スタスタスタスタ
澪(何だよっ 何だよっ)グスッ
スタ スタ スタ ピタ
澪(なんで親友の幸せを祝ってやれないんだろうな)
澪(別に律が何をしようと律の勝手だろ 私なんかに言う必要なんかない)
澪(頭では分かっているのになんで駄目なんだろう)
澪(立ち直ったつもりだったのに、また後戻りしてる)
スタ スタ スタスタ
澪(私が律に頼りっきりだったから律は今まで不自由だったんだ)
ピピッ
澪(私は律の幸せを祝ってあげられてないんじゃない───時間を、自由を、幸せを奪ってる)
スタッスタッスタッ タン
澪(何なのかわからないのは律じゃない、私だよ)
『まもなく、1番線に、上り電車が参ります 危ないですから、黄色い線の内側にお下がりください』
…
カランコロン
店員「いらっしゃいませ」
律「うーむ、お あの端の席座ろーぜ」
男「はい!」
スタスタ キキッ ストン
店員「ご注文はお決まりでしょうか?」
律「私はレモンティー」
男「僕もレモンティーで」
店員「かしこまりました」
スタスタスタ
男「いやぁ、なかなか面白い映画でしたね!」グッ
律「だなー □△のシーンなんか興奮しちゃったぜ」ハハ
男「そこもよかったですね でも僕はやっぱり最後のあのシーンかな!!」
律「まさかあそこで来るとは思わなかったよな」
男「ですねー」
店員「お待たせいたしました レモンティーです」
ゴトン ゴトン
店員「ではごゆっくり」
律「のど渇いてたからうめーな」チュー
男「映画館だとポップコーンもあるので早々に飲み終わっちゃいますしね」チュー
ゴクゴク カラン
律「その、さ 今日はありがとな 楽しかったよ」
男「と、とんでもない!誘ったのはこっちですし礼を言いたいのは僕の方ですよ」
男「律さん、今日は忙しい中、わざわざ私に付き合ってくれてありがとうございました」
律「わざわざだなんて…」
男「…」ニコッ
律「わかってたのか?」
男「…はい」コクッ
男「薄々感じてはいたんですよ どうも律さん、僕といる時ちょっと元気ないなーと」
男「あの放課後の日、思い切って誘ってみましたがどうにも僕じゃ律さんを楽しませる事はできなかったようだって」
律「わり、私そんなに態度に出てたかなー… 男は一生懸命私の為に行動してくれてたのによ」
男「そんな事無いですよ でもやっぱり、好きな人の事ぐらいわかってやれなくちゃ『男』とは言えないじゃないですか!」
律「ハハハ、お前いいヤツ過ぎるよ」
男「お褒めに預かり光栄です」フフッ
律「参ったわ」フウッ
律「そうさ 今日一緒に映画観に来たのはさ、ある事を言う為だったんだわ」
男「はい」ゴクリ
律「男はすごくいいヤツだしさ、真面目だし、真摯だし、まさに理想の男性って感じだ」
律「例えるなら白馬の王子様かな」
男「僕はそんなに大した人間じゃないですよ」
律「いーや!まさに完璧な男性だ!」ビシッ
律「でもさ、なんていうか大人なんだと思う」
律「私はまだまだガキんちょ、子供だからさ」
律「不相応なんだ、むしろ私の方が」
男「そんな事はないですよ 元気で素敵な女性ですよ」
律「へへへー 照れるぜぃ」ヘヘッ
男「だからこそ、律さんには元気でいてほしい」
律「相性の問題なんだと思う きっと私がもっと大人だったらさ、1発でホレてたと思うんだ」
男「ありがとう、その言葉で僕には十分過ぎる位です」ニコ
律「本当に、ごめんな」
男「いえいえ」
男「それじゃ、出ましょうか」
律「おう」
男「会計お願いしまーす」
カランコrン
店員「ありがとうございましたー」
スタスタ
男「今日は1日ありがとうございました」
律「私こそありがとな 有意義に過ごせたよ、ホントだぞー?」
男「ええ」フフッ
律「ん?どうした?」
男「いや、やっぱり元気な律さんは素敵だなと再認識しましたよ!」
律「はっ、反応に困るだろっ!」ビシッ
男「痛っ!」
プシュー キイイイイン ガタンゴトン ガタンゴトン
律「ふー わが町に戻ってきたー!」ノビノビ
男「今日、ここで僕はツッコミ損ねちゃったんですよね」
律「ああ、そうだったな」
律「男たるもの、些細な事でもしっかりと掬い取らないとダメだぞー?」
男「勉強になります!」
ピッポ ピピポッ♪ ピッポ ピピポッ♪
男「…ふぅ!」
男「結局僕は振られちゃったわけですが、これからも友人として付き合ってくれますか?」スッ
律「ああ、勿論だ!」ガシッ
男「それでは 次会うときまでにツッコミの腕を上げておきます!」
律「おう!楽しみに待ってるぜ!」
律男「それじゃ!」
スタスタ
律(惜しい事したかなあ あんないい男いないよな)
律(でも、今はまだ馬鹿やってたいから)
律(澪と、唯とムギと梓と、まだ私はやって行きたいから)
律(いよっし、心入れ替えてあと1年間の高校生活、がんばるぞー!)
