律「なぬ? どういう事だ和」

和「放課後ティータイムのライブ」

律「ああ」

和「このままではインパクトが足らないわ」

律「ふんふん」

和「だから全員メガネにしてみたらどうかしら?」

律「えっ……なんで?」

和「はぁ、律じゃ話にならないわね」

律「ちょっと待って! 根本からおかしいよ!」

和「なんですって?」

律「あうっ……に、睨むなって和」

和「おほん、大人げなかったわ。続けてちょうだい」

律「だ、だからさ、メガネでインパクト出るってのがさ」

和「なにか問題でも?」

律「むしろメガネなんて地味じゃん」

和「地味? メガネが地味ですって?」

律「あっ、いや別に和が地味って意味じゃないぞ念の為」

和「ははん、あなたも唯と同じ事を言うのね」

律「なんのこっちゃ……」

和「私がメガネの素晴らしさに気付いたのは中学生」

律「えっ、昔話始まっちゃうの?」

和「初恋のメガネが人でした」

律「順序おかしくない?」

和「そのメガネは教師で……ずっと片思いしてたわ」

律「無機物が中心すぎてコメントし辛い」

和「メガネを見ているだけで幸せだった……」

律「告白しなかったの?」

和「しなかったわ。学業に専念、ううん度胸がなかったのね」

律「早まらなくて良かったと思う」

和「でもメガネの事はどうしても忘れられなかった」

律「なあひょっとして私をからかってる?」

和「それからよ。私がメガネをかけ始めたのは」

律「ちょっと待て、もしかして和って伊達メガネなの?」

和「見くびらないで! 視力もしっかり弱いわよ!」

律「そ、それは良かった」

和「でも私はそれを人に強要する気はないわ」

律「考え直してくれたか」

和「だってメガネは伊達でも素晴らしいものだもの」

律「考え直せ」


和「だからメガネライブしましょう?」

律「いやだ」

和「メガネも5人分ちゃんと用意したわ」

律「頼んでねえ」

和「早いもの勝ちだけど律は部長だし先に選んでもいいわよ」

律「いらん」

和「ぷうう~、ノリわるぅ~」

律「そういうのはさわちゃんに付き合ってお腹いっぱいなの」

和「先生が良くて私はダメなの?」

律「そ、そんなウルウルしたってダメなもんはダメ」

和「なんで? ウルウル不足だった?」

律「だからそういう問題じゃないんだってば」

和「どうビンタすれば納得するの?」

律「ぼ、暴力はおよしになって和さん!」

和「だってこんだけ言ってるのに律が分からず屋だから……」

律「そんなの私と和の独断で決められる事じゃないだろ~」

和「ちっ、このままじゃ埒が明かない」

律「同感だ」

和「この際、律だけでもいい」

律「へっ?」

和「ライブの時メガネかけてよ」

律「もー、しつこいー」

和「仕方ないわね。ライブの時以外でもいいわよ」

律「それなら……って、余計悪いわ!」

和「もうどうすればいいのよ」

律「ここでただかけるだけならいいけどさ」

和「本当? じゃあそれでいいや」

律「投げやりだなおい」

和「M・G・N! M・G・N!」

律「ほいっ、これでいいか?」

和「……」

律「ど、どうしたの和?」

和「動かないで!」

律「ちょ、いきなり写真撮るなよ恥ずかしい!」

和「かっこいいんだもの! かっこいいんだもの!」

律「はぁ……そんなに?」

和「顔面偏差値が30は跳ね上がった!」

律「褒められてるのか貶されてるのか分からない」


和「付き合って! 私と付き合って下さい!」

律「落ち着け和! メガネ取るぞ!」

和「あ、あれ? 律?」

律「そうだりっちゃんだ」

和「イケメンは?」

律「いい加減どつくぞ」

和「メガネしてよ」

律「もうやだ。絶対やだ」

和「ふぅ……まあいいわ」

律「そう? 帰っていい?」

和「とりあえず満足したけどまた頼むわね」

律「なんか中毒患者っぽくて怖い」

和「あ、良かったらこのメガネプレゼントするけど」

律「いいです。いつもの和でいて欲しい」

和「あら……いつもの律でもかっこいいかも」

律「失礼しますね」


 ……

風子「遂に始まったのね」

和「風子……来てたの」

風子「軽音部メガネっ娘計画」

和「ええ。校内でも人気の軽音部がメガネっ娘になり」

風子「その姿でライブしたとなれば必ず来る」

和「そう……メガネっ娘の時代がね」

風子「ふふふ……」

和「アハハハハハ!」

風子(笑い声でかっ)





