あの不思議な出来事から一ヶ月半が経った。

私は毎日、軽音部に来ては練習に明け暮れている。

今ではこのクセがあり過ぎる軽音部のメンバーにも馴れてきた。

唯「今日は疲れたね」

紬「……そうだね」


紬「………………」

彼女は琴吹紬

軽音部のキーボード担当でもあり私達の偉大な作曲家でもある。

まぁそれは言い過ぎだけどね。

彼女はとっても人見知りが激しくあまり自分の意見を率先して言おうとしない。

紬「………………」

でも彼女がいないと軽音部は始まらない。

私達は彼女の作曲センスには驚いてばかりだもん。


律「眠いー!」

彼女はドラムの田井中律

可愛く言えばドジっ子悪く言えばマヌケ。

彼女は前髪が長くて目が見えないからよくこける。

何もない所でもこける。

軽音部のムードメーカーでもある。

律「ポッキー美味しい」モグモグ


澪「今日もいい汗かいたな」

彼女はベースの秋山澪

可愛くて恋する事が生き甲斐の純情な乙女。

訂正、男っぽくて腕っ節の強い女の子。

それにホラー映画好き。

私に死霊の盆踊りを進めて来た時は流石に殺意が沸いたね。

澪「本当にいい汗をかいたよ」


梓「唯にゃん先輩明日は練習休みがいいな!」

彼女はギターの中野梓

うるさし私に抱き着いて来たりしてくる女の子。

それに私に変なあだ名まで付けた。

唯にゃん先輩だなんてナンセンスなあだ名だよね。

だけど私にギターを教えてくれた事は感謝してる。

もうギターを教えてくれた恩は全部返したけどね。


和「ねぇ平沢さんこのスク水着てみない?」

唯「いや」

彼女は軽音部のマネージャー真鍋和

なんか変な人。

事あるごとに私達に変な衣装を着させたがる。

着てみたら着てみたで何か変な目で私達を見る。

和「残念ね」

唯「はぁ…………」

そして私がこの軽音部の部長でもありギターとボーカルを担当している平沢唯

実は世界政府から追われている身で今は分けあって桜ヶ丘高校に身を隠している。

今のは嘘だけどね。


これが軽音部のメンバー。

こうやって楽しく部活が出来るのは向こうの世界の私のおかげだ。

紬「…………ねぇ」

唯「どうしたの?」

紬「私、帰らなきゃ……」

唯「何かあるの?」

紬「うん……カレー」

唯「あぁ家に帰ってカレー作んなきゃなんないのね」

紬「……………」コクッ

唯「じゃあ私達も帰ろうよ」

梓「えー!もうですか?」

唯「琴吹さんが帰るんだから私達も帰ろうよ」

梓「えー!ヤダ!」

唯「あっそ、秋山さんと田井中さんは?」

秋山「そうだな帰るか」

律「さんせー!」

唯「真鍋さんは?」

和「私も帰りたいわアナタ達の衣装を作らなきゃならないから」

唯「アハハ……」

唯「じゃあ帰ろっか」

梓「まだ私は帰る事を諦めてませんよ!」

唯「琴吹さん一緒に帰ろった」

紬「…………うん」

澪「じゃあ私達は先に帰ってるから」

律「バイバイー」

唯「あ、うんさようなら」

和「じゃあ私も」

唯「さようなら」

和「衣装楽しみにしててね」

唯「うん、もし出来ても着ないけど」

和「またまたーじゃあバイバイー」

梓「唯にゃん先輩もう少し一緒に居ましょうよー」

唯「じゃあ琴吹さん帰ろうか」

紬「……う、うん」

梓「もう、わかりました!私も帰ります!」



唯「はぁ……今日も暑いね」

紬「…………うん」

梓「本当嫌な暑さですよねー」

唯「で…どうして梓ちゃん私達と一緒にいるの?」

梓「それは唯にゃん先輩の家に行く為ですよ」

唯「その呼び方やめて」

梓「えー可愛いあだ名じゃないですか!」

唯「可愛くとも何とも無いよ」

紬「……可愛い」

唯「………え?」

紬「……可愛いあだ名だよ」

梓「ですよねー!」