律(と、その前に 澪には謝っとかないとな)
律(まさか… 映画館のあの人は違う…よな)
ピッピッ プルルルルル プルルルルル ガチャ
律「あ、澪?私だけど」
『おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません。』
律「あれっ やっぱどっかに出かけてんのかな」
律(仕方ない、夜にもう一度電話かけるか)
…
アオーン!オン!オン!オン!
澪(はあ… 結局途中で帰ってきちゃったな)ゴロゴロ
澪(チケット 無駄にしちゃったな)
澪(ママには映画見る前に具合悪くなっちゃって友達には悪いけど帰ってきちゃったと説明したけど)
スッスッスッスッスッスッ トントン
澪ママ「夕飯食べられそう?」
澪「ごめん… 食欲無い」ボソッ
澪ママ「そう… 明日も日曜で休みだしぐっすり休んで治してね」
澪「うん」
スッスッスッスッスッスッ
澪(今ご飯なんてのど通り過ぎないよ…)
澪(家に戻って、1人になって考えてみたけど)
澪(考えれば考えるほど頭の中がグチャグチャになってくる)
澪(律は親友なのに、私は…)
澪(律は私のためにたくさんの事をしてきてくれたのに私は邪魔ばかり)
澪(ムギにあれだけ心配かけて励まされたのに… まだ逆戻り)
澪(唯や梓や和だって私が気がついてないだけできっと)
澪(押し潰されそうだよぅ 誰か…たす…けて…」スウ
……
ガッチャン
律「ふぃー食った食った」
律「んじゃかけなおすか」パシッ
ピッピッ プルルルルル プルルルルル ガチャッ
『おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためかかりません。』
律「あれー?もしかして澪のヤツ、電源切りっぱか?」
ピッ
律「ふー」ドサッ
律(今日は疲れたし、さっさと風呂入って寝ちゃうか)
律(澪には、明日家に電話してみっか)
テッテッテッテッテッテッテ カッチャン
律「は~ いい湯だった」
律「よいしょっと」ボスッ
律(今日は色々あったなー 彼とデートへ行って…、食事して、映画観て、喫茶店でティー飲んで、それでー振ったと)
律(我ながら調子にノリ過ぎだよなー)ゴロ
律(あーもう私の前にゃ、いい男現れないんじゃねーか?)
律(一生の男運使い切った気がする それくらい真っ直ぐで、誠実で、いいヤツだったな)
ゴロゴロ ドスン!
律「いって!」ムクッ
律(ああ、未練タラタラしい!私らしくないぞ!)ボスッ
律(私は今を選んだんだ!それだけだ!じゃあおやすみっ!!)