 秋山澪

澪「……ん~」

和「澪ー、こっちよ」

澪「あっ、和! ごめんごめん待たせた?」

和「気にするほどじゃないわ」

澪「でも約束から……20分だぞ」

和「行き交うメガネを観察して暇を潰してたから」

澪「えっ」

和「気にしないで」


 喫茶店

澪「和と二人きりで会うなんて久々だな」

和「そうね。校内の人気者とお茶なんていい気分だわ」

澪「かっ、からかうなよぉ~……」

和「ごめんなさい。澪を呼んだのはちょっとお願いがあってね」

澪「お願い?」

和「実はファンクラブの事なんだけど」

澪「……あんまり聞きたくないな」

和「澪、私にはあなた位しか頼れる人がいないの」

澪「私を頼るまでもないだろ和なら」

和「そう思われてるからこそ甘えられる人が限られてくるの」

澪「そ、そういうものかな」

和「澪だって分かるでしょ? 私の気持ちが」

澪「うん……少しなら分かるかも」

和「良かった。やっぱり澪って優しい」

澪「で、私に頼みたい事って何?」

和「実は澪ファンクラブの間であるものの需要が急速に高まってきてね」

澪「あるもの?」

和「会長としてはファンサービスでそれにお応えしたいなと」

澪「分かった! 私の詩を小冊子にしてお配りするんだな!」

和「違うわ。澪のブロマイド写真が欲しいの」

澪「やだ!」

和「話を聞いて澪」

澪「やだ! 絶対恥ずかしい写真でしょ! やーだ!」

和「恥ずかしくないから!」

澪「水着でギリギリポーズなんて無理!」

和「そんな事させないわよ」

澪「じゃあ何させる気なの? まさかそれ以上の」

和「私を何だと思ってるのよ……」

澪「えっ、違うの?」

和「澪のメガネ姿が欲しいだけよ」

澪「メガネ? あっそう……」

和「いいのね? じゃあこれをかけて」

澪「今撮るのか?」

和「メガネは急げって言うじゃない」

澪「もっと人のいない所にしないか?」

和「分かったわ。出ましょうか」



 路地裏

澪「これでいいか?」

和「み、澪……」

澪「どうした和?」

和「一般的にメガネは美人には相乗効果は少ないとされていた」

澪「はあ……」

和「だが澪の様なつり目の美少女にはピタリとハマる!」

澪「和、目が怖いんだが」

和「それが今証明された! 私は嬉しい!」

澪「よ、喜んでもらえたなら良かったよ」

和「澪! これからもそのメガネを愛用し続けるべきよ!」

澪「え、えぇ~……」

和「ええじゃないか! ええじゃないか!」

澪「目をさませ和! メガネ取るぞ!」

和「あれ……ふぅ、ふぅ。ごめんなさいちょっと興奮しちゃって」

澪「ちょっと所じゃなかったぞ」

和「ふふっ、メガネって罪なアクセサリーよね」

澪「その感性には同意しかねます」

和「澪、写真ありがとう。宝物にするわね」

澪「あれ? ブロマイドにするんじゃなかったのか?」

和「もちろんそうするけど個人的にも大切にさせていただくわ」

澪「そ、そんなの恥ずかしいよ」

和「いいじゃない澪ファンクラブ会長だもん私」

澪「ちょ、ちょっと和ぁ~!」


 ……

和「澪かわいいわ澪」

風子「ほう、さすが和ちゃん」

和「風子……机の下で何やってるの?」

風子「あの澪さんをもメガネにさせるとは」

和「あんた私のパンツ覗いてたんじゃないでしょうね」

風子「その写真、私にもお譲りください」

和「いいわ同志よ」

風子「あっ、素敵……私お姉様についてきて良かった」

和「お姉様?」





 琴吹紬

和「ムギ、偶然ね」

紬「和ちゃん! 図書室に調べもの?」

和「そんな所かしら。ムギは?」

