律「いやー今日の部活は充実してたなー」

唯「・・・」

澪「久々にたくさん練習できたな」

梓「明日もこのくらい練習しましょうよ」

唯「・・・」

律「まー気が向いたらねー。あ、そこのコンビニ寄ってかない?」

梓「話をそらさないでください」

唯「・・・」

紬「コンビニ寄りたーい♪」

唯「・・・」

澪「そう言えば唯、さっきからぼーっと上を見てるけど・・・」

律「おーい唯!」

唯「・・・ねえみんな」

律「ん?」

唯「みんな!空はみんな繋がっているからね!」

梓「いきなりどうしたんですか?」

唯「空を見上げてら思ったんだ。いつか私たちがバラバラになっても、空は繋がってるって」

律「唯にしてはポエミーなこと言うんだな」

唯「私だってぼーっとしてるように見えて、色々考えてるんだよ!」フンス

紬「何年たっても、みんなと友達でいたいな」

律「そんなの当たり前だろー」

澪「うん、唯の言うとおり、空はどこまでも繋がってるんだ。私たちの心だってずっと一緒だよ」

梓「そう・・ですね」

律「まったく、唯のせいでしんみりした空気になっちゃったじゃん」

唯「えへへ」

梓「ていうか唯先輩、いつまで空を見上げてるんですか?」

澪「ずっと上を向いてると危ないぞ?」

唯「うん。そろそろやめるよ・・・あれ」

紬「唯ちゃん?」

唯「・・・」グググ

唯「・・・首が動かなくなっちゃった」

律「え?まじで?」

唯「うん、どうしよう」

梓「どうしようって言われても」

澪「ずっと上向いてたから筋肉がなんかなっちゃったのかな」

唯「なんかってなに?」

澪「いや、私に言われても」

紬「でも、ずっと上向いたままだと首痛めちゃうよ?」

唯「私だってもう上を向くのやめたいよ。でもどう頑張っても首が動かないんだよ」

律「よし、じゃあ私が戻してやる」ググググ

唯「いたたた!いたいいたいりっちゃん痛いよ!」

澪「おい律やめろ!唯が痛がってるだろ!」

律「ごめんごめん」

唯「ううー、痛かった・・・」サスサス

紬「やっぱり強引には戻せないみたいね」

律「すごく硬かったよ」

唯「早く下を向きたいよお・・・」

梓「とりあえず帰りを急いだ方がよくないですか?外だと人目がありますし」

唯「この姿勢で家までたどり着けるかなあ・・・」

律「危ないから私たちが送っていくよ」

唯「ありがとう~」



ガチャ

唯「ただいまー!」

憂「お帰りなさい。あ、みなさんもいらっしゃい」

梓「憂、実はちょっと面倒な事になって」

憂「どうしたの?・・・ていうかお姉ちゃん、上向きながら歩いたら危ないよ?」

唯「首が動かなくなっっちゃた~てへっ☆」

憂「上を向きながらてへっ☆ってしてるお姉ちゃん、可愛い」

律「さすがというかなんというか」

憂「とりあえずみなさんあがってください」

澪「ありがとう。お邪魔しまーす」

憂「それで、お姉ちゃんの顔が上向きのまま固定されちゃったわけですか」

律「そうなんですよ」

唯「ああっこの姿勢じゃゴロゴロできないよ!どうしよう」

梓「当の本人はそこまで深刻そうじゃないけど・・・」

唯「むー!私だって悩んでるんだよ!」プンプン

澪「その状態で怒られてもなんの迫力もないな」

律「それは元々だろ」

憂「そうだ、お湯をかけて見たらどうかな?」

唯「憂、私は人間であってカップ麺じゃないんだよ」

憂「ごめんなさい・・・」

梓「でも、試して見る価値はあると思います」

唯「あずにゃん待って。早まらないで」

やかん「ピイイイ」

憂「ちょうど沸騰したみたいですね」

唯「沸騰までさせる必要あるの!?」

律「よーし、澪そっち抑えろ」

澪「わかった」ガシッ

唯「やめてー!」ジタバタ

憂「じゃあかけるよお姉ちゃん。熱いから気をつけてね」

唯「どう気をつけるの!?」

憂「いくよー」

ジョボボボ ジュワッ

律「あっつうううい!!ってなんで私!?」

憂「やっぱり私、お姉ちゃんに熱湯をかけるなんて出来ないよ」

