澪の手が私の髪の毛に差し込まれ、引き寄せられた。
唇から澪の震えが伝わってきた。
舌が唇を撫でて侵入してくる。何も動かない私の舌に性急に絡んできた。
澪はこんなこと誰としてたの?
私以外の誰かと?
隠れていやらしいことしてたの?
こんなに上手になるまで何回キスしたの?
自分からしたの?
目をうっすらと開けると、澪は私の知らない人になっていた。


澪「私が悪い。許して、とか勝手だと思ってる」

律「そうだよ。澪は勝手だよ」

澪「律のことになると、いつも私は自分勝手になるんだ」

澪の手が私の髪の毛に差し込まれ、引き寄せられた。
唇から澪の震えが伝わってきた。
舌が唇を撫でて侵入してくる。何も動かない私の舌に性急に絡んできた。
澪はこんなこと誰としてたの?
私以外の誰かと?
隠れていやらしいことしてたの?
こんなに上手になるまで何回キスしたの?
自分からしたの?
目をうっすらと開けると、澪は私の知らない人になっていた。


嫌だ嫌だ嫌だ。感じたのはただの嫌悪感。
穢れてるよ。こんな澪知らないよ。
澪の腕の中で必死にもがく。
澪のほうが背が大きいから、私にはかなわない。

澪「っ…!」

唇が離れた。血の味がする。
澪の唇が赤くなっていた。

澪のことも、私のことも、全部嫌になって、私は澪の家から走って逃げた。


いつの間にか寝てたみたいで、朝になってた。
一晩寝て考えてみると、悪いのは澪じゃなくて私だ。
私が変なこと聞いたからだ。
過去の澪を受け入れる余裕がないからだ。
だけど、これから先、今までどおりの関係に戻れる自信はない。
私が弱いから。

澪の家に全部荷物置いてきたから、持っていくものが何もないwwww
貯金箱から少しお金出してポケットに入れた。
携帯くらい持ってくればよかった…
でもまぁ、学校に行けば唯かムギが持ってきてくれるだろう。
学校行ってくる。



いつも通りの時間に出たはずなのに早く着いた。
澪と一緒だと、ゆっくり歩いて、いっぱい話して。
1人だと、見る風景も聞こえる音も、全部違うように感じた。

教室行ってもまだ人少ないだろうから、準備室で時間潰すことにした。

ジャーン

ハイハットに触れる。
リズム走ってるぞ、と声が聞こえた気がして振り返ったけど、気のせいだった。
今日の練習はメトロノームで合わせた。
違う、違う。
何度やっても違う気がした。リズムはあっているのに。
気付いたらもう時間で、もやもやした気持ちのまま階段を下りた。



人の声がうるさい。ざわざわと耳についた。

女A「ねぇねぇ。さっき澪先輩見たんだけど」

ファンクラブの子が噂してた。
澪、有名人すぎだろwwwワロタwww

女A「唇怪我してた!」

女B「え!なんで!」

女A「あれは、彼氏とキスした時につい盛り上がっちゃった、って感じかな?」

女B「澪先輩、彼氏いるの?嫌だー」

女A「あれだけ可愛かったらいてもおかしくないよね。嫌だけど!」

笑いながら後輩が通り過ぎる。
想像で笑って嫌だーって言って、私はあの子たちと同じだ。



律「おはよう」

チャイムと同時に教室入る。クラスの子と二言三言交わし、席に着いた。
澪と席が離れていて良かった。
澪は窓際後ろのほうの席、私は真ん中一番前。
来てるかな、って思って振り返ろうとしたけど、目が合うのが怖くてやめた。

バッグが机の上に置かれている。
斜め後ろのムギの席に振り返り、お礼を言った。

紬「澪ちゃんが持ってきてくれたのよ」

律「そっか」

紬「大丈夫?」

律「え?何が?」

紬「その、澪ちゃ」

ガチャとドアを開けてさわちゃんが入ってきた。
余計な詮索をされないで済んだ。


テスト前だから、休み時間は勉強してた。
皆もそうしてたから、変に浮くことがなくて良かった。
お昼ごはんはいつも通り5人で食べた。
初めて澪の顔見た。
唇の傷はそこまで目立つものでもなかったけど、痛々しかった。
目も赤く腫れぼったかった。
私が澪を傷つけた。
気まずくなるかと思った昼休みは、自分でもびっくりするくらい普通だった。


