※読者

律「……と、前半まで読んでみた訳だが」

唯「……あのね、りっちゃん」

律「おう」

唯「さすがにこの作戦は、バンドやってる人を馬鹿にしてると思うよ」

澪「大体、絶対音感ってそこまで万能なものじゃないし……」

梓「取って付けたような唯律シーンも、今回ばかりはどうかと」

律「これがジャンプの伝統なんだよ」

唯「伝統?」

律「『キャプ翼』を連載すれば、サッカーを真面目にやってる人から驚かれて」

律「『テニプリ』を連載すれば、テニスを真面目にやってる人から呆れられて」

紬「そうやって、ジャンプの伝統は作られてきたのね……」



※誌面

律「唯が曲をコピーしたら、次は俺たち3人でそれを即興でアレンジする」

律「ムギは、作曲ができる。アドリブで構わないから、自由にキーボードを鳴らしてくれ」

紬「そんな……」ファサッ

律「澪は、作詞ができる。ステージの上で浮かんだ言葉を、メロディに乗せて歌ってくれ」

澪「で、できるかな……」

唯「それで、律は何を?」

律「俺か? ……俺は、リズムを倍速にしてやる」

唯「……倍速?」

律「俺、時々ドラムが走っちゃって、リズムが速くなっちまうだろ」

律「だから逆に、速さを追究してやる。2倍の速さでリズムを刻んでやる」

律「あぁ、安心しろよ。テンポまで2倍にする訳じゃない」

律「同じテンポで、俺のドラムだけが2倍多くリズムを刻むんだ」

澪「つまり、8ビートのリズムなら16ビートに……」

律「16なら32に、32なら64にしてやるよ」

澪「そんな事したら、律の身体が壊れちゃうよ!」

律「……壊れてもいい」

澪「えっ?」

律「夢を叶えるためなら、身体なんて壊れたって!」

唯「……澪ちゃん、やってみようよ」

澪「唯君……」

唯「律だけじゃない。4人とも、自分の能力の限界を超えなきゃいけない」

唯「そうしなきゃ届かない夢だと思うんだ、武道館って」

唯「だから俺は、律に賛成する。この4人なら、きっとできるって信じてるから」

紬「……わかった、僕も頑張ってみよう」ファサッ

律「……ありがとう、ムギ」

唯「……どうする、澪ちゃん?」

澪「……バカだよね、みんな」

律「澪……」

澪「みんながそれだけ頑張ろうって言ってるのに、私だけ逃げる訳にいかないじゃないか」

唯「じゃ、じゃあ!」

澪「やってやろう、TRFに向けて!」

律「よっしゃ、みんなの心は一つだ!」

唯「TRFで一番すごいパフォーマンスを見せてやろう!」

澪「そして、目指すは武道館だ!」

唯律澪紬「オー!!!!」




※読者

唯「えーと、ここで今週の話は終わりだけど……」

紬「……」

澪「……」

律「……」

紬「そんな即興アレンジで、まともな演奏ができると思ってるのかしら……」

澪「思い付いた言葉を歌詞にするなんて、フリースタイルのラッパーみたいになるじゃないか……」

律「リズム2倍って何だよ、腕と脚が4本ずつなきゃ無理だろ……」

梓「ここまで突き抜けてくれると、もはや清々しいですね……」



……

唯「あぁ、もう今週のジャンプが発売だね……」

律「第七話が超展開すぎて、第八話がどうなるのやら……」

澪「もう、どうにでもなればいいんじゃないか!」

紬「私もだんだん、むしろ楽しみ、って気持ちになってきたわ!」

澪「あはは……」

紬「うふふ……」

梓「ていうか掲載順『ジャガー』の前になってる!?」

律「もういい、何も言うな。読むぞ」



※誌面

ドコドコドコドコ

律「はぁ、はぁ、はぁ……」

律「くそっ、倍速リズム……」

律「あと少しで出来そうなのに、体力がもたねぇ……」