…
チュンチュンッ
澪「ん…」モゾッ
澪(もう朝か 体がダルい)ゴロ
トットットットットットット コンコン
澪ママ「起きてる?」
澪「うん」
澪ママ「朝食食べられそう?」
澪「ちょっといいかな…」
澪ママ「そう… お腹空いたら言ってね おかゆ作ってあげるから」
澪「うん、ありがとうママ」
澪ママ「それじゃあゆっくり休んでなさい」
…
律「クー!ガー!」zzz
ダッダッダッダッダッダッダ バンッ
律ママ「いい加減っ 起きなさいっ!」ポカッ
律「あいてっ!!」ガバッ
律「んだよー、疲れてるんだって」ヒリヒリ
律ママ「もうお昼過ぎよ?さっさと起きてご飯食べちゃいな!」
バタンッ
律(もう昼かよ 昨日の事がまるで嘘みたいだな)
律「(私ホントにあんないい人振ったのか…)ハハ、何様だっつーの!」ビシッ
テッテッテッテッテッテッテ カッチャン
律「あー食ったー!」フイー
律(朝食抜いてたからついつい食べすぎちゃったぜ)
律「さて、と 澪んちに電話かけるとすっかなー」
パシッ ピッピッ プルルルルル プルルルルル ガチャッ
澪ママ「はい、秋山です」
律「あ、おばさん?田井中ですけどー」
澪ママ「あら律ちゃん、こんにちは」
律「今澪いますかー?」
澪ママ「あらごめんね、今具合悪いって寝込んじゃってるの」
律「そうなんですか…」
澪ママ「またぶり返しちゃったみたいで」
澪ママ「話あるなら一応呼んでみる?起きてるかもしれないし」
律「あ、いえ 無理させちゃ悪いんで」
澪ママ「そう じゃあ何か伝えておく事はあるかしら?」
律「では『お大事に、あと昨日は一緒に行けなくてごめん』と伝えておいてもらっていいですか?」
澪ママ「わかったわ~」
律「それじゃお願いします」
澪ママ「は~い」
ガチャッ
律「澪また具合悪いのかー 大丈夫かな」パタン
律(家に見舞いに… って寝込むくらい具合悪いみたいだし)
律(うるさい私が行っても迷惑かけるだけだよなー)ハア
律(仕方ねえ、澪に手伝って貰う訳にもいかないし宿題やっちゃうか)
律(あー、明日からまた学校か 休みもっと長けりゃいいのになー)
律(でも学校行けばみんなに会えるし、部活だってできるしな!)
律「いよっしゃー!宿題がんばるぜー!」ガッツポーズ
聡「姉ちゃんちょっとうるさい」
…
澪(はあー もうお昼時か)
澪(お腹減ったしママにおかゆ作ってもらおう)
ヨタヨタ カッチャン ヨタヨタ
澪ママ「!」ハッ
澪「お腹減ったからおかゆ作ってくれる?」
澪ママ「あら、電話なり呼ぶなりしてくれれば私から行ったのに」
澪ママ「体にキテるのに動いちゃだめよ?」
澪「大丈夫…(だって体と言うよりか心の問題だから…)」キイッ ストン
澪ママ「ちょっと待っててね~」コトコト
澪「ごちそうさま」フウッ
澪ママ「はい」ニコニコ
澪「ありがとう それじゃまた部屋に戻ってるね」スクッ
澪ママ「ええ 1人で歩ける?」
澪「はは、子供じゃないんだからそれくらい大丈夫だよ」
ヨタヨタ
澪(外見はもう子供じゃないけど、中身はまだ子供なんだな、私は)
澪(あと1年で高校卒業だっていうのに)
澪(いつも誰かに頼ってばかりだ 自立なんてできるんだろうか)
ヨタヨタ カッチャン
澪(明日は、学校か)ボスッ
澪(律と 私は律と会って、普通に接することができるんだろうか)ゴロン
澪(普通の女の子らしく、友達の幸せを祝ってあげる事はできるんだろうか)
澪(絶対無理だ…)
澪(でも明日休んだらみんなにまた迷惑をかけちゃうんだよな)
澪(流石に明日は休めない)
澪(決心しろ、私!おめでとう、律!)
ウトウト
澪(何時までも── 子供じゃいられないんだ──)
澪「…」スー スー
…
チチチチッ チュンチュン
澪(朝か 学校行かなきゃな)
カッチャン タッタッタッタッタッタッタ
澪「おはよう」
澪パパ「おはよう」
澪ママ「あらおはよう もう具合大丈夫なの?」
澪「うん、もう大丈夫」
澪パパ「無理はしないようにな」
澪パパ「お、もうこんな時間か いってきます」
澪「いってらっしゃい」
澪ママ「いってらっしゃい、あなた」
ガッチャン
澪「ふう、おいしい」パクパク ゴックン
澪「さて、私も行く準備しなきゃな」スッ
澪ママ「くれぐれも無理しすぎないようにね」
澪「うん」
タッタ
澪(歯磨きして)
澪(髪を直して、と)サラサラッ
タッタッタッタッタッタッタ カッチャン
澪「忘れ物はないな、うん」ガサゴソ
澪(今日は、逃げずに律を迎えに行くぞ!)
カッチャン タッタッタッタッタッタッタ
澪「それじゃいってきます」
澪ママ「いってらっしゃい 気をつけてね」
ガッチャン
最終更新:2010年07月29日 23:44