唯「ありがとう!ういー!」

梓「相変わらずこの姉妹は仲良しですねー」

澪「そうだなー」

律「誰か氷持ってきて早く」


梓「でも話が振り出しに戻ってしまいましたね」

澪「そうだ、唯の首をマッサージしてあげればいいんじゃないか?」

唯「おお!初めてまともな案が出たね」

梓「じゃあ誰がマッサージしますか?」

憂「あ、じゃあ私が」

律「待て!マッサージってのは手が大きいやつがやった方が効果的だ!つまり・・・」チラッ

澪「わかったよ・・・」

唯「お願いします!」

澪「なんか緊張するな。じゃあやるぞ」サワッ

唯「ぁあん!」

澪「えっ」ビク

憂「お姉ちゃん、なんで色っぽい声出したの?」

唯「澪ちゃんの触り方がいやらしくて・・・」

澪「い、いやらしくない!」モミモミ

唯「おっ・・・!ああん!!すごいよお//」

律「ゆ、唯?」

唯「澪ちゃんのマッサージすごく・・・んっ、気持ちいい!」

律「いいなー。澪、次私ね」

梓「私もやってほしいです!」

憂「あの、私も・・・」

澪「しょうがないな。順番だぞ」モミモミ

唯「はああぁあん!!」



憂「あっ・・・!んん//」

澪「これで全員のマッサージが終わったな」モミモミ

律「ああ・・・すごかったぜ澪」ポワー

梓「澪先輩にこんな才能があったなんて・・・」ハアハア

唯「ねー、澪ちゃんマッサージ屋さんになれば?」

澪「え、どうしようかな」

律「まんざらでもないんかい!」ビシッ

アハハハハハハ

唯「あれ、ちょっと待って。私の首が治ってないよ」

澪「あ・・・忘れてた」

憂「こんな時間ですし、みなさん夕飯食べていきますか?」

律「いやー悪いね」

澪「すこしは遠慮しろ」

梓「いいの?憂」

憂「うん、大歓迎だよ」

唯「わーい!あずにゃん!」ダキッ

梓「上向いたまま抱きつかないでください不気味です」

唯「ごめん」

憂「お風呂が沸きましたよ。順番決めて入ってくださいね」

唯「あ、お風呂に入れば治るんじゃないかな!」

澪「さっきお湯かけてダメだっただろ?」

律「かけられたのは私だけどな」

唯「っていうか、お風呂があるんなら私がお湯を浴びせられる必要なかったよね」

律「いや・・・もういいや」

唯「あずにゃーん!一緒にお風呂入ろうよー」

梓「嫌です」

澪「唯がこの姿勢でお風呂に入るんだったら、サポート役が必要だよ」

梓「うっ・・・わかりましたよ」

唯「わーい!」



唯「でたよー」ホカホカ

梓「思ったよりお風呂は苦労しませんでしたね」ホカホカ

澪「それは良かった」

律「でも首は治らなかったんだな」

憂「みなさーん、ご飯できましたよー」

唯「おおー!待ってました!」

律「なんか、このままでもあまり困ってないんじゃないか?唯」

唯「うーん、そうかも」

梓「最悪戻らなくなっても大丈夫ですね」

唯「ええ?それは嫌だよー。最悪戻らなくなったらどうしよう」

澪「病院いけ」

唯「いただきまーす」

唯「むっ、むぐっ!?」

律「食べにくそうだなー」

唯「あずにゃ~ん・・・」ウルウル

梓「まったく・・・しょうがないですね。ほら」

唯「あーん」

パクッ

唯「むむむむー」

憂「噛みにくいってお姉ちゃんは言ってます」

唯「むむむーん」

憂「あずにゃーん!ってお姉ちゃんは言ってます」

梓「私にどうしろと」

唯「むむぅむむむー」

憂「水を飲ませて~ってお姉ちゃんは言ってます」

梓「はいはい、じゃあ口あけてくださいね」

唯「むぁーい」

憂「はーいってお姉ちゃんは言ってます」

梓「どうぞ飲んでください」

唯「がばおっ」

バッシャーン

梓「あ、すいません角度調整を間違えました」

唯「むんむんむうむむむむむう」ビショビショ

憂「全身濡れちゃったよーってお姉ちゃんは言ってます」



律「夕飯も食べ終わったし、私たちはそろそろ帰るよ」

澪「ごちそうさまでした」

唯「えー、泊ってきなよー」