律「何か運動部で20kmくらい走らされる方が、まだマシなんじゃないか……」

律「くそっ、休憩だ」バタッ

律「はぁ、はぁ、はぁ……」

律「でも、俺がやるしかないんだ……」

律「……」

律「うしっ、休憩は終わりだ!」ガバッ



ジャンジャジャ-ン

ジャジャッジャ-ンジャン

唯「……よし」

唯「今のギターソロ、覚えた!」

唯「せーのっ」

ジャンジャ-ン
ジャンジャ-ン

唯「あれっ?」

唯「何か違うよな、これ」

唯「くそっ、難しいな……」バタッ

ジャンジャジャ-ン

ジャジャッジャ-ンジャン


唯「……」

唯「これは、俺にしか出来ないんだ……」

唯「俺が諦めたら、どうにもならない!」ガバッ


(部室)

澪「みんな、調子はどんな感じ?」

唯「なかなか大変だよ、まだマスターできてない」

律「俺も、まだライブで使えるレベルには遠いな」

紬「即興アレンジというのは、口ど言うよりずっと難しいね」

澪「私も……。こんなので大丈夫かなって、自信が持てないや」

ガタッ

さわ太「よう、みんな!」

唯「あっ、さわちゃん」

澪「顧問のくせに、部室へ来たのは久しぶりですね」

さわ太「お前らが、相当クレイジーな事をやろうとしてるって聞いてな」

律「えっ、さわちゃん知ってるの?」

紬「僕が伝えたんだ。TRFにエントリーした事や、律の作戦なんかもね」キランッ


さわ太「面白いから手伝ってやるよ、お前らの作戦!」

澪「えっ、本当ですか?」

唯「でも手伝うって、どうやって?」

律「お菓子の差し入れなら間に合ってるぜ?」

さわ太「実は俺、この軽音部のOBでな。Death Devilってバンドで、あちこちのコンテストを総ナメにしてたんだぜ?」

澪「初耳です……」

さわ太「ほら、この写真。これがDeath Devilのメンバーだ」

律「って、すごいメイク!?」

唯「さわちゃん、こんなバンドやってたの!?」

紬「すごいのは見た目じゃなくて、各メンバーの実力も、高校生レベルをはるかに超えていたらしい」ファサッ

さわ太「はっはっはっ、もっと俺を尊敬しやがれ!」


さわ太「それでお前ら。その作戦、正直キツいだろ」

律「うっ……」

唯「まぁ、正直、ね……」

さわ太「だから俺たちDeath Devilが、特別にみっちりお前らを鍛えてやる事にした」

澪「えっ?」

さわ太「もう当時のメンバー全員に声をかけた」

さわ太「これから毎週末、スタジオで一日中特訓してやる」

さわ太「お前ら、覚悟しろよ?」ニヤッ

唯「……すげぇ」

律「ありがたいな、マジで!」

澪「よ、よろしくお願いします!」

紬「希望の光が見えてきたね」キラリンッ




※読者

律「さて、ここに来てさわちゃんが登場した訳だが……」

紬「性別が変わってるのは、今更どうこう言わないけど……」

唯「昔のバンドの話、自分からベラベラ喋ってるね」

澪「こっちの先生は、必死に隠してたのにな」

梓「ていうか、構想していた設定を急いで詰め込んだような流れですよね。これって、やっぱり……」

唯「打ち切り前の急展開なんかじゃないよ、きっと!」



※誌面

聡「スタンバイOK?」

純「ベースはOK」

梓「こっちもいいよ」

聡「じゃあ、行くよ。ワン、ツー、スリー、フォー!」

ジャジャ-ン
ブォ-ン
ドコドン

聡「すげぇ、今バッチリだった!」パァッ

梓「この3ピースも、息が合ってきたね」

純「今度のTRF、観客の視線を独り占めだな!」ニヒヒッ

聡(梓が俺たちとバンドを組んでくれてから……)

聡(どこまでも突っ走っていける気がする!)

