律「よくトレーディングカードって言うだろ?あれのミュージシャン版だな」モグモグ
唯「は、はぁ…そうなんだ」ジュルリ
律「演奏者カードと楽器と、それに補助カードがあって他のヤツと対戦もできるんだぜ」モグモグ
唯「へ、へぇ…そうなんだ…」
律「…って、お前ちゃんと聞いてる?」
唯「いやー、だって律っちゃん美味そうなの食べてるんだもん」ジュルリ
律「どうせそんな事と思ったぜ。このチョコのオマケなんだよカードは」モグモグ
唯「いいなぁ、私も欲しいな。そのウエハースチョコ!」
律「…チョコの方かよ」
律「インディーズカードか、また外れだな」
唯「それじゃ、当たりってどんなカードなの?」
律「ピンからキリまであらるけど、私はやっぱドラムやってるからスティーヴ・スミスみたいなドラマーのヤツかな」
澪「なんだ律、また買ったのか、そのカード?」
唯「あ、澪ちゃん!そだ、澪ちゃんも持ってるのミュージシャントレカ」
澪「え、それはまぁ持ってるけど」
律「そりゃ最初に買ったのは澪だからんな」
唯「へーそうだったんだ。澪ちゃんはどんなの持ってるの」
澪「そんなに無いけど…、今はこれくらいだな」パラッ
唯「うわぁ、沢山アルバムに入ってる!…あ、コレ澪ちゃんの持ってるのと同じだ」
澪「フェンダー・ジャズベースか。最初に買ったカードがこれだったんだよ」
唯「へぇー、いいなぁー。私もギー太のカードが欲しいよ!」
律「そういっても何が入ってるか分かんないからな。簡単にはいかないと思うぞ」
梓「そんな所で何やってるんですか、先輩たち?」
唯「澪ちゃんのミュージシャントレカ見せてもらってたんだよ」
梓「ミュートレですか?澪先輩も集めてたんだ」ヒョイ
澪「あぁ、まだ集め始めたばかりだけどな」
梓「わぁ!凄いですね、プロカードばっかりじゃないですか。楽器カードもいいヤツばっかりだし」
澪「そうかな、たいした事ないと思うけど…」
梓「そんな無いですよ!さすが澪先輩ですよ、羨ましいなぁ!」グッ
澪「そ、そうか…?ありがとう」アセアセ
唯「あ、澪ちゃん真っ赤になってるよ!」
律「澪ばっかりズルいぞー!見ろよ梓、私だって集めてんだぜ。ほれ、敬え敬え」バラッ
梓「なんですかコレ…?インディーズカードばっかりだし、アルバムに閉じてないからカードの端が折れちゃってます」ペラッ
律「ん、本当だな。気付かなかったぜ」
梓「ダメダメじゃないですか。澪先輩の足元にも及びませんよ」
澪「あはは、そ、そうなかなぁ…」モジモジ
唯「あ、澪ちゃんが凄いドヤ顔してるよ!?」
梓「澪先輩!もっと見せてもらえませんか」グイッ
澪「あぁ、勿論構わないよ。…そうだ、ダブってて要らないカード梓にあげようか?」
梓「ほんとですか!?やったー、澪先輩大好きです!」ギュッ
澪「お、おい!そんなにくっついたら歩きにくいよ」
律「チクショー、澪ばっかりズリィぜ。私のコレクション馬鹿にしやがって」
唯「そうだよね、澪ちゃんばっかりずるいよね!私もあずにゃんに抱き付かれたいよぉ」
律「そっちかよ…。くっそー、こうなったら絶対梓達をギャフンと言わせてやるぜ!」
唯「律っちゃんカッコいい!そのいきだよ!」
紬「みんな、お茶の用意が出来たわよ。少し休憩にしましょう」
律「休憩みたいだな、おい唯行こうぜ」
唯「そうだね、今日のお菓子は何かなぁ。たのしみだよ」ワクワク
澪「…で、これがジョン・ポール・ジョーンズだ」
梓「あのレッド・ツェッペリンのジョンジーですか!いいなぁー」スリスリ
澪「あははっ、梓ちょっとくすぐったいよ」
唯「あぁ…あずにゃんと澪ちゃん、あんなに顔が近いよ…」
律「アッチィーなぁ、まったくアッチィーよなぁ!」
澪「うん、律暑いのか?冷房の温度下げようか」
律「そっちの暑いじゃねぇよ。まったく、澪のヤツデレデレしやがって」
紬「あらあら、ちょっとそのアルバム閉まってもらってもいいかしら?ティーカップが…」
澪「あぁ、すまんムギ!すぐ片付けるよ」
唯「こうなったらヤケ食いだよ!ムギちゃん、今日のお菓子はなぁに!」バッ
紬「ウエハースチョコよ。沢山あるからいっぱい食べてね!」サッ
唯「わぁい!いつものと違ってちょっと安っぽい感じだけど、それもまたいいよね!」サクサク
律「…ん、このチョコどっかで見た事あるような気が」チラッ
紬「あら、どうしたの律っちゃん?そんなにジロジロ見て」