唯「アレだよ二人の感性はズレてるんだよ」

梓「ズレててもいいですからあだ名は唯にゃんで決まり」

唯「勝手に決めるな」

紬「……私は唯ちゃんって呼ぶ」

唯「うんだから梓ちゃんも唯でいいよ」

梓「お断りしまーす」

紬「あの……じゃあ私はコッチだから」

唯「うんバイバイ」

梓「さよならー」

紬「うん……バイバイ」

梓「アハハ…二人っきりですね」

唯「さてと、さっさと帰ろう」

梓「あ、無視しないで下さいよー」

唯「あのさ本当に家に来るの?」

梓「はい勿論ですよ」

唯「はぁ…………」

梓「何か不満でもあるんですか?」

唯「今日は憂に料理を教えたかったのに」

梓「へーそうですか!じゃあ私にも料理を教えて下さいね」

唯「めんどくさいから嫌」

梓「えー!減る物じゃないし、いいじゃないですか!」

唯「食材は減るじゃん」

梓「あ、そっか」

唯「そうだよ」

梓「じゃあ二人が料理作るのを見てますね」

唯「大人しくを付け足して」

梓「二人が料理作るのを大人しく見てまーす!」


梓「唯にゃん先輩の家に到着!」

唯「おかえり憂」

唯『あ!ただいまー』

唯「…………………」

梓「…………あれ?」

憂「あ…お姉ちゃん……」

唯「…………え?」

梓「ゆ、唯にゃん先輩が二人いる!」

唯『えへへー久しぶりだね!』


憂「あ、あのね!私も家に帰ったらお姉ちゃんが居たからびっくりした」

梓「ちょっと……何で二人も居るの?」

唯『あずにゃん!』

唯「あの……ちょっと……え?」

憂「………………」

唯『どうしたの?みんな黙って』

唯「向こうの私?」

唯『そうだよ~』

唯「何で此処にいるの?」

唯『えーと…わかんない!』

唯「………………」

唯『寝てて目が覚めたら家に居たんだ~』

唯「ごめん……状況が上手く理解出来ない」

唯『だから目が覚めたら此処に居たんだよ~』

唯「そっか目が覚めたらこっちの世界に居たんだ……アハハ」

やっぱり上手く状況が理解出来ない。


唯「…………はぁ」

梓「え?何で先輩が二人いるんですか?」

憂「お姉ちゃんが二人だぁ~」

唯『ずっと会いたかったんだよー!』

唯「…………何だ夢か」

梓「……はぁ?」

唯「私は今夢を見てるんだよ」

梓「そ、そんな分け無いじゃないですか!」

憂「痛みも感じるよー」

唯『暑さも感じるからこれはきっと夢じゃないよ~』

唯「……現実逃避させてよ」

唯「と、とりあえず……えーと何から話そう」

唯『あ!軽音部楽しい?』

唯「う、うん…楽しいけどそんな事より考えなきゃ」

唯『何を?』

唯「何をって……何でアナタがこの世界に来たのかを考えるのよ!」

唯『わかったぁ!』

唯「まずは……この世界に来るまで何があったかを話して」

唯『えーと……特に何も無いよー』

憂「うーん……」

梓「可愛いヘアピンですね!」

唯『可愛いでしょ!ありがとぉー』

唯「梓ちゃんは少し黙っててね」

梓「わっかりましたー」

唯「……目が覚める前は向こうの世界に居たんでしょ?」

唯『うん!』

唯「寝る前の事って何か思い出せない?」

唯『うーん……あ!急に眠くなった!』

唯「ただ寝てないだけじゃないの?」

唯『ううん昨日はいっぱい寝たよー』

唯「そっか……」

唯『ムギちゃんの話しを聞いてたら急に眠くなっていつの間にか寝ちゃったんだー』

唯「それはただ単に琴吹さんの話しがつまらないだけじゃない?」

唯『違うよー!面白かったよ~』

唯「呑気だね……」

唯『どうしたの?』

唯「どうしてそんなに呑気にしていられるの?」

唯『呑気かなー?』

唯「うん呑気だよ、こっちの世界に来たアナタはもう二度あっちの世界に帰れないかも知れないんだよ?」

唯『…………あぁ!か、帰れないのかな?』