梓「聡、上手になったね」

聡「えっ、本当に!?」

純「梓が入ってくれてから、聡のヤツ、すごいやる気を出しちゃってさ」

梓「……そうなの?」

聡「だって、憧れだった中野梓が、俺たちと組んでくれたんだぜ?」

純「……」ニヤニヤ

聡「梓のギターにふさわしいドラムにならなきゃ、恥ずかしいもん」

梓「……ははっ、ありがと」

純「さてさて、じゃあもう一回セッションしようか?」

聡「俺はいいよ、梓は?」

梓「もちろん」

聡「じゃあ、もう一回だ!」


……

さわ太「遅いぞ、お前ら!」

律「約束の時間より10分も早く着いたのに……」

唯「土曜の朝に早起きするの、しんどい……」ファア

澪「えっと、こちらの皆さんが……」

さわ太「Death Devilのメンバーだ」

「はじめまして」
「よろしく!」
「よろしくね~」

澪「見た目も普通だし、話し方も爽やかだ……」

唯「この人たちが、あの写真の人たちなんて、信じられない……」

紬「これは世を忍ぶ仮の姿、あの衣装が真実の姿、といった具合だね」ファサッ

さわ太「さぁ、地獄の特訓が始まるぜぇ!」クックック



※読者

律「今週はここまで。来週はDeath Devilの皆さんと特訓かな?」

唯「あずにゃんのバンド、ベースは純ちゃんだったね」

梓「……」ブツブツ

唯「……あずにゃん?」

梓「梓聡……、梓聡……、梓聡……!」ブツブツ

唯「」

律「もう放っといてやろうぜ、梓のことは」


……

唯「第九話!」

律「正直、ここで話すネタも無くなってきたな」

唯「なので早速、本編どうぞ!」



※誌面

唯「……」ゲッソリ

澪「唯君、大丈夫?」

唯「たぶん……」

紬「山中先生の特訓で、みっちり鍛えられたようだね」ファサッ

唯「特訓というか、あれは音楽地獄だよ……」

澪「一体、どんな練習だったの?」

唯「さわちゃんが即興で弾くギターソロを、すぐコピーするんだ。失敗したら蹴られる」

澪「うわぁ、大変だ……」

唯「澪ちゃんとムギも、ハードな特訓だったんじゃないの?」

澪「私はボイストレーニング中心だったし、平気だよ……。ちょっと疲れたけどね」ハハッ

紬「僕はアドリブ力を付けるために、あえて音楽理論の基礎から学ばせてもらったよ。なかなか骨が折れるね」ファサッ

唯「そっか……。あれ、律は?」

ガチャ

律「……」フラフラ

唯「り、律!?」

さわ太「安心しろ、人間はこれくらいじゃ死なないから」ワッハッハ

澪「って、何をしたんですか!?」

律「……みんな、俺は大丈夫だ」

唯「でも、見るからに身体を酷使してるじゃないか!」

律「……出来る」

唯「……えっ?」

律「出来るぜ、倍速リズム。自分の限界を超えられる気がするんだ」

澪「律……」

紬「律君……」キラキラッ

律「ただ、今はちょっと休ませてくれ」バタッ

澪「ちょ、ちょっと律!?」タタッ

律「……澪、ピンクか」

澪「……へっ?」

律「パンツ」

澪「……この、バカ律! 心配して損した!」ゲシッ

律「げふっ! か、顔を蹴るな!」



※読者

澪「ずいぶん過酷な特訓だな……」

唯「って、澪ちゃん?」

澪「何だ?」

唯「ローアングルからスカートの中身が見られちゃってるけど、平気なの?」

澪「あぁ、いいんじゃないか。だって澪はお色気担当のキャラクターだろ?」ニコッ

梓「澪先輩……」

紬「澪ちゃん……」

律「この連載を通して、一番成長したのは澪かもしれないな」ホロリ


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最終更新:2010年07月16日 22:25