律「さっきの授業のとき、ずっと先生の周りハエが飛んでたの見た?」

唯「遠くて見えなかったけど、ハエだったんだ。先生ずっと手振ってたから疑問に思ってたんだ」

紬「りっちゃんずっとノートに絵書いてたでしょ」

律「これ?」

私がその時の先生の似顔絵を出す。
巨大バエとの相撲対決的な絵。

唯「あはははっ!!見て見て澪ちゃん」

澪「これは傑作だな、和」

和「律ってば授業中に…」

いつもだったら、澪が叱ってくれるのにな。
ちょっとした違和感を感じる。
5人で笑ってたけど、どこか私は1人だった。


放課後になった。
一日が長かった。澪と二人で話した時間はなかった。
話す機会を作らなければ、話さずに一日を終えることが出来るということに気付いた。
そして、毎日話していたことが、皮肉に思えた。

さわ子「テスト前で悪いけど、ちょっと手伝ってほしいことがあるから準備室に1人来てほしいの」

クラス中ブーイング。そりゃそうだ、この時期にwww

さわ子「困ったわね。田井中さん、どうかしら?」

律「えぇっ!?私!?」


さわ子「えぇ目があったから」

律「気のせい気のせい!」

さわ子「それに。軽音部の部長さんだし…」

クラスの子が部長コールする。
ちょwww団結力ぱねぇwww

律「仕方ないな。だって私部長だしー」

拍手喝采。ははははは。
よかった。これで澪と一緒に帰らずに済む。


準備室行った。
手伝いなんて無かった。

さわ子「噂になってるわよー澪ちゃんの唇の怪我」

律「みたいだね」

さわ子「盛り上がるのもほどほどにしなさいよ?明日からテストなんだから」

律「盛り上がったわけじゃない」

さわ子「でしょうね」

さわちゃんがベンチに座る。私もつられて隣に座った。
膝を抱えて、頭を埋める。

さわ子「あの雰囲気なら誰だって分かるわよー」

律「さわちゃん…もう私駄目かもしれない…」

さわ子「話くらいは聞いてあげる」

ぽんぽん、と頭をたたかれた。
顔をあげるといつもよりさわちゃんが近かった。


さわ子「りっちゃんよりは色恋詳しいわよ」

律「失恋専門だけどな」

さわ子「あぁん!!??」ギロリッ

律「冗談冗談www」

さわ子「まったくもう…」

律「私、いつも冗談言ってなきゃだめなんだ。楽しいほうがいいもん」

さわ子「りっちゃんらしいわね」

律「だから…澪と一緒に冗談言って笑っていられるなら…友達のままが良い」

今日感じた違和感も無くなるはず。
私が冗談言って、澪が小突いて、また二人で笑えるはず。
あの、楽しかった時に戻るんだ。



律「一時の気の迷いだった」

私たちは、ただの友達になる。

律「澪にもまた彼氏が出来る」

二人で恋バナして、澪の愚痴聞くんだ。

律「結婚して、子供出来ていつかおばあちゃんになる」

そのときまでずっと傍にいたいんだ。

律「だから…」


それでも。









律「…わだじは…うぇっ…澪が…好ぎだ…」



もう堰き止められない。私は泣いた。
さわちゃんがずっと抱きしめてれくれた。
いつも先生っぽくないけど、この人はやっぱり大人だ。
私の全部を受け止めてくれる。
私もいつか澪のこと受け入れられるのかな。

さわちゃんは私の話すことを真剣に聞いてくれた。
涙声で何言ってるのかわかんなかったと思うけど。
自分でも何言ったのか全然覚えてないけど、とりあえず昨日あったこととか澪への想いとか。