唯「それはわかんないよ」

唯『憂とも……みんなとも会えないのかな?』ウルウル

唯「だ、大丈夫だって……ほら!もう一度寝たら帰れるかも知れないし」

唯『……そうだね!もう一回寝てみるよ!』

唯「う、うん……私の部屋のベット使っていいから」

唯『うんありがとう!』

唯「じゃあおやすみ」

唯『おやすみー!』


唯「はぁ…………」

憂「お姉ちゃん本当に帰れなくなるのかな?」

唯「わかんない……」

梓「でもびっくりしましたよねー!唯にゃん先輩が二人いるんだもん!」

唯「1番びっくりしたのは私だけどね……」

唯「それとごめん憂……今日は一緒にお料理出来そうに無い……」

憂「そっか……そうだよね」

唯「うん……」

梓「あ、あのー……」

唯「なに?」

梓「二人って本当に似てませんよね!」

唯「どうしたの急に?」

梓「い、いや……ただそう思っただけです……この険悪なムードが少しでも華やかになればいいと思って……」

憂「でも私とお姉ちゃんは似てないってよく言われるよ」

梓「でしょ!」

唯「うん、顔は似てるけど性格が似てないって言われるね」

唯「……あ、ちょっと私トイレ行ってくるね」

梓「あ、はーい!」

憂「うん!」

唯「それじゃ……」

ガチャバタン

唯「はぁ…………」

唯「どうして……向こうの私はこっちの世界に来たんだろ?」

唯「……まぁ色々考えても仕方ないか」

唯「はぁ…………」


ジャアアアアア

唯「よいしょっと」

唯「ちょっとだけ向こうの私の様子でも見てみようかな」

ガチャバタン

憂『あれ?お姉ちゃん?』

唯「あ、憂どうしたの?憂もトイレ?」

憂『う、うん……部活は?』

唯「え?何言ってるの?」

憂『だって今頃、お姉ちゃんは部活やってるでしょ?』

唯「もう終わったよ」

憂『そっか……あ、お姉ちゃんヘアピンは?』

唯「付ける分け無いじゃん」

憂『なんか……お姉ちゃん雰囲気違うね』

唯『そうかな?』

憂「喋り方とか違う人みたい」

唯『憂こそなんか違う人みたいな喋り方だね』

憂「そうかな?」

唯『うん』

憂「あ!今日のご飯は何にする?」

唯『……え?ご飯は私が作るよ』

憂『お姉ちゃんが作るの?』

唯「うん今日はスパゲティーでいい?」

憂『い、いいけど……』

唯「どうしたの?」

憂『いや……何でも無いかな』

唯「そっかそっか」

唯「あ、トイレ入るんでしょ?」

憂『うん』

唯「じゃあ私はリビングで秋山さんから借りたDVDでも見よっかな」

憂『秋山さん?』

唯「秋山さんだよ、ほら軽音部のメンバーの」

憂『知ってるよ、お姉ちゃん秋山さんって呼んでた?』

唯「うん呼んでた……あ、電話だ」

唯「あれ?私こんなストラップなんて付けてたっけ?」

憂『うん、付けてたよ』

唯「……まさか」

憂『どうしたの?』

唯「……まさかまさかまさか」

憂『お姉ちゃん?』

唯「も、もしもし?」

澪『ゆ、唯か?』

唯「秋山さん?」

澪『きゅ…急に消えたんだもんびっくりしたよ!無事か?無事なのか?』

唯「…………えーともう一回言って」

澪『無事か?』

唯「その前に言った事をもう一回言って」

澪『え?急に消えたからびっくりした……』

唯「………アハハ」

憂『お姉ちゃん?』

唯「アハハハハハハ……ハハッ……冗談キツイよ」

澪『唯!おーい唯!』

唯「……………」ピッ


憂『お姉ちゃん大丈夫?』

唯「こっちの世界に来ちゃった」

憂『え?』

唯「何かよくわかんないけどこっちの世界に来ちゃったよ……」

憂『何言ってるの?』


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最終更新:2010年07月31日 22:10