梓「明日も学校だし着替えもないし無理ですよ」

憂「お姉ちゃん、わがまま言っちゃだめだよ」

唯「わかったよー」

律「じゃあ明日、学校でな!」

澪「明日になっても治らないようなら病院いきなよ?」

唯「うんわかった!」



憂「みんな帰ったね」

唯「うい~、今日は一緒に寝てよお」

憂「うん!喜んで!」

唯「やったあ!」

憂「その前に夕飯の片づけやっちゃうね」

唯「うん。じゃあ私はギー太いじってるよ」

唯「よいしょっと」

唯「弾きにくい・・・」

唯「今日はいいや」



唯「ベッドに入ってから1時間あまり」

憂「すー、すー・・・」

唯「かわいい妹はすでに寝てるけど・・・私は寝る姿勢を模索していて全然寝れない」

唯「仰向けもうつぶせも無理だし・・・やっぱり横向きしかないかな。でも寝にくい」

唯「ちょっと気分転換に外出てみよう」

ガチャ

唯「うわーー!星空がすごく綺麗!」

唯「これは上向いたまま固定された唯一のアドバンテージだね」

唯「一人で何言ってるんだろ」

唯「せっかくだしお散歩でもしようかな」

テクテク

唯「本当に綺麗だなー夜の空って」

唯「今まで気付かなかったよ。こんな身近に綺麗な眺めがあったんだね」

唯「あっ、今の流れ星!?」

唯「気のせいかな・・・あれ、なんか星が減ったような」

唯「あ、雲が出たんだ」

唯「星が見えなくなっちゃった。帰ろう」

ポツッ

唯「冷たっ!雨だ!」

唯「やばい、早く帰らないと」

ザアアアアア

唯「うわわ、降ってきた!っていうか痛い!雨が顔に直撃して痛い!目に入る!」

唯「傘もないし・・・あ、そうだ!」

唯「ふふん♪目をつぶればどうということはない」

唯「これならいくら雨に打たれても目は無事だね」

ザアアアア

唯「・・・っていうか」

唯「目つぶってたら家に帰れないじゃん!」

唯「でも目を開けたらもろに雨をくらっちゃうし」

唯「うわーーーん!雨早く止んでよーーー!ういーーーー!」




チュンチュン・・・

唯「朝・・・か」

唯「もう何時間だったんだろう・・・ずっと目をつぶって立ち続けてるから感覚がマヒしてわかんないや」

唯「そう言えば雨、止んだみたい。もう目を開けて大丈夫かな」

パチッ

唯「わあ・・・!」

憂「おねえちゃーーーん!!」タッタッタ

唯「あ、ういー!」

憂「お姉ちゃん!」ガバッ

唯「おっとっと」

憂「もう、朝起きたらお姉ちゃんがいなくて・・・探したんだよ!?うわあああん」

唯「よしよし、心配かけてごめんね」ナデナデ

憂「ぐすっ・・・お姉ちゃんが無事でよかったよお」

唯「ねえ憂、空を見上げてみて」

憂「・・・?」

憂「わ・・・綺麗!虹だあ」

唯「うん。空って面白いよね。夕焼けになったり星空になったり、虹がかかったり」

唯「どの空も綺麗ですごいよね」

憂「うん」

唯「私の首がこうなったおかげで、身近にこんな素敵な物があったって気付けたよ」

憂「よかったね、お姉ちゃん!」

唯「はっくしょん!!」



律「おじゃましまーす」

紬「お見舞いに来ましたー」

憂「みさなん来てくれてありがとうございます。お姉ちゃんなら」

唯「みんなーいらっしゃーい・・・っくしゅん!」

澪「大丈夫か?」

唯「お医者さんはすぐ治るって言ってたよー」

梓「一晩中雨に当たって風邪ひくなんて、唯先輩らしいですね」

唯「えへへ~」

澪「首は相変わらずそのままか」

律「っていうか、病院行ったなら首も診てもらえよ!」

唯「まあまあ、しばらくはこの姿勢をエンジョイしようと思ってね。決して忘れたわけじゃないよ!」

梓「エンジョイって・・・」

唯「ねえみんな、今日帰ったら皆で空を見ようよ。きっと素敵な発見があると思うんだ」

澪「帰ったら?一人で見るってことか?」

唯「うん、でもね」

梓「?」

唯「みんな!空はみんな繋がっているからね!」



おわり



最終更新:2010年07月29日 21:01