さわ子「よしよし。一人で溜め込んじゃったのね」

律「う…うぇっ…ん…」

さわ子「りっちゃんは知らない一面を持つ澪ちゃんにちょっとびっくりしちゃったんだよね」

律「…うん」

さわ子「どんなに近くにいる人でも知らないことがあるものなの」

律「…早く、受け容れられるように、なりたい」

さわ子「自分の知らない事まで受け入れる必要はないわ」

律「…え?…」

さわ子「ただ、二人で共有したものは忘れちゃだめ」

二人で軽音部を作ったよね。
部員を集めたよね。4人集まった時には手を取って喜んだ。
部員が集まっても、部活をするのは大変だった。
澪ちゃんは練習したがって、りっちゃんはお茶の楽しい時間が大切で、ぶつかったりもしたよね。
それでもここまでやってきた。
二人の意見が上手く混ざって今の軽音部があるの。
私はあなたたちの軽音部が大好きよ。

律「さわちゃん…」

さわちゃんの言葉が胸に染みる。
澪との思い出がどんどん蘇る。
どこまで遡っても、いつも私の隣には澪がいた。
りつ!って言って笑ってた。


さわ子「2人とも結局は他人なんだから、知らない事もあるし、ぶつかることもある」

律「……」

さわ子「でも、たった一つでもお互い同じことずっと思ってられたら、そんな小さなことふっ飛ばせちゃうと思うの」

律「たった一つ…?」

さわ子「好きって気持ち。お互い想いあえるなんて、これって奇跡じゃない?」

律「…うん…私、澪が好きだよ…」ニコッ

さわ子「ふふっ。やっと笑った」

さわちゃんが頭ぐりぐりした。ちょっと痛かったけど嬉しかった。

さわ子「これはりっちゃんと澪ちゃんの問題だから、私には具体的にどうしろとかは言えない」

さわちゃんが立ちあがる。私の手を取って立たせてくれた。

さわ子「だけど、りっちゃんが澪ちゃんのこと想って出した答えは間違ってない。そう自信を持って言えるわ」

律「うん。ありがと」

さわ子「ま、私は失恋専門だから、上手くいく可能性は分かんないけどね!」

律「…そうだね」

ちょっと笑った。楽しかった。
ありがとう、先生。

早く帰りなさい、と準備室を追い出された。本当この人はあっさりしてるな。
帰り道は、朝と違う景色が見えた。


家帰って明日のテストに備えた。
保健体育の教科書を取り出す。
この前澪に教わったから大丈夫だと思うけど、一応復習。
教科書が膨らんでて、何か挟まってるみたいだった。
ページを開くと、あの女性器のページだった。

何でよりによってこのページwwww

四つ折りのルーズリーフ。
挟まってたのは唯からのメモだった。




りっちゃんがトイレに行ってる間に澪ちゃんがいろいろ話してくれたよ。
昔キスしたことあるんだって。
でも、今は別の人が好きなんだって。その人が大切なんだって。
「一緒にいると、楽しくて、嬉しくて、笑っちゃう。
だけど、気持ち高ぶって、止められなくて、たまに泣きそうになる。
上手く言えないけど、私はその人のこと、これからもずっと好きでいる気がする。」
って言ってすごく幸せそうな顔してた。
律には言うなって言われたから、手紙を書くことにしました。
言ってはいないもんね(^^)
澪ちゃんの好きな人は、幸せだね。

P.S. 唯さんは何でもお見通しなんだぞ☆




唯…。私と澪が台所に片付けに行ったときに書いたのかな?
焦るように斜めに走った文字が可愛かった。
過去のことなんて、気にしない。
これからもずっと好きでいてくれたら、私は幸せだと思う。


ったく、澪のあほ…
そういうことは直接私に言え!


例のページを閉じて、テスト範囲のページを開いた。
今頃、澪もテスト勉強してるだろうな。
テストが終わったら、澪と話そう。

そう考えたら、テストが待ち遠しくなった。


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最終更新:2010年07月12日 21:33