紬「私はちょっとお勉強してたの~」

和「お邪魔しちゃったかしら」

紬「全然! 一息入れたい所だったし」

和「そう……隣いい?」

紬「もちろん。なんなら膝枕する?」

和「魅力的な提案だけど今度にしておくわ」

紬「うふふ、和ちゃんのそのサバサバした感じ好きよ」

和「ありがとう。私もムギといると落ち着くんだ」

紬「和ちゃんいつも落ち着いているじゃない」

和「表面上はね。心からホッとする事は難しいから」

紬「生徒会長って責任を背負ってるものね」

和「でもきついだけではないのよ。求められるのも幸せだから」

紬「和ちゃんはすごいな。尊敬しちゃう」

和「ありがと。私もムギを尊敬してるけどね」

紬「へえ~、ホント?」

和「ええ。溢れる美貌と気品に天真爛漫さ、行動力とユーモア」

紬「あららら?」

和「ミステリアスな眉毛、海の様な寛大さ。あなた程の女性は中々いない」

紬「どうしましょう……」

和「まさにメガネをかける為に生まれてきたメガミ」

紬「そんな事いわれても困っちゃうから」

和「私なんかに褒められていい気になる人じゃないでしょムギは」

紬「買い被らないで。和ちゃんに言われたら誰でもドキドキするよ」

和「気にしないで。言葉に出すと軽くなるって言うし」

紬「やっぱりからかってたんだ」

和「そうでもないけど。じっとしてて」

紬「……やっ」

和「メガネかけるのイヤ?」

紬「そうじゃないけど……意味分からないから」

和「ここにメガネがある。それだけで十分じゃないかしら」

紬「そう……なのかな?」

和「私に身を委ねなさいムギ」

紬「は、はい」

和「装・着!!」

紬「うふふ、似合う?」

和「うっ……ぐはああああぁっ!!」

紬「のっ、和ちゃん!?」

和「惚れてまうやろ! 惚れてまうやろ!」

紬「えっ、あの……」

和「むぎゅうううううううぅっ!!」

紬「わぁ!」(和ちゃんに抱きつかれちゃった!)

和「うふ、ふふふふ私のメガミ様もう離さないんだからぁ!」

紬「和ちゃんがおかしい……」


和「あのねムギ、私ずっとこうしてムギに甘えたかったの」

紬「そ、そうなんだ~」

和「この金髪も大きな瞳も真っ白な肌も憧れてた」

紬(急に人が変わったみたい)

和「そのムギがメガネで……メガネなのよ?」

紬「うんうん」(でもかわいい……もう少しこのままでもいいかな)

風子「いけない琴吹さん! メガネを外すのよ!」

紬「高橋さん?」

風子「早く! 和ちゃんが戻ってこれなくなる前に!」

紬「わ、分かった! えいっ!」

和「ハッ! 私ったら何てはしたない事を!」

紬「正気に返ったのね。でもどうして?」

和「ムギごめんなさい。今の私にはあなたが眩しすぎる」

紬「和ちゃん?」

和「出直すわ。行くわよ風子」

風子「うん! じゃあね琴吹さん!」

紬(結局どういう事なの……)


 ……

和「まさかムギのメガネがあれ程とは。不覚だったわ」

風子「和ちゃん安心して。写真は私が収めたから」

和「本当!? でかしたわ風子!」

風子「えへへ」(撫でて撫でて! もっと風子を撫でてくださいお姉様!)

和「んう? でも肝心のムギがちゃんと撮れてないわね」

風子「あ……その」(しまった! お姉様を中心にしすぎた!)

和「まー、あのムギを直視出来ないのは仕方ないか。ありがと」

風子「和ちゃん……」(お姉様だって美人でかっこいいですよぉ!)


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最終更新:2010年08月08日 22:53