唯「これ、さっき律っちゃんが食べてたチョコと似てるよねぇ」サクサク
律「そ、そういわれりゃそうだな…。ムギお前もまさかミュージシャントレカを?」
紬「あら、律っちゃん達も集めてたの?中々、コルグTRITON Extremeが当たらなくて…」
唯「へぇ、やっぱり狙って当てるのは大変なんだね」サクサク
律「しっかし、この数のチョコ…。一体いくら何個買ったんだ」
唯「じゃあムギちゃんもカード持ってるんだよね。見せて見せてー」
紬「ちょっと待ってね。えーっと」ゴソゴソ
紬「あった、あったコレだわ」サッ
唯「…あれ、ムギちゃんのアルバム、ミュージシャントレカのロゴが入ってるね。カッコいいなぁ!」
澪「それで、これがベースアンプカードの…」
ピクッ
梓「そ、それはプレゼントカードを送れば貰える、特製バインダーじゃないですか!」グイッ
律「へー、そうなのか。良く知ってんな梓は」
梓「凄い、クラスでもまだ誰も持って無いんですよ!ムギ先輩凄いです!」グイッ
紬「あら、そうかしらぁ。まだ余ってるのよね、梓ちゃん良かったらもらってくれる?」
梓「ほんとですか!?有り難うございます、ムギ先輩ぃ!」ギュウッ
紬「あらあら、そんなにキツく抱き付かれると痛いわよ」
澪「…………え?」
……
律「ふぅ、今日も練習疲れたなぁ…。なぁ澪?」
澪「………、あぁ」
律「なんだよ、いつもみたいにツッコまないのかよ?」
唯「どしたの澪ちゃん?なんか元気ないよ」
梓「これも、レアカードだ!こっちは、ウルトラレア!?見た事無いカードばっかりだ…」テカテカ
紬「まだ、家にしまってあるカードも沢山あるのよ」
梓「まだ、この他にもあるんですか!?見たいですよムギ先輩!」ギュウッ
紬「あら、だったら帰り私の家に寄って行く?」
梓「は、はいっ!是非お願いします!じゃあ先輩達、そういう事なんで」グイッ
澪「えっ!?待って梓、私も一緒に…」
紬「ちょっと、そんなに引っ張ったら危ないわ、梓ちゃん!」
タッタッタッ
律「あーりゃりゃ、こりゃ完全に梓にフラれたんじゃねーの?」
澪「………………」ウルウル
律「おい、冗談だってば!?泣くなよ」
澪「……泣いて無いもん」ウルウル
律「いや、完全に目が真っ赤だぞ…」
唯「そうだよ、澪ちゃん!元気だして」ギュッ
スタスタ
憂「あ、やっぱりお姉ちゃん達だ!こんばんは」ペコリ
唯「あれ、ういー?どうしたの、こんな所で」
憂「夕飯の買い物の途中なの。今日は麻婆豆腐にしようと思って」
唯「ほんと!やったー、麻婆豆腐楽しみだよ。じゃあ早く行こ!」グイッ
憂「ちょっとお姉ちゃん!…それじゃ律さん、澪さん失礼します」ペコリ
律「あぁ、唯の事ヨロシク頼むわー」
…
憂「後は…、お醤油も切れかかってたんだよね」
唯「お醤油か、それじゃ私とって来るよ!」
憂「そう?じゃあお願いお姉ちゃん」
唯「ついでにお菓子も買ってもいいかな!?」
憂「仕方ないなぁ、お姉ちゃんは。一つだけだよ」
唯「分かったよ!有り難うういー!」ダッ
唯「あったよういー、お醤油!」トテトテ
憂「有り難うお姉ちゃん…って、お菓子は一つだけって言ったじゃない」
唯「もう一つは憂の分だよぉ。一緒に食べよう」サッ
憂「なにこれ?ミュージシャントレーディングカード…」
唯「軽音部のみんなも集めてるんだよ!私もギー太が欲しくて」
憂「そういえば、クラスでも話題になってたなぁ。へぇ、これがそれなんだね」
ジャラジャラ
澪「ひい、ふう、みい…。ダメだ、全然溜まって無い…」
澪母「澪ちゃーん、ご飯出来たわよ。早く食べに来なさい」
澪「あ、うん分かったよママ!……こうなったら」
スタスタ
澪母「お小遣いの前借り?どうしたの、澪ちゃんがそんな事言うなんて珍しいじゃない」
澪「えーっと…、そう。欲しい参考書があってそれで!」アセアセ
澪母「参考書か、それなら仕方ないわね。いいわよ」
澪「ほんとママ!?有り難う!」バッ
澪「や……、やった、ポール・マッカートニ!あの、ポール・マッカートニじゃないか!これならきっと梓も!」
たがその瞬間、ふと澪は気付く。相手はあの
琴吹紬だ、いくらレアカードを引き当てようとも、それ以上のカードを所有している可能性が高い。
澪「もっと…、もっとレアなカードを当てないと、じゃないと梓が…」
