律「よっしゃー自由行動だー!」

唯「今日は二日目だもんね!」

律「やっぱ良いよな~自由行動は!決められた時間に縛られずに、ゆっくり自由に動けるじゃん!」

澪「お前らは昨日も十分自由すぎただろ」

紬「ふふ、じゃあ今日も楽しめると良いわね」

唯「うん!」

律「それじゃあ、めざすは嵐山!」

唯「しゅっぱーつ!」

梓「おはよー」

憂「おはよう梓ちゃん」

梓「どうしたの?そわそわしながら携帯見て…」

憂「うん…お姉ちゃん、朝ちゃんと起きれてるかなって…」

梓「あー、なるほど」

憂「歯磨きしたかとか、荷物用のカバンから持ち運び用のカバンにタオルとティッシュ入れ直したかとか!」

梓「そんなに気になるなら連絡すればいいのに」

憂「でも…皆さんと遊んでる時に邪魔したら悪いし…」

梓「そっか…唯先輩なら大丈夫だよ。澪先輩たちも一緒なんだし」

憂「そっか…そうだよね」

梓(よくできた妹だなぁ…)

憂「ねぇ梓ちゃん」

梓「え?」

憂「ここから京都までどれくらいかかるかな!?」

梓「いや行っちゃ駄目だからね?」

憂「じ、じゃあさ!宅配なら何日で届くかな!?」

梓「何する気!?」

憂「私が段ボールに入って、こう…お姉ちゃんにパカッて開けてもらったら、こんにちは~って顔を出して…」ホクホク

梓(あの憂がオーバーアクションで馬鹿なこと話してる!?)

憂「ねぇ梓ちゃん、どうかな!」

梓「普通に駄目だと思う…」

憂「そっか…やっぱ生物はクール宅急便じゃないと駄目か」

梓「違う!違うんだよ憂!」

梓(だめだ……過保護すぎるあまりに憂が変になってる…)

