私がこれから出会うであろう友達は必ず空の下にいる。
そして、空が導いてくれる私がこれから出会うであろう友達の所に。
私が小さい頃、お母様が言ってくれた言葉を思い出しながら空を見る。
鳥が何かを歌いながら空を飛んでいる。
はぁ……っとため息。
温かい息が窓を曇らせる。
曇った窓を制服の袖で拭く。
紬「綺麗な空」
本当に綺麗な空。
ふわり浮かぶ生クリームみたいな雲。
眩しい太陽、歌いながら飛んでいる鳥。
……そろそろ行こうかな。
鞄を持って教室を出る。
何だか今日は凄く幸せな気分。
ポケットからケータイを取り出して時間を見る。
4時21分。
何だか少し不安になって来た……。
廊下の窓から空を見る。
さっきと変わらない青空。
いや、きっと大丈夫。
空が私を導いてくれる。
これから出来るであろう大切な友達の所へ。
窓を開け温かい風を大きく吸い込んで吐く。
さっき見た鳥が大きく円を描いて飛んでいる。
私もあの鳥のように大空へ羽ばたきたい。
今までの私はまるで鳥かごの中に閉じ込められた鳥のようだった。
羽を広げる事も出来ずにただ鳥かごの中から憧れだけを見ている。
でも……高校生になって私は自由になった。
鳥かごから出された鳥のようにね。
「はぁ……」
でも、いざ鳥かごから出されてみると分からない。
何処に飛んでいいのか分からない。
あの大きな空へ羽ばたいて行けばいいの?
それとも向こうに見える山?
何処に飛べばいいか分からない……だけど私は自分で見つけてみせる。
私の事は誰よりも私にまかせたいから。
何処に羽ばたいて行けばいいのか自分で見つけてみせる。
廊下の窓を閉め私は歩き出す。
「ここの階段を上れば……」
私が目指している所にたどり着く。
何だかドキドキする。
手の平に人と言う文字を書いて飲み込む。
私にとってジンクスはただの冗談だけど、この行為を行う事によって少しだけ緊張がほぐれたような気がする。
本当に少しだけだけどね。
階段を上り終わり大きく深呼吸。
そして目を閉じて心臓を落ち着かせる。
よし行こう。
私は音楽室の扉の前に行き立ち止まる。
「……緊張するわ」
この扉を開け、ドキドキの向こうに挑戦したら見れるはずだ。
いつもよりも綺麗で新しい空が見れるはず。
優しく自分に言い聞かせる。
霧深い森の中にある蕾を囀り起こすように優しく自分に言い聞かせる。
今は何処に飛べばいいのか分からないけどきっと見付けられるはず。
大丈夫、私はきっともっと遠く遥かな空へゆける。
音楽室の扉を開く。
「あのー…見学したいんですけど…」
カチューシャを付けた女の子が私に駆け寄って来た。
「軽音部の!?」
「いえ合唱部の…」
おわり
最終更新:2010年07月29日 21:16