澪は震える指先で、一つ…また一つとチョコレートの袋に手をかける。口からはゲップが吹き出し、胃袋は当の昔に満腹になっている。
だが、澪はその手と口を止めることはない。まるで何かに取り憑かれたかの様に…、自分の為、そして梓の為にチョコレートを貪り続けた。最後の一袋に手をかけた時には既に母親を騙したという罪悪感も口の中のチョコレートと共に深淵の体内へと消えていった。
……
憂「ご飯食べ終わったよ、なう…っと」カタカタ
唯「ういー、ういー。それじゃ早速食べようよ、チョコレート」
憂「え?うん分かったよ、ちょっと待ってね!…お姉ちゃんがチョコを食べます、なう…っと」カタカタ
唯「さーて、それじゃ早速開けるよ」パカッ
憂「えーっと、…何々、ティム・ボガードだって。おじさんのカードなんだ、残念だなぁ」
唯「んとね、私はエリック・クラプトン。私もおじさんだよ、うぅギー太が欲しいよぉ!」
憂「諦めないでお姉ちゃん!きっといつかは当たるよ」
唯「そうだよね、有り難うういー。それじゃ、このカードどうしようかな」
ゴソゴソ
憂「じゃあ、こうやってカバンに貼り付けるのはどうかな?」
唯「あ、それいいね。私もそうするよ!」ゴソゴソ
…
澪「ゲップ…!朝も、チョコレートだけだから気持ち悪い…ゲップ」
梓「あ、澪先輩!おはようございます」
澪「あ、梓おはよう…」
梓「聞いてくださいよ先輩!ムギ先輩のコレクション凄いんですよ」
澪「あぁ、それなんだが…、これ梓にあげるよ」ドキドキ
梓「なんですか…コレ?ポールマッカートニ……」
澪「やっぱり要らないよな…?ムギの方がこれよりも」
カバァー!
梓「そんな事無いですよぉ!ビートルズなんてムギ先輩のコレクションより凄いじゃないですか!」
澪「ほ、本当か!?他にも色々あるんだぞ」パァァ!
梓「やっぱり澪先輩が一番ですよぉ!大好きです澪先輩ぃー」ギュウギュウ
澪「あ、梓ぁぁ!」スリスリ
澪は今至福の絶頂にいた。無理もない、あの
中野梓に、今まさに憧れの眼差しで見つめれ、抱き付かれているのだから。
一人っ子であった澪にとって、梓はまるで妹の様な存在であり、普段は律や唯にからかわれている澪にとっては自分を頼よりにしてくれる梓は自分の自尊心を満たしてくれる存在でもあるのだ。
一時は紬に、その心の拠り所である梓を奪われたかの様な状態に陥り、深く落胆した。……だが、そんな悪夢はもう終りを告げたんだ、今までも、そしてこれからも梓は自分を必要としてくれる、と澪は徐々に身体から力が抜けていく錯覚に見舞われた。
唯「あっるぇー?澪ちゃをとあずにゃんだ、オハヨー」
梓「あ、唯先輩。おはようございます」
唯「ほら、みてみてあずにゃん!私もミュートレ買ったんだよ」
梓「…え、どれですか?」
唯「ほらこのカバンに貼ってるやつだよ!」サッ
梓「そんな所に張り付けたら折れてグチャグチャになっちゃうじゃないですか!」
唯「え?あぁ、本当だね」
梓「えーっと…、エリック・クラプトン……?」
唯「なんかおじさんだったよ。残念だよねぇ、私はギー太が欲しかったんだけど」
梓「ちょっ!ちょっと凄いじゃないですか、三大ギタリストと称される内の一人なんですよ!」バッ
唯「へぇ、そうなんだ。あずにゃん詳しいねぇ」
梓「うわぁ!良く見せてくださいよ、カッコいいなぁ」
唯「おおぅ、ちこう寄れ、ちこう寄れ」スリスリ
澪「………え、梓?」
澪「なんとかしないと…なんとかしないと……、なんとかしないと」ブツブツ
律「お、いたいた。澪話があるんだけど」
澪「律?なぁ、悪いけど少しお金を貸してくれないか」
律「金なぁ…、その話だけどお前、嘘付いて小遣いも前借りしてんじゃねーかよ」
澪「な、なんでお前がそんな事を知ってるんだ!」
律「お前のカーチャンに聞いたんだよ。参考書なんて買ってないだろ」
澪「うるさいな、私が何に使おうが私の勝手だろ!それよりも、貸してくれよ…お金」ガッ
律「そんな金ねぇよ、もしあったとしても今のお前には貸さないと思うけどな」
澪「なんだよその言い方は!私はいつも律に貸してあげてるのに、役に立たないな!」
律「いい加減にしないと怒るぞ、たかがカードじゃないか。何をそんな夢中になってるんだよ」
澪「うるさい、うるさい、うるさいっ!律なんかに私の気持ちなんか分からないさ!」ダッ
律「お、おい澪待てよ!?何処いくんだよ!」
最終更新:2010年07月26日 22:20