しとしと降る雨に 溜息ついてみる

今日は皆とお出かけするはずだったのになぁ


唯「ちぇー せっかくの休みなのに…」

憂「残念だね…」


窓の向こうには 灰色の空

どんよりとした空は ずっと先の方まで広がってる

お日様は かくれんぼの真っ最中

私の心も 曇り模様


こんな暗い日だから 暗いことも考えてしまう


何せ明日は雲に遮られて見えないから

ずっと先の方まで真っ暗だから

不安にだってなってしまう


進路の事とか 卒業の事とか


ああ そうだ もうすぐ私卒業なんだっけ


唯「卒業したら私達どうなっちゃうんだろう」

唯「…」


卒業したら…

離れ離れになるなんてことは無いよね

楽しそうな皆の顔を思い浮かべる

もっと皆とバンドしたいのにな…

皆とお別れだなんて嫌だよ

そして

唯「…あずにゃん」

思い浮かぶのは 可愛い後輩の彼女の事


憂「梓ちゃんがどうかしたの?」

唯「あずにゃん…寂しくないのかなぁ」


来年私達は卒業する

そしたらあずにゃんは1人になってしまう

そうなればきっと彼女には寂しい思いをさせてしまうだろう


………


時刻は正午過ぎ

雨はまだ振ってるみたい

梓「…」

 ♪~

梓「…」

 ♪~


梓「…」 カチッ


[ ■ ] 停止


暇つぶしに聞いてた音楽を止める


梓「はぁ…」

なんだか気乗りしない

いつもは熱中して聞くお気に入りの曲も

今日だけはどうにもつまらない

部屋の中で 私は一人ぼっち


梓「…」

梓「…行きたかったな」


先輩達と一緒に居られるのは今年一杯だけだ

今年が終われば卒業して また来年からは居なくなってしまう

だから先輩達と出かけるチャンスは無駄にしたくなかったのだけど…


梓「…来年からは私1人なんだよね」


1人は寂しい


………

執事「それではまた何か御座いましたらお呼びください」

紬「ええ、わかったわ」

執事「失礼します」


昼食を終えて 自室へと戻ってきた

執事が去って 私は部屋に1人きり

そうして やっと一息を付く




そして


紬「…」


そこから やるべき事は何もなかった


窓から見上げた空は相変わらず

悲しい色を浮かべている


紬「…ふぅ」

トスン

溜息をつきベットに倒れこむ

紬「…」


とても退屈な時間が流れる


紬「昨日からずっと楽しみにしてたのに…」


なのに 急な雨に空は塗りつぶされて

本当は素敵な日になるはずだったのにな


紬「…」


仕方の無い事だけど

ちょっとだけ拗ねてみたっていいよね?


紬「…そうだ」

ゴソゴソ

コトッ

引き出しから取り出したのは

軽く装飾された小箱

私の宝物

パカッ

中に詰まっているものは大切なものばかり

そこから一番新しい宝物を取り出す

あの日 彼女と一緒に二人きりで遊んだ記念

キラキラ光る落書きのされた、2人を写す小さな写真


紬「りっちゃんは、今頃どうしてるのかしら」

そして私は大好きな友達の1人のことを思い浮かべた


………

律「えいっ!このっ!」

聡「甘いっ!」

律「あっ!」

聡「! よしっ 貰ったっ!」


律「かかったなー!」

聡「えっ!?」

律「おりゃあーっ!!」


聡「うわぁあっ!」

律「よっしゃあーっ!私の勝ち!!!」


画面には ダブリュー! アイ! エヌ!

勝利の文字! もちろん勝ったのはこの私!


聡「くっそーっ! あの場面でそう来るかよっ!」

律「ふっ まだまだ爪が甘いな 弟よ」


勝利の余韻に浸りながら ふと窓の外を見上げれば

いつの間にか雨は止んでいたみたいだ


律「つーか、もうこんな時間か…」

時刻はもう4時過ぎ

こんな時間になるまで ずっとゲームしてたのか、私…


聡「もう一回!もう一回勝負だ!」

律「ダメダメっ、もう私疲れたから また今度な」

聡「えぇっ!」


それにさっきは結構危なかった 次やったら負けるかもしれないしな

一日中ゲームしてて疲れてるのは本当なんだけど


聡「次は絶対勝つからな!」

律「はいはい」


後ろで負け惜しみを言う弟を適当にあしらい、自室へと戻る


律「ふぅ」


そう言えば弟の相手をしてやるのは随分久しぶりだったように思う


律「…ずっと部活と勉強でいそがしかったもんなぁ」

それに弟には弟の友達付き合いがある

姉弟で遊ぶ機会なんて言うのは

今日みたいに急な雨のせいで 両方の予定が潰れた時くらいか


律「…」


律「今日は残念だったなぁ…」


唯やムギは凄く落ち込んでるんじゃないだろうか

だってあんなに今日の事を楽しみにしてたのに

梓もあまり口や態度には出さない方だけど、きっと楽しみにしてたはずだ


それに澪だって…


律「…」


何か急に心配になってきたな


律「電話してみるか」


………

澪「…」

澪「…うーん」

澪「この構文は確か…」

澪「…」 ペラペラ

澪「そうそう…確かこんな感じ」

澪「…」 カキカキ


雨の日は勉強が捗る

今日の事は確かに残念だけど

相手は自然だし いくら悔やんでもどうにもならない


こう言う時に大事なのはすぐに気持ちを切り替える事!


澪「…」

澪「…」

澪「やっぱり…今日はこのくらいにしておこうかな」 パタリ


窓の向こうには茜色に染まっている空

今日という 一日が終わっていく色


澪「…」

澪「やっぱりちょっと残念だな」


ブーッ ブーッ

澪「あ、携帯」

澪「律から電話?」

 ピッ

律『もしもし、澪?』

澪「どーした?」

律『あー、そのさ…』


なんで言いにくそうなんだ…


澪「なんだよ」

律『…』


なかなか次の言葉が出てこない

……って おい、まさか


澪「まさか何も考えずに電話してきたんじゃ…」

律『…』

澪「図星か…」


まあ 何時だって行き当たりばったりな幼馴染の事だ

これ以上は何も突っ込むまい


律『…』

澪「…」

律『…』

澪「…」


律『ねぇ 澪』

澪「ん?」



律『……明日暇?』


………

夜になって


また雨が降り始めた


漆黒に佇む空

そこには明かりの1つも見当たらない


唯「…」

唯「…明日は」

唯「明日は大丈夫なのかな」


りっちゃんから電話がかかってきたのは夕方頃


律『今日は行けなかったのは残念だけどさ』

律『雨だから仕方ないって』

律『だからさ、明日行こうぜ』

律『
大丈夫だって、きっと晴れるよ』


雨がまた降り始めたのはそんな矢先

唯「…」


一寸先は闇


私には明日の事はわからない

そして

ずっと先の未来の事はもっとわからない


卒業したら 私達はどうなっちゃうんだろう

あずにゃんは1人になっちゃうのかな


真っ暗な空はまるでそんな私の不安を象徴してるみたいで


唯「…」

唯「はぁ」


唯「なんだか寂しくなってきちゃった」


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最終更新:2010年07月29日 20:54