純「あっぶなー!ギリギリセーフ!」ガラッ

憂「あっ、おはよう純ちゃん」

梓「純!おはよう。また遅刻ギリギリじゃない」

純「おはよ~。いやぁ寝坊しちゃってね。この黄金の両足がなかったら危なかったよ」

憂「!」ブルルッブルルッ

梓「なに、メール?」

憂「うん……あ!お姉ちゃんからだ!なになに……今から嵐山、だって!」

梓「へぇ~。唯先輩、大丈夫そうで良かったね。憂」

憂「うん!あ、『昨日の夜の写真です』だって!」

純「見せて見せて!」


全員「………」

憂「戦争……?」

純「これ……何?」

梓「枕なげ……の写真じゃないかな。きっと」



~嵐山~

唯「お猿さんが触れるんだ!」

律「ほーれ餌だぞ~」

紬「……」ドキドキ

唯「どうしたの?」

紬「うん…可愛いんだけど…。引っ掻かれたりしないかな…」

唯「大丈夫だよ!ほら、餌あげてみてっ」

紬「本当に…?なにもしない…?」

唯「うん、大丈夫っ!」

紬「……」そーっ

子猿「キキッ」パクパク

紬「……!」パァア

紬「平気だった…怖くなかった!」

唯「ふふっ、良かったね~♪」

澪「………」

子猿「??」スッ

澪「っ!!」ビクッ

唯「わ~澪ちゃんすごい!お猿さんに好かれてる~いいなぁ」

澪「ゆ、唯……」

唯「あれ?触ってあげないの?」

澪「わ、私はいいよっ、見るだけで」

唯「でもこの子、澪ちゃんに触ってほしそうだよ?」

子猿「……」じー

澪「う、うう……」

唯「大丈夫だよ!全然怖くないよ。ほら見て、すごく可愛い顔してるし」

澪「ほ……ほんとに…?か、噛んだりしない?」

唯「うん!ムギちゃんも最初は怖がってたけど、触れるようになったよ!」

澪「………」ドキドキ

澪「……よ、よし…よし」なでなで

子猿「♪♪」

唯「ねっ!怖くないでしょ?」

澪「うん……可愛い、な」

澪「……♪」なでなで

唯「えへへ」


唯「そうだ!写真撮っとこう」ポチポチ

澪「憂ちゃんに送るのか?」

唯「うん!せっかくだからお猿さんと一緒に撮ろうかな~」


唯「ふう~お猿さん可愛かった!」

紬「可愛かった~♪」

澪「う、うん。そうだな」

律「でも生意気だったなー」

紬「りっちゃん、一匹の猿に餌を根こそぎ持っていかれたものね」

律「そうそう、あれはさすがの私も久々にキレちまったよ…」

唯「あははっ、見たかったなぁ」

澪「あ、もうこんな時間…」

唯「結構時間かかるし、そろそろ宿に戻らなきゃ」

律「よーし!じゃあ皆、私に着いて来ーい!」

唯「おおーっ!」

紬「おお~っ♪」

澪(乗らなきゃ駄目…なのか?これ)

澪「…お、おお~っ…」



……

憂「お姉ちゃん、大丈夫かな…」
純「まったくも~、憂は心配性だなぁ」

梓「本当、よくできた妹だよ」

憂「そ、そんなことないよ」

梓「純も少しは見習ったほうが良いかもね」クスクス

純「なんだとー!」

憂「あっ、また写真だ!」ブルルッブルルッ

純「どれどれー?」

梓「今度は変なのじゃなかったらいいけど……」

純「あっ!猿だ!」

梓「唯先輩、子猿と一緒に撮ったんだね。わぁ…小さくて可愛い」

純「可愛いね~。憂もそう思うよね?」

憂「うん。可愛い!!すっごく可愛いね!!」ハァハァ

梓「憂どこ見て言ってる?」

純(ていうか鼻息荒っ)



……

~帰り道~

律「えーと…駅はあっち…今はここで…地図はこうだから…ぶつぶつ……こっちだな!」

唯「さすがりっちゃん隊員!頼もしい!」

澪(不安だ……)

紬「この辺りは広いから気をつけないとね」

澪「なぁ律…やっぱり地図係、私がやろうか?」

律「大丈夫だって、部長の私にお任せだっ」フフン

澪(だから不安なんだが…)

紬「それじゃあ、りっちゃんにお任せしましょう♪」

澪「わかった……そのかわり、迷いそうになったらすぐに言うんだぞ」

律「おう!」

律「えーっと…まずは、こっち!」

紬「京都は碁盤の目みたいに建物が並んでるんだって」

律「次は…こっち!」

澪「へー、ムギは物知りだなぁ」

律「次…は…あっち!」

紬「修学旅行先がどんな所か気になって、少し下調べしたの」

律「次はー…、あっち!」

唯「碁盤の目ってことは、丸いカーブとかないってこと?直角だけ?」

律「次は……うん、あっち!」

澪「いや、それは違うと思う」

律「え?次……こっち!」

唯「えぇ~、絶対に合ってるよ。きっと直角だらけで事故が多いんだよ、京都は!」

澪「ひいっ事故!?本当にその情報は合ってるのか!?」

律「ん?あ、あぁ、大丈夫だ任せろ!」

律「迷いました」

澪「えっ!?」

律「迷いました」

澪「分かったから!というか何で迷ったんだ!」

律「道が複雑で分かりませんでした。ごめんなさい。すみません。ごめんなさい」

澪「さっきから何なんだそのキャラは!」

律「だ、だってさぁ!いくら進んでも同じ所に出ちゃうんだよ!怖すぎだろ!サイレントヒルに迷い込んだんじゃないか!?」

紬「三角頭とか出てくるのね!?」キラキラ

澪「ひっ!こ、怖い話はやめろーっ!」

律「でもさっきから同じとこグルグル回ってるし」

澪「なら何でもっと早く言わないんだー!」

律「今気付いた」

澪「うう……唯も何とか言ってやってく…」チラッ

唯「お~よしよし、可愛いワンちゃんだね~」ナデナデ

澪「お前はまず話に加わろうな!」

紬「う~ん、どうしようかしら」

澪「そうだなぁ……あっ!」

律「和!??」

和「あれ、皆もこの辺りに来てたんだ」

唯「やっほ~和ちゃん!」

和「ちょうど私達も帰ろうと思ってたんだけど…」

律「た、助かったぁ…!救世主だ!!」ウルウル

和「迷ってたところだったのよね」

律「えっ」

和「えっ」

唯「和ちゃんも!?すご~い偶然!」

澪「せ、せっかくの希望が…」

紬「う~ん、でも人数は多いほうが心強いわよね♪」

律「そ、そうだよな…はは…」

和(何かいけないこと言っちゃったかしら…?)

