?」
律「……唯?」
紬「バケツはあるわ!」
唯「美味です!」
律「まじかよ……この匂いだぞ?」
唯「憂の作ったスープは味もいいし、引いた食材もお芋っぽいから平気だった!」
律「さすが運が強い……!」
梓「案外なんてことのない食材が入ってるのかもしれませんね」
紬「ん……(これは……魚介類でしょうか? ……エビ? 辛くて酸っぱくて……エビっぽい味ですね……)」
律「ムギ!?」
梓「ば、バケツですか!」
唯「ムギちゃん?」
紬「美味しいわ……」
律「へ?」
紬「なんだろう、食材の豪華さとか、そういう素材の味で言うなら……アレがこれだけど、凄く美味しいわ」
律「(普段いいもん食ってそうだからなあ……)」
唯「さすが憂!」
梓「なんか、唯先輩がすごく羨ましくなってきたんですけど……」
律「じゃあ、次は私だな」
梓「律先輩! ここでハズレを引いてしまっては罪悪感で押しつぶされそうになるので是非にもあたりを引いてください!」
唯「頑張って!」
紬「頑張って!」
律「(でも、みんな当たりを引いてるっぽいし、大丈夫だよな?)」
律「(……んー、貝かな? 食べたことのない味だけど、砂も入ってないし、食材を持ってきてくれた人が砂抜きまでしてくれたのか)」
唯「どう?」
梓「律先輩?」
紬「……りっちゃん?」
律「う……うまい!」
唯「やったぁ!」
梓「さすが律先輩!」
紬「でも良かったわ、みんな当たりみたいで」
律「しかしこの匂いなんだんだろうな? 澪はこれだけで気絶してるし」
唯「この匂いは強烈だよね」
梓「もしかして、スープじゃないでしょうか」
紬「スープ?」
律「憂ちゃんが偽装したとか?」
梓「はい、その可能性もあります」
律「……電気、付けようか」
唯「……すごい色のスープだね」
梓「イカスミでしょうか? 真っ黒ですよ」
律「あ、ムギ、お歯黒になってるぞ!」
紬「え? 誰がお嫁さんにもらってくれるの?」
梓「ここには女の子しかいないですよ……」
唯「あずにゃーん! 私をお嫁さんにしてー!」
梓「にゃん! だ、ダメです!」
唯「(しょぼーん)」
梓「まずはお友達からです!」
唯「お友達からだね!」
律「おまえらは何を言ってるんだ」
律「さっき食べたのはこれかー、これ、なんだ?」
紬「ムール貝ね」
律「ムール……なんか、スゲーな。知ってるけど」
唯「はい、あずにゃん、あーん」
梓「……ハマグリですか?」
唯「うん、すごい美味しいよ」
梓「……い、いただきますです」
澪「……・ん」
律「あ、澪起きた」
澪「うめーっ!」
律「一番最初に気絶してた奴の言うセリフじゃないな」
紬「入ってた食材もまともだったし、闇鍋もっとしてみたいわ!」
唯「普通はこんな感じじゃないんだけどね」
梓「はい、大体はカレー味にして味をごまかして食べるもんです」
紬「そうなの?」
澪「私が前に見た小説じゃ、メチルエタノールとか、シュールストレミングとか入ってたな」
律「メチルエタノールは味だろ……」
唯「でも、こんなにお腹いっぱいになったら夕ごはん食べられないかもね」
梓「あ」
澪「……しまった」
律「まあ、あまりにもあれな味のせいで食欲が無いとか、そういうのよりましだけどな」
澪「メール打たないと」
梓「私も少しは食べるってメールを送らないと」
唯「憂にアイス用意しておいてって送らないと」
紬「……」
……
憂「アイス? ……ふふ、お姉ちゃんってば」
憂「でもこの食材どうしようかな……冷蔵庫には入りきらないし」
憂「お姉ちゃんにこんな食材を食べさせるなんて出来ないしね、そうだ、今日は野菜のスープにしよう」
憂「カレー粉まだあったっけ?」
憂「あそうだ、ムギさんにメールをして食材を持っててもらおう」
憂「これでよしっと」
…
紬「ねえ、寄り道していかない?」
唯「寄り道?」
梓「いいですね」
澪「夕食もなしになったしな」
律「どこに行くんだ?」
紬「ゲームセンターがいいの!」
唯「ムギちゃん好きだねー」
律「そういや、澪、前にはまってたクイズゲームどうしたよ」
澪「……」
律「澪?」
紬「クイズゲームなんてあるのね」
梓「クイズですか、どれくらいの難しさの問題が出るんでしょう」
律「ピンきりじゃね? この前澪とやった時もそうだったし」
唯「勘には自信があるよ!」
澪「じゃ、じゃあ、新しいカードを作ろう、ムギ、いいんじゃないか?」
律「澪が持ってるんだからそれでいいだろ」
澪「……そ、そうだな」
唯「あ、かわいいキャラクターだねー水着きてるー」
梓「なんとなく、私と声が似ている気がしますね」
紬「ほ、他に女の子はいないの!?」
律「女の子限定かよ」
澪「あ、でも、女の子はたくさんいるよ」
唯「なんか、称号が大賢者って書いてあるねー、なんか凄そうだよ」
澪「たいしたことないよ」
律「そうか? 前にやったときは修練生じゃなかったっけ?」
梓「なんとか賢者さんっていうのがいますから、これが一番上なんでしょうか」
澪「ムギ、なんでセパタクローの選手の名前とか把握してるんだよ」
梓「唯先輩選択問題全問当てましたね、わかってたんですか?」
唯「全くわかりませんでした!」
律「プラチナメダルっていうの? なんかいっぱい手に入ったな」
澪「あんまり多人数でやるゲームでもないけどな」
律「そうなのか? でも、一人であんな多くのジャンル把握できるのか?」
澪「そりゃ、プレイ回数だよ」
律「……澪のプレイ回数は聞かないことにするよ」
紬「梓ちゃん理系強かったのね、驚いたわ」
梓「生物とか、地学や天文は好きなんです」
唯「りっちゃん芸能強かったねー」
律「憂ちゃんを連れてくればライフスタイルは完璧だったな」
紬「(……状況終了、把握したわ)」
最終更新:2010年07月08日 23:09