和「なんだ、唯たちも迷ってたのね」

唯「お恥ずかしい」テレテレ

和「でも人数は多いほうが良いものね。暗くならないうちに帰りましょ」

律「おー!」

和「えーっと…今はここだから…」

唯「和ちゃんの班に着いて行けば楽勝だね!」

和「それで、ここを右に…」

律「そうだな!和なら安心して任せられる!」

和「二回曲がって…」

澪「やっぱり和は頼りになるなっ」

和「ここを……左…」

紬「うん、無事に帰れそうね」

和「ここは…右……」

律「頼りにしてるぞ!和!」

和「ごめん、迷ったみたい」

全員「えぇーー!??」

和「この辺り、ちょっと複雑みたいで…さっきから地図も見てるんだけど…」

澪「の、和ぁ…」

律「そんな…今は和だけが頼りだったのに…!」

紬「地図を見直してみる?」

澪は徐々に不安に思い始めていた。いや、澪だけではない。この場に居る全員が不安を抱いている事だろう。
もし帰れなかったら?もしこのまま、時間に間に合わなかったら――。
もともと真面目な性格の澪は、見知らぬ土地で迷子になった事、そしてタイムリミットが近付いている事からプレッシャーを感じていた。

澪(どうしよう。ちゃんと…帰れるのかな…)

澪(あれ?そういえば唯は…?)

ふと気付いた。さっきからずっと唯の声がしない。喋っていなかっただけかもしれないが、あの唯の事だからそれは考えにくい。
澪は周りを見渡してみた。律、和、ムギ、…………。

澪(唯が居ない――!)


和「ちょっと澪、どこ行くの?」

澪「唯が…唯が居ないんだ!」

紬「えっ!?」

和「何ですって…!」

律「唯が!?」

澪「探して来る!」

律「あっオイ、澪!待て、一人じゃ……澪ー!」

紬「澪ちゃん!」

和「私達も手分けして探しましょう!ただでさえ複雑な所なのに、暗くなってきたから危険よ」

律「そうだな!」

和「あなた達はここに居て」

生徒「う、うん」

和「いい?あまり遠くへは行ったら駄目よ?私は向こうを探すわ」

紬「じゃあ私、こっち!」タタッ

律「ったく、あいつは…!」ダッ

澪は走った。唯がどこに居るかなんて分からないし見当もつかないが、大事な友達の一人が行方不明なのだ。
どんなに自分に落ち着けと言い聞かせても、走る足が止まる事はなかった。
あちこちを見渡し、名前を呼ぶが見当たらない。肩で呼吸していた澪は、苦しさを感じ、一度深く深呼吸した。

澪「……唯、どこ行ったんだろ…」

ハッ、と我に返る。そういえば随分と走ってしまった。必死に唯を探すあまり、周りが見えなくなってしまっていたのだ。
周りを見渡すと、入り組んだ道の真ん中に自分がポツンと立っているだけだった。暗い闇の真ん中に、一人だけ。
澪は今更になって不安がどんどん沸いてくる。緊張から小さく震える体を必死に止めようと力を入れるが、なかなか止まらない。

澪「…ここ、どこ…?」

澪(駄目だな、私…せっかく友達を探しに来たのに、自分が迷うなんて…)

暗く見知らぬ場所でたった一人という心細さから、ついに澪は地面へ座り込んでしまう。
どうしよう。早く唯を見つけて、皆の所へ帰らなきゃいけないのに。

澪(暗くてよく見えない…怖い…)

澪(誰か……!)


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最終更新:2010